ホントウの勇者

さとう

魔術師の町ブルグレート⑦/初級中級・試験





 「いいなぁ、リヒテル魔教授の晩餐会……」
 「そう? あたしは堅苦しいの苦手だけど」
 「そうだな。お前は部屋のソファでゴロついてるのが似合ってるぞ」
 「なんだとーっ!!」


 スプリフォ講師の午前中の講義が終わり、お昼を食べるために食堂へ
 そこでシェリューラと出会って一緒にお昼を食べることになった


 「晩餐会は明日、時間は日が沈む頃……遅刻しないように早く行くわよ」
 「場所は?」
 「ハァ? リヒテル魔教授の晩餐会なんだから自宅に決まってるでしょ」


 そりゃそうだ。でも自宅の場所を知るチャンス……忍び込むことも考えておくか


 「そう言えば最近、リヒテル魔教授を見ませんね。どうしたんでしょうか?」
 「……神話魔術の件で忙しいんでしょ」


 リヒテル魔教授の話になると、スプリフォは何故か沈むような顔になる
 ドーナツを頬張る顔が少しだけ曇る


 「あ、そう言えばジュートさん」
 「ん?」


 シェリューラが少し身を乗り出して俺に聞いてきた


 「【灰】属性で凄腕の護衛が、スプリフォ講師と協力してSSレートのモンスターを倒したってホントですか!?」
 「………はい?」
 「いえ、学園中で噂になってますよ。新しく入った護衛の方が【特級魔術師】並の腕前を持っているって」


 なんじゃそりゃ。まぁモンスターは倒したけど噂になるレベルなのか?


 「事実よ。胸糞悪いけどコイツの腕前はあたしより上、威力だけなら学園最強かもね」
 「おぉ~っ!!」
 「おいスプリフォ、滅多なコト言うなよ」
 「事実だからしょーがないでしょ、ウソはキライなのよ。あむ」


 ドーナツを頬張るスプリフォは淡々と語る


 「スプリフォ講師、午後の授業はがんばります!! 早く中級・上級魔術師になれるようにもっと勉強しなきゃ!!」
 「やれやれ。シェリューラって意外と熱血なのね」




 午後イチでシェリューラたちの授業か。まぁ気楽に行こう




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 「シェリューラ、まだ魔力の練りが甘い。それと詠唱はもっとテンポ良く。つっかえたりドモるだけで失敗するぞ、もっと落ち着いて」
 「は、はぃぃ~」


 午後の初級魔術の授業は、中級魔術の実地訓練
 的はモンスターではなく木の的で、的に向かって3種類の中級魔術を放つのが午後の授業だった


 使う魔術は【爆裂炎弾バーンストライク】・【熱線炎線バーンビーム】・【灼熱炎球バーンボール
 シェリューラは2種類までは発動できたが、最後の1つである【爆裂炎弾バーンストライク】だけがなかなか的に当たらない。緊張のせいか魔術すら発動せず魔力が尽き掛けていた
 シェリューラ以外にもかなりの生徒が苦戦し、生徒数は300人に対して成功数は20人ほどしかいない。スプリフォも全員が成功するとは思っていないようだ


 「全員そこまで!! 集合!!」


 開始から2時間。スプリフォは一度全員を集めた


 「よし。3種も魔術を成功した者は手を上げろ、ウソを付いても私にはわかるからな」


 すると、やはり20人ほどが手を上げる


 「では次回、手を上げた者は中級魔術師の教室へ集まるように。それと成功しなかった者は引き続き初級魔術の教室だ」


 スプリフォの声に手を上げた生徒は歓喜の声を上げる。すると、1人の女子が憤慨したような声を上げた


 「納得いきませんスプリフォ講師!! なぜ成功者だけが中級魔術師の教室へ!?」


 少しキツメのツリ目の女子はスプリフォに食ってかかる
 こいつ確か……最初の授業でスプリフォにちょっかいを出した女子だ


 「ロミュリッテ、キミは2種しか成功せず最後の1つは発動してすらいない。成功者達と比べるまでもなく、キミの実力不足だと思うが?」
 「違います!! どうして彼ら彼女らだけを優遇するのですか!!」
 「決まってる、成功者たちは実力と才能があるからだ。初めての実地訓練で簡単とはいえ初級魔術師が中級魔術を連続で、しかも異なる種類の魔術を3種使えることが出来た。この時点ですでに中級魔術をこれから扱うだけの魔力、経験共に十分あると判断した。まぁ初級魔術師だが中級魔術師の講義・実地を受けてもいいと言うことだ」


 なんとまぁ弁の立つ……ロミュリッテとかいう少女は黙り込んじまった
 言ってることは正論。ようはロミュリッテも実力不足だからダメってことだ


 「そこまで言うなら全員にチャンスをやろう」


 スプリフォは全員に聞こえるように、魔導マイクの音量を高くする


 「納得がいかない生徒はここで1人ずつ魔術を使って貰う。課題は同じ3種の魔術を連続で放つことと、3種とも的に当てること。それが出来れば中級魔術師の教室で学ぶ権利をやろう」


 困惑の声がしたが、50人ほどが挙手




 そして中級魔術師の教室を掛けたテストが始まった




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 50人の中にはシェリューラもいた。その瞳は気合いに満ちあふれ、昼間の決意がウソではない証拠でもあった


 緊張もあるのか、50人のうち40人までが終わり成功者はたったの3人
 そして、ロミュリッテの番がやって来た


 「では始めろ。緊張せず落ち着いて……」
 「静かに!!」


 スプリフォの声を遮り、ロミュリッテは集中してる
 口元が動き、魔力をたぎらせる……そして、最初の魔術【爆裂炎弾バーンストライク】が発動する


 「よし!!」
 「慌てるな、次も」
 「静かに!!」


 おいおい、仮にも講師だぞ。スプリフォはなんとも思ってないような表情だけど
 そして二つ目の魔術、【熱線炎線バーンビーム】も成功。ロミュリッテの正面に30センチほどの紋章が現れ、そこから真っ赤な光線が的である木を貫通した


 「よし、最後」
 「うるさい!!」


 うーん。これは怒っていいと思うけど
 最後、肩で息をしながら汗を掻くロミュリッテは目を閉じて詠唱を始める
 魔力は溢れるが……少し不安定なままロミュリッテは魔力を放出した


 「あ、あぁっ!?」
 「ふむ。失敗だな」


 ロミュリッテの前に紋章は現れたが、魔力が不安定だったので消えてしまった
 結果は言うまでもない。失敗だ


 「それでは次」


 スプリフォはロミュリッテの失敗に興味がないのか、さっさと次に指示を出す
 ロミュリッテはわなわな震え、スプリフォに食って掛かる


 「い、今のは……そう!! スプリフォ講師が私の集中を乱すから、だから!!」
 「だから?」


 スプリフォは怒っていない。ただ無関心


 「だから? だからもう一度? 私が黙っていれば必ず成功するのか? なら黙ろう。最後にもう一度チャンスをやるから身体を休めておけ。では次」
 「………ッ!!」


 ロミュリッテにそれだけ言うとスプリフォは前を向く
 そして最後の1人、シェリューラの番が来た


 「落ち着いて。心を強く、魔力を集中しろ」
 「はい!!」


 シェリューラはスプリフォの言葉で自信が付いたのか魔力によどみがない
 確実に2種の魔術を成功させ、最後の1つ……失敗した【爆裂炎弾バーンストライク】の番が来た


 「落ち着け。魔術は発動した……ならば狙いだ。集中して範囲を絞れ、視線の先にある木を……的を見据えろ」
 「……はいっ!!」


 シェリューラは疲労していたが魔力に迷いがない。流れるように詠唱を紡ぎ、怖いくらいの集中……そして、【爆裂炎弾バーンストライク】を発動させた


 「やぁッ!!」


 発動した10発の炎弾は的に向かって一直線……そして、10発全て命中。木は砕け散り燃え尽きた


 「よし合格だ。まさか10発全て命中させるとは……よくやった。明日からは中級魔術師の教室だ」
 「うぁ……は、はぃぃッ!!」


 嬉しいのか、シェリューラは顔を歪めて泣き声で返事をする
 シェリューラは俺に向かってもガッツポーズ……っていうかこの世界にもガッツポーズあるんだな


 全員終わり、スプリフォは最後にロミュリッテを見る


 「待たせたな。魔力はどうだ? 問題無いなら始めろ。ダメなら今日は終わりだ」
 「で……出来ます!!」
 「では始めろ。私は何も言わない」


 シェリューラの成功を見たとき、ロミュリッテの顔は驚愕に歪んでいた
 シェリューラを脅しスプリフォを襲わせた女子生徒ロミュ。気付いていたが諦めも往生際も悪い




 ロミュリッテの魔術は、1つも発動しなかった





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