ホントウの勇者

さとう

武技の町ガイラン②/ドーレの灰森・実力



 新しい武器を手に入れ、ウキウキのフィンテッドとグルガンと一緒に冒険者ギルドへ向かう


 「くくく、コイツはいいな。見ろ、魔力を込めると大きさが自在に変わる」
 「へぇ……それが〔メタルアックス〕の力か」


 グルガンはハンドアックスの大きさにした〔メタルアックス〕を腰に下げ、悠々と歩く
 背中には相変わらず凝った装飾の大剣をぶら下げている。どうやらメイン武器を変更するつもりはないらしい


 そんなやり取りをしているとギルドに到着した


 ギルドの規模は大きく、3階建てのビルだった
 依頼掲示板も大きく、残ってる依頼だけでも100以上はある


 「さて、近場で面白そうなヤツは……」
 「ねぇグルガン、あまり遠出はできないよ」
 「おぉ。さっきも言ったけど、近場で頼むぜ」
 「わかってる。そう言うならお前たちも探せ」


 そして3人で掲示板を眺める……すると、丁度いい依頼を見つけた


 〔グレーセンチピード〕Sレート・報酬1800ゴルド
 場所・〔ドーレの灰森〕 数は3匹、全討伐せよ


 うん。これがいい
 場所は〔ドーレの灰森〕だ。確かここは魔導車で1時間ほどの場所だし、早く終わらせれば夕方までには帰ってこれるかも


 「おーい、コレなんてどうだ?」


 俺は依頼書を剥がして2人に見せる


 「うん。いいね、これならすぐに終わる」
 「ふん。少し物足りないが……いいだろう」
 「だな、報酬も1人600万ずつ割れるし、丁度いい」


 決定。ということで受付で依頼を受けて出発、と思ったら少し問題発生


 「まいったな。貸し出せる魔導車が2人乗りだけか……ボクたちの魔導車はユズモモたちが使ってるし」
 「むぅ……無理をすれば乗れないこともないが」


 そう。ギルドで借りることが出来る魔導車が、2人乗りしかなかった
 仕方ない……けど、【アウトブラッキー】は出せないので、俺がバイクで行くか


 「あぁいいよ、俺の魔導車が近くに停めてあるから、2人で乗っていってくれ」
 「え、でも」
 「大丈夫、すぐそこにあるから」


 そういって俺は傭兵ギルドの駐車場へ
 建物が隣同士なので、すぐに【流星黒天ミーティア・フィンスター】を出して戻ってくる


 「おぉ……1人乗りかい?」
 「ふむ、初めて見たな」
 「ああ、俺の愛車さ。さっさと行こうぜ」


 【流星黒天ミーティア・フィンスター】を走らせ、その後ろからフィンテッドたちが着いてくる




 さぁて、モンスター退治……ついでに試し斬りと行きますか




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 町からきっかり1時間で〔ドーレの灰森〕へ到着した


 森の木々は灰色で、葉っぱは濃いねずみ色の不気味な森
 どう見ても健康に悪そうな川も流れてる……絶対に飲みたくない水だ


 「さて、行こうか」
 「うむ。くくく……楽しみだ」
 「用心しろよ」


 フィンテッドはすでに〔アークセイバー〕を抜き、グルガンも〔メタルアックス〕を少し大きめの斧にして左手で構えてる


 〔アークセイバー〕は刀身が薄く光り、柄や鍔は装飾が施された純白だ
 フィンテッドはすでにスイッチが入ってるのか、スキのない表情で警戒してる
 グルガンも引き締まりスキがなくなる


 やっぱりこの2人は強い……かなりの修羅場をくぐり抜けてる
 ま、俺も負けないけどな


 「ほう」
 「へぇ……やる気だね、ジュート」
 「ま、ここまで来たらな」


 俺の空気が変わったのを感じ、2人が俺を見る
 右手には【雄大なる死グロリアス・デッド】を装備し、左手は〔マルチウェポン〕の短弓を展開し、矢を装填しておく


 「〔グレーセンチピード〕は大きさが10メートル以上ある百足だ。その体表は金属で覆われ、物理攻撃の効果は薄い。狙うなら関節だ」
 「わかった。サンキュ」
 「それと、昆虫型だけどパワーもある。注意してくれ」
 「ああ」


 親切に解説してくれながら注意深く森を進む
 どうやらこの森はモンスターが生息しておらず、薬草や木の実などの収穫があるために、商人などがよく立ち入る森らしい。そこに〔グレーセンチピード〕が住み着いて困っている、と言うのが町の商人ギルドの依頼だそうだ
 しかし、腐ってもSレートモンスター。いくら強い冒険者でも、受けるのには注意を払う
 この依頼が残っていたのは、恐らく確信が持てなかったからだ


 「なぁ、ホントに3匹だけだと思うか?」


 俺の質問だ
 そもそもどうやって確認したのだろうか?
 3匹、と言う数字に根拠はない。もしかしたら10匹、100匹といるかもしれない


 「恐らく……3匹というのはメスだろうな」
 「だね。ボクもそう思う」
 「……どういうこと?」


 意味が分からない


 「全長10メートル以上の大きさは間違いなくメスだ。依頼書によると目撃されたのはメスが3匹。オスの大きさは最大でも3メートル。このモンスターの特徴は、1匹のメスに対して何匹ものオスが集う」
 「つまり、メスを始末すればオスはやってこない。むしろオスのレートはD……人間を見ただけで逃げる臆病なモンスターさ」


 なーるほど、そういうことね


 「つまり、この森にいるメスを始末すればいいのか」
 「うん。簡単でしょ?」
 「メスはオスと違い好戦的だ。むしろ人間をエサとしか見ていない。交尾が終わるとエサを求めて各地を移動する。この森に入ったのもエサを探してだろうな」


 いやぁ、わかりやすい説明をありがとう


 「さて、ノルマは1人1匹だ。ヘマするなよ?」
 「わかってるよ」




 そして、ついにヤツは現れた




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 「来たな」
 「うん」
 「敵は……まずは1匹、か」


 森の中腹にて、そのモンスターは現れた


 大きさは約10メートル
 いくつもの関節をつなぎ合わせたような長い灰色の身体
 その身体から、いくつもの「脚」が伸び、ガチャガチャ動かしながら地面を這う
 身体は鉄のようなモノで覆われ、つるっとした滑らかさで光を反射してる
 頭の部分だけが黒く、触覚のようなモノが生えていて、最後尾には鋏のような尻尾が生えてる
 正直、お近づきになりたくないモンスターだ


 「オレがやる。手を出すなよ」
 「ちょ、グルガン……もう」


 グルガンは落ちていた石を拾い、百足の頭めがけて投げつける
 そして、そのまま飛び出していった


 「ジャァァァァァッ!!」
 「はっはっはぁッ!! 楽しませろよッ!!」


 グルガンは右手に大剣、左手に斧を装備して走り出す


 「お、おいっ!! あんな重たそうな武器を2つって、マジかよ!?」
 「まぁ見てなよ」


 フィンテッドは全く動揺していない


 「ジャァァァァァッ!!」


 百足の動きは恐ろしく機敏だ
 身体をくねらせる動きが攻撃になっていて、グルガンをはじき飛ばそうとする


 「はっはぁッ!!」


 しかし、グルガンはそれらを無視
 軌道が読めない尻尾の攻撃を、大剣を振り払うことでガードした


 バチィン!! と派手な音が響き尻尾が弾ける
 その一撃が予想外だったのか、百足のバランスが崩れた


 その瞬間、グルガンの瞳がギラリと光る


 「ぬぅぅぅんッ!! でぇいッ!!」


 グルガンは右手の大剣を放り投げ、〔メタルアックス〕に魔力を注ぎ込む
 そして、巨大化させた斧で〔グレーセンチピード〕を盾に頭から両断した


 「お、おおお……なんつーパワーだよ……!?」
 「ふふ、グルガンの怪力はなかなかのモノだろう?」


 百足は頭を潰されて倒れる




 当然、もう動くことはなかった




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 「お、音につられてやって来たみたいだね」
 「ホントだ……どうする、行くか?」
 「うん。ボクが行くよ」


 俺たちのすぐ後ろに、もう一体現れた
 フィンテッドは笑顔で向き直り、剣を構えて前に出る


 「さて、長引かせるのはボクの流儀じゃない。すぐに終わらせる」


 フィンテッドは剣に魔力を流す……すると、〔アークセイバー〕が発光した


 「【フラッシュエッジ】」


 剣を振り抜くと、光の刃が飛び出す
 刃が〔グレーセンチピード〕の脚を数本切断した


 「ジャァァァァァッ!!」


 そして、怒った百足がフィンテッドに向かって身体をくねらせる


 「………」
 「お、おいフィンテッド!!」


 フィンテッドは笑顔のまま迎え撃ち、くねらせ攻撃をギリギリで回避する
 ヤバい、今のは少し危なかった


 「おい!! 気を付けろ、素早いぞ!!」
 「ああ、問題無いよ」


 フィンテッドは、笑顔で告げる




 「もう、終わったから」




 次の瞬間、百足の頭と脚がバラバラと切断。細切れになった




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 「い、今のは……」
 「ふぅ、おしまい」


 一瞬だった
 気が付いたらバラバラ、細切れだった


 「さ、次はジュートの番だよ」
 「ふん。同じS級なら、見せてみろ」


 2人が合流し、タイミングを計ったように最後の1匹が現れる
 俺は前に出ながら、今の攻撃を理解した


 「アレは……【活性光筋アクティブ・ドライブ】だ」


 あれは【白】の上級魔術、【活性光筋アクティブ・ドライブ
 身体強化の魔術、俺も使えるけど俺は直線ダッシュしかできない
 フィンテッドは身体強化をしたまま、動きを完全にコントロール出来るようだ


 フィンテッドは【白】の魔術師
 やられた……まさか、魔術剣士だったとは


 「ジャァァァァァッ!!」


 パワーのグルガン、スピードのフィンテッド
 魔術のセレシュ・ユズモモに、弓士のミュラ


 こりゃかなりの強敵だ
 全員と戦う事になったら、生身じゃ勝てそうにない
 さすがにS級冒険者なだけあるな


 「ジャァァァァァッ!!」
 「おっと、そういえばコイツがいたんだっけ」


 俺は考えすぎて百足の存在を忘れていた
 まぁいいや、さっさと終わらせよう


 「【灰】の上級魔術、【鋼糸甲線ギースエッジ・ライン】」


 百足の周辺に無数の紋章が輝き、そこから灰色の糸がそうめんみたいに伸びる
 鎖だと切断される可能性があったので、関節に食い込む糸にしたが正解だった


 「悪いな」


 俺は右手を開き……思い切り閉じた


 「ジャァァァァァッ!?」


 シュパンッ!! といい音が響き、百足はキレイに細切れになった




 驚いた表情のフィンテッドとグルガンに向き直り、俺は笑顔で返した





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コメント

  • キリン

    1800ゴルドwww

    0
  • ヒカッチ

    1800万ゴルドでは?

    0
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