ホントウの勇者

さとう

ギース街道①/旅の途中・ハミィ



 気持ちのいい日差しの中、俺とシロは〔ギース街道〕を歩いていた。〔魔術師の町ブルグレート〕まであと2日という距離である


 「う~ん……たまにはこんな散歩もいいな」
 《だね。クロシェットブルムには悪いけどね》


 クロは現在ルーチェとティエルに拉致されて〔セーフルーム〕へ。俺としてはクロもいいけどシロもモフモフして気持ちいいと思うんだけどなぁ


 この〔ギース街道〕は〔美食の町イーティア〕と〔魔術師の町ブルグレート〕を繋ぐ街道で、道幅も広く両サイドは林に囲まれているが日当たりはなかなかいい
 いっつもバイクで走り抜けるからなんとも思わないけど、こういうノンビリした時間も大事……お?


 《ジュート、モンスターだよ》
 「ホントだ。なんかこういうのすっげぇ久し振り」


 林の中から現れたのは灰色のブタみたいな二足歩行のバケモノ
 手には丸太みたいな棍棒を握り、目をギラつかせて俺を睨み付けてる


 「ブモォォォッ!!」
 「おっと」


 動きは意外とすばしっこく、重そうな棍棒を枝のように振ってくる
 しかし今の俺には躱すのは造作も無い


 「さぁて、どうするか……」


 肉は分厚く意外と筋肉質だからナイフは通りにくいな……よし


 「【緑】の上級魔術・【無空真空ボイドハイロゥ】」


 ピンポイントで空気を支配、ブタの頭から顔にかけて真空を作り出す


 「……コッ、ココッ……!?」
 「悪いな」


 ブタは棍棒を取り落とし首を押さえてアワを吹く。恨みは無いけど俺を襲ったのが運の尽きだ


 「【黄】の上級魔術・【地割断層グランヴァニッシュ】」


 ブタの足下が縦に割れブタは落下。そして地面は何事も無く元に戻った


 《さすがだね。属性の扱い方を熟知してる》
 「まぁ魔術にはかなり世話になってるしな。それに魔力も消費しないし詠唱も必要ない、これも全部【銃神】のおかげだよ」


 ほんと【銃神ヴォルフガング】様々だぜ。【無】属性じゃなかったらここまで絶対に来れなかった


 「さて、行くか」
 《うん》




 俺とシロは何事も無かったかのように歩き出した




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 「よし、今日はここで野営するか」


 俺は買ってからほとんど使わなかったテントを出して組み立て、川の近くで野営をすることにした


 《魔導車は使わないのかい?》
 「たまにはいいだろ? もうこんな冒険できるかわからないしな」
 《確かに……》
 「よし、メシの準備だ」


 かまどを作って火を起こし、鍋とフライパンを出す
 鍋に野菜タップリのシチューを作り、シロのためにステーキを焼く


 「ほらシロ、特製ステーキだ」
 《特製って……フツーに焼いただけじゃないか》


 分厚いステーキを皿にのせシロに出し、俺は皿にたっぷりシチュ-を盛る


 たき火と魔導ランプの明かりが周囲を照らし、ここだけがかなり明るい


 「……ん? おいシロ、ありゃ何だ?」


 草葉の陰から小さなウサギが現れる
 体毛は灰色で大きさは約20センチ、特に特徴のないウサギだ


 《あれは〔グレーラビット〕の子供だね。どうやら匂いにつられて来たみたいだ》


 なんともまぁカワイイこと。俺がフライパンの肉の余りを見せると寄ってきた


 「ほれ、うまいぞ」
 『キュゥゥ……』


 どうやら腹が減っていたらしくもぐもぐ食べている。俺はゆっくりと背を撫でてみたが特に抵抗はなかった


 「はは、かわいいな」
 《グレーラビットは大人しいからね。ん?……そういうことか》
 「シロ?」


 シロは立ち上がると林の中へ入っていく。そしてすぐに戻ってきた


 「どうしたんだよ?」
 《いや、血のニオイがしたからね。まさかと思ったけど……やっぱりそのグレーラビットの親が死んでいたよ。ニオイからして犯人はさっきの〔グレーオーク〕で間違いないね》
 「マジかよ。じゃあ……こいつはひとりぼっちなのか」


 ウサギはお腹いっぱいになったのか俺に懐き、俺の手に身体を擦りつけてきた
 この時点で俺は決めた


 「よし、コイツを連れて行こう。どうせだしみんなに世話して貰うか」


 俺はウサギを抱き上げてなでる。するとウサギは気持ちよさそうに鳴く


 《ジュートは優しいね。全く》




 悪いな。どうにも見捨てられないや




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 〔グレーラビット〕の子供。名前は……灰色の耳だからハミィ


 俺はテントの中で一通りかわいがり、マフィに通信をして転移して送った
 すると、ハミィはみんなに気に入られ可愛がられてるそうだ。これなら淋しくないだろう


 「明日の朝、ハミィの親を埋葬してやろう。案内頼むな」
 《わかった。キミならそう言うと思ったよ》


 俺は毛布に包まりシロを抱き寄せる


 「おお、温かいな」
 《うん、よく言われる。ルーチェミーアたちによく弄られてボロボロの毛並みになることもあるけどね》




 シロのとんだ苦労話を聞きながら俺は眠りについた




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 翌朝。昨日のかまどで朝食を作る


 シロはやっぱり肉、俺はシチューの残りを完食して後片付け
 そしてすぐにハミィの親を埋葬するためにシロに案内して貰う……そして驚いた


 「……なにこれ」
 《何って、これが〔グレーラビット〕だよ》


 俺の目の前には、巨象ほどのウサギが横たわっていた
 そういえばこの大陸のモンスターってほとんどSレートなんだっけ


 それにしてもデカすぎる。姿はハミィをそのまま大きくしたようなキングサイズのウサギ。しかし殴打されたのか腹が陥没し、そこから内臓が食われた跡があった


 俺は魔術を使い地面に大穴を開けて地中深くウサギを埋葬。そして大岩を墓石に見立てそれっぽく並べ、最後に花をたくさん供えて合掌した


 「子供は……ハミィは責任持って育てるから。見守っててくれ」


 俺は立ち上がり一礼してその場を後にした




 ハミィのこと言わないと。知らないまま育てたら巨象サイズに成長するってな




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 のんびりシロと歩いていると、数組の冒険者が前を歩いていた


 組数は3組、それぞれ4人グループでどうやら方向は同じみたいだ


 「なぁ、この先なにかあるのか?」
 《えっと、そういえばマレフィキウムの作ったダンジョンが近くにあったはず》
 「うげぇ……」


 あいつのことだ。きっと性格最悪な作りに違いない


 《行ってみるかい? せっかくだし》
 「そうだな、少し寄り道するか」




 ルート変更、いざダンジョンへ




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 シロの案内、もとい冒険者に着いていくこと30分。ようやくダンジョンへ到着した


 「へぇ、けっこう賑わってるな……しかも仮設の道具屋なんかもある」


 ダンジョンの外見は朽ち果てた遺跡に見える
 周囲には冒険者が溢れ、何かの相談をしてるグループやマップを確認してるグループ、何故か泥だらけのグループなど様々だ
 仮設の道具屋は朽ちた建物を利用したもので、覗いてみると薬や〔治癒薬ポーション〕とか、食料や簡単な調理器具なんかも取り扱っていた


 俺は人目から外れ、こっそりバンドに魔力を流してマフィに通信する


 「なぁマフィ、俺がいるダンジョンって……」
 『ん? あぁそこか。そこは9885番目に作った遺跡型のダンジョンだ。難易度は10段階で7、階層は地下125階で最深部にはSレートモンスターを配置してある。宝箱総数は55で最深部には私の作った武器の〔爆裂剣ジャンゴベッド〕がある。切ると爆発する剣なんて面白いだろ? ちなみに現在の最高到達階層は104階層だ。モンスターの種類は80種、トラップは……』
 「あぁわかった!! もういいって!!」


 ほんの少しダンジョンに触れただけなのに、ここまで説明するとは……ダンジョンバカめ
 すると、入口から素っ裸の男女グループが現れる。男2、女3のグループだ


 「くっそ~っ!! 装備品だけを溶かすモンスターって何なんだよちっくしょう!!」
 「お願い、なにか着るものくださ~いっ!!」


 ありゃりゃ……男はともかく女の子は可哀想だ
 周囲の男共はニヤニヤして女の子を見てるし、他のグループの女の子はざまあ見ろと言わんばかりの表情だ。まぁ遺跡のダンジョンを巡るライバルに施しはしないだろうな


 俺はこっそり異空間から着替えを取り出し、女の子を見ないように着替えを持っていく
 男には俺が、女の子にはシロが着替えを渡した


 「あ、ありがとう。助かったぜ」
 「ありがとうワンちゃん」


 適当に買った村人Aみたいな服だがないよりマシだろう
 お礼もそこそこに俺はここから離れることにした




 さて、まだまだ寄り道しながら旅を続けますか



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