ホントウの勇者

さとう

灰泥湖/カラクリ・機械神化



 「なーんだこりゃ······」


 俺とクロがやって来たのは湖
 しかし、あまりにも想像からかけ離れていた


 その名の通り、灰色の湖
 周囲の草木は枯れ果て、淀んだ灰色の水が溜まった池がいくつも集まって大きな湖になっている
 エサとなる生き物や果実がないためにモンスターは居らず、あまりにも寂しい光景だった


 「何でこんな······しかも臭いしよ」
 《ココは【腐神ティルミクローテ】が荒らした場所。大地は腐り、湖は汚物が溜まり、草木は死に絶えた哀れな湖ネ》
 「ひっでぇ······」


 とは言え、俺にできることはない
 さっさと抜けて〔美食の町〕とやらへ向かおう


 《······妙な気配がするワ。気をつけてネ》
 「おいおい、そりゃヤバいの確定だろ」


 クロの予感は外れたことがない······ハァ。気を引き締めないとな




 地形が悪いので、歩いて進むことにした




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 「······最悪だ」


 俺の気分は最悪だった
 地面はぬかるみ、臭い泥がブーツやズボンを汚し、池から漂う臭気が気分を不快にさせる


 「シェラも、ここを通ったのかな?」
 《······彼女は別のルートを通ったみたいネ》
 「え、わかるのか?」
 《エエ。ワタシたち以外の足跡がナイものネ》


 確かに。足跡どころか人が通った形跡すらない


 「······ん? おいクロ。何でこの道を選んだ?」
 《人もいないし、モンスターもいないからネ。チョットだけ遠回りだけどイイでしょ?》
 「えー······普通の道が良かった」
 《う、うるさいワネ。だからワタシも出てきてるでショ‼》


 だからって何だよ。まったく
 まぁいまさら言っても仕方ない。こんな臭い場所はさっさと抜けよう




 足が汚れるのを嫌がるクロを方に乗せ、俺は歩き続ける




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 「·········」
 《······ジュート》
 「わかってる。下がってろ、クロ」


 〔灰泥湖〕の中央、無数の水溜りがある広場で、俺とクロは周囲を警戒する


 「ふん、出てこいよ。俺が怖いのか?」


 殺気を撒き散らしながら威嚇する
 すると、水溜りの1つが不自然に盛り上がった


 「何だコイツ······キモいな」


 それは灰色の水の球体で、大きさは3メートルくらい。球体には赤く光る目みたいなのが光ってる


 「ま、俺の前に出て来たのが運の尽きだ」


 俺は右手をかざして魔力を込めた一撃をお見舞いする


 「【赤】の上級魔術・【連鎖炎蛇チェーン・サラマンドラ】‼」


 放ったのは赤い炎の蛇
 水球に巻き付いてそのまま大爆発······水球は蒸発して消え去った


 「ふふん。楽勝だぜ」


 俺は一歩も動くことなく勝利······したかに見えた


 「······へ?」 


 周囲の水溜りから水が集まっていく


 「ま、まさか······⁉」


 水は水球へ。大きさは約3メートル
 赤い眼光が2つ輝き、何事もなかったかのように俺を見据える


 「復活、じゃない。まさか······この周囲の水溜りが、コイツの一部なのか⁉」


 水溜りが間欠泉のように吹き上がり、まるでムチのようにしなりながら俺を襲う


 「クソッ‼」


 俺は水のムチを避ける。しかし、水溜りは見えるだけでも100以上はある。その全てから水柱が上がり俺を包囲した


 「コイツ、モンスターじゃない······まさか【神獣】か⁉」


 8匹の中でも1番博識なティエルが、頭の中で答えてくれた


 《ジュート、こいつは【腐神ティルミクローテ】が作り出した神獣、〔パールグレイ・マナージュ〕よ。物理攻撃はほぼ無効化されるわ‼》


 やっぱそうか。このレベルだと恐らくSSダブルレートだな
 物理が効かないなら、炎で燃やし尽くす


 俺は神器を発動させ、アグニを呼ぶ


 「行くぞアグニ‼」
 《オウ‼》


 『焔炎放射機インフェルノ・スロアー』を構え、円を描くように炎を撒き散らす


 「焼き尽くせぇぇぇッ‼」


 水柱は一瞬で蒸発し、水球も消え去った


 「ハァ、ハァ······ふぅぅ。これだけ燃やせば、って······」


 水柱は蒸発、水球も蒸発した
 しかし、水溜りは健在。そこから同じ水球がまた現れる


 「こ、コイツ······不死身かよ」


 さすがの俺も驚愕し、コイツを無視して逃げる参段をつける
 しかも今度は水柱だけではなく、ポコポコとボールこような水玉まで現れる


 「まさか······やっ、べぇぇッ⁉」


 敵の攻撃は、ムチとボーリング玉のような砲弾
 『焔炎放射機インフェルノ・スロアー』を構えるが間に合わない


 「ぐっ、うぅっ⁉」


 水玉を何発か喰らってしまう
 怪我はないが身体の芯に響く。ホントにボーリング玉みたいな水玉だ


 「······ヤロウ」


 怒りのボルテージが上がり、濡羽色のマガジンに手が伸びる
 しかし、ここで俺の耳にヒントが送られた


 《落ち着いて。池を調べるんだ》


 ······池?
 池って、コイツが出て来た池だよな


 俺はボーリング水玉とムチを躱しながら、無意識に魔術を発動させる


 「【黄】の上級魔術・【土壌探査グランサーチ・ソナー】‼」


 紋章が広がり、100以上ある池をすっぽりと覆う
 そして、気がついた


 《わかっただろ? あとはインヘニュールの力を使って終わらせるんだ》
 「おう。任せとけ‼」




 へっ、タネが分かればこっちのもんだ




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 俺は紫のマガジンを取り出し、『錬鉄の神銃アイゼン・ブラスター』へセット
 スライドを引いて引金を引く


 「【九創世獣ナインスビスト魂融ソウルエンゲージ】‼」


 俺の姿は、濡羽色を基調とした紫色へ変わる
 右目も紫へ変わり、変身完了


 「【機械神化ソウルオブインヘニュール】‼」


 俺の身体からバチバチと紫電が瞬く
 さぁて、これまでの借りを返して終わらせてやる


 「『紫電雷震砲トルトニス・レール・バスター』‼」


 現れたのは巨大な砲身
 背中にはバックパックが装備され、そこから何本ものコードが伸びて砲身に接続されている
 『錬鉄の神銃アイゼン・ブラスター』をセットすると、砲身がバクンと割れた


 「電磁砲レールガンか······かっけぇ」


 そう。コイツは電磁砲
 『錬鉄の神銃アイゼン・ブラスター』の銀弾を、電気······と言うか、〔雷〕の力で撃ち出す兵器
 しかし、弱点もある


 「お、重っ······」


 メチャクチャ重い
 動けなくはないが、いつもの半分以下のスピードしか出せないだろう
 ま、今は関係ないけどな


 「さぁて、終わらせるか」


 俺は池に向かって砲身を構え、〔決戦技弾フィニッシュアーツ・ストレージ〕をセットする
 バチバチと紫電が全身を包み、迫りくるボーリング水玉とムチを弾き飛ばした


 「お前の弱点は池そのものだ。まさか全ての池が繋がってるなんてな······なら、超高電圧のコイツを流し込めば、お前を滅ぼせる」


 こいつは周囲の池全体に身体を分散させている、池は単体ではなく全てが1つ。つまり全ての池を同時に破壊すれば、こいつは倒せる
 俺の呟きは、チャージが終わるまでの独り言に過ぎない
 しかし、水球は諦めずに俺に向かってくる


 「悪いな」


 チャージが終わり、俺は引金を引いた




 「【雷電砲撃ボルテック・ブラスター】‼」




 紫電の砲撃が池を吹き飛ばし、池全体が発光する
 全て池から電気の柱が上がり、〔パールグレイ・マナージュ〕は跡形もなく吹き飛んだ




 やれやれ。少しだけ疲れたぜ




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 「いや〜、アドバイスありがとな、クロ。池のことを教えてくれなかったら、結構ヤバかった」


 神化形態を解いて、いつの間にかいたクロに話しかける
 しかし、クロは全く答えてくれなかった


 「おいクロ、どうしたんだよ」
 《ワタシじゃないワ》
 「は?」
 《ワタシは······何も言ってないワ》


 クロの様子が少しおかしい
 すると、残りの7匹が一斉に現れた


 「お、おいみんな。どうしたんだよ?」


 全員が同じ方向を向いたまま、一言も喋らない




 《今のアドバイスはボクさ。やれやれ、こっちを向いておくれよ》




 柔らかな、まるで少年のような声が聞こえた
 俺は声のした方角······8匹が見てる方向へ顔を向ける


 「······へ?」


 そこにいたのは、真っ白な犬


 《こんにちは。ヴォルフガングの〔神の器〕······そして、同胞たち》


 その犬は、流暢に語る
 犬種は雑種だろうか。大きさは子犬よりは大きいが、成犬よりは小さい。ちょうど中間くらいの大きさ
 全身真っ白だが、瞳だけが濃い灰色で、犬にしては口をぴったりと閉じて、岩の上に座っていた


 何故ここに? という声でクロが言った






 《······シロフィーネンス》







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