ホントウの勇者

さとう

MID BOSS BATTLE③/【銃神ヴォルフガング】VS【機帝ディセス・ペラシオン】/心の行方・帰郷



 電撃を帯びたムチは、容赦なく俺たちを襲う


 「よ、避けろティエルッ⁉」
 《わかってるッ‼》


 ティエルは魔力を巧みに操り、アウトブラッキーを上下させたり旋回させたりしてムチを躱す


 しかし、動きが激し過ぎて今度は俺が動けない


 「お、おぉぉぉッ⁉」


 この通り、翼にしがみつくので精一杯だ
 とても攻撃なんて出来る状況じゃない


 《仕方ない、一度離れるわよッ‼》


 ティエルはギアをバックに入れ、魔力を全力で流して逆噴射
 何とかムチの射程外から外れた


 《状況は良くないわね。恐らくあの腕は換装が可能、最初のハンマーが消えた所を見ると、魔力によって生み出された腕······なら、あのムチを壊した所で別の腕が生えるだけかも》


 距離を保ちながらティエルが分析する


 「ならどうする?」
 《そうね······魔力で生まれてる以上、心臓部には魔力の源、つまり〔神の器〕がいるはず。そいつを引きずり出せば···‼》
 「でも、どこにいるか······」
 《う、む〜ん》


 さすがにティエルにもわからないか。あれ、そういえばルーチェは?


 《······くぅ》


 ね、寝てやがる。この状況で
 その様子を見たティエルがキレた


 《くぉらぁッ‼ 起きなさいルーチェミーアッ‼》
 《うきゃっ⁉ なになに〜⁉》
 《あなたねぇ、この状況でよく寝てられるわね‼ 少しは考えなさいよ‼》
 《う、うぅ〜、ゴメン》


 これはさすがにルーチェが悪いので黙ってる


 「と、とにかく。何かいい手を······」


 その時だった
 機帝が、巨大な鉄球を装備した左手を振りかぶったのだ


 《······何を、狙いはあたしたち、じゃない?》
 「······ま、まさかッ⁉」


 俺は後ろを振り向いた


 「下がれティエルッ‼ 後ろに飛べッ‼」
 《え······ま、まさかッ⁉》




 「機帝の狙いは、王都だッ‼」




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 王も、【特級魔術師】も、護衛も······全員が、外の様子に釘付けだった


 得体の知れない巨大な〔古代具〕が、王都の外で暴れてる
 見えにくいが、小さな黒い物体が纏わり付き、それを破壊するために暴れてるように見えた


 「あれは、まさか······」


 シャロアイトは見覚えがあった
 以前、〔ライガの森〕で銃斗と見た〔神の器〕の遺産


 「じゃあ、アレは······ジュートくん?」


 必死に飛び回る黒い物体
 あれは【アウトブラッキー】で間違いない


 すると、周りの何人かは銃斗の存在に気が付いた


 「ねぇ、あれってお兄ちゃんだよね⁉」
 「そうね、間違いないわ······」


 ブランとシトリンも気が付いた


 「······ジュート」
 「······大丈夫ですよ」


 ルビーラとサフィーアも気が付いた


 「あわわ、コレはヤバいですよ⁉」
 「落ち着きなさい。私たちではどうにもできないわ」
 「くふふ、ジュートめ······あんな獲物を独り占めとは、羨ましいな」


 エメラルディアは慌てふためき、オニキスが諌め、シェラヘルツが不敵に笑う


 全員が、銃斗の戦いを見守っていた


 そして、機帝が左手を振りかぶるのが見えた
 その手には巨大な鉄球


 「ま、まさか······⁉」


 シャロアイトはイヤな予感がした
 他のメンバーも、同じように身構えている


 「いけません‼ 逃げて下さい‼」


 シャロアイトが叫ぶと同時に、鉄球が発射される




 狙いは、間違いなく城だった




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 なぜこのタイミングで城が狙われたのかわからない
 でも、俺がやることは1つだ


 「うおぉぉぉッ‼ 『左腕アルマイト』‼」


 俺は左腕を巨大化させ、アウトブラッキーから飛び降りる
 鉄球の発射前だったので、何とか先回りできた


 鉄球が発射され、城を狙う
 拳を振りかぶり、タイミングを合わせる


 「こんのォォォッ‼ 【魂の拳ブレイクイーター】‼」


 俺は鉄球を巨大化した左腕を伸ばして殴りつける
 全力の一撃が衝突し、恐ろしい衝撃が駆け巡った


 「ぐッうゥゥゥゥッ、がぁァァァッ‼」


 衝撃と衝撃がぶつかり合い、相殺
 鉄球は吹き飛ばされ機帝の元へ戻り、俺ははじき飛ばされ城に激突した




 何とか、シャロアイトたちを守れたか




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 「ぐ、うぅぅ……いってぇ」


 城の壁に直撃し、何度か地面を転がったようだ
 起き上がり周囲を確認すると、見慣れた顔がいくつかあった
 飛ばされたのが俺と分かると、何人も近づいてくる


 「お兄ちゃん!!」
 「おっと、ブラン……」


 最初に飛びついてきたのはブラン……めっちゃ泣いてる


 「お兄ちゃん、お兄ちゃん……ひっく」
 「えっと、ケガないか?」


 俺は立ち上がりブランの頭をなでてやる
 すると、近くにもう2人の少女が抱きついてきた


 「お兄さん、お兄さぁん……」
 「うぇぇ……お兄ちゃん……」
 「エルル、クルル……」


 白い耳もしっぽも垂れ下がり元気がない
 これってやっぱり……俺のせいだよな


 「ごめんな……」
 「違うの、悪いのはわたしなの。だから……嫌わないで」
 「お兄さん、ごめんなさい。私……」
 「お兄ちゃん、ごめんなさぁい……」


 あーもう、こりゃ収拾が付かないぞ


 「全く、女の子を泣かせて……」
 「ですね~」


 シトリンとサフィーアが、苦笑してきた


 「う、それは……その」
 「冗談よ。でも……この子達から逃げたのはダメね。私たちからも」
 「はい。せっかく会えたのに、それじゃマイナスですよ?」
 「何がだよ……」


 この2人は余り変わらない
 でも、やっぱり怒ってるのは間違いなさそうだ


 「……ジュート」
 「ルビーラ……久し振り」
 「……うん。やっと会えた。えへへ」


 うーん、久し振りだからか、かわいさが光ってる


 「それよりジュートさん!! あの怪物をなんとかしないと~ッ!!」
 「あ、そうだった。悪いなエメラルディア」
 「いえいえ。あ、お久しぶりです」
 「お、おう……」


 相変わらずテンポが掴みにくい


 「ジュート!! 何か来るわ!!」


 オニキス指さした方向に、アウトブラッキーが来た


 「心配すんな、あれは俺のだ」
 「そ、そうなの?」


 俺が突き破った壁から飛行形態のアウトブラッキーが着陸、中からティエルが声を掛けてきた


 《ジュート無事!? さっさとアイツを倒すわよ!!》
 「おう!! 今行く!!」


 俺はエルルとクルルの頭を優しくなでる


 「エルル、クルル……ゴメンな。俺はお前達に会うのが怖くて逃げていた……でも、もう逃げない。ちゃんとお前達に、みんなに向き合うから。〔神の器〕でも、俺は俺だから」
 「わふ……お兄さん……はい」
 「くぅん……えへへ、お兄ちゃんの手、あったかい」


 2人から離れ、俺はルビーラとブランの頭もなでる


 「ありがとな、それと……悪かった」
 「ううん、もういいの。お兄さんは優しいお兄さんだったから」
 「……うん」


 俺はシトリン、サフィーア、オニキス、エメラルディアを順に見る


 「さ、行きなさい……負けないでね」
 「ふふ。ホントにいい男になりましたね~」
 「ええ。同意するわ」
 「あはは、頑張って下さいね」


 俺は気合いを入れ直し、外を見る


 《ジュート、また飛行機械が来たわ!!》
 「任せとけ!!」


 俺は『冥錬鉄の無神銃エクセレーナ・アイゼン・ブラスター』に魔力を集中させた


 「『三連【紫】装填トリニティ・パープルチャージ』」


 この場にいる少女達を守る。それだけで無限に力が沸いてくる
 『冥錬鉄の無神銃エクセレーナ・アイゼン・ブラスター』を上空に構え、俺が衝突して空いた穴に向かって引き金を引いた


 「【雷震飛鳥アストライアー・ロビン溜撃フルショット】!!」


 巨大な紫の球体をいくつも放ち、そこから無数の鳥が飛び出して飛行機械を破壊する
 とりあえず飛行機はこれでいい。俺はシャロアイトに向き直り、知恵を借りることにした


 「シャロアイト、あのロボットには〔神の器〕が乗っている。そいつの位置が分かれば引きずり出せるんだけど……分からないか?」
 「え、あ……ふむ、そうですね。たしか〔ライガの森〕で発見したロボットは胴体部分に動力炉であるエンジンが積まれていました。なら、同じ人間が開発したロボットなら同じ場所……胴体に心臓がある可能性がありますね。あくまで予想ですが」
 「心臓……そうか、〔神の器〕が心臓なら、そこにいる可能性が高い、か」
 「はい。あくまで予想です」
 「十分だ。あとは任せろ!!」




 俺はアウトブラッキーに乗ると、そのまま飛び出した




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 「ティエル、狙いは心臓だっ!!」
 《心臓……胴体部分ね。大丈夫なの?」
 「ああ、鉛田さんを助ければ問題無い。後は〔凶悪マガツ第三狂神化形態だいさんきょうしんかけいたい〕で跡形もなく消し飛ばす!!」


 ティエルの操縦で、未だに鉄球と電磁ウィップを装備した機帝の近くに来る


 「よし。心臓……あそこか」


 機帝の胴体の心臓部には、強固な装甲で覆われている
 だったら、その中心を抉ってやる


 「ついばめ、『左腕アルマイト』」


 俺は左手を限界まで巨大化し、指を集めて嘴のようにする
 そして腕を捻り回転させ、右目を見開いて狙いを付けた


 「喰い抉れ、【魂抉りビークイーター】!!」


 ドリルのように回転しながら俺の左腕が心臓を狙う
 当然ながら機帝は防御。電磁ウィップで叩き落とそうとするが、ムチを触れた瞬間に弾かれ破壊される
 鉄球では間に合わず、俺の左腕は胴体に届いた


 「おぉぉぉぉッ!! 貫けぇぇぇッ!!」


 ビキビキ、と、音を立てて装甲に亀裂が入る


 「うおォォォォォッ!!」


 そして、ついに貫通した
 機帝はガクガクと痙攣したような動きで、どうやらアタリを引いたと確信する
 俺は左手を開き、慎重に進み……熱を持った物体に触れる


 「これだぁッ!!」


 俺はその物体を握りしめ思い切り引き抜いた
 そして左手を引き戻し確認すると……


 「鉛田さん……う、これは……ヒドい」


 全裸でぐったりしてる女の子、鉛田壊子さん
 身体にはいくつのもチューブが付いている。耳・鼻・口、そして……下半身
 呼吸や心音は弱いがある。このままマフィの所へ送ろう


 「おいマフィ、今からもう1人送るぞ」
 『全く、これで7人目か……ホントに罪な男だよ』
 「あのな、今回はヤバい。そっちで治療してくれ」
 『ああ、任せておけ。上手く誘導してパスが繋げる状態にしておく』
 「う、そうか……うん」
 『ふふん。一気に3人か……お楽しみが増えたな』
 「……覚えてろよ」


 俺は通信を終わらせ、鉛田さんを送った


 《ジュート、決めましょう》
 《やっちゃえ~っ!!》
 「ああ。これを作った人の魂を、家に帰してあげよう」


 出来る事なら、本当に帰って欲しいけどな




 「【第三狂神化サードエボル銃神煌狂宴ヴォルフガング・ヴァルプルギス】」




 中途半端な鎧、歪な巨大腕、狂った右腕銃
 最強形態・【凶悪マガツ第三狂神化形態だいさんきょうしんかけいたい】へ変形した


 「さぁて、まずは射線上に何もない……空に行ってもらおうか」


 俺は巨大な左腕、『魂喰いの左腕ソウルイーター・アルマイト絶甲腕デスゲイズ』を巨大化させる


 《……マジ?》
 《でっか~ッ!?》


 その大きさは、機帝を握りつぶせるほどの大きさ
 軽く500メートル以上はあるだろう。まだまだ余裕だけどね


 「掴め、『絶甲腕デスゲイズ』」


 俺は正面から腕を伸ばし、機帝を難なく捕獲する
 もし鉛田さんが乗っていなければ、最初からこうしていた


 「おぉぉら、よっとぉぉッ!!」


 そのまま回転し、空中にぶん投げた
 きりもみ回転しながらどんどん上昇してる


 「終わりだ……『錬鉄の神銃アイゼン・ブラスター凶狂宴マガツアルム』」


 俺は右腕を構え、狙いを付ける
 〔決戦技弾フィニッシュアーツ・ストレージ〕を脳内で装填
 これで、救われるといいな


 「悪いな」


 引き金を引き、全てを終わらせた




 「【銃神絶狂砲撃ヴォルフガング・デモン・ブラスター】‼」




 放たれた濡羽色の砲撃が、機帝を完全に消滅させた




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 〔ライガの森〕の遺跡の最深部、機帝が眠っていた場所


 機帝を起動させるためのディスプレイが、小さく輝いた


 そこにあるはずのない人間の魂が、最後に残したメッセージ








 「ありがとう。オレはやっと帰れるんだ」








 そのメッセージは、誰にも届かない


 恨みに捕らわれ、神に翻弄された魂の最後の想い




 1つの命は、ようやく故郷に帰ることが出来た


 

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