ホントウの勇者

さとう

閑話 弓島黎明・【弓神シュピッツヴォーゲン】





 時間は少し遡る


 弓島黎明ゆみしまれいめい・【弓神シュピッツヴォーゲン】の〔神の器〕で、神器【絶弓命射手サジタリウス・ティラトーレ】を操る狙撃手スナイパー
 絶対命中の光り輝く『ゆみ』であり、最も信頼する武器である


 黎明の属性は【白】・【灰】・【紫】の三種類
 そんな彼女の隣には、ついさっきまで身体を重ねた愛しい少年、銃斗がいた


 「……ふぁ、んん」


 幸せそうに微笑む少年。どんな夢を見ているのかはわからない
 しかし、心が解放されていつもの気持ちを取り戻した黎明は、昔のことを思い出した




 この少年と初めて会ったのは、入学式の時であった




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 弓島黎明は、自分はそこそこイケる少女と思っていた


 長いポニーテールの黒髪はつややかに輝き、毎日の手入れは欠かさない
 女子らしく薄い化粧もしている。ネットで調べたり友達から聞いたりもした
 ファッションにも敏感だ。休日には友達とショッピングに出かけることもしばしばある
 最新モノに敏感で、父におねだりして最新機種のスマホを購入した
 スタイルにも気を遣う。毎日お風呂は長めに入り、寝る前にはストレッチを欠かさない


 おかげで中学時代はそこそこモテた
 でも特定の人物とおつきあいまではいかず、あこがれの存在程度の学生だった


 弓島黎明は見栄を張っているワケではない
 ただ女として生まれたならキレイでいたい。それだけだった


 勉強もそこそこできたので、そこそこの高校へ通うことにする
 高校でもきっと自分は変わらない。自分を磨きつつ、女子高生をエンジョイするだろう




 そして弓島黎明は、無月銃斗と出会った




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 とある日の放課後、帰路につくために教室を出て下駄箱まで来たときだった


 「おっかしいなぁ………」


 黎明は自分のカバンを漁り、変えたばかりのスマホが無い事に気が付く


 「確か……教室、じゃない。えっと……」


 自分の行動を振り返り、可能性を1つずつ潰していく
 そして全ての可能性を潰して出た答えはシンプルなモノだった


 「わかんね……どーしよ」


 ため息をつき考える
 らちがあかないのでまずは職員室へ遺失物が届いていないか確認することにした


 そして振り返った時に、1人の男子生徒とぶつかった


 「うおっ!?」
 「ひゃあっ!?」


 突然だったので思わずヘンな声が出てしまい、恥ずかしかった


 「えっと、弓島さんだよね?」
 「え、あ、うん。キミは……たしか無月くん」
 「うん。よろしく」
 「あ、はい」


 とりあえず挨拶……そして、銃斗は黎明に何かを手渡した


 「もしかして……これ?」
 「あっ!? あたしのスマホ!!」


 銃斗が持っていたのは間違いなく黎明のスマホ
 なぜコイツが? と表情に出てしまったのか、銃斗が捕捉した


 「あ、教室前の水飲み場で見つけたんだ。これから職員室に持っていこうとしたら、目の前でカバンを漁って考え込んでる弓島さんがいたから……もしかしてと思ってさ」
 「あ、そうなの……ゴメン、ありがと」
 「うん、見つかってよかったよ」


 すると、後ろから別の男子生徒が現れる


 「おいジュート、スマホ……って、弓島のだったのか?」
 「ああ、届けられてよかったよ」
 「んじゃ行こうぜ、今日は部活ないしラーメンでも食っていこうぜ」
 「よし、約束通りお前のオゴリな」
 「はぁ!? その約束は巌次としたヤツだろ!?」
 「前にお前にも奢っただろ? しかも替え玉まで頼みやがって……」
 「ぐ、そ、そうだったっけ?」
 「ホラ行くぞ。スポーツマンなんだから約束は守れよ……じゃあね弓島さん」


 楽しそうに会話していた2人は、思いだしたかのように黎明に別れを告げる


 「あ……うん、じゃあね」


 楽しそうだな、と思った
 何故かこの2人、いや……銃斗が気になった


 そんな視線が気になったのか、銃斗とばっちり目が合ってしまう


 「………」
 「ん? どうしたジュート」


 銃斗が黎明の顔を見つめ、優しく話しかけてきた




 「あのさ……一緒に行く?」




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 思えば、この時からだったのかもしれない


 「お、おいジュート」
 「いや、その……用事があるならいいんだけど」


 銃斗は自分と同じ、男子高校生をエンジョイしてる
 同族の気配を感じ取ったから、そう思うことにした


 「……行く!!」


 なぜか誇らしげに、大声で答えていた


 「よっしゃ、行くぜ剣吾。2人分よろしく!!」
 「ハァ!? 今月はピンチなんだって、勘弁してくれよ!!」
 「あははっ、よろしく~っ!!」


 なぜか楽しく、自然と笑みがこぼれる
 銃斗がどうして自分を誘ったのか気になったが、今はいい




 こうして弓島黎明は、無月銃斗と友達になった




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 それから黎明は銃斗とよく喋るようになり、一緒に帰ったり一緒にお昼を食べたり。口調も砕けたものとなり、男子の中では間違いなく1番の仲良しになった


 気になったのは、銃斗は意外と……いや、かなりモテていた


 2年になり盲目の静寂書華と仲良くなり、図書準備室で読書をするようになった。その場に自然と黎明も加わった。迷いはなかった


 「ああ、やっぱそうか……」


 黎明はもうわかっていた


 「あたし……ジュートのこと……」


 銃斗が他の女の子と一緒にいるとモヤモヤする
 なんとなく悔しかったり、気持ちが落ち着かなくなる




 自分を見て欲しい気持ちは、誰よりも強い自信があった




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 「でも……こんな世界に来ちゃったしねぇ……」


 銃斗の髪をなでつけながら黎明は微笑む


 銃斗はすでに8人の女の子と将来の約束をしていた
 すでに性体験もすませ、何度も愛を育んでいる


 「でも……あたしだって」


 黎明は、まだ痛む下腹部に手を当てながら思う
 これから時間はいくらでもある。受け入れるのだってもう迷わない


 そのためには……




 「書華ちゃん……」




 静寂書華を、助けなくてはいけない
 自分と同じ少年を好きになった同士、これでは不公平だ


 「……ん、どうした?」
 「あ……ゴメン、起こしちゃった?」
 「気にすんな。まだ続きがしたいし……」


 銃斗はさっそく黎明の身体に手を這わせる


 「ねぇジュート」
 「ん?」


 黎明は、ジュートを受け入れながら優しく微笑んだ






 「……がんばろうね」







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