ホントウの勇者

さとう

美食の町イーティア①/食べ歩き・不穏



 「う〜ん······いい匂い」
 《確かに。ボクもこの町は初めてだなぁ》
 《クンクン······お魚もあるワネ》


 〔美食の町イーティア〕に着いた俺たちは、町中から香る料理の匂いの歓迎を受けていた


 町はお祭りでもやってんのか? くらい出店が溢れてる
 広い横幅の街道には数え切れないほどの屋台が並び、座って食べるための専用スペースがいくつも設けられている
 人種は様々で、人間や獣人だけではなく吸血鬼・翼人なんかもいた。どうやらみんな傭兵や冒険者みたいだな


 「さて、何か食べるか」


 当然の選択だろう
 時間もちょうどお昼時だし、だいぶお腹も空いている


 メインストリートはかなりの匂いがする
 肉と野菜を炒め、それを丼に乗せてタレをかけた肉丼
 色鮮やかな果物を切り分けて串に刺し、水飴をたっぷりとかけて食べる甘い串飴
 牛だろうか。モンスターを丸ごと串に挿して焼き、客の目の前で食べごろに捌き提供するステーキ
 魚を豪快にぶつ切りし、そのまま野菜と一緒に煮込んだ汁


 どれもこれも美味そうだ。こりゃ迷うな


 「クロ、シロ、何がいい?」
 《ワタシはお魚がいいワネ》
 《ボクはお肉がいいなぁ》


 2匹の注文を聞きながらそのお店へ向かう
 最初に向かったのは、大きな網の上でたくさんの魚を売っているお店
 しかも炭火だろうか、匂いも香ばしくとても美味そうだ


 「いらっしゃい。おや、かわいいワンちゃんとネコちゃんだね」
 「ええ、コイツが欲しがりまして。えっと······3匹ください」
 「はいよ。熱いから気をつけてね」
 「いただきまーす」


 薄い笹の上に置かれた焼き魚に、木を削って作った箸が一本と、そのままの状態で2匹の魚が渡される


 「ほら、ヤケドするなよ」
 《しないワヨ。ワタシは猫じゃないノヨ?》
 《ボクも犬じゃないけどね》


 いや、まぁその······うん。どう見ても犬猫にしか見えません
 食べ方もまんま犬猫だし。ツッコむの面倒だしまぁいいや


 「そんじゃまぁいただきまーす」


 焼き立ての香ばしい焼き魚を箸でほぐし、まずは一口


 「······ウマい‼」


 食感や味はアユに似てるが味が濃い
 しかし、ハラハラとほぐれ口の中でとろけるような味わい


 「う〜ん醤油がほしい。それかレモン汁」
 《なにそれ?》
 「この焼き魚にかけるタレみたいなモンかな」
 「ほほう。面白そうだね」


 何故か店のおばちゃんも混ざり、焼き魚トークをしてしまった


 「じゃ次行くか。おばちゃん、ごちそうさまでした」
 「はいよ。また来てね」


 笑顔のおばちゃんと別れて次の店へ


 「次は肉だな」
 《うん。よろしくね》


 町の中心部にある大きな露店があり、どうやらそこが1番行列が出来ていた


 「え〜っと······〔グレードラゴン〕のステーキ、一皿9800ゴルド······高いな」
 《ねぇジュート、食べようよ。いいでしょクロシェットブルム》
 《ワタシはイイわよ。多分30分くらい並びそうだけどネ》


 こうまで言われて並ばないワケにはいかない。最後尾へ移動しよう


 《う〜ん。いい匂い》
 「シロは肉が好きなのか?」
 《もちろん。昔、ヴォルフガングがよく焼いてくれたのを食べていたからね》
 「へぇ。じゃあ俺もこれからたくさん作るからな」
 《あはは。ありがとう、ジュート》


 シロは尻尾をフリフリしながら嬉しそうに待っている
 すると、俺の後ろの家族連れの小さな男の子がシロをじっと見ていた


 「······触ってみるか?」
 「え、いいの⁉」


 待っていましたとばかりに反応した
 俺は子供の両親を見ると、小さくお辞儀した


 「ほら、大人しいから平気だぞ」
 「う、うん······」
 《やれやれ、少しサービスしてあげる》


 おっかなびっくりと手を差し出す子供に向かって歩きだし、シロは体を擦り付けるように甘える


 「わ、あはは。すっごくふわふわだぁ」
 「はは。シロも気持ちいいってさ」


 男の子もシロを気に入ったのか、ウリウリと顔を擦り付ける
 シロも負けじと擦り付け、いつの間にか俺の順番が来ていた


 「お、悪いな。そろそろ俺の番だ」
 「う〜ん。残念······ありがとう、お兄さん、シロ‼」
 「ああ。また機会があったらな」


 男の子は満足したのかシロから離れ、俺とシロにお礼を言った
 俺は出店に向き直り、厚切りのステーキを3枚買って列から外れた


 「さーて食べるか。それにしてもシロ、お前って子供好きだったのか?」
 《まぁね。子供はキライじゃないよ》


 子供に手を振って別れ、近くに設営されている二人掛けテーブルに腰を下ろし早速食べる


 「う〜んコイツも美味い。肉は柔らかくてジューシーだし、噛むと肉汁がブワッと広がる」
 《あぁ、やっぱり焼肉は美味いなぁ》


 シロは俺の足元でガツガツ食べているが、クロはもそもそ食べていた


 「あれ? クロって肉は苦手だったっけ?」
 《ちょっとネ。お腹に溜まるのヨ》
 《何を言ってるんだ。それがいいんじゃないか》


 クロは前足で余った肉をシロに寄せると、シロはガツガツと残りを食べた


 「ふう。さーて次は······甘いデザートでも食べに行くか」
 《いいワネ、そうしまショ》
 《お、あそこにフルーツパイが売ってるよ。行こう》




 こうして、俺たちは心ゆくまで食べ歩きをした




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 「うっぷ······食いすぎた」
 《······ワタシも》
 《ボクは余裕だけどね》


 出店を堪能して宿を目指す
 この町は観光客や冒険者が多いので宿の数もかなりの数だ


 「さーて······よし、あそこにしよう」


 俺が向かったのは町の中心部にある大きな宿
 外見はビジネスホテルみたいだが、入り口の看板に「ペット・契約獣も一緒に泊まれます」と書いてあったのが大きい


 「ん? あれは······」


 宿の入り口に大きなポスターが展示してある
 そこに書かれてたのは、中々面白そうな内容だった


 「〔イーティア・グルメフェスタ〕開催。美食の町の腕利き料理人たちよ、町一番の料理人を決めるときが来た‼······へぇ」


 つまり、町一番の料理人を決めるイベントが行われる


 「開催は······7日後か。う〜ん、どうしよう」


 7日。1週間後······こんなにのんびりしていいだろうか
 シェラも待ってるし、【時の大陸】へ向かわなくちゃいけない。それにみんなの封印も解けてないし、【魔神軍】がどんな動きをするかも気になる
 クラスのみんながまた来ないとも限らないし、〔王都パープルテッラ〕の時みたいに町が襲われないとも限らない


 《大丈夫だと思うよ》


 迷いを断ち切るかのようにシロが言う


 《〔神の器〕もバカじゃない。10人がかりでキミを倒すことが出来なかったのに、すぐに来るとは思えない。それに【女神】の復活にはまだ時間がかかるハズだよ》
 「何でわかるんだ?」
 《【女神】が復活するとなると、この〔8大陸〕にも影響が出るハズ。例えば地震とか······しかし、地震はおろか魔力の兆候すら感じられない。向こうも準備が出来ていないんだよ》


 地震って······マジかよ、ヤベーじゃん


 《ジュート、こうして旅をするのもあと僅か。ボクたちの封印も大事だけど、キミが楽しい思い出をボクたちと作るのも同じくらい大事だとボクは思うよ》
 「シロ······」
 《ヴォルフガングの封印のカギはキミ自身。焦ることはない、ゆっくり行こう》


 俺はシロの頭をなで、ついでにクロの頭もなでた


 「ありがとな」




 俺は受付を済ませ、部屋に入った




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 「さーて、明日もいろいろ食べるぞ」


 せっかくなので町を堪能してやる
 食べる場所や珍しい食べ物はいくらでもある。それこそ1日では回りきれないくらい


 《······》
 「なぁ、さっきから黙ってどうしたんだよ、クロ」


 俺とシロは町の料理を堪能していたが、途中からクロは黙っていた


 《······シロフィーネンス、感じない?》
 《······なるほど、ボクとしたことが》


 クロとシロは向かい合い何かを探っている


 「な、なぁ······イヤ〜な予感がするんだけど」


 こういうシリアスな空気のとき、ろくなことがなかった






 《······この町に、〔神の器〕がいるワネ》







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