ホントウの勇者

さとう

美食の町イーティア⑩/過去の終わり・思い出を胸に



 「な、長くないって······」


 マイトは、ぼんやりと語り始めた
 まるで興味なさそうに、諦めきったような声色で


 「戦う意志がない安寧とした暮らしは、オレたちにとっては毒みたいなモンでな、神の力に肉体が少しづつ侵食される。戦うことを辞めて3年ほど······少しづつオレたちの身体は壊れてる」
 「そ、そんな······ま、魔術は?」
 「そんなの効かないよ。だから······最後に冒険者をしながら世界を回ってるの。思い出を刻みつけながら、最後を迎えられるように」


 悟りを開いたように語る2人
 なんだよこれは······死ぬだって?


 「そうだ、キミに聞きたいことがあるんだ」
 「え?」


 マイトは懐かしむような口調で言った




 「オレたちと同い年くらいの女性······名前はレンカと言うんだが知らないかい?」




 ドクン、と······心臓が、跳ねる音がした




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 「レンカはかつての仲間でね。オレたちより先に出て行ってしまったんだ。出来ることならもう一度会いたい、会って話をしたいんだ」


 マイトの言葉が俺の胸に突き刺さる


 「レンカは子供好きだったからねぇ。案外先生とかになってたりして」


 クイナの無邪気な言葉が俺の心を抉る


 「れ、レンカ······先生、は」


 声が震える。動悸が早くなる
 レンカ先生のことは、俺の中ではトラウマに近い思い出となっていた


 「······銃斗くん?」
 「あ、いや、その······」


 言わなくてはいけないのに、言葉が出て来ない
 今、俺はどんな顔をしてるのだろう
 クイナは、悲しそうに質問した




 「キミ······どうして泣いてるの?」




 もう、誤魔化せなかった




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 俺は【白の大陸】であったことを全て話した


 レンカ先生との出会い、そして王都を襲ったモンスター、子供たちを守るために力を使い切り死んだこと、そして······子供たちも死んでしまい、孤児院跡地にお墓を建てたこと


 「そう、か······はは、孤児院とはレンカらしいな」
 「うん······レンカは子供好きだったから。天職かもね」
 「は、ははは······はは」


 マイトは顔を抑えて静かに笑う
 抑えた手の間からは涙が溢れていた


 「·····マイト、レンカのこと」
 「言うな。もう叶わない思いだ」
 「······ゴメン」


 俺は黙って俯いていた
 すると突然マイトは立ち上がり、クイナに告げた


 「【白の大陸】へ······レンカに会いに行こう」
 「······うん」


 マイトとクイナは俺に向き直る


 「キミに会えてよかったよ、銃斗くん。ありがとう」
 「もう会えないけど······頑張ってね」
 「······はい。お元気で」


 この2人はきっと、レンカ先生の所を最後の場所に決めたのだろう




 部屋を出て行く2人を、俺は静かに見送った




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 ザンクとサソリは復讐を、レンカ先生は子供たちの未来を、マイトとクイナは死に場所を求めていた


 これから先、みんなの中に存在する【神】はどうなるのか
 安寧を求めれば【神】は毒となり己を蝕む
 【女神】を倒せば、マイトとクイナは助かるのだろうか


 「俺なら······」


 俺は自分の左腕を、【魂喰いの左腕ソウルイーター・アルマイト】を見つめる
 俺はコイツを武器として使っているが、本来は神の魂を完全に消滅させることが出来る兵器だ


 俺は窓を開け、人混みの中を歩いていくマイトとクイナを見つけた


 「······俺も戻ろう」




 もっと色々と話したかったな、なんて考えてしまった




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 キチベエさんたちは片付けを終えて売上の結果発表を待っていた


 「ジュート‼ 大丈夫なの⁉」
 「うん。後で話すよ」


 みんなは心配してたけど問題はない
 むしろ、心配なのは挙動不審なキチベエさんの方だろう


 「戻りました、キチベエさん」
 「お、おう兄ちゃん······知り合いとは話終わったのかい?」


 麻止がきっとそう言ったんだろうな。相変わらず手回しがいい


 「はい。それより······大丈夫ですか?」


 キチベエさんは椅子に座り貧乏ゆすりをしてる。その様子を見たオタエさんは呆れていた


 「全く、ウチのヒトったら入賞の可能性が出てきた途端にコレさ。とんだビビリでイヤになっちゃうよ」
 「ば、バカヤローっ‼ 誰がビビリだこの‼」
 「だったらドンと構えときなみっともない‼」
 「ま、まぁまぁ落ち着いて」


 すると日は完全に沈み、中央広場はライトアップされる
 ムダに光を浴びた町長が、魔導マイク片手に挨拶をした


 「これからウザってえ町長の挨拶の後に結果発表さ。内容は売上金と売上数の2つだ」
 「なるほど、何か特典でもあるんですか?」
 「いや別に。ただこの町で最も人気のあった店っつう称号だけだが十分だ」


 確かに。その称号だけで安泰だろうな
 そして、いよいよ結果発表の時が来た


 まずは売上金。第10位から順番に発表され順次店の名前が呼ばれていく。そして


 『売上金第6位‼ 1千700万4100ゴルド‼ 〔美味汁麺堂うましるめんどう〕です‼』


 第6位か。もっと上かと思ったけどこんなモンか


 「おぉぉ〜っしッッ‼ やったぞオタエ、オレの店の名前が呼ばれたぜぇッ‼」
 「店を開いて30年······こんな日が来るなんて······うううっ」


 ありゃ、めっちゃ感動してる
 でもまだ売上金······次の売上数ではもっと上だろう


 ちなみに1位は〔ドラゴンハウス〕で2位は〔ミクシムドーナツ〕だった。この辺りは去年と同じらしい


 「第6位······チッ、初日の前半が痛いわね。来年は種類を増やして······餃子だけじゃなくて炒飯やライスを付けて······」


 麻止がなんかブツブツ言ってるけど気にしない。うん
 次はいよいよ売上総数の発表だな


 今更だが各店舗の出せる商品は最大6種までと決まっている
 価格は店が自由に決めて良い。ドラゴンの目玉丸焼きみたいな高価なものは、食材のレートによって判断される
 〔グレードラゴン〕のレートはS、250万というのは妥当な値段だろう


 「第5位‼ 〔串焼きモンガ〕‼ 総数1万150皿‼」


 ちなみにどんな料理でも「皿」で数えられる。ドーナツ1個も1皿だ


 「5位で1万······これならイケるわ」


 麻止はニヤリと笑ってる。怖い怖い


 「第4位‼ 〔海の海鮮亭〕‼ 総数1万4567皿‼」 
 「第3位‼ 〔ドラゴンハウス〕‼ 総数2万5678皿‼」


 おい、一気に飛んだぞ。大丈夫か?
 麻止を見るとすっげぇハラハラしてる。大丈夫かな


 「大丈夫、大丈夫······イケるわ」
 「スゴい接戦だね~」


 麻止とは正反対に括利はのんびりしてる。やれやれ


 「第2位······」


 ここで決まる。多分〔ミクシムドーナツ〕か俺たちだな
 〔ミクシムドーナツ〕は1つ400ゴルドの食べ歩きできるドーナツだ
 安くて美味いし、大きさも食べやすいサイズ
 フルーツの果肉をふんだんに使っているので小さいながらも食べ応えがある


 さて、結果はどうなることやら






 「第2位‼ 〔ミクシムドーナツ〕‼ 総数2万6980皿‼」






 この瞬間、俺たちの勝利が決定した




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 「栄光の第1位はぁ〜ッ‼ 〔美味汁麺堂うましるめんどう〕‼ 総数2万7190皿ですッ‼」


 店の名前が呼ばれた途端オタエさんは気絶、キチベエさんは飛び上がって喜びを表し、テントのバーに頭を盛大にぶつけた
 俺たちも大喜び。女子たちは抱き合って喜びを表している


 「やった······やったぜ〜っ‼······がくっ」
 「ちょっ⁉ キチベエさん⁉」


 頭をぶつけたショックからか、キチベエさんも気絶した
 すると、町長からこんな一言が


 「それでは代表者の方、前にお越し下さい」


 おいおいどうすんだよ。2人とも気絶してるぞ


 「ジュート、よろしく」
 「えへへ······お願いね」
 「ファイト〜」
 「頑張ってね」


 女子は全員俺の敵となってしまった。冗談だろ⁉


 「代表者の方、前にどうぞ〜」


 くそ、行くしかないのかよ。全く予想してない事態だ
 仕方なく前に出て行くと、町長がインタビューしてきた


 「おめでとうございます。初優勝ですね‼」
 「は、はひ。どうも」


 ヤバい、噛んでしまった。緊張しまくりだ
 町長のインタビューに噛みまくりながら答えなんとか終わらせる


 「ありがとうございました‼ それでは皆さん、また来年お会いしましょう。さようなら〜ッ‼」


 よくわからない町長の締めでようやく終わった




 はぁ、今日はもう早く寝たいぜ





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