ホントウの勇者

さとう

王都パープルテッラ⑧/特級魔術師の宴・フワフワ



 王都に戻った俺は、町の入口でシャロアイトに会った


 「あれ、なんでここに?」
 「はい。ジュートくんがこのまますぐに行ってしまいそうだったので、お迎えに上がりました」


 ちなみにティエルたちは〔セーフルーム〕に戻った
 クライブは怪我したが、ティエルの魔術で完治したらしい。後でお見舞いに行こう


 「ったく。行くときはちゃんと挨拶してから行くよ」
 「ホントですか?」
 「……ああ」


 実はこのまま行ってしまおうと思ったのは内緒だ


 「王様たちは全員黙らせました。ジュートくんが捕まることはありません。と言うか、捕まえるなんて出来ませんがね」
 「いや、暴れねぇよ……」


 全く、俺はどういう風に思われてるんだよ


 「【特級魔術師】の方々も会いたがっていますので、さっそくお城へ行きましょう」
 「わかったよ。ハラも減ったし、メシでも食おうぜ」
 「はい。そう言うと思って準備してあります」
 「おお、さすがシャロアイトだな」


 なんか、シャロアイトとこういうやり取りすんの久し振りだな 




 とにかく、城に向かいますか




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 シャロアイトと町を確認しながら歩く


 雪はすでに溶けていて、吹雪の後遺症は全く無いが、機帝が暴れたため民家に少しだけ被害が出た
 しかし、死人は出なかったようだ……よかった


 「これもジュートくんのおかげです。ありがとうございます」
 「いや、俺の友達が引き起こした事だし、俺の責任でもあるからな」
 「それでも、わたくしは感謝します」
 「……ああ。ありがとな」


 ここでシャロアイトは、そっと手を絡めてきた


 「きっと、今日が最後ですから……」
 「また来るよ、何なら一緒に【灰の大陸】に行くか?」
 「……大変魅力的ですが、わたくしにはやるべき事があります」
 「わかってるよ」
 「……イジワルです。ジュートくん」
 「ごめん、俺も淋しいからさ」


 この【紫の大陸】では、シャロアイトと一緒だった
 それがなくなり、また一人旅に戻る


 「また必ず会いに行くよ。約束だ」
 「はい。約束です」


 城まではあと数分の距離




 俺は小さな手を、そっと握り返した




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 城に着いた俺は、まず王様達からの感謝の言葉を受けた
 ヴリコラカスを除いて、殆どが顔を引きつらせていたが、純粋に感謝の気持ちをくれる王様もいた
 これを機に、〔神の器〕の見る目が少しでも変わればいいかな……なんて


 あとは俺の希望通り食事が準備されていた
 王様達は誰も参加せず、特級魔術師たちと護衛のみが一緒に食事をした
 ヴリコラカスは一緒に混ざろうとしたが、ギョロメガラに耳を引っ張られて連れて行かれた……残念でした


 「おお、スゴいご馳走じゃん!!」
 「はい。町を救ってくれたジュートくんに相応しい料理を準備させて頂きました。たくさんお召し上がり下さい」
 「いや、気持ちはうれしいけど……俺に相応しいって」


 超巨大な円卓に並べられた大量の料理
 しかも100人前は余裕でありそうな感じだ……ムチャしすぎだろ


 この場にいるのは【特級魔術師】が全員と、エルルとクルル、レオパールにアミールとルーミアだ
 このメンツでも全部食べきれるかどうか……いや、勿体ないから食うしかない


 「よし、全員で食べようぜ」
 「まぁ、ジュートくんならそう言うと思っていました」


 全員が納得顔……いや、いいけど




 そういうわけで、お食事開始です




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 「ジュート、これ」
 「お、サンキュ。ルビーラ」
 「うん。あーん」
 「あーん」


 ルビーラが俺の側で肉の塊をフォークで突き出してくる
 俺はそれを一口で食べ、おかえしにルビーラをなでてやった


 「えへへ……」
 「ほら、お前も食べろよ?」
 「うん」


 ルビーラに構い過ぎるのもアレかと思い、近くにいたブランの所へ行く
 ブランはシトリンと一緒にジュースを飲んでいた


 「よう」
 「あ、お兄ちゃん!!」
 「おっと、よしよし……」
 「えへへ。なんか久し振り」
 「こらブラン、危ないでしょ?」


 飲み物を持ったままブランがじゃれついてきたので、シトリンが優しく咎めた


 「はーい。ごめんなさい」
 「気にすんな。ほら、お前もいっぱい食べろよ」
 「うん。ありがと」


 ブランは円卓に向かい、ルビーラと食べ始める
 どうやらいい友達になったみたいだ


 「年も近いからね、すぐに仲良くなったわ。まぁブランが人懐っこいのもあるけどね」
 「確かにな……」


 シトリン、面倒見がいいのは相変わらずだな
 ルビーラに食べさせてるブランを優しく眺めてる


 「ふふ、あのコもすっかり【特級魔術師】ね。こんな日が来るのは分かってたけど……不思議なモノね」
 「そうか? 俺は初めて会って魔術を教えたときから分かってたけどな」
 「そう? ふふふ、ならこれはあなたとの出会いのおかげかしら?」
 「さぁな……」


 それっきり会話は終わるが、別にいい
 シトリンはこんな奴だ。このくらいの距離がいい


 「あら、全く……あんなに汚して。ちょっと行ってくるわね」
 「おう。お前も食べろよ?」
 「はいはい」


 口元が汚れたブランとルビーラの元へ、シトリンは歩いて行った




 やっぱお姉さんだな……変わんねぇよ




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 「お、ジュートさーん!!」


 円卓の側で料理をがっついてるエメラルディアがいた


 「いいね、イイ食いっぷりだ」
 「あはは……そりゃどうも」


 モノクルがキラリと光る。相変わらずだなコイツも


 「いやはや、今回は驚きましたよ」
 「まぁ……大変だったな」
 「はい。でも面白かったです。ドキドキのスリル、興奮の戦闘……あぁ、感動です」
 「お前な……モンスターの図鑑はどうなったんだよ?」
 「あ、もうすぐ【緑の大陸・モンスター図鑑】が完成します!! モンスターの専門家と協議して最後の調整中です。ぐふふ、まずは第一歩です!!」
 「おお、やったじゃん」
 「はぃい!! くぅーッ、でもまだまだです!! いずれはこの8大陸全てのモンスターを!!」
 「お、おう……がんばれ」
 「はい!!」


 夢に燃えてるエメラルディア……相変わらず、輝いてる




 俺はエルルとクルルの元へ向かうことにした




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 「あ、お兄さん」
 「お兄ちゃーん‼」
 「おっと、お前もかクルル」


 俺は飛び付いてきたクルルの頭をなでる
 しっぽがパタパタ、耳もピコピコしてるのは久しぶりだ


 「よしよし、いい子いい子」
 「くぅ〜ん」
 「あん、もうクルルったら·····」


 クルルは俺の胸に顔を埋めてる
 何かくすぐったいな


 「わふぅん、お兄ちゃんの匂い······大好き」
 「く、クルル?」
 「ほら、離れなクルル。ジュートが困ってるよ」


 そこでクルルをひっぺがしたのはレオパール
 俺と目が合うと、まずは謝罪してきた


 「すまないねジュート······いろいろと」
 「いいって、もう気にすんな。それより······」
 「ああ。そういうことさ」


 俺の視線はクルルに
 顔が熱っぽく、どこかぼんやりしてる


 「発情期が来たのさ。来たのは最近だがね」
 「やっぱそうか」


 俺はエルルに視線を向ける


 「あ、私は終わったんで。暫くは来ませんから大丈夫です」
 「そっか」


 どうやらエルルは完全に発情期をコントロールしてる
 俺はなんとなく頭をなでる


 「ふわ······お兄さん?」
 「いや、なんとなくな」
 「ふふ、もっとなでて下さい」


 俺は遠慮なくエルルの頭をなでる
 フワフワした耳をなで、サラサラの髪をなでる


 「くぅ〜ん······」
 「いい子いい子······よ〜しよし」


 俺はエルルの頭から手を離す
 すると、レオパールに連れて行かれたクルルが戻ってきた


 「お兄ちゃん、お兄ちゃんはこれからドコに行くの?」
 「俺? 俺は【灰の大陸】に向かうんだ」
 「そっか〜。また暫く会えないね」
 「仕方ないですよ。お兄さんにはお兄さんの冒険があるから」


 エルルはクルルの頭をなで、優しく語る
 仲良し姉妹は相変わらず。安心した




 2人に挨拶をして、俺はサフィーアの元へ歩きだした




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 「あら、ジュートさん」
 「ようサフィーア。クレアにミレアも」
 「……こんにちは。全く、あなたという人は」
 「こんにちは、ジュートさん!!」


 クレアは呆れ、ミレアは元気いっぱいだった


 「ところで、なんでミレアが? ダンジョンはどうしたんだよ」
 「はい。実はサフィーア様から護衛の依頼がありまして、それでいい経験になると思って受けたんです。もちろんパーティのみんなも承諾済みです」
 「なるほどな。まぁミレアの実力なら問題ないだろ」


 俺がそこまで言うと、クレアが口を挟んでくる


 「あなたね……普通に会話しすぎよ。私達がどれだけ心配したと思ってるの」
 「そうですよ~? クレアちゃんなんて泣きそうな顔で……」
 「さ、サフィーア様っ!?」


 うん。仲良くやってるようでうれしい




 その後もいろいろ話をして、オニキスたちのところへ向かった





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