ホントウの勇者

さとう

美食の町イーティア⑥/開幕・再会の助け



 アウトブラッキーのベッドの上で俺は目を覚まし、窓の外を見た


 「う〜ん······絶好の天気だな」


 グルメフェスタ当日。麻止の仕切りのおかげで前日には全ての準備が終わり、焦ることなく当日を迎えられた


 「おい起きろ、着替えて行くぞ」


 俺は両隣で眠る裸の美少女たちに声をかける
 グルメフェスタ前日なので回数は控えめに、それでもだいぶハッスルしてしまいましたけどね


 「······んぅ」
 「ん······おはよう」


 水萌は眠そうに、麻止はメガネをかけて起き上がる
 もしかして水萌は朝に弱いのかな?


 寝ぼけ眼の水萌を起こして着替え、この日は麻止が簡単な朝食を作り急いで食べ、すでに活気のある町を歩いてキチベエさんのお店へ向かう


 「おはようございまーす」
 「おう兄ちゃん、嬢ちゃんたちもおはよう」
 「おはよう。今日は宜しくね」


 キチベエさんとオタエさんも朝食は済ませたのか、色々と荷物を抱えて外へ出る準備をしてる


 ちなみに仕込んだ材料などは昨日のうちに会場の専用魔導冷蔵庫へしまってある
 会場の警備は、この町のS級傭兵団が交代で行っているので問題はない。念のためシロが俺たちのテントの前で寝ずの番をしてくれたが、特に問題はなかった


 「改めて······今日はよろしくたのむ」
 「こちらこそよろしくお願いします」


 今更だが、こんなことになるとは
 俺としてはこの世界でラーメンが出来れば、いずれ全ての大陸で美味いラーメンが食べれるかも······くらいの考えだったのだか、まさか俺がグルメフェスタの手伝いをすることになるとは思わなかった




 まぁこれもいい経験だ。楽しませてもらおう




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 準備段階なのに、会場は文字通り熱気に包まれていた


 豪快にステーキを焼く店、オーブンを持ち込んでふっくらパンを焼く店、よくわからないゲテモノを干してある店、各大陸の食材を並べる店……すごい


 所々でいい香りが立ち上り、朝食を食べたのに胃が叫びを上げる


 「ジュート、手伝って」
 「あ、悪い」


 麻止に呼ばれて会計へ向かう。よく見ると冒険者もすでに店を回っていた
 更によく見ると、冒険者たちはパンフレットみたいなのを手に持っている


 「ほら、ここにもあるわよ」
 「お、さんきゅ」


 どうやら各テントに何部か置いてあるみたいだ


 「え~っと……へぇ、注目は〔ドラゴンハウス〕の〔グレードラゴンのステーキ〕と、〔グレードラゴンの目玉丸焼き〕か。ステーキは3万ゴルド、目玉は……250万ゴルド!?」
 「まぁ……目玉は2つしかないし、早い者勝ちね」


 おいおい、それだけで500万の売り上げ……ウチの目標の3分の1だぞ


 「くっそ、なら俺がSSダブルレートのモンスターを狩ってきて、明日はそいつの丸焼きで……」
 「やめなさい。私たちはラーメンと餃子で勝負するのよ」


 半分は冗談、半分は本気でした。すみません


 「そろそろ町長の挨拶が始まるぜ」


 キチベエさんがスープの味見をしながら言う
 会場はすでに人で溢れ、ウキウキした気持ちが俺たちにも伝わってきた


 町長の挨拶が終わると同時に始まりの狼煙が上がる。それからスタートだ
 キチベエさんがスープは煮え、オタエさんの餃子も焼き上がる


 「さぁ、景気づけに味見しとくれ。これから戦争だよ!!」


 きっと今日は昼飯も食えないだろうな。俺たちは遠慮なく食べる
 もぐもぐと食べながら最終確認


 「器とハシよし、麺よし、餃子よし、スープよし!!」


 器は麻止の魔術で作った。まるで発泡スチロールのような材質
 俺は金属ぐらいしか精製できないが、麻止はこういうのも自在に作れる


 誰も町長の挨拶など聞いていない中、狼煙があがる




 〔イーティア・グルメフェスタ〕が始まった




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 活気、熱気、なぜか闘気


 会場は大盛り上がりを見せ、道行く人はみな何かしら手に持っている
 それは肉だったり野菜だったりパンだったり、どれも見事に調理されていい香り


 「お、見ろよ麻止。あの人が〔グレードラゴンの目玉丸焼き〕を食べてる」
 「あらホント……ちょっと、いえ…かなり気持ち悪いわね」
 「同感だ。ありゃ美味いのか?」


 貴族だろうか、身なりと恰幅のいいおじさんが串に刺さった目玉を囓ってる
 しかし、目玉の大きさはソフトボール、いやハンドボールほどあり表面に焼き色が付いている。さらに瞳の部分がキレイで濃い灰色なのでまんま目玉を囓ってる
 おじさんはなんとも言えない表情。どうやら見栄で買ったのは間違いない


 おじさんに同情はしたが、開始から20分……売り上げはゼロ
 周りを見渡す余裕があるくらいヒマな状況だ


 ちなみに俺たちのテントには麻止の作った旗が立てられている
 店の名前もキチベエさんが改名し、「ら~めん吉兵衛きちべえ」として生まれ変わった


 「うーん、やっぱ知名度かなぁ……」
 「でしょうね。〔ドラゴンハウス〕や〔ミクシムドーナツ〕みたいな有名店は長蛇の列よ」
 「おお……見た感じ100人は並んでるぞ」


 〔ドラゴンハウス〕は〔グレードラゴンのステーキ〕
 〔ミクシムドーナツ〕は一般的なフルーツや、危険地帯に生えるレートの高いフルーツをふんだんに使ったドーナツで、女性に人気のスイーツだ


 「なんか美味そうだな……ドーナツ」
 「うう……同意するわ」


 麻止も女の子。甘い物は嫌いなはずがない
 俺は水萌をちらりと見るが、麺打ちに没頭して見てすらいなかった


 「参ったな。こりゃピンチじゃね?」
 「うーん……声出ししても効果は薄いし、困ったわね」


 ちなみに隣はパン屋と酒屋。焼きたてのオリジナルパンと、仕込んだばかりのブレンド酒を提供してる
 挨拶がてらパンと酒を貰ったがスゴく美味かった。ちなみにこちらは餃子をプレゼントした




 しかし、ここで意外な助けが入る事になる




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 周りに負けじと声を出すがお客は振り向かない
 お昼時でハラも減ってきたし、集中力も切れてきた


 「はぁ………ん? んん?」


 ふと視線を前に移すと、意外な集団を見つけてしまった


 「さて、何を食べようか?」
 「オレは肉がいい。がっつりとした肉がな」
 「あたしは〔ミクシムドーナツ〕が食べたい!!」
 「ちょっとミュラ、あの列に加わる気かしら?」
 「で、でも加わる価値はありますよ!!」


 その集団は、通りゆく人達から一目置かれていた
 俺は叫ぶように声を掛ける


 「おいフィンテッド!! フィンテッドだろ!?」
 「え?……あれ、ジュートじゃないか!! 久し振り!!」


 S級冒険者グループ・〔灰塵の翼アッシュダスト・ウィングス〕のリーダー、魔剣士フィンテッド、大剣士グルガン、弓士ミュラ、魔術師セレシュ、同じく魔術師ユズモモ


 フィンテッドは迷わず俺の元へ、他のメンツも着いてくる


 「一体ここで何を……えっと、店を始めたのかい?」
 「まぁ当然の疑問だよな。実は………」




 俺は麻止と水萌を紹介し、キチベエさんの事情を説明した




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 「ボクたちは仕事の帰り。まぁユズモモが行きたいって言い出したんだけどね」
 「うぅ~。フィンテッドさん言わないで下さいよぉ~」


 店の前で会話する。まぁ客もいないし別にいいだろ。良くないけど


 「報酬金を武器につぎ込むアナタ達よりマシでしょ? それにアタシも興味あったしね」
 「まぁそうね。一年に一度のお祭り……ちょうど近い場所だったしね」
 「………チッ」


 ミュラとセレシュは嬉しそうだがグルガンは少し不機嫌そうだ


 「なぁグルガン、なんかあったのか?」
 「ああ有ったさ、ちくしょう!!」


 何故か悔しがるグルガンをフィンテッドが宥め、ユズモモが事情を説明する


 「実は……わたしたちの依頼はSSダブルレートの討伐だったんですけど、実際に赴いたらすでに討伐された後がありまして」
 「あらら、そりゃ残念だったな」
 「まぁ楽できたからボクは良かったんだけど……グルガンがね」


 まぁ戦闘狂のグルガンにとっては空振りはイヤなんだろうな


 「チッ、おいジュート。この店の料理を全種持って来い!! こうなったら食いまくってやる!!」
 「お、おい……」
 「はい、ではラーメン3種と餃子ですね……2600ゴルドになります」
 「ちょ、麻止!?」


 グルガンはゴツいサイフからカードを取り出すと魔道具にスキャンさせる
 麻止はにっこりと会計を済ませ、キチベエさんたちに指示をする


 それから約2分……ラーメンができあがりグルガンの前に出された


 「………どうやって食うんだ?」
 「ハシを持って、麺を掴んで、ああチャーシューや野菜も一緒に食べると美味いぞ」
 「おう」


 グルガンは豪快に麺を啜る……すると、カッと目を見開く


 「ほぉぉ……こりゃ美味い。どれ、コイツは……熱ッ!? 肉汁が零れてきやがった、はははっ美味いぜ!!」


 グルガンの食いっぷりに他の4人がゴクリと喉を鳴らす


 「ジュート、ボクも注文を……この茶色いので」
 「アタシはこの白いので……」
 「じゃあ私はこの黒いので」
 「わ、わたしも全部くださーいっ!!」


 フィンテッドは味噌、ミュラは塩
 セレシュはしょうゆ、ユズモモは全部。全部!?
 麻止はオーダーを取りキチベエさんに通達、あっという間にラーメンが完成する


 「おぉ、確かにコレは美味い」
 「う~ん、絶品!! こんなの初めてよ」
 「ええ、いろいろな料理を食べてきたけど……いいわね」
 「おかわりッ!!」
 「ユズモモてめェッ!! オレもおかわりだッ!!」


 フィンテッドたちは美味そうにラーメンを啜り、何故かグルガンはユズモモに張り合っていた
 そこで俺は気が付いた


 「………なぁ麻止、なんか注目されてね?」
 「確かに……」


 道行く人が足を止めてフィンテッドたちを……この店を見ていた


 「ふぅ~……ごちそうさまジュート。美味しかったよ」
 「おそまつさま、また来いよ」
 「ああ。じゃあボクたちは報告があるから失礼するよ。これから王都へ戻るんだ」
 「王都か……けっこう遠いな」
 「まぁね。でも〔灰泥湖はいでいこ〕での仕事はなくなったし、こうして寄り道出来たからね」
 「………そ、そうか」
 「じゃあジュート、また会おう」


 フィンテッドたちは手を振って去って行った


 「なかなか面白い人達ね……って、どうしたの?」
 「いや……まぁいいか。こうして会えたしな」
 「?」




 〔灰泥湖はいでいこ〕のSSダブルレート……めっちゃ心当たりがあります。犯人は俺でした







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