ホントウの勇者

さとう

武技の町ガイラン①/灰塵の翼・強者



 町は、別な意味で賑わっていた


 「………」
 《………》


 住人とは別に、町にはたくさんの冒険者・傭兵がいる
 その戦士の全てが、かなりの実力者だ


 すれ違う視線は、どれも値踏みするような……強者をはかる目
 今までの町とは違う。俺を侮る視線など一切感じなかった


 「ま、とりあえず宿と昼飯だ!!」
 《……そうネ》




 腹が減っては戦はできぬ。じゃあ行きますか




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 町の中央にあるのはギルドや大手商店
 その中で一番大きな宿屋に、俺とクロは入っていく


 受付も大きく、横長のカウンターだった
 そこに受付嬢が5人ほど並び、お客の対応をしている


 客層は冒険者と傭兵ばかりで、全てが4〜6人のグループからなり、全員が歴戦の戦士のような雰囲気を纏っている
 よく見ると男女半々くらいで、俺と同い年くらいのもいる
 戦士半々、魔術師半々くらいの割合だな


 俺みたいなシングルは珍しいのか、少し注目を浴びる
 しかも肩に黒猫を乗せてるしな


 受付の列に並ぶ
 俺の前は冒険者グループ
 人数は5人、全員が俺と同い年くらいで、首に掛けてあるドッグタグは黒······全員がS級冒険者だった


 グループ構成は、戦士2名・魔術師2名・弓士1名とバランスが取れたグループ。この若さで大したもんだ
 すると、魔術師の女の子が話しかけてきた


 「ねぇ、アナタってシングルなの?」
 「ん? あぁ、正確には1人と1匹だけどな」
 「へぇ。この【灰の大陸】にシングルで来るなんて、よっぽど自分の強さに自信がなくちゃ出来ないわよ?」
 「ま、修羅場は潜ってるから問題ない」
 「へぇ······」


 俺を見る視線は、まるで値踏み
 腰にある武器や、体付きなどを見て実力を図ってる
 俺も負けじと少女を見る


 少女は間違いなく上級魔術師
 ローブの色は紫、恐らく【紫】の魔術師だがアテにはならない
 ローブの下は軽装だ。よく見ると防刃製の服や、足にはレガースを装備してる。多分、少女の武器は魔術だけじゃない


 「フフ、あんまりジロジロ見られると照れるんだけど」
 「う······ご、ゴメン」


 確かに女の子をジロジロ見るのは良くない
 すると、弓士の少女が話しかけてきた


 「ちょっとセレシュ、な〜にお喋りしてんのよ」
 「あら、いいじゃないミュラ。シングルの冒険者なんて初めて見たんだから」
 「シングルねぇ······へぇ、S級か」


 ミュラと呼ばれた弓士は、顔を近づけて俺をジロジロ見る


 ミュラの武器は装飾が施された弓と、驚くべきことに〔マルチウェポン〕を装備していた
 使い込まれている軽鎧は、多少の傷が付いているが高級品だとわかる
 ミュラの体付きも、女の子にしては鍛えられている


 「······うん、強いわ」
 「でしょう?」


 2人の視線はクロへ向く


 「わぁ、かわいい。なでていい?」
 「あぁいいよ。クロって言うんだ」
 「へぇ、いい毛並みのネコね」


 2人の少女にクロを撫でさせると、クロは気持ち良さそうにノドをゴロゴロ鳴らした
 すると騒がしかったのか、残りの3人も振り向いた


 「騒がしいな全く······大人しく待ってることも出来ないのか?」
 「まぁまぁグルガン。どうやら同業者みたいだね」
 「みたいですね。えっと······双剣士みたいですね」


 大剣士の青年、剣士の青年、魔術師の少女がそれぞれ俺を見た
 すると、剣士の青年がにこやかに挨拶してきた


 「初めまして、ボクはフィンテッド。こっちの大剣士はグルガンで、こっちの魔術師はユズモモ。そこの2人がセレシュとミュラだ。ボクたちは特務冒険者〔灰塵の翼アッシュダスト・ウィングス〕さ。よろしくね」


 両手を広げて各々を紹介し笑顔で握手を求めてくる。特務冒険者?
 俺も自己紹介をして握手。人気の宿屋なのか、なかなか受付が進まないので自然と会話が弾む
 グルガンは興味なさそうに前を向き、フィンテッドは俺の隣に、女の子3人はクロを弄って遊んでいた


 「ジュートはなぜこの町に?」 
 「あぁ、俺は【紫の大陸】から来たばかりだからな」
 「確かに。この町は【灰の大陸】の入口でもあるからね」
 「フィンテッドたちは? 見たところ初めてってワケじゃなさそうだけど」
 「うん。ボクたちは王都の要請でモンスター退治を終わらせて、これから休暇なのさ」
 「モンスター退治か······」
 「あぁ。SSダブルレートの〔ピンクサイクロプス〕を討伐したんだ。なかなか骨が折れたよ」


 SSダブルレートかよ。その割には誰もケガをしてるようには見えない
 もしかしたら、セレシュかユズモモのどちらかが【白】の魔術師かも知れないな


 「これから休暇だけど、せっかくだし腕試しをしようと思ってね」
 「腕試し······あぁ、武闘大会か」
 「うん。こんなチャンスは滅多にないからね。グルガンもそのつもりさ」
 「へぇ、よっぽど強いヤツがいるんだな」






 「あぁ。【灰の特級魔術師 シェラヘルツ】が少し前からいるんだ。どんな相手の挑戦も受けて立つって意気込んでるんだ」






 俺は鼻血を吹き出しそうになった




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 受付を済ませ、ようやく部屋に入る


 「シェラのヤツ······何やってんだよ」
 《アナタと戦うために鍛えてるんでショ》


 そうだろうな。じゃなきゃ王様を置いて先に帰るなんてしないだろうし


 「ま、とりあえず買い物行くか」
 《そうネ。この町は武を司る町ヨ。食材よりも武器防具なんかに力を入れて商売してるワ》
 「ふーん。でもいらないなぁ······」


 二刀流に〔マルチウェポン〕だし、投げナイフに魔術もある
 その気になれば格闘技も使えるし、これ以上は逆に重りになる
 ま、せっかくだし色々と見るか




 腹も減ったし、露店巡りもしたいしな




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 俺は、露店で買ったハンバーガーもどきを食べながら町を散策していた


 クロは〔セーフルーム〕でルーチェたちと昼寝をしてる
 まぁいいけどね。寂しくないし


 「せっかくだし、武器屋にでも行くか」


 冷やかしになるけど、まぁいいよね
 どうしてもダメな時は適当な剣でも買おう
 ハンバーガーとジュースを飲み干し、町で1番大きな武器屋に入る


 「おお〜······すげぇな」


 中はまさに、ザ・武器屋って感じだ
 樽に刺さったのは、大量生産の安い剣や槍
 壁やショーケースに展示されているのは、高級な武器
 武器の種類は様々で、剣・槍・斧・グラブなどの近接武器や、弓やモーニングスターなどの遠・中距離武器
 中でも一際スゴいのが、店の中央に展示してある〔マテリアルウェポン〕だ
 俺が以前エルルとクルルに送ったのは、地水火風の属性武器だが、ここに展示してあるのは光闇雷鋼の属性武器だ


 しかも、それぞれ形が違う


 〔光の剣・アークセイバー〕
 〔闇の短剣・ナイトダガー〕
 〔雷の槍・サンダーランス〕
 〔鋼の戦斧・メタルアックス〕


 すげぇ、超カッコいい
 値段は······どの武器も、1つ1億ゴルドか。やっぱ高いな


 展示してある武器は特別なのか、店の客たちは物欲しそうに眺めてる。すると、俺の後ろで声がした


 「あれ、ジュートじゃないか?」
 「お、フィンテッド。お前たちも買い物か?」
 「うん。報酬も手に入ったからね」 


 店に入って来たのはフィンテッドとグルガン
 女子3人はいない。別行動か


 「セレシュたちは買い物さ。やれやれ、女の子の買い物は長いからね······捕まる前に逃げてきたよ」
 「はは。そりゃ懸命な判断だな」


 俺とフィンテッドが笑っていると、グルガンが〔マテリアルウェポン〕に近づいた


 「フィン、オレはこの〔メタルアックス〕を買う」


 その発言に、フィンテッドは仰天した


 「ちょっ⁉ ぐ、グルガン⁉ 今回の報酬を全部使うのかい⁉」
 「オレ個人の報酬だ。どう使おうとオレの勝手だ」
 「ま、まぁそうだけど······」
 「お前はいいのか? あの剣······お前向きだと思うが」


 グルガンは、〔アークセイバー〕を指差す
 フィンテッドは唸り声を上げて悩みだした


 「う、う〜む。確かに欲しい······でも、う〜む」
 「おい、フィンテッド?」
 「ど、どうしようジュート?」
 「いや、俺に聞かれても」


 そんなことをしてる間に、グルガンは会計に向かいショーケースから〔メタルアックス〕を出してもらっていた
 グルガンは、店員に指示して〔アークセイバー〕を出し、そのままフィンテッドの元へ持ってくる


 「ほら、持ってみろ。この斧と剣······オレたちに使われたいと見た」
 「······ハァ、わかった。買う、買うよ」


 フィンテッドがついに折れ、会計を済ませる
 戻ってきたフィンテッドは、なぜかウキウキしていた


 「うん、いいね······これはいい」
 「だろう? よし、さっそく試し斬りだ。ギルドで討伐依頼を受けるぞ」
 「え、ボクたちだけで?」
 「いや、3人だ」


 グルガンの視線は俺に。マジで?


 「ジュート、いいのかい?」
 「ふ、同じS級だ。構わないだろう?」
 「まぁいいけど······できれば近場のヤツで頼むぜ」




 こうして、男3人でギルドへ向かうのだった





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コメント

  • ヒカッチ

    紫の大陸にきたんだ
    確かにここは灰の大陸の入り口でもありますしね
    紫・灰どっち?   

    1
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