ホントウの勇者

さとう

王ノ四牙④/真実・疑心





 轄俥盛輪かつぐるまじょうりんは、俯いていた


 「…………」


 彼の目の前にいるのは【歌神ローレライ】
 美しき女性の神にして、現存する残り少ない神の1人


 「お疲れサマ、盛輪クン」
 「……はい」


 今までは、クラスの間で誰もが憧れた神だが、轄俥はたまらなく悲しかった


 「ご指示通り・・・・・、総勢10人で無月に挑みました……結果は、惨敗。そのうち3名を失い……ました……ぐ、うぅぅ……!!」


 轄俥は、最初から知っていた
 10人が束になって挑もうが、銃斗には勝てない
 あの姿・・・が暴走した瞬間を目撃した、だからわかった


 「落ち着いて。アナタは悪くない……」
 「……」


 轄俥は、事前に知っていた
 羽蔵麻止が、仲間を集めて銃斗に挑もうとしていたことを
 自分に声が掛かったとき、何故かローレライが現れたこと
 ローレライの指示で、10人を送り届けたことを


 「……どうして、どうしてなんですか!! 無月はヤバい、絶対に勝てない。なのにどうして……負けると分かって10人を向かわせたんですか。こんなの……」


 ローレライの優しい顔が、カンに障る
 怒りを込めた瞳で睨み、ローレライに詰め寄る


 「落ち着いて……」
 「うるさい!! 答えて下さい!!」


 ローレライの表情は変わらない
 そして、ローレライは優しく歌い出した


 「……大丈夫、あなたは悪くない……大丈夫」
 「………」


 優しく、心に響く歌声


 「さぁ、部屋へお戻り……そして、ゆっくりお休み……」
 「………はい」


 轄俥は、夢うつつで部屋へと引き返す




 そして、そのまま眠りに落ちた




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 〔クローノス城〕の最上階にある特別会議室。そこに4つの【神】が集っていた
 豪華な椅子に座り、優雅に話し合いをしている


 「予定通り、【銃神】が勝利。まさか女の子たちが戦うとは思わなかったけど」
 「そうですかね。私としては、こうなると思ってましたがね」
 「……チッ」


 ローレライとシグムントは薄く笑っていたが、レオンハルトはつまらなそうに舌打ちした
 その様子を見ていたナーカティックが、興味深そうに聞く


 「おやレオンハルト、どうしたんだい?」
 「うるせぇババァ。黙ってろ」
 「ヒッヒッヒ……お前さん、【銃神】と女子おなごたちが死なんでホッとしてるんだろう? お前さんは本来の目的を忘れて、子供たちによぅ入れ込んでるからねぇ」


 ナーカティックの言葉に、シグムントは反応する


 「やはりですか……あなた、私たちの本来の目的を見失いかけてますね。【女神】様の復活よりも、「器」に入れ込みすぎている」
 「あぁ……? くだらねェ、バカいってんじゃねぇよ」
 「……レオンハルト。あなたは優しいのよ? 人間を」
 「黙ってろ!!」


 レオンハルトは立ち上がり叫ぶ。余りにもばかばかしいとでも言いたげに


 「いいか、オレは強くなった【銃神ヴォルフガング】と戦えればそれでいい。最初は【女神】を復活させて戦う予定だったがもうどうでもいい。オレに取って最強の敵はジュートだ」


 ローレライ・ナーカティック・シグムントは無表情でレオンハルトを見る。その表情は、どんな感情も浮かんでいなかった


 「……そう、なら好きになさい」
 「ええ。あなたは元々、組織には向いていない。【女神】様をエサにしなかったら、きっと【銃神】のように我々を見限っていたでしょうしね」
 「ヒッヒッヒ……」




 その言葉を聞いたレオンハルトは、何も言わずに部屋を出た




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 「あ、レオンハルト様!!」


 ずんずんとクローノス城の通路を歩くレオンハルトを、2人の少年が呼び止めた


 「ん……おう、カマキリとツチオ。どーしたんだ?」
 「はい。あの……稽古を付けてもらおうと」
 「おい錐堂、はっきり言えよ。本気で戦って下さいってよ」
 「うるせぇな、黙ってろよ」


 2人の少年は、レオンハルトの前でギャアギャアケンカする。どうやら稽古を付けてほしいのだが、手加減ではなく本気で相手をして欲しいらしい


 「ったく、ケンカすんな。しょうがねぇな……外で相手してやるよ」
 「やった!! ありがとうございます!!」
 「おっしゃ!!」


 嬉しそうに笑う少年に、レオンハルトの顔も自然と緩む


 「ったく……しょうがねぇ、しょうがねぇんだな」


 こんな風にガキに慕われるのも悪くねぇ、そんな風に思ってしまった




 もうすぐ、最後の戦いが始まる



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