ホントウの勇者

さとう

武技の町ガイラン③/反省会・注目



 モンスターを狩り終えた俺たちは、何事もなく町へ帰還


 道中は、特になにもなかったし、お互いのことも聞かなかった
 お互いの戦闘スタイルや、魔術など効いてみたい気持ちはあったが、なんとなくルール違反のような気がした
 それはフィンテッドたちもそうなのか、特に触れてこなかった
 そのままギルドに向かい、報酬を3等分したゴルドカードでもらう


 「ふぅ~……終わったね」
 「ああ、いい慣らしになった。それに小遣いも稼げたしな」
 「だな。俺もパーティーを組んだのは久し振りだから楽しかった」


 ギルド前で反省会をしてると、聞き覚えのある声が聞こえてきた


 「なるほど。それで町にいなかったのね」
 「ふぅん……私たちに無断で依頼を受けるなんて、ね」
 「うぅぅ……ヒドいです」


 そこにいたのはミュラ・セレシュ・ユズモモの3人だった
 後ろには魔導車が停めてあり、ミュラとセレシュは責めるような目、ユズモモは悲しそうな目つきをしていた
 3人の登場に、フィンテッドとグルガンは青くなった


 「や、やぁ。買い物は終わったのかい?」
 「む、むぅぅ……」


 フィンテッドは震え、グルガンは青いまま唸ってごまかした


 「聞いたわよ。あんたたち武器屋で〔マテリアルウェポン〕買ったんですってね……せっかくの報酬を使い切ってまで」
 「あ、いや……で、でも!! 素晴らしい武器で……」
 「ふぅん。確かに個人の報酬だけど、私たちに何の相談もなく、一億のお金を使い切っちゃうなんて、ね」
 「いや。うぅむ、それは悪かった……」
 「い、いちおく……大金です」


 う~ん。こりゃ逃げた方がよさそうだな


 「えっと、俺はこれで……」
 「あ、ちょ、ジュート!! せっかくだし夕飯でもどうだい!? ぜひご馳走させてくれ、頼む!!」
 「そ、そうだ。ここまで一緒だったんだ、メシくらい付き合え!!」


 え~……なんでそんなに必死なの?
 女の子の視線が俺に向く……けど、責められてる感じはしない
 まぁせっかくだし、緩衝材になってやるか


 「まぁ仕方ない。その代わり奢りだぜ?」
 「も、もちろんさ!!」
 「ああ。当然だ!!」




 いや、必死すぎだろお前ら……どんだけ怖いんだよ




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 そんなわけで、町一番の酒場へ


 フィンテッドたち5人と、俺の6人で大きな円卓を確保
 とりあえず大量の料理と麦酒を頼んで乾杯する


 「え〜、それでは······Sレートモンスターの討伐を祝して、乾杯‼」
 「私たちは参加してないけど、ね」
 「むぅ。も、もういいだろう?」
 「······ハァ、仕方ない。許してあげるわ。いいわねユズモモ」
 「んぐ、あむ······ふぁい、許します。あ、セレシュさん、そこのお肉ください」


 ユズモモは、自分の近くに大皿を集めて大量の肉を食べてる
 この細い身体のドコに入るんだよ、って食いっぷりだ


 「ははは。そうだジュート、せっかくだしキミの冒険の話を聞かせてくれよ。キミは何処から来たんだい?」
 「俺? 俺は【赤の大陸】から7つの大陸を冒険して来たんだ。この【灰の大陸】は······最後、だな」


 そこまで言って思う。最後じゃないと
 まだ【時の大陸】と言う、最後の大陸が残っていると


 「スゴイな‼ いろいろ聞かせてくれよ、面白そうだ」
 「ああ、オレも興味がある。オレたちはこの【灰の大陸】から出たことがないからな。他大陸のモンスターの話は聞いてみたい」
 「そうね、面白そうじゃん。せっかくだしアンタの倒した最強のモンスターとか聞かせてよ」


 フィンテッドやグルガンは分かるが、ミュラも食いつくとは少し以外だった


 「そうだな······俺の倒した最強のモンスターは、【紫の大陸】の〔アイボリーラビリンス〕だな。形は洞窟型の迷宮で、入った人間をエサにする厄介なモンスターだった」


 そう、シャロアイトと一緒に倒したモンスターだ
 ホントは他にもいるけど、無難なヤツを選ぶ


 「迷宮型······初めて聞いたよ」
 「ああ。どんなヤツだ?」




 話は弾み、いつの間にか俺も楽しくお喋りしていた




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 「そういえば、さっきこの大陸から出たことがないって言ってたけど、どうしてなんだ?」


 全員がS級冒険者のグループなのに、どうして冒険しないんだろう。と、思って聞いてみた
 その問に、フィンテッドは笑顔で答える


 「ああ、それはボクたちが〔特務冒険者〕だからさ」
 「……つまり?」
 「んぐ。えっとですね、わたしたちは普通の冒険者が立ち入れないようなダンジョンや、SSレートのモンスターなどの危険な依頼を王様の命令でこなしたり、あとは危険な犯罪者や盗賊、国にとっての危険分子を排除したりする依頼を王都から受ける高ランク冒険者なんです。わたしたち以外にも商人や傭兵などもいますよ」
 「つまり、月に一度の報告が王都であるから、他の大陸に冒険には出れないのよ……そのぶん、見返りも大きいけどね」
 「ふっふん。討伐報酬は破格よ。SSレートを討伐すればお金もいっぱい貰えるし、王都に専用の屋敷も用意してもらえるの」
 「へぇ……でも、なんか俺には合わないなぁ」


 自由に冒険し、森や遺跡なんかを彷徨い、誰も踏み込んだことのない洞窟に足を踏み入れる
 あのドキドキやスリルはたまらない。クセになるかも


 「ま、安定を求める冒険者ってのもヘンかもね。私たちは変わってるかも」
 「ふん。8大陸最強のモンスターが生息する【灰の大陸】だ。オレに不満はないぞ?」
 「ははは。グルガンらしいね」


 ここらで食事は終わり、最後に飲み物を飲みながら一息つく


 「さぁて……グルガン、明日は挑戦するんだろ?」
 「当然。それはお前もだろう?」
 「ははは。どうしようかなぁ……」
 「お、おい。それってまさか」
 「もちろん。【灰の特級魔術師 シェラヘルツ】さ」


 やっぱりな、そう来ると思ったよ


 「最強の魔術師にして、【龍人族】の姫でもある彼女と戦えるなんてそうはない。何故か彼女は王様の護衛を放棄して武者修行をしてるからね。それで強者を求めてこの町に来たらしい」
 「えっと、わたしが聞いたのは【紫の大陸】でどうしても勝てそうにない相手が出来たから、それで修行をしてると聞きました」
 「私も似たようなことを聞いたわ。なんでもシェラヘルツ様は【龍人族】の秘宝をその相手に渡したそうよ。【龍人族】の舞姫のみが持つ事を赦される秘宝、〔龍水晶〕をね」
 「〔龍水晶〕かぁ……きっとスゴいお宝なんだろうなぁ」
 「うん。世界に1つしかない宝玉で、【龍神ドラゴディルア】が生み出した〔神の力〕の結晶だそうだ」
 「…………」


 やべぇ、スゴく居心地が悪い
 っていうかシェラのヤツ……なんつーモンを渡してるんだよ。おかしいだろ


 「どうしたのジュート?」
 「あ、いや……なんでもない」


 フィンテッドから思わず視線を外し、冷茶をぐいっと煽る


 「さーて、俺はそろそろ帰るよ。ごちそうさん」
 「そうかい。じゃあここで」
 「ふ。よかったら明日、オレとフィンテッドの挑戦を見に来い」
 「あ、ああ。そうさせて貰う……」






 「あーッ!? ジュートじゃないかッ!!」






 俺を呼ぶのは、長い灰銀のポニーテール
 髪の毛をキレイな紐で縛り、頭にはターバンを巻いている
 頭から生えるのは、細い2本のツノ


 身体を覆うのは、陣羽織
 しかし、動きやすいように改良され、そのまま鎧にもなる特殊繊維で編み込まれ、下半身はミニスカートにレガースを付けた格闘スタイル


 俺が立ち上がったタイミングで店に入ってきたので、バッチリと視線が交差した


 「なーんか嗅ぎ慣れたニオイがすると思ったら……やはりジュートか。こんなに早く会えるとは」
 「あー……よう、シェラ」
 「ああ。お前に会えてアタシは嬉しいぞ!!」


 フィンテッドたちだけじゃない
 町一番の酒場は、静まりかえっていた
 突然現れた美少女は、【龍人族】にして最強の【特級魔術師】
 しかも入口で大声をだし、指さしたのは俺……かんべんしてくれ


 「アタシはこれからご飯だ。お前は?」
 「もうすませた、じゃあこれで。明日、お前の試合を見に行くから。フィンテッド、みんな、ごちそうさん」


 俺は注目から逃げるように店を出た




 やーれやれ、とんだハプニングだった





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