ホントウの勇者

さとう

魔術師の町ブルグレート③/授業・情報



 「おいスプリフォ、こいつは捨てるぞ」
 「バカふざけるな!! そいつはこの町限定のチョコ、〔ロッタのチョコ〕の限定品パッケージの包みよ!!」
 「いやゴミだろ……しかもなんか汚いし。ポーイ」
 「あぁぁっ!?」


 俺はゴミ袋にゴミを捨てながら掃除をしていた
 まいったな……まさかスプリフォ講師がこんなヤツだったとは。本来の目的であるリヒテル魔教授の情報を集めに行けないな


 「ねぇ、そういえばあんたの名前は?」
 「俺? 俺はジュートだ」
 「よしジュート、掃除が終わったら食事。なんでもいいから食事を作りなさい」
 「おい。俺の仕事はお前の補佐だろ?」
 「そうよ。何か間違ってる?」
 「………」


 なんか思ってたのと違う。これじゃただの家政婦だ
 以前の冒険者が依頼放棄したのも分かる気がする……仕方ないな


 「ったく、仕方ないな」
 「お?」


 ゴミに埋もれて気が付かなかったが、この部屋には調理台があり一通りの調理器具は揃っていた
 俺は魔導冷蔵庫を開けるが中身はカラッポ……おい


 「はぁ仕方ないな。おいスプリフォ、買い物行くぞ」
 「えぇ〜?……ムリ。授業の準備があるから」
 「マジかよ。仕方ないな……」


 俺は買い物に行くため部屋を出る。そして近くにいた守衛に買い物場所を聞くと、意外なことにこの校舎の中にスーパーマーケットみたいな所があった。近くてラッキーだぜ
 買い物をしてスプリフォの部屋に戻る……すると


 「おーい、買い物行ってき……」
 「ふぁ〜。早く作って、オナカ減った」


 スプリフォはキレイになったソファの上でだらけていた。コイツ……
 俺はだらけてるスプリフォに顔を近づけるとにっこり笑って言う


 「おい、授業の準備があるって言ってただろ?」
 「あぁとっくに終わった。1分でね」
 「ほぉう……」
 「何よ? 準備は事実だし。ただ早く終わっただけよ?」


 こ、コイツ……勝ち誇った顔してやがる。ムカつく


 「さぁ食事よ。早く準備して」
 「……わかった」


 俺は頬をヒクつかせながら調理開始
 どうしてくれようか……よし


 「出来たぞ。さぁ食え」
 「遅い全く……って、おい。どういうつもりよ?」
 「何がだよ」
 「き、きさまぁ……」


 スプリフォの前にはたっぷりのピーマン炒め
 挽肉と野菜をふんだんに使い、メインのピーマンは多めに添える。パンと野菜たっぷりのスープも添えた栄養満点のごはんが出来た


 「ほれ、さっさと食べろよ……ふふふ」


 くっくっく……予想通り。この手のタイプは野菜が苦手と相場が決まってる
 案の定スプリフォも野菜が苦手みたいだ




 ちょっと子供っぽい仕返しだがまぁいい。俺も子供だしな




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 時間は午後。スプリフォの講義があるというので俺も同席する


 スプリフォは【赤】魔術の座学講師で実技講師。本人も【赤】の上級魔術師だ
 若干10歳の飛び級でこの学園を卒業、その後2年間〔王都グレーバシレム〕で勉強し上級魔術師の資格を得る。そして若干13歳で講師となり教鞭を振るっている


 「それがこのあたし、スプリフォ・リプツェン講師よ。参ったか!!」
 「ふーん、すごいすごい」
 「アンタ……もっと敬え、尊敬しなさい!!」


 ンなこと言われてもねぇ。俺にはただの女の子にしか見えない


 「ふん、もういい。今日の講義は【赤】の中級魔術の座学よ。詠唱の基礎と魔力の練り方、魔力の放出方法をテーマにしてある。アンタにはあたしの補助と実際の魔術による実技の相手をしてもらう」
 「実技の相手?」
 「ええ。アンタの【灰】属性の障壁ならあたしの魔術をかろうじて・・・・・防御できる。今までは講釈のみだったけど実際に見せることがなによりの勉強になる」


 確かに。真面目に語るスプリフォは講師に見えなくも無い……子供だけど
 そんなこんなで教室の前へ。今さらだけどコイツ、このナリで舐められないかな


 引き戸をガラガラ開けると中はかなり広かった
 放射状に広がる教室は、まるで大学の中にいるような教室。生徒数は100人いるかいないかくらい。もしかして全員【赤】魔術師なのかな


 教壇の脇には木製で出来たみかん箱……あ、これスプリフォ専用台だ
 スプリフォは台に上り、さっそく講義を始めた


 「ではこれより始める。今日は【赤】属性の特製と中級魔術の詠唱の基本、それと魔力について学ぶ。後半では実際の魔力制御を実技で学んで貰う」


 教室はかなり真面目な空気。俺の存在など視界にすら入っていない
 俺はスプリフォから離れ入口に立ち、スプリフォの講義を聴いていた


 「つまり、詠唱は流れであり道である。道である以上近道が出来るが、そのぶん制御は難しく威力は下がる。デメリットしかないと思いがちだが、実際の戦闘では威力よりスピードが重要な場合もある。それに威力が下がると言っても極端に下がるわけではない。例えば完全詠唱の初級魔術と簡略詠唱の中級魔術では威力でも速度でも中級魔術に軍配が上がる」


 スプリフォは黒板に板書しながら講義をする。マジで講師なんだな


 「例えば、完全詠唱の初級魔術……【火球ファイヤボール】」
 「は!?」


 スプリフォは指先を俺に向けるといきなり【火球ファイヤボール】を、直径30センチほどの火の玉を放つ


 俺は魔術ではなく左手で【死の輝きシャイニング・デッド】を抜いて火球を両断した
 その行動に教室とスプリフォが驚いていた


 「おいジュート、盾を出せ盾を。これじゃ威力がわからないだろう?」
 「いやいきなり出すなよ、ビックリするだろ」


 少しだけ危なかった。思わず【灰】属性以外の魔術を使うところだった




 その後、スプリフォの指示通り盾を出して授業を進めた




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 「では今日はここまで。何か質問は?」


 すげぇな、マジで講師の風格を漂わせてやがる。いきなり魔術をぶっ放したときはこの野郎と思ったけど


 「······ないようだな。また明日。行くぞジュート」
 「お、おう」


 生徒から何故か尊敬の眼差しを受けた俺はそそくさと退散した
 前を歩くスプリフォの横に並び、聞いてみた


 「すっげぇな、マジで講師なんだな」
 「あのね、何回も言ってるでしょうが。あたしは将来の魔教授、スプリフォ・リプツェンだって」
 「はいはい、悪かったよ」


 口調も女の子らしく? 戻り前を歩く
 今の講義は年齢が20代ほどの中級魔術師たちだったが、次は俺とタメぐらいの初級魔術師たちだ
 この学校はエスカレーター式で、厳しい試験に合格すれば魔術師の称号を得られるらしい
 年齢がまちまちなのも仕方ない。才能があれば数年で中級魔術師だが、試験に受からなければ何年も初級のままだ


 「そーいえばアンタも上級魔術師なのね。それにS級冒険者······ふーん、あたしと同じ天才肌か。なんかシャクね」
 「あのな、ちゃんと努力はしてるっつーの」
 「あたしだってしてるっての、日々勉強の毎日よ。それにリヒテル魔教授のお陰で······」
 「······お陰で?」
 「·········」


 スプリフォは黙りこくる。何だ······?


 「さ、次は初級魔術師たち。アンタと同年代だからヘンな気を起こすんじゃないわよ」
 「はははふざけんな」




 リヒテル魔教授······後でスプリフォにいろいろ聞いてみるか



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