ホントウの勇者

さとう

閑話  煌干光祢・【光神レムナカンティーア】



 「どこへ行くのかな、金村くん?」
 「げっ……」


 煌干きららぼし光祢ひかりねは、抜き足で歩く金村剣吾を引き留めた


 「あ~その……散歩かな?」
 「外は真っ暗だし、酸性雨も降ってるよ?」
 「え~と、その……特訓に」
 「【神の庭サンクチュアリ】は城の地下で、そっちじゃないよ?」
 「あ、その……」


 煌干は小さくため息をつき、確信を持って答える




 「無月くんに会いに行くんでしょ?」




 その答えに剣吾は頭を抱えた




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 「あ~もう俺の負け、そうだよジュートに会いに行くんだよ」
 「やっぱり」


 煌干は曖昧に微笑んで剣吾に向き直る
 ふわふわのミディアムヘアが揺れ、その髪を優しく押さえつけた


 「で……どうする? チクるのか?」
 「そんなことしないよ。でも……理由が聞きたいの」
 「………」


 剣吾は黙り込んで煌干を見つめると、静かに語る


 「理由なんてねーよ。ただ……ちゃんとアイツに向き合わなきゃな、って思ってよ。それだけだ」
 「そっか……でも、無月くんはいずれこの大陸に来るって、ローレライ様が仰ってたけど……」
 「そんなの関係ねーよ。俺が行きたいんだよ」
 「そっか……」
 「悪いな、俺は行くぜ」


 剣吾は踵を返すと歩き出す
 どうやら移動手段は転移。禁止されてる魔術を使うつもりだ


 「待って!!」


 その後ろ姿を引き留めるために声を掛ける。すると……剣吾はゆっくり振り向いた


 「私も行く」
 「は?」


 言葉は自然と溢れてきた


 「私も着いていく……1人じゃ淋しいし、戦いを邪魔しない。ただ……着いていく」
 「……あ、その」


 煌干の顔は真っ赤に染まってる
 ずっと好きだった相手に、少しでも近づきたいから


 「……はぁ、わかったよ。一緒に行こうぜ」
 「……うん!!」


 煌干は嬉しくて剣吾に飛びつきそうになったが、突如後ろから羽交い締めにされた


 「よーし、みんなで行こっ!!」
 「アシストは任せて下さい」 
 「……アタシ達にも出来る事は、ある」
 「な、な、な……何で!?」


 そこにいたのは3人の少女
 斥量せきりょう三重みえ喚時しょうじ世秘よび病川やまいがわ薬実やくみの3人がいつの間にか揃っていた


 「おいおい、遊びじゃねーぞ?」
 「わかってるって」


 斥量は煌干の肩を組みながら小声で告げる


 「……抜け駆け、させないから」
 「……ぐぐぐ」




 この瞬間、煌干はガックリと肩を落とした




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 移動手段は【門】を使うことにした


 「【門】は私に任せて。静寂さんほどじゃないけど、魔術は得意だから」


 煌干は胸をドンと叩いてアピールする。少しでも剣吾に気に入ってもらえるように
 事実、剣吾は凄く感心していた


 「へぇ、 煌干は魔術が得意なのか。俺はサッパリだから頼りにしてるぜ」
 「う、うん。任せてよっ」


 城を抜け出して、こっそりと魔術を発動させて【門】を開ける
 5人は【門】をくぐり抜け、【灰の大陸】へ向かっていく




 剣吾たちの冒険が、静かに幕を開ける



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