ホントウの勇者

さとう

魔物使いの町テイマード③/ご機嫌ナナメ・まさかの再開



 「お前なぁ……なんであんなコトを言ったんだ?」
 「……別に。戦えるのに戦わない……バカな兄貴を思い出して腹が立った」
 「ったく。どんな理由があろうとも、踏み込むべき問題じゃないだろ?」
 「……うるさい。ジュートのバカ」


 シェラはそっぽ向き、頬をぷっくりと膨らませる


 「やれやれ……」


 ミクリはミゲルさんのお店を手伝う、といったので別れた
 俺とシェラは町を歩きながらいろいろ見回っていた


 「なぁシェラ、この先の闘技場で魔物使いたちの戦いをやってるぞ。見に行くか?」
 「……行く」


 ご機嫌ナナメなシェラを気遣い、楽しくなるように気分を変える
 歩きながら、少しだけ聞いてみた


 「なぁ、何が気に食わないんだ?」
 「ふん。さっきも言ったが、戦えるし、力も持っているのに戦おうとしない、そんな弱虫が嫌いなだけだ。アタシより強かった兄貴は、全く戦おうとせずに逃げてばかりで誰もが呆れていた。誇り高き〔龍人族〕の名を汚す最低のヤツだ」
 「……ふぅん」
 「兄貴みたいな弱虫はキライだ。どんな理由があろうとも、男なら戦うべきだ。命を、武を、誇りを掛けて戦うのが真の強者だ。ミゲルはその争いから降りた、弱虫だ」
 「…………」
 「アタシは……」
 「もうやめとけ」


 俺はシェラの口をふさぐ
 少しだけ、腹が立ったからだ


 「戦うことが全てじゃない。相手を思いやって、戦いの輪から降りる決断をするのも真の強さだ。強い武力、誇り、力や技が戦いの全てだと思ってんなら……お前は絶対にミゲルさんとルプスには勝てないぞ」
 「ふん。アタシがあんなヤツ等に負けるとでも?」
 「ああ。力や技しか知らないお前じゃ越えられない壁を、ミゲルさんたちは越えている」


 シェラと戦いになれば、ミゲルさんとルプスでは勝てない
 しかし、シェラでは絶対にミゲルさんを屈服させることは出来ないだろう


 「……それは、ジュートにも当てはまるのか?」
 「ああ。俺は力だけがホントの強さじゃないことを知ってる」
 「……そうか。なら、アタシもそれを知ればもっと強くなれるか?」
 「ああ。確実にな」
 「……うぅん、アタシには難しくてわからない」


 シェラは頭を抱えて考え込んでいる


 「ま、悩むのも修行の内だな」




 いつのまにか、目的地に到着していた




───────────────


───────────


───────




 魔物使いのコロシアムは円形の形をしていて、それぞれ対面に檻のような扉が降りている
 どうやらあそこから入場するらしく、檻の大きさはかなりのモノだった


 「うーむ。どうやら試合はまだ先のようだ」
 「仕方ない。腹ごしらえをしてからまた来よう」
 「腹ごしらえって······食べてからまだ一時間くらいしか過ぎてないぞ······」


 シェラの燃費はかなり悪いな
 俺が呆れていると、正面から何かが飛んできた


 「ん?······な、何だ⁉」
 「あれは……ほう、ドラゴンだな」


 目の前から来るのは真っ赤なドラゴン
 大きさは約80センチくらいだろうか、狙いはどう見ても俺だった


 「お、わぁっ!?」


 衝突。というか俺の胸に体当たり
 避けようとしたら、なぜかシェラに掴まれ避け損ねた


 「な、何だ? というかシェラ、何すんだよ!!」
 「落ち着け、そのドラゴンに敵意はないぞ」
 「はぁ?」


 シェラは俺にひっついたままのドラゴンに何かを話すと、ドラゴンはギャウギャウと鳴く


 「ふむ。どうやらコイツはお前を知ってるようだ。懐かしいニオイがしたので来てみたらお前だった……と言ってるぞ?」
 「わ、分かるのか?」
 「ああ。〔龍人族〕はドラゴンと会話が出来る」


 そりゃスゴい……と言うか、ドラゴンの知り合いなんていないぞ?
 すると、正面から誰かが駆け込んできた


 「こらーっ!! クエナ、勝手に行っちゃダメでしょっ!!」


 その正体は女の子
 年齢は15歳くらいだろうか、ヘソ出し短パンスパッツのスタイルに、ぱっちりとした瞳、ボブカットの茶色の髪の毛には見覚えのある花の髪飾り、そしてどこかで見たことがあるような耳としっぽ
 背中には短めの槍が2本装備されていて、軽そうな籠手やグローブを装備した、恐らくだがネコ獣人の女の子だった


 「ご、ごめんなさ……」
 「………」


 女の子は俺の顔を見つめ、俺も無言で見つめる
 この感じ……まさか、でもなんでこんなとこに?


 「まさか……ジョアちゃん?」
 「じゅ、ジュート、お兄さん……?」




 その子は、【赤の大陸】で出会った獣人の女の子……ジョアちゃんだった




───────────────


───────────


───────




 シェラがドラゴンを引きはがし、俺はようやく立ち上がる


 「ジョアちゃん……【赤の大陸】の? はは、こんな所で会えるなんて。ってことはこのドラゴンはあの時の〔レッドドラゴン〕か。大きくなったな」


 俺はシェラが抱えてるドラゴンを撫でると、ドラゴンは嬉しそうにギャウと鳴く


 「お前がくれたナイフ、大切に使ってるぞ」
 『ギャウッ!!』


 俺は【雄大なる死グロリアス・デッド】を抜き、ドラゴンに見せる
 ドラゴンは嬉しいのか、また鳴いた


 「ジュートさん、こんな所で何を?」


 ジョアちゃんが聞くが、どう考えても俺のセリフだろ


 「いや、俺もジョアちゃんに聞きたいんだけど。なんでここに、って言うか【灰の大陸】に?」
 「はい。ジュートさんと別れてから、あたしは修行を始めました。ちょうど成長期だったので、身体もどんどん大きくなって、そしてたまたま〔シューロ村〕に魔物使いの冒険者が来て、スカウトされたんです。それで魔物使いのこの町でクエナと一緒に修行してるんです」
 「へぇ······」


 なんとまぁ、大しためぐり合わせだな


 「ジュートさんは冒険ですよね。えっと、こちらの方と」
 「うん。コイツは〔龍人族〕のシェラ。ワケあって一緒に旅してる」


 シェラはクエナと何かを喋ってるので聞いてない


 「おいシェラ、おーい」
 「ん? あぁスマン。久しぶりにドラゴンと話したから、つい夢中になってしまった」


 シェラはクエナを抱きかかえたまま、ジョアちゃんに向き直る


 「アタシはシェラヘルツ、シェラでいい。ジョア、クエナはお前と一緒にいることが何よりの幸せだそうだ。〔龍人族〕以外でここまでドラゴンに好かれた者を、アタシは見たことがないぞ」


 シェラはクエナをジョアちゃんに渡しつつ言う
 って言うか、シェラもジョアちゃんもクエナが重くないのか?


 ジョアちゃんは嬉しそうにクエナを見つめた


 「わたしも、クエナと一緒で嬉しいよ。大好き‼」
 『ギャウゥ‼』


 うーん。美しいな


 「さて、帰るぞジュート。魔物使いの試合より、良い物を見せてもらった」
 「え、いいのか?」
 「ああ。ドラゴンと獣人のコンビ······これからの成長が楽しみだ」


 よくわからん······何でだろう?


 「クエナといろいろ話してな。まぁ……いろいろと考えることができた」
 「へ?……」




 ホントにわからん。何なんだよ、一体




───────────────


───────────


───────




 宿に戻り、食事を終えてゆっくりくつろいでいると、シェラが言う


 「ジュート。この町でお別れだ……アタシは先に行く」
 「……はい?」


 シェラは突然切り出した


 「お前と一緒に行くのは楽しい。しかし、それじゃダメだ。アタシはお前の先に行かなくちゃならない。だからアタシは先に行く」
 「………」
 「明日の朝、アタシは先に行く。お前を倒すために、アタシなりに考えてみる。そして……お前が〔龍の渓谷〕に着いたら、アタシと戦ってくれ」
 「シェラ……お前」


 シェラは真剣だ。その瞳に揺らぎはない
 きっと、シェラなりに何かを考えたんだろう。ミゲルさんとの出会い、ジョアちゃんやクエナと出会ったのが、シェラの何かを揺さぶったのか


 「……わかった。俺が〔龍の渓谷〕に着いたら戦おう。約束だ」
 「ああ、約束だ。アタシは必ず……もっと強くなる。お前には負けない」
 「おう。俺だって負けないからな」


 シェラが拳を突き出し、俺も拳を突き出す




 戦いの約束をして、この日は眠りについた




───────────────


───────────


───────




 翌朝、シェラはすでにいなかった


 「ま、そんな気はしたけどな」


 俺は朝食をとり宿を出る
 隣には、いつの間にかクロがいた


 《……淋しいでショ?》
 「……まぁ、そうだな」


 否定はしない
 なんだかんだでシェラは騒がしく、賑やかだった


 《サァ、次は〔灰泥湖はいでいこ〕を抜けて〔美食の町イーティア〕ヨ。まだまだ先は長いワ》
 「ああ。行こうぜ」




 俺は【流星黒天ミーティア・フィンスター】に跨がり、町を後にした





「ホントウの勇者」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く