ホントウの勇者

さとう

美食の町イーティア⑧/商売繁盛・目玉



 「はいよ、ミソお待ちッ!!」
 「ギョーザ一丁ッ!!」


 当然ながら大戦争、これほどの戦場は初めてだ
 飲食店でバイトした経験はあるが、これほどの忙しさは初めてだ


 6000杯の余裕があるとはいえ水萌は麺打ちを続け、できあがったラーメンを俺が配り注文を取り、オタエさんは餃子を焼き続け、キチベエさんは麺を茹でスープを作り盛り付ける。そして麻止は会計処理


 この人気はもはやフィンテッド効果だけではない。このラーメンが認められてきた証拠だ


 「ミソ1、しょうゆ2入りましたーっ!!」
 「あいよッ!!」
 「お会計1900ゴルドです。ありがとうございました」
 「ギョーザ4つ上がったよ!!」


 忙しい、ああ忙しい、忙しい
 あと手が10本あれば……くそ、コレばかりはどうにもならない


 俺はハッピを腕まくりし、頭にはねじり鉢巻き。キチベエさんも同じスタイルだ
 お客の中には水萌の麺打ちを見学してる人もいる。ありゃもう完璧な職人だな


 余裕が無く他の店を見るヒマが全く無い
 辛うじて分かったのは豪快そうで厳つい傭兵のおっさんが〔グレードラゴンの目玉丸焼き〕を囓ってる所だった。なんでだよ


 「ふぅぅ……マジかよ」
 「ほら手を止めない!!」


 麻止に注意されるが仕方ない。だってあと100人以上は並んでる……ふへぇ




 俺たちは止まることなく働き続ける……これが労働か




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 「マズイわね………想定外だわ」


 時刻は夕方。さすがに完売の看板を表示して片付けと集計をしてるとき、麻止が深刻に呟いた


 「な、何だよ。不安になるだろ?」


 全員が作業の手を止めて麻止に注目


 「売り上げはラーメン6890杯、ギョーザが3560皿、合計金額660万3000ゴルドね」


 その金額にキチベエさんとオタエさんは仰天していた。そりゃそうだろ
 確かに忙しかったけど何が問題なんだ?


 「仕込みや在庫に問題無いわ。問題は……人手が足りないこと」


 ヒトデ……この世界の海にもいるのかな? ぜひ見てみたい


 「くだらないことを考えないの。真面目な問題よ」
 「でも人手なんてどうすんだよ、バイトでも雇うのか?」


 何故か俺の考えがバレたが、至極まっとうな質問をする


 「オタエさん、キチベエさん……腕は動きますか?」
 「……すまん。さすがにキツいぜ。もう一日……持たないかもしれん」
 「あたしもねぇ……あと10歳若ければ」


 この中で1番の労働をしていたのは間違いなくこの夫婦。腕はせわしなく動いていたし、朝から夕方までノンストップだった


 「魔術で回復させても、もう一日はキツいわね。せめてあと2人補助が入れば」
 「うん。最初はいいけど中盤からキツくなるからね……」


 麻止も水萌も頭を抱えてる
 正直、俺も忙しいので魔術を使ってる余裕が無い。最初からキチベエさんとオタエさんに補助を付ければ最後までやりきれるのだが


 「一応ヘルプは出したけど間に合うかしら……」
 「ヘルプ?」


 俺は麻止に聞くと、水萌が耳打ちしてくれる


 「麻止ちゃん、昨日のうちにマフィちゃんにお願いして指輪を急いで作って貰うようにお願いしたの。間に合えばあと1人はこっちに来れるって」
 「おお、マジか」


 あと1人来るだけでも状況はだいぶ変わる
 1人をキチベエさんとオタエさんの補助として付ければ作業はだいぶ楽になるはずだ


 「とにかく、片づけてゆっくり休みましょ」




 仕込みはすでに終わってるし、早く宿へ帰ろう




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 「私は麺打ちをもう少しやるね」
 「私はキチベエさんのお店へ行くわ。時間次第じゃあっちに泊まるから」


 そんなわけで1人淋しく宿へ……うう、早く寝よう。淋しいぜ


 「はぁ……疲れるとシたくなる。俺ってヤツは……」


 俺は疲れてる時ほどムラムラと湧き上がる。しかしそれをぶつける相手はいない
 風呂入って寝るか……と思って宿へ、そして部屋のドアを開けた


 「おっかえり~」
 「おかえり、お疲れさま」
 「……え?」


 そこにいたのは括利と壊子
 括利は薄手の下着みたいなキャミソールで、壊子はタンクトップとスパッツだ。どうやらこれが彼女達のパジャマみたいだった


 「麻止ちゃんからいろいろ聞いた。お店が忙しいって……明日は手伝うから」
 「あたしたちにお任せ~っ!!」


 どうやらジャンケンに勝ったのはこの2人みたいだ。氷寒・虫菜・黎明はお留守番か。次の町でたっぷり可愛がろう。うん
 それにあと1人って聞いてたから驚いた。マフィのやつやるじゃん


 「助かるよ。いやマジで……」
 「そんなに大変だったんだ。それで私たちは何をすればいい?」


 俺は2人に簡単に説明する
 2人の役目はキチベエさんたちの補助。ラーメンの茹でやスープ作りと盛り付け、餃子の焼きなどだ


 「私は料理できるけど……括利ちゃんは?」
 「………あ、あはは」


 どうやら括利はダメっぽい。まぁ餃子を焼くくらいなら出来るだろう
 それより……俺の視線は彼女達の身体へ


 「……ま、まぁそんなとこだ。うん」


 ごまかすように視線を外す。マズイ……刺激が強い


 「……ジュートくん、おっきくなってる」
 「ホントだ~」
 「あ、いや……」


 どうやら身体は正直だ。ごまかせなかった


 「その……いいか?」
 「……う、うん」
 「あたしは最初からそのつもりだったけどね~」


 2人はスルスルと脱ぎ風呂場へ




 よし、俺も真の戦場へ向かおう……ぐふふ




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 括利は相変わらず積極的、女の子達の中でも特にそうだ
 壊子はまだたどたどしい。そこがスゴくいいんだけどね


 2人と風呂場でたっぷり楽しんでベッドでも楽しむ
 あんまりヤリすぎると当日に響くので、名残惜しかったが日付を越えたあたりでやめた




 心地よい柔らかさに包まれながら眠りにつけた




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 朝起きると、俺は括利の胸に包まれていた


 柔らかくハリがあり、不思議といい香りがする
 俺は手を伸ばしてその柔らかさを堪能する


 「……ん、んん」


 甘い声が聞こえる……目覚めにはいいBGMだ


 「2人とも、朝だよ」
 「……ふぁ~い」
 「お~う」


 すでに着替えた壊子が俺たちを起こし、俺たちは寝ぼけたまま着替える
 そして水萌を起こして朝食を食べ、4人で会場へ。どうやら麻止は直接向かったようだ


 会場は相変わらず人が多い。しかも俺たちの店の前にはやっぱり100人以上並んでる
 すると、店の会計場でお金の準備をしてる麻止がいた


 「あらおはよう……なるほど。さすがマフィね」


 麻止は括利と壊子を見てすぐに納得した様子だった
 俺は昨日の説明をして2人に仕事を割り振り、キチベエさんたちにいろいろ手順を教えて貰った


 「じゃあ嬢ちゃんは麺をたのむ。オレはスープに専念するからよ」
 「わかりました。任せて下さい」


 「いい? 焼きすぎないで中にはキチンと火を通して……このくらいね」
 「おぉ~おいしそ~!!」


 うーん、少し括利が心配だな


 「大丈夫、あのコはちゃんと出来るコよ」
 「お、おう……って、お母さんかよ」




 〔イーティア・グルメフェスタ〕の最終日……頑張るか!!




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 よく考えたら……キチベエさんとオタエさんは楽になったけど、俺と麻止は変わらない忙しさだ


 「塩2、ミソ1出来ましたっ!!」
 「ギョーザ2あがり~っ」
 「あいよっ!!」


 今度は俺が忙しい……4人の調理人から容赦なく料理が出されてく
 麻止は会計に付きっきりだし。忙しいよぉ


 「ジュート、平気?」
 「おうっ!!」


 当然ながら泣き言は言わない。最終日だし根性見せるぜ!!


 最終日なので人も多い
 他の店を見るコトが全く出来ない。売り上げはかなりのもんだけど


 「……あ」


 ふと顔をあげると、気味の悪い目玉……〔グレードラゴンの目玉丸焼き〕と目が合った
 買ったのは冒険者だろうか、いい装備を付けてるのでレートの高いモンスターでも倒したのだろう
 仲間とかわりばんこで目玉を囓る姿は余りにも気持ち悪かった


 「ジュート、よそ見しない!!」
 「は、はい。すみませんっ!!」




 くそ、結局最後まであの気味悪い目玉しか見れなかった





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