ホントウの勇者

さとう

シュネー街道/歓迎・これまでの半生



 「なぁクロ。【灰の大陸ファルルグレー】って、どんなトコなんだ?」


 俺とクロは、なんとなく街道を歩きながら散歩気分で進んでいた
 場所は【灰の大陸】の〔シュネー街道〕
 すでに大陸に入って一時間ほど歩いているところでの質問だった


 《そうネ……この【灰の大陸】は、8大陸の中で最も過酷な環境ネ。モンスターの強さはほぼA~Sレート、冒険者や傭兵も最低ランクがA~B級じゃなきゃ進まないワネ。それに、町には強力な結界と傭兵が常駐し、常に闘えない人たちを守ってるワ》
 「おいおい、そんな危険な場所なのかよ……大丈夫なのか?」
 《エエ。なんせこの大陸には【龍人族】がいるからネ》


 龍人族……たしか、シェラヘルツがそうだったな


 《龍人族は、全種族の中で最強のチカラを誇るワ。屈強な身体、強靱な魔力、そして【龍】としてのチカラ……生身じゃアナタでも厳しいワヨ》
 「うへぇ……」
 《それと、気を付けなさい……さっきも言ったケド、この大陸のモンスターは強いワヨ?》
 「あん?」
 《……ホラ、来たワヨ》


 怪訝な表情をした俺を無視し、上空から巨大な何かが落ちてきた


 「………え」
 《ジャ、よろしくネ》


 クロは素早く消える
 俺は、目の前の巨大な物体を見上げた


 大きさは8メートルほどだろうか、筋骨隆々の肉体に大きな翼が生えている
 手には巨大なかぎ爪、ドラゴンのような顔、トゲトゲのついた長い尻尾


 「グゥゥオォォォォォンンン!!」
 「おぉぉっ!?」


 翼を広げて俺を威嚇する二足歩行のドラゴン
 Sレートモンスター、〔グレーコングドラゴン〕だった


 「おいおい、いきなりSレートかよ……まぁ、やるか」




 俺は不適に笑い、2本の愛刀を抜いた




───────────────


───────────


───────




 突然だが、俺はかなり強くなった 


 これは事実であり、決してうぬぼれではない
 目の前のバケモノを見ても冷静でいられるし、相手の出方をうかがいながら作戦を立てる余裕もある


 不思議だが、【赤の大陸】の頃に比べても身体能力が遙かに上がっている
 生身だが走りは間違いなくオリンピック級だし、格闘も地球最強かもしれない


 ここまで強くなったのは、間違いなくみんなのおかげ
 そして、ここまで歩んできた俺の道のりが……俺の糧となり、強さとなった


 「………来いよ」
 「ガオォォォォッ!!」


 〔グレーコングドラゴン〕は、見た目より遙かに機敏な走りで俺に迫る
 攻撃手段はその鋭利なツメ
 振りかぶり、引き裂く。実に単純だ


 「ガオォォォォッ!!」
 「ふん」


 当然ながら、喰らわない
 そもそも身長が違う。横に飛ぶだけで回避出来る
 俺はギリギリまで引きつけてあえて正面に飛び、足の間をくぐり抜ける


 「ギャアァァァァッ!?」


 くぐり抜けざま、両足を深く切りつけ体勢を崩す
 俺はここで魔術を発動させる


 「【灰】の上級魔術・【苦痛束縛バインデッド・ブロッケン】」


 宙に現れた紋章から、縛りの魔術が発動する
 縛りは〔グレーコングドラゴン〕の全身に巻き付き、その身体を宙に固定した


 これは【拘束巻鎖バインダー・チェーン】の強化版
 茨や電流、トゲや極太の鎖などの拘束のエモノが無数に飛び出し拘束する
 この縛りは動けば動くほど苦しむ、まさに地獄の苦しみだ


 「グッギャァァァァァッ!?」
 「うるさっ」


 その断末魔に思わず耳をふさいでしまう
 身体からはボタボタと青い血が流れ、無数の縛りがモンスターを苦しめていた


 「悪いな」


 可哀想なのでさっさと終わらせる
 俺はとどめの魔術を発動させた


 「【紫】の上級魔術・【飛空雷槍スローイン・ライトニング】」


 発動させたのは、反対属性の【紫】魔術
 使うのは巨大な雷を固め、槍状に変化させた3メートルほどの雷槍
 上空に右手を掲げ、その少し上に浮かぶ雷槍を〔グレーコングドラゴン〕の心臓部めがけて投擲した


 「おらぁッ!!」


 槍はまっすぐ飛び、〔グレーコングドラゴン〕の心臓を破壊する
 〔グレーコングドラゴン〕は、電撃の影響でビクビク痙攣し、そのままガクンと頭を垂れた




 死亡を確認、俺の勝利だった




───────────────


───────────


───────




 《お疲れサマ。楽勝だったワネ》


 クロがひょっこりと現れ、俺の肩に着地した


 「ああ。でも普通だったらコイツ、A級の傭兵が10人以上でやっと倒せるレベルなんだろ?」
 《そうネ、それだけアナタが強くなったのネ》
 「まぁ……そうかもな」


 そうやってストレートに言われると照れる


 《……ココまで、長かった……アナタはホントに強くなった》
 「な、なんだよ急に」
 《フフ、別に……》


 クロが俺をからかうように笑う


 「ったく、とにかく行くぜ。ここから1番近い町は?」
 《ココからだと……〔武技の町ガイラン〕ネ。あそこはS級冒険者の集まる町。この【灰の大陸】の入口だから、自然と強い人間が集まるノヨ》
 「へぇ、面白そうだな」
 《……アナタ、問題を起こさないでネ》
 「誰が起こすかっ!!」




 俺はクロの頭をグリグリしながら歩き出した




───────────────


───────────


───────






 「お、見えた……あれが〔武技の町ガイラン〕か」
 《エエ。思ったより早く着いたわネ》


 【流星黒天ミーティア・フィンスター】を飛ばすこと2日、ようやく町に着いた


 俺はメットゴーグルを上げて町を見渡す


 「なぁ、ありゃなんだ?」


 俺が気になったのは、町の中心にそびえ立つ円形の建物
 まるでローマのコロッセオのような、言い換えれば闘技場にも見える


 《アレは闘技場ネ。たしかあの町では闘技大会が週一で開催されてるワネ》
 「しゅ、週一って……どんだけ戦い好きなんだよ」


 たしか【赤の大陸】の武具大会でさえ年に一度なのに


 「ま、俺には関係ないか」
 《………》


 クロは何故か俺をジト目で見る


 「な、何だよ?」
 《……アナタがそう言って関係なかったコトってあるかしらネ》
 「………」


 た、確かに……イヤな予感はする






 その予想は、予想外な形で的中した





「ホントウの勇者」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く