ホントウの勇者

さとう

ギース街道②/寄り道・決意



 さて、俺とシロの寄り道はまだまだ続く


 この辺りには冒険者にとっての冒険場所が多く、かなりの冒険者とすれ違った
 薬草がたくさん生えてる沼とか、巨大モンスターの潜む林、盗賊の出没する危険エリアなど、よりどりみどりだ


 「薬草か······よし、行ってみるか」
 《いいけど······キミに必要なのかい?》
 「念のためだよ。備えあれば憂いなしだよ」
 《何それ?》


 シロと会話しながら街道を外れ、薬草の生えてる沼地へ向かう
 距離はそう遠くなく、1時間も歩かぬ内に到着した


 「けっこうモンスター出たな」
 《ま、一応は危険地帯だからね》


 ここに来る途中、〔グレーゴブリン〕の集団や〔グレーポイズンパイソン〕という大蛇、さらには〔グレーマッドコング〕とかいうゴリラが出てきた。まぁ全部倒しましたけどね
 そしてようやく沼地に到着。いやはや驚いた


 「おい、どこが沼地なんだよ······」


 俺の目の前にあったのは、透き通るような湖
 ここまで来る途中の林は薄暗かったが、ここだけキレイな光を浴びて光ってる。そして湖の周りには見たことのない薬草が生えまくり、野生のモンスターが湖の水を飲んでいた


 「すっげぇ······」
 《でしょ? ここはモンスターの憩いの場でもあるのさ》


 俺は気に寄りかかるように腰掛け休憩する
 周囲のモンスターは大人しく、俺の前を素通りしていく。よく見ると湖の前に巨象のようなモンスター、〔グレーラビット〕もいた


 《ジュート、これ》
 「なんだそりゃ?」


 シロはいつの間にか雑草······いや、薬草を咥えてた


 《これは麻痺薬草、これは毒草、これは眠り草。煎じて使えばモンスターや人間にも有効だよ。効果は長く続かないけどね》
 「おいおい、物騒だな」
 《ジュートの矢やナイフに塗って使えば相手を無力化出来るよ。けっこう貴重だから人間のギルドに売るのもいいし、この先の魔術師の町では高価なものだから取引材料にもなる》
 「ほぉ、じゃあ摘んでいくか」


 俺はシロと大量の薬草を摘んで異空間へ収納した
 時刻は昼過ぎ、この湖を出たら昼飯にするか


 「よし、行くか」
 《うん。寄り道って楽しいね》




 俺とシロの寄り道はまだ続く




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 モンスターたちの憩いの場から戻り、再び街道へ
 時刻はお昼過ぎ。運動もしたし腹も減った


 「さて、メシでも作ろう」


 俺は街道脇の少し開けた原っぱの上で休むことにする
 魔術でかまどと火を起こして調理。今日は肉丼とスープにしよう


 以外と人通りが多いので、偽装のためにカバンを近くに置く。これなら異空間から物を出したようには見えないだろう


 「出来たぞー」
 《待ってました》


 シロの皿に肉を大盛りにし出してやり、俺の丼にも肉を大盛りにする。フライパンの中にはまだまだ肉が残ってるし、ご飯もちょいと炊きすぎたな


 「まぁいいや。いただきます」


 相変わらず俺の料理は味付けの濃い男料理。ご飯が何杯でもいけちゃうね


 「うん美味い。それにしても作りすぎたな」


 腹が減ってるからついつい多く作ってしまった
 これくらいなら食えると思ったけど、さすがにムリだ


 「どうすっかな······」
 《ジュート、あれ》
 「どうした······ん?」


 俺の目の前には街道を歩く冒険者グループ
 人数は4人。男女2名ずつのオーソドックスなグループで、それぞれの手には大きな袋を持っていた
 少し血が滲んでることから、どうやらモンスター討伐の依頼で間違いない。恐らくあの中には解体されたモンスターの部位があるのだろう


 そんなグループが、俺を見てる


 《······どうやらお腹が空いてるようだね。風向きで肉のニオイが彼らの方へ流れてるよ》
 「そうなのか······まぁ食いきれないほどあるし、あげてもいいか」


 俺は冒険者グループに向かって声を掛けた


 「よかったら食べるかー?」


 するとグループは迷わず向かって来た。少し年上だろうか、リーダー格の戦士が頭を下げる
 頭を下げたときにドッグタグが見える。どうやらA級の冒険者グループらしい


 「すまん、金は払うから恵んでくれ」
 「いや、気にしなくていいよ。ちょいと作りすぎて処分に困ってたから」


 俺はカバンに手を突っ込んでこっそりと異空間から丼を4つ取り出し、ご飯と肉を大盛りにして出してあげる
 ついでに飲み物も注ぎ、冒険者をもてなした


 「美味い‼ ひと仕事したあとの肉は絶品だ」
 「ああ。味付けもオレ好み。最高だ‼」
 「美味しいです。すっごく‼」
 「こんな美味しいご飯、初めてよ‼」


 べた褒めだ。ちょいと照れるぜ
 恥ずかしいので話題を変えようと、俺は冒険者たちの袋を指差して聞いてみた


 「ところでこれは······モンスターの討伐依頼か?」
 「ああ。もうすぐS級の昇格試験があるからな。トレーニングを含めた点数稼ぎと言ったところだ」
 「へぇ······昇格試験」
 「はい、S級になれば王族からの依頼や指名を受けることが出来ますので。それに報酬も破格なので装備も新調できるし将来も安泰です」
 「ま、そのぶん険しい道だけどね」


 S級······俺は確かギルドマスターの推薦だっけ。正直言ってあまり興味ないから忘れちゃった
 そこでついに気が付かれた


 「ん?······ま、まさかキミはS級⁉」
 「ほ、ホントだ⁉ 黒のドッグタグ、本物だぁ······」
 「すげぇ、しかもシングルかよ‼」
 「カッコいい······」


 やべぇ恥ずかしい。そんなに見るなよ


 「あ、あの······いろいろ話を聞かせて下さい‼」




 はは······こりゃ参ったわ




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 「いろいろ話をありがとうございました」
 「いや、俺も楽しかったよ」


 時間はだいたい午後3時。まだ明るいけどそろそろ進まなくちゃ、ということでお開きとした
 このグループは近くの村のギルドで報告するためにここで別れる。俺はこのまま進んで魔術師の町へ


 「オレたち、必ず試験に合格してあなたと肩を並べてみせます‼」
 「ああ。待ってるぜ」


 熱血なセリフを聞いてここで別れた。ふぅ疲れた
 あと数時間で日も暮れるし、少し進んで野営するか


 《思わぬ道草だったね》
 「まぁな。でも楽しかったぜ」




 俺とシロはゆっくりと歩きだした




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 「よし、今日はここで野営するか」
 《うん。お······来たね》
 「来た?」


 街道外れの池のほとり。夕方になったので野営の支度をしているとシロが何かを察知した


 《······やっと開放されたワ》
 《お疲れ様。ははは、凄い毛並みだね》


 クロの有様はヒドいものだった
 尻尾はまるで握りしめられたようにヨレヨレで、身体中の毛はボサボサになっていた。こりゃアレだ、ルーチェとティエルのケンカだわ


 シロはケラケラ笑うが、クロの反撃はかなり重い一撃だった


 《シロフィーネンス、ルーチェミーアとティルミファエルが呼んでるワヨ?》
 《え》


 笑ってたシロは硬直し、クロは尻尾をクルンと回す
 するとシロは〔セーフルーム〕へと消えていった。頑張れよ


 《ジュート、毛づくろいをお願いネ》
 「お前······容赦ないな」


 俺はクロを膝にのせ、ブラッシングをしてあげた
 それから夕食の支度をしてクロと食事
 俺はワイルドに串焼きにした魚を食べ、クロも同じ魚をあげた


 「あのさ、いろんなことがあったんだ」
 《へぇ、聞かせてちょうだいヨ》


 俺はいろんな話をする
 ハミィのことやモンスターの憩いの場、マフィのダンジョンや冒険者との出会い


 これらの思い出はかけがえのない宝物。1人の冒険者としていろんな出来事があった


 「マイトやクイナはこんな気持ちだったのか······」
 《······?》


 あの2人は、【白の大陸】にたどり着けただろうか


 「なぁクロ、俺さ······」
 《なにヨ?》


 俺はクロの背中をなでる




 「この世界に来て、ホントに良かったよ」


 

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