ホントウの勇者

さとう

ANOTHER BOSS BATTLE/【蟲神ラルヴァアンセクト】VS【鋼神アセロスティナ】/鉄・ギガント



 山野虫菜 VS 鉄間蓮夏


 「がァァァァァァァッ!! やぁまぁのォォォォォッ!!」


 鉄間蓮夏は、めちゃくちゃキレていた


 「わーお、どうしよ」


 虫菜は、民家の屋根から鉄間を見下ろして呟く
 理由は簡単。虫菜は全く姿を現さずに「虫」を使って鉄間を攻撃していた


 「ブンブンブンブンうっぜぇんだよぉッ!!」


 しかし、産みだした虫は全て叩き潰される
 まともなヒットはお互いに一発もない、しかし虫菜は一度でも貰うとたちまちアウトになる


 「うーん、物理はだめっぽいな。ならコレでどうかな?」


 『スレイビー・コルニクルム』のタッチパネルを操作して虫を生み出す


 仕組みは簡単。虫菜の記憶の中にある虫が一覧で表示され、その虫を選択すると現実に呼び出すことが出来る
 虫は限りなく本物で、内蔵もあるので飲食すら出来る。それに身体は魔力で出来ているので虫菜の任意で出したり消したりも出来る
 現在の虫菜が召喚できる虫は500、一度に召喚できるのは200ほど
 記憶の奥底から神器に反映されるので、虫菜自身が知らない虫もたくさんあった


 さらに出来るのが『創造昆虫クリエイト・モンスト
 虫自身の特徴を掛け合わせ、全く新しい虫を作り上げる事ができるのだ。しかし、オリジナルの虫を召喚するのには大量の魔力が必要だし、同時に30匹ほどしか今の虫菜には生み出せなかった


 「さて、こいつでどうかな?」




 虫菜は、この世界で見つけた昆虫を召喚した




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 「チッ、虫虫虫……それしか出来ねぇ役立たずがチョーシのんじゃねぇぞ!!」


 鉄間はすでに神器を発動させ、両手両足を神器でコーティングしている
 しかし、鉄間の真骨頂は接近戦。こういうコソコソした敵とは相性が最悪だった


 「あぁぁぁッ、クソ……イラつく」


 そのイライラを全て現れる虫にぶつけるが、気持ちのいい物ではない


 「山野のヤロォ……連れ戻す前に何発かぶん殴ってやる……!!」


 そして、更なる虫が現れる
 桃色の羽を羽ばたかせた大きな蝶が、何匹も向かってきた


 「……あぁウゼぇッ!! 【ベアリングショック】!!」


 パチンコ玉ほどの金属球が現れて、全ての蝶がたたき落とされた


 「………あん?」


 そして、パラパラと何かが落ちてくる
 それは、蝶の羽から分泌された鱗粉だった


 「………んだ、こ…りゃ……?」




 鉄間はフラフラし、そのまま倒れてしまった




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 「………平気かな?」


 虫菜は屋根から降り、壁際からこっそりと様子を伺っていた


 「さっすが「ネムリチョウ」の鱗粉。すっごく効いた」


 ネムリチョウはこの8大陸に住む貴重なチョウチョ
 鱗粉には睡眠作用があり、医薬品や眠り薬として使用される


 虫菜は鉄間にこっそりと近づいて安全を確かめた


 「………おっけ」


 規則正しい寝息、心拍数を確認し立ち上がる
 鉄間はこのまま放っておいて、この吹雪の原因を探そうと歩き出した


 「……え?」


 足に何かが絡まり立ち止まる
 そのまま視線を下に移した






 「つーかまえたァァァァァッ!!」






 鉄間蓮夏が、虫菜の足を掴んでいた




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 「ぎっ、な……なんで!?」


 万力のような力で足首を握りしめられる
 ネムリチョウの鱗粉が、まるで効いていなかった


 「アホか、お前が言ったんだろうが……「ネムリチョウには気を付けろ」ってなぁッ!!」
 「ぎゃうっ!?」


 鉄間は虫菜の足を掴んだまま立ち上がり、そのまま虫菜を地面に引きずり倒した
 そのまま足首を握りしめ愉悦に顔を歪ませた


 「さ~て、お仕置きの時間だぜ」
 「は、離してっ!?」
 「やなこった」


 鉄間は、足を掴んだまま虫菜の胸を踏みつけた


 「おお? やっぱデカいな……クッションみてぇだ」
 「ぐ、うぅぅ……っ」


 グリグリと胸を潰され呼吸が困難になる
 痛みに顔が歪み、涙が溢れてきた 


 「来て……っ」
 「あぁん? おわッ!?」


 鉄間の意識は虫菜に向いていた
 よって視線は自然と下に、なので虫菜の保険の虫に気が付かなかった


 それはバッタ
 緑色の大きなバッタが100匹ほど鉄間に向かっていく


 「チッ、うっぜぇッ!!」
 「離し……てッ!!」
 「いでっ!?」


 虫菜は空いてる足で鉄間の腹を蹴りつけ、ようやく解放される


 「【バッタ乱舞】!!」


 瞬間的に神器を使いバッタのカーテンを作り脱出
 民家と民家の間に隠れ、鉄間の視界の影に逃げ込んだ


 鉄間は【ベアリングショック】でバッタをなぎ払い、身体を震わせた


 「く、ククク……もういいわ、徹底的にブチのめす。そんで連れ帰って鳴見に治してもらえばいい……山野の分際で舐めやがって」


 鉄間はブチ切れた
 両手を広げて「力」を解放する




 「【第二神化セカンドエボル鋼神覚醒アセロスティナ・アウェイクン】」




 ドロリとした金属が現れ完全な球体に変形する
 その大きさは直径1メートルほど、数は4つ
 その球体は衛星のように鉄間の周りを周回しはじめた






 「ブチかませ、『螺剛鉄球らごうてっきゅうバルガデロ・グラッブス』!!」






 「やっば……」




 虫菜は、無意識に呟いた




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 「どこにいるかわかんねぇなら……全部ぶっ壊す!!」


 衛星のように回転していた鉄球が、ピンボールのように弾けた


 「なッ!?」


 それは無差別な破壊
 民家の屋根が壊され、壁が崩れ、玄関や窓が破壊される


 「な、何だぁッ!?」
 「にげろ、逃げろぉぉッ!!」
 「パパ、ママーっ!!」


 住宅を破壊された住人が家から飛び出してくる
 その光景を見た鉄間はニヤリと笑い叫びを上げる


 「オラオラァーッ!! 山野ぉッ、このままだとここは更地になっちまうぞぉぉッ!!」


 鉄球はスパイクが装備され、さらなる破壊を行いながら住宅を跳ねる
 家が破壊され住民は逃げ惑う。この吹雪の中薄着で飛び出す人もいた
 小さな子連れもいた、年寄りもいた、泣いてる子もいた




 「やめてぇッ!!」




 虫菜は何も考えずに飛び出していた




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 建物は破壊され、周囲はほとんど更地になってしまった


 「お願い、やめて」
 「はぁぁん? 何だよテメェ……今さらやる気かよ」


 虫菜の手にはラジコンのコントローラの神器・『スレイビー・コルニクルム』が握られている
 その意味を鉄間は簡単に理解した


 「いいのか? お前じゃアタシには勝てねーぜ?」
 「やってみなきゃわかんない。あたし、怒ったから」
 「へぇ……おもしれぇ」


 虫菜は眉をつり上げて鉄間を見る


 「あたしはこの世界で生きる。だから、この世界の人達を守る」
 「ほぉ? アタシたちの元へは帰らねぇと?」
 「違う。みんなで生きるの。もちろん蓮夏も一緒に」
 「はぁぁ?」


 意味がわからない、と言う風に首をかしげる鉄間
 しかし虫菜は迷わず続けた


 「みんな一緒、だから……ここで死ぬワケには、連れて行かれるワケにはいかない」


 プロポを構え、「力」を顕現させる




 「【第二神化セカンドエボル蟲神覚醒ラルヴァアンセクト・アウェイクン】」




 淡い光がプロポを包む……が、特に変化はなかった


 「なんだぁ? ハハハハハッ、終わりかよ、じゃあ行くぜ!!」
 「待って、あたしの〔第二神化形態〕の能力……教える」


 虫菜はプロポを操作してにっこり笑う


 「何だよ、親切じゃねぇか」
 「うん。あたしの力はとっても簡単、そして単純」


 虫菜は人差し指で上をクイクイと差す


 「あん……?」


 鉄間は指の後を追い、首を上に向けた






 「………はぁ?」






 巨大な黒い塊が落下し、鉄間を押しつぶした




 「『ギガント・スレイビー・コルニクルム』……「虫」を巨大化するの」




 落下してきたのは、全長20メートルのダンゴムシだった




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 「………死んでないよね?」


 今度は近づかないで確認する
 ダンゴムシは丸まったまま動かない


 「今度こそ、終わり……じゃないか」


 ダンゴムシが上下に揺れる
 ドゴン、ゴゴンと音が響き、ダンゴムシは吹き飛ばされた


 「はっはァァァァァァァッ!! 舐めたマネしやがってぇぇぇぇッ!!」


 不意打ちでガードが不十分だったのか、ボロボロだった
 虫菜は、最強の技を解放するために鉄間に話しかけた


 「ねぇ、もうやめよ?」
 「………マジで言ってんのか?」
 「うん、っていうかまだやるなら最強の切り札を使う。あたしも正直使いたくないけど仕方ない」
 「くかか……おもしれぇ、かかって来いよ。その上でテメェをぶちのめす!!」
 「ホントにいいの?」
 「うるせぇ!!」
 「わかった。後悔しないでね?」


 虫菜は最強にして最後の切り札を切るために、プロポを操作した


 「じゃ、がんばってね」
 「フザけろ!!」


 虫菜の命令で虫が呼び出される
 〔第二神化形態〕により、呼び出すことが出来る数も増えている


 「……あ?」


 それは、誰でも一度は見たことがある


 「……おい、まさか」


 雑食で生命力が強く、台所の敵と言われてる


 「じょ、冗談だろ……?」


 太古の昔から生存してきた生きる化石


 「う、ウソ……い、いや……」


 黒く、ツヤがあり、触覚があり、空も飛べる害虫


 「い、イヤァァァァァァァッ!?」




 それは、数千匹のゴキブリだった




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 鉄間蓮夏の女の声は、思った以上に高音だった


 ゴキブリ……究極の害虫


 男だろうと、女だろうと、コイツを好きな人間はまずいない
 素手で触るのは論外、ハシで摘まむのすら躊躇う
 そんなゴキブリが数千匹、鉄間蓮夏を包囲していた


 「ヤダヤダヤダぁぁッ!! ゴメン、ごめんなさぃぃぃっ!!」
 「だから言ったのに」


 戦況は完全に逆転していた
 鉄間は蹲り、失禁していた


 「あ、もらしてる」
 「いやぁぁ……見ないでぇ」


 虫菜はニヤリと笑い、プロポを操作する


 「えい」
 「い、やぁぁぁっ!?」


 包囲網を少しずつ狭めていく……少し進め、止めてを繰り返す


 「イヤ、イヤ、いや………はぅ」
 「あ」


 鉄間は気を失って後ろに倒れ、後頭部で何匹か潰してしまった
 さすがに悪いと思い解除した


 「あらら……ゴメンね」




 虫菜は手を合わせて謝った




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 「さて、民家は……」


 離れた所でノビてる鉄間を置いて、壊れた民家を見た
 しかし、虫菜ではどうしようもないし、住民も戻ってこない


 「仕方ない、まずは吹雪を……え?」


 突如、緑の塊が虫菜の後ろを駆け抜ける


 「ヤッバ、蓮夏に逃げられた」




 虫菜は、後を追いかけるために走り出した





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