ホントウの勇者

さとう

魔術師の町ブルグレート⑥/チート野郎・紳士服



 森の奥から光る無数の目……数は、50以上はある


 「あれは……マズい!! 授業は中止、生徒は全員避難しろ!!」
 「お、おいスプリフォ!?」


 俺は思わずスプリフォに駆け寄る。生徒達はワケが分からず困惑していた
 スプリフォは焦ったように説明する


 「よく聞け!! あれは〔グレーギャングゴブリン〕だ。単体ではSレート、20体以上の集団ではSSダブルレートに相当すると言われてる。この程度の魔術障壁なんて簡単に破られるぞ!!」


 生徒全員の顔が青くなり、それと同時にゴブリンが現れた


 「チッ、まさかこの森に〔グレーギャングゴブリン〕の集団が潜んでるなんて……みんな逃げて!! それと誰でもいいからほかの講師を連れてきて!!」


 生徒達は恐怖から誰も動こうとしない。その様子を見たスプリフォは舌打ちすると前を向く
 いつの間にかスプリフォは講師ではなく普通の口調に戻っていた


 「来た……くっ、50以上はいる、マズい……!!」


 ゴブリンは全身灰色、大きさは3メートルから5メートルはある
 全身に鎧を着込んでいるが鎧の造りは甘く、まるで手作りしたかのようだ。まさかコイツらの自作じゃないだろうか
 武器は剣と弓と槍、さらに5メートルを超えるものは鉄の棍棒を装備していた
 たしかにこんなのが集団で現れたらヤバい。村1つ簡単に滅ぼされるだろうな


 「ジュート、アンタも時間稼ぎをしなさい!!」
 「え、時間稼ぎ?」
 「そうよっ!! 寝ぼけんなっ!!」
 「いや、うん……じゃあ行くぞ」


 俺は手を突き出し、魔術を発動させる


 「【灰】の上級魔術、【鋼糸甲線ギースエッジ・ライン】」
 「……は?」


 俺が出したのは100本以上ある有刺鉄線や鎖
 グラウンド全体に紋章が広がり、それら全てが50のゴブリンに絡みつき完全に動きを止める


 「さーて捕まえた。トドメは……【灰】の上級魔術、【灰銀烈槍シルバリオン・サリッサ】!!」


 心臓や頭、首に狙いを定めた銀の槍が、50のゴブリンを串刺しにした
 動きを止めて狙いを付ける。これもスプリフォの授業でやった合わせ技だな


 「おーし終わり。全部始末できたかな……どうした?…って痛ぇっ!?」
 「こ、このチート野郎!!」




 唖然とする生徒と、何故か俺を蹴るスプリフォがいた




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 「アンタ、一体何者よ」
 「え、お前のお世話係の冒険者だけど」


 ゴブリンの駆逐が終わり、生徒達を落ち着かせて解散となる
 俺が倒したのでゴブリンの部位などを貰う権利があったが快く辞退した。だってゴブリンの睾丸なんて死んでも触りたくない
 この学園と契約した専属の傭兵団にプレゼントしたらすっごい喜ばれた。いや睾丸だぞ


 そんなわけでスプリフォは午後は休み。予定通り町に出てショッピングモールに向かってる
 スプリフォはカリカリしながら俺に聞いてきた


 「とぼけんな!! あたしだって中級魔術の合わせ技が限界なのに、詠唱省略で上級魔術の合わせ技を簡単に使えるなんて、【特級魔術師】だってそう簡単にはできない!!」
 「前に言っただろ、俺は努力したんだよ」
 「くぅ~……わかった。もーいいわ」
 「よかったら教えてやろうか……ふふん」
 「チョーシのんなっ!!」
 「いでっ!?」


 スプリフォのローキックは意外と重い。くそ、こんなちっこいのに


 「と、とにかくショッピングモールはどこだよ」
 「……はぁ、こっちよ」


 スプリフォは町の中心へ着くと、魔術協会の総本部へ


 「おい、そっちは」
 「いーの、ほら……ここよ」


 魔術協会の本部手前にアーチがあり、そこから地下へ降りる階段があった


 「地下モールか……こりゃわからんはずだ」
 「ここには日用品や服、あまり需要はないけど武器防具とか一通りの商店、さらには飲食店なんかが充実してるわ。まぁ厳格な町だからこういうのは見せたくないんでしょうね」
 「ほほう、面白そうだな。行こうぜ」




 俺とスプリフォはさっそく地下へ降りていった




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 「へぇ……スゴいな」


 地下街はかなり広く、かなりの人で溢れていた
 スプリフォが言ったとおり武器防具屋なんかもあるし、少し進むと飲食店がズラリと並んでいる
 しかも女の子魔術師がいる店では、流行でもあるのだろうか、色々なローブを手にとってキャッキャと騒いでる
 そのほかにも魔道具屋や道具屋、青果店もある。ここだけで違う町に来たみたいな感覚だ


 「さ、いくわよ」
 「おう」


 スプリフォはスタスタ歩き俺も着いてく。すると数分で大きめの服屋に到着した


 「いらっしゃいませ。これはこれはスプリフォ講師、何をお求めでしょう?」
 「パーティー用のドレスを一着、あとコイツにもパーティー用の服をお願い。支払いはこれで」
 「お、おい。自分の分は自分で出すぞ」
 「いいから。その……生徒たちを守った臨時報酬よ、ありがたく受け取りなさい」


 なんとまぁ素直じゃないこと。ヤベぇ、少しかわいいなんて思ってしまった


 「……わかったよ、サンキュな」
 「ふん。今回だけよ」


 そう言ってスプリフォは店の奥へ。耳が赤かったのは気のせいだろう


 「それではこちらへ、身体のサイズを測らせて頂き、合う物をいくつかお持ちいたします」
 「はい、お願いします」


 お店のお姉さんに身体を計られ、何着かの衣装を見せられる
 民族風のヒラヒラした衣装や軍服みたいなカッチリした重そうな服、さらには魔術師みたいなローブもあった


 「そうだなぁ……お、コイツは」


 俺の目にとまったのは黒い服
 黒の上下に中はワイシャツ、そして胸元はスカーフだ。いいね
 袖を確認すると十分なスペースがある。これなら〔マルチウェポン〕も隠せそうだ
 晩餐会では武器が持ち込めないので〔セーフルーム〕に収納し、念のために〔マルチウェポン〕だけ装備していくつもりだ


 「よし、コイツでお願いします」
 「はい。では試着をお願いします」


 俺はスーツを試着し、動きやすさを確かめる
 少し固くて動きにくかったがまぁ問題無いレベル。店員さんが裾を直したり不具合を聞いてきたが問題無い。これで俺のスーツは決まったな。うんキマってるぜ


 「どう? 決まった?」
 「おう、キマったぜ……おお」


 スプリフォの声が聞こえたので振り向くと、そこにいたのは赤い妖精だった


 もともと顔立ちが良かったので薄化粧をすると映える
 ドレスは赤のワンピースで、所々に装飾が施されゴージャスな感じを出している
 剝き出しの肩は白く、ウェーブの掛かった長い金髪もキレイに梳かされ纏められ、ネックレスや指輪などの装飾品も光っていた


 「どう?」
 「……いい。すっごくいいぞスプリフォ、かわいい」
 「ふふん、とーぜんよ!!」


 薄い胸を誇らしげに張るスプリフォ。うーん……もうちょいあればな


 「さて、服は決まったし……次は食事よ!! アンタのオゴリで食べに行くわよ!!」


 スプリフォはそう言うと再び店の奥へ。どうやら着替えに行ったらしい


 「スプリフォ講師の護衛……大変ですね」
 「はは。手の掛かる妹みたいですよ」




 苦笑する店員さんと何故か笑い合ってしまった




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 「ジュート、ここにはあの〔ミクシムドーナツ〕の支店があるの。さっそく行くわよ!!」
 「へいへい。まぁ俺も食べてみたい」


 グルメフェスタでは見るコトしか出来なかったし、直に食べるのも悪くない
 早歩きのスプリフォの案内で店に行くと、嬉しいコトにかなり空いていた


 「今の時間は講義の時間だからね。あと少しすればここは生徒たちで賑わうのよ、早く買うわよ!!」
 「そうだな。ここで食べるのとお土産用に買って行こう」
 「お、いいアイデアね。採用!!」


 スプリフォはかなり上機嫌。ずっとこのままだといいのに
 出会ってまだ2日……そこそこ打ち解けてきたかな


 しかし本来の目的は【神話魔術】の解明をしたリヒテル魔教授の調査
 人間に使えるはずのない【神話魔術】を、町ぐるみで発動なんてしたらこの町は終わる




 まずは晩餐会……リヒテル魔教授に会って調査してみよう





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