ホントウの勇者

さとう

王都パープルテッラ⑨/蘇る記憶・真実の記憶



 「あら、ジュート」
 「おお、ジュート殿」
 「やっほ、ジュート」


 オニキス、アミール、ルーミアが迎えてくれた


 「よう。改めて久しぶりだな」
 「ええ。あなたにはホントに助けられるわね」
 「そうかよ。それより、あれからどうだ?」
 「問題なくやってるわ。王様を支え、影ながらの部隊としてね」


 オニキスの目に迷いはない
 ただ操られ、命令のままに動いていたオニキスとは別人だ


 「そっか、ヴリコラカスのヤツは元気か?」
 「まあね。たまに城を抜け出して女遊びをしてるけど······最後は教官に見つかってボコボコにされるけどね」
 「教官······ギョロメガラか。まぁ仲良くやってんだな」
 「ええ、吸血鬼と人間の交流も少しづつ始まってるわ。なかなか上手く行かないこともあるけど、一歩ずつ進んでるわ」


 ヴリコラカスならきっとやり遂げるだろう。ここは問題ないな
 そこで俺は、1人いないことに気が付いた


 「そういえば、シェラは?」
 「ああ、あの子なら帰ったわよ」
 「はぁ⁉ 王様を置いてかよ⁉」
 「ええ。何でも今のままじゃ貴方に勝てない、だから修行して強くなる、って言ってたわ」
 「······マジかよ」


 おいおい、どこまで自由なんだよ
 っていうか王様もそれでいいのかよ


 「シェラは【特級魔術師】の称号なんて興味ないって言ってたし、強い人と戦えればそれでいいとも言ってたわ」
 「うーん。あいつ、俺と戦うって言ってたしなぁ……」
 「あなたの強さを見て震えてたわよ。もちろん武者震いだけどね」




 やれやれ。【灰の大陸】での戦いは避けられそうにないな




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 最後に、シャロアイトのもとへやってきた


 「よう。食べてるか?」
 「はい。おなかいっぱいです。けぷ」


 お腹を押さえて満腹をアピールする
 こんな光景も、今日で最後だ


 「……明日、出発するよ」
 「はい。わかってました」
 「ああ。いろいろ世話になった、ありがとう」
 「いえ、わたくしの方こそお礼を。この旅はわたくしにとって大きな収穫でした。わたくしは魔導科学技師として大きく成長できたと感じてます」
 「そうだな……俺もそう思う」
 「はい。できればジュートくんには、あのロボットの解析を手伝ってほしいのですが……」
 「悪いな……」
 「いえ。わかってました」


 シャロアイトはにっこりと微笑む
 この笑顔は、きっとこれからも輝くだろう


 「また来るよ。その時は新しいロボットを見せてくれ」
 「新しい……そうか、復元ではなく、全く新しいロボットを作る……なるほど、これは面白い。さっそくこれまでの分析結果を元に、新たなロボットの図面制作を……」
 「お、落ち着け。それはまた今度だ!!」




 シャロアイトは変わらない……成長してもこのままだな




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 宴が終わると、疲れていたのか全員すぐに眠ってしまった


 王様たちはまだ会議がある。だから出発するのは俺だけだ
 会議は1日中行われるので、俺は今日のうちに全員と別れを済ませた
 もちろん、次の再会を約束して


 そして、宿に戻った俺は〔セーフルーム〕に入る


 予定としては、明日〔バルバリー古代遺跡〕に向かい、その後でマフィのところへ行く。そして何日かリフレッシュしたのちに【灰の大陸】に向かう……というルートだ


 まずは怪我したクライブのお見舞いと、みんなに戦闘のお礼を言わなきゃな


 「おっす、クライブ……大丈夫か?」
 《あ、ジュートさん。すいませんっす、もう平気っすよ》


 〔セーフルーム〕には全員が揃っていて、クライブはソファに横になっていた
 見た目は完治してるけど……あんだけボロボロにされたからな


 「ムリすんな。ほれ、お見舞いだ」
 《お? お、おぉぉぉっ!! これって樹液っすね!? ありがとうっす!!》


 クライブのお見舞いのために、城の兵士にお願いして空き瓶に樹液をたっぷり集めてもらった
 兵士は不思議な顔してたけど、まぁ気にしない


 クライブは、さっそく樹液をチューチュー吸い始める。まぁ大丈夫だろ


 「明日、〔バルバリー古代遺跡〕に向かう。そこでインヘニュールを仲間にしたら、マフィの所で少し休んで、それから【灰の大陸】へ向かおう」
 《そうだな。よーやく【九創世獣ナインス・ビスト】が揃うのか……》
 《そーだね。500年ぶりだぁ……懐かしいね!!》
 《もぐ~!!》
 《ええ。全員揃えば呪いも解けるかも》
 《そりゃあムリだろうさ。コイツは正体不明の呪いだ、解けるのはヴォルフガングか、その魂を受け継ぐジュートくらいのもんさ》
 《うっさいわね、知ってるわよ!!》
 「呪いって……なぁ、あやふやだからちゃんと説明してくれよ。みんなが真の力を使えないってのは、どういうことなんだ?」


 今さらだけど気になった
 断片的で、きちんと説明されたことがないからな


 《簡単よ。【魔神】の命を賭けた一撃で、ヴォルフガングが死んだ……その時の影響が、パスを繋いでいたあたしたちにも現れた。それがこの封印……弱体化の呪いよ》
 《まぁ正確なことはワシらにもわからん。気が付いたら力を封印されこんな姿だからのぉ……肝心のヴォルフガングが戦いにワシらを連れて行かんかったから、詳細がわからんのじゃ》
 《ヴォルの最後はオレらにはわからねぇ……いきなり弱体化、そして各大陸に吹っ飛ばされたからな。ヴォルの最後を見たのは……シロフィーネンスか》
 《そうだね。クロシェットブルムが知らないなら、シロフィーネンスしかいないかも》
 《………そうネ》


 シロフィーネンス……最後の、【灰】の【九創世獣ナインス・ビスト】か


 「なぁ、最後の……シロフィーネンスを仲間にしたらどうするんだ? そのまま【時の大陸】に乗り込むのか?」


 これは流石に無謀すぎる気がするけど


 《いや、まずはシロフィーネンスにヴォルの最後と呪いについて聞く。オレたちの呪いが解けて真の姿に戻れば、【王ノ四牙フォーゲイザー】程度なら蹴散らせるからな。あとはお前のクラスメイトを救出して【神】を滅ぼせば、この8大陸はもう永遠に安泰だ》


 その提案は魅力的だが、これだけは譲れなかった


 「いいかアグニ、シグムントとレオンハルトは俺が倒す。これは絶対に譲らない」


 その答えに、アグニはニヤリと笑った


 《バーカ、お前の獲物を横取りするかよ。オレ達は【時の大陸】の神獣と、残りの神を始末してやる。その二人はお前がキッチリとケリ付けろ。あとは全員で【魔神】をぶっ殺せばいい》
 「……さんきゅ」


 さすが、アグニはわかってる……っていうか


 「なぁ、【魔神】は【銃神ヴォルフガング】ですら引き分けだったんだろ? 俺たちで勝てるのか?」
 《勝てる。間違いなくな》


 自信満々に、ナハトは答える




 《ええ。あたしたち9匹が揃えば、【創造神】に匹敵する力を持つのよ? 女神の眷属・・・・・の【魔神】程度が相手になるわけないわ。それにこっちには創造神の眷属・・・・・・である【銃神】がいるんだもの》




 女神の眷属……? どこかで聞いたような




 「……なぁ、【女神】ってなんだ?」




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 《そうネ、ジュートにはきちんと説明してなかったワネ。まず、この世界の【神】を生み出したのは、この8大陸を生み出した【創造神ジェネシック・バオファオー】と、もう一つあるのヨ》
 「もう1つ!? 初耳だぞ!?」
 《そうね。じゃあ説明するわ》


 この世界、生命、【神】を生み出したのが【創造神】以外にもいたなんて




 《それは【時の大陸】を生み出し、【神の楽園】を作り出した。【創造神】の片割れにして、もう一つの偉大なる神。その名も【女神エレオノール・フォーリア】》




 フォーリア……って、確か【魔神】にも付いていたよな




 ティエルは、真実を語り出した




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 《【女神】が生み出した最強の神、【魔神エルレイン・フォーリア】に対して、【創造神】が生み出した最強の神、【銃神ヴォルフガング】》


 《【創造神】と【女神】は、お互いに不干渉だった。しかし、【創造神】が作った8大陸には命があふれ、花や緑が咲き誇り、種族が溢れ栄え……今のような形となった》


 《対して【女神】は無数の【神】を生み出し、【魔神】の配下とし、【神獣】を生み出し、モンスターが生まれ……死の大陸となった》


 《【女神】は8大陸に嫉妬した……輝くような美しさに。【創造神】は危惧した……【女神】の嫉妬が、この8大陸に災いをもたらすだろうと》


 《そこで【創造神】は、世界を守護するために、1人の神を生み出した》


 《全てに染まり、全てを操る【無】属性を司る、【銃神ヴォルフガング】を。そして【銃神】をサポートするためにいくつかの【神】を生み出し【時の大陸】に送り込み、【創造神】の魂を9つに分けて、あたしたち【九創世獣ナインス・ビスト】を作り出した》


 《【創造神】の意思はここで消える……全てを託して消えたのは、人の生きる世界に【神】が必要ないと悟ったから。自分の思いは【銃神】に託したから》


 《【銃神】は、なぜ自分が生まれたのかわからなかった。【創造神】のことなど記憶になかった……だから、自分も【女神】に作られた【神】と信じて疑わなかった》


 《【銃神】は、【時の大陸】の惨状を目の当たりにし……すぐに興味を失った》


 《【女神】に作られた【神】は、どいつもこいつもバカばかり。8大陸に進行するために【神】は準備を始めるが、【銃神】はすぐに【時の大陸】を出て8大陸に渡る……そちらのほうが面白そうだったから》


 《そこで【銃神】はあたしたちと出会い、旅をして悟る。この8大陸は命の輝きだと、【神】が汚していい領域ではないと》


 《【銃神】は決意する……8大陸を守るために戦うと。【創造神】の意思とは関係なく、戦うと》


 《【銃神】は戦い【魔神】を滅ぼした。そして、自身も消滅した……》




 ティエルの話は、ここで終わった




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 「な、なんでそんな大事なこと黙ってたんだよ!!」
 《落ち着いて……あたしたちも最近になって思い出したの。おそらく7匹集まったから、【創造神】の影響で、いろいろなことが分かるようになってきたの……こんなの初めてよ》


 それに、今の話だと大事なことがある


 「【女神】は、生きている?」


 【魔神】は滅びた。なら【女神】はどうなった?


 《ああ。間違いなくな……だから真の敵は【魔神】じゃねぇ、【女神】だ》
 《ええ。【女神】は【創造神】の対なる存在……だから、あたしたちの封印を解かないと対抗できない》


 ちょっと、ちょっと待てよ
 まさか、こんなことって


 「待てよ、じゃあ……今の【魔神】は一体、誰なんだよ……!?」


 【魔神】は滅びたのにいる。なら【時の大陸】にいるあの金色ヘルメットは【魔神】じゃない?


 「待てよ、よく考えろ……」


 【銃神ヴォルフガング】は【魔神】と相打った。なら【女神】がそこで出てこないのはおかしい
 普通に考えたら絶好のチャンスだ。邪魔者がいないし、わざわざ隠れる意味が、出てこない意味がない 


 「ちょっと待て、前提がおかしいんじゃ……?」


 アグニたちは最後の光景を見ていない。気が付いたら飛ばされてたって、じゃあどうやって最後を確認した? もしかして、こう考えれば


 「まさか、【銃神ヴォルフガング】は【魔神】じゃなくて【女神】と戦っていた……?」


 銃神ヴォルフガングが相打ったのは、【魔神】ではなく【女神】
 最初から【女神】と戦っていた可能性がある


 もしかして、あの金色ヘルメット。あれが【女神】なのか? 


 「なぁみんな。【魔神】ってのはいつからいたんだ?」
 《魔神? そう言えば……いつの間にかいたわね」
 《ああ、あの最後の戦いには居たな。〔クローノス城〕でヴォルと戦ったんだろ?》
 「みんなはどこまで覚えてるんだ?」
 《さぁのう? ヴォルフガングが【時の大陸】に入った瞬間に、クロシェットブルムとシロフィーネンス以外を閉じ込めちまったからのう》


 何だろう、この違和感


 「クロ、【銃神ヴォルフガング】はホントに【魔神】と戦ったのか?」
 《……分からないワ》
 「……そっか」


 1つ、仮説を立てよう


 【銃神】は【魔神】ではなく【女神】と戦っていた
 【銃神】と【女神】は相打ちになり、【魔神】が現れた
 ティエルの話は崩れるな。最初から【魔神】なんていなかったことになる
 【女神】が滅びたタイミングで【魔神】が現れた。なら、【女神】が生み出した【魔神】は保険だった
 そして、レオンハルトが言ってた言葉


 「悪いな、【女神】のため……レオンハルトが言ってた」


 【女神】を復活させる? どうやって? 【魔神】がいる?


 「あ……そっか」


 可能性は1つあった。だって、俺がそうだ




 「今の【魔神】は………〔神の器〕なのか?」





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