ホントウの勇者

さとう

閑話 喚時世秘・【召神サモンスーン】



 喚時しょうじ世秘よびは、剣吾の背中に抱きついていた


 「おい、大丈夫か?」
 「はい、大丈夫です」


 現在。剣吾たち5人は上空を飛行中
 喚時が呼び出した【神獣】に乗って、快適な空の旅をエンジョイしてる


 「ちょっとヨビ!! くっつきすぎだっての!!」
 「仕方ないです。くっつかないと落ちてしまいます。すりすり」
 「な!? なに顔を埋めてんのよ!!」
 「お、おい喚時、あんまりくっつくと、その……」


 剣吾は言いにくそうにしているが咎めない。なぜなら喚時は身体を、主に胸を剣吾の背中に密着させているからだ


 「ちょっと、剣吾くんが嫌がってる!! 離れなさいってのっ!!」
 「ちょ、危ないよ三重みえ!? 暴れないでよッ!!」
 「……ああ、落ちたら死ぬわこりゃ」
 「薬実やくみもヘンなこと言わないでよ~っ!!」


 喚時がヨビ出した【神獣】は2体。1体はまるで大鷲のような2人乗りの鳥、もう一体はブタに翼が生えたような、狭い3人乗りのブタ


 「くっそヨビのヤツ~ッ!! 覚えてろッ!!」
 「だから暴れないでってばぁッ!!」
 「……あはは。揺れてる揺れてる」


 大鷲は翼を広げて雄大な姿を見せつけるが、もう一方のブタは今にも落ちそうなくらいふらついていた
 喚時はチラリと振り返り、ニヤリと笑う




 完璧完全な、タチの悪い嫌がらせは大成功だった




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 剣吾たちは取りあえず近場の町を目指し飛ぶ


 「ここからだと……〔武技の町ガイラン〕が近いですね」
 「よし、そこへ行こう。進路を頼めるか?」
 「はい、お任せ下さい。んふふ」
 「ちょ、あの、あんまくっつくなって」


 喚時は剣吾の背中に胸を押しつけながら進路を指図し、時折後ろのブタに気を配りながらゆっくりと空の旅を楽しんでいた
 たまに聞こえてくる怨嗟の言葉を無視すること2時間。ようやく町が見えてきた


 「よし、ここからは歩いて行こうぜ。着陸だ」
 「了解です」


 町の近くの林に着陸し、最後に精一杯抱きついて離れる
 すると、ブタから降りた3人の咎めるような視線が殺到した


 「ヨビぃ~……」
 「なんでしょう?」
 「もう、三重、ケンカは後にして」
 「……剣吾さん、これからどうします?」


 剣吾は少し考え、これからの行動をおさらいする


 「俺たちの、いや俺の目的はジュートだ。町で情報を集めつつ進んでいこう」
 「そうだね。でも見つかるかな?」
 「安心しろよ煌干きららぼし、ジュートは冒険者だし、ギルドで情報が集められるハズだ」
 「なるほどね、じゃあ行こ」


 すると、剣吾たちが乗っていた大鷲は煙のように消えたが、ブタは消えずに手乗りサイズまで小さくなる
 そして喚時の掌の上まで飛んで行くと、そのまま掌で転がり出した


 「ちょ、ヨビ、そいつなに?」
 「この子は私が一番最初に産みだした【神獣・ぶーちゃん】です。乗り物にもなるし、普段はこうしてペットになります。かわいいでしょ?」


 ブタの頭をうりうりとなで回すと、ブタは気持ちよさそうにブゥと鳴いた
 剣吾たちはなんとも言えない表情になるが、気を取り直して言う


 「と、とにかく行こうぜ。それと……」


 剣吾は振り返り、全員の服装をチェックする
 全員が白を貴重とした騎士服で、町中では目立つことに気が付いた




 「まずは、服を買って着替えようぜ」




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 町に入り、一行は服屋へ


 「ま、こんなもんか」


 剣吾はオーソドックスな冒険者スタイル、煌干は動きやすい魔術師スタイル、喚時も同じ魔術師スタイルで、三重は格闘家のような少し露出が多い服、薬実は普通のシャツにスカートの平凡スタイルで決めた


 「薬実、ホントにそれでいいの?」
 「……ええ、どうせアタシは似合わない。フツーでいいのフツーで」
 「あんたね、その後ろ向きな発言やめなさいよ」
 「同感です」


 女子は楽しそうに服を選ぶ中、剣吾の視線は武器防具屋へ


 「お前らさ、武器はいるか? 俺は買うけどよ」
 「はいはい、あたしはグラブとレガースが欲しいッ!!」
 「私はいいかな、魔術があるし、いざとなったら神器を使うから」
 「……アタシもいーです。逃げるから」
 「私もいいです。ぶーちゃんがいるので」


 若干2名、おかしい気がしたが置いておき、剣吾は武器屋で装備を購入した
 資金は【英雄十三傑ヴァリアントサーティ】が各大陸を回るときに渡されたゴルドカードがあるので問題ない
 剣吾は一般的な剣と皮鎧を購入し、ベルトに剣をぶら下げ、三重は望み通りグラブとレガースを購入した


 「ねぇケンゴ、格闘家っぽく見えるかな?」
 「ああ、すっげぇ似合ってる。カッコいいぜ」
 「あ、ありがと」


 三重はポーズを取りつつ赤面する


 「さ、行きましょう。情報を集めないと」
 「っと、おいおい引っ張るなよ」
 「あ、ヨビ、このっ!!」
 「あ、待ってよ」
 「……いいね。冒険者っぽくて」




 剣吾たちは、ようやく町を歩き始めた




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 冒険者ギルドで銃斗の情報を探したが、どうやらこの町では依頼を受けていないようだった


 「さて、振り出しか……」
 「ったく、無月はなにやってんだか」
 「ねぇ、あそこの建物ってなんだろ?」


 煌干が指さしたのはコロシアム。どうやら気になっていたらしい


 「コロシアム。どうやら町では毎週、大会が行われてるようです」
 「……へぇ、血なまぐさい戦いね」
 「せっかくだし行くか」


 たいした情報はなさそうだが、行ってみることにした
 そして歩くこと10分、コロシアムに到着した


 「へぇ、デッカいな。ここで大会を開いてるのか」
 「スゴいな、あちこちに強そうな連中がいるよ」
 「確かに。あれ、あそこでパンフ配ってるよ」


 煌干はパンフ売りのおじさんの元へ行き、自然と全員が着いて行く


 「いらっしゃい。一枚150ゴルドだよ」
 「はい、下さいな」


 小銭を払い、パンフを眺める。するとおじさんが言う


 「もしかして、他の大陸から来たのかい?」
 「えっと、そうです」
 「ははは、若いのに大したモンだ。最近も黒い服を着た双剣士・・・・・・・・・の兄ちゃん・・・・・を案内したばかりさ」




 その言葉を、5人は聞き逃さなかった




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 「あ、あの。その人って……」
 「ん? ああ、どうやら冒険者みたいでねぇ、試合を観戦したら行っちまったよ」
 「ど、どこに行ったの!?」
 「さぁねぇ、一般的なルートだと、〔灰の渓谷〕を抜けて〔魔物使いの町テイマード〕だけど」
 「ほぅ、魔物使いの町ですか。興味があります」
 「……どうする? 剣吾」


 剣吾は少女達を見回して言う


 「手がかりもないしな。行くしかねーだろ」


 おじさんにお礼を言って歩き出す。目指すは〔魔物使いの町テイマード〕




 剣吾たちは、銃斗に向かってひたすら進む





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