ホントウの勇者

さとう

ANOTHER BOSS BATTLE/【氷神リディニーク】VS【裂神インぺトゥス】/突・氷心零界



 高名氷寒 VS 鬼竹突漢


 「おりゃりゃりゃりゃりゃ〜ッ‼」
 「チッ‼」


 鬼竹の神器は突撃槍
 柄だけで2メートル、槍先は1メートル弱。まるで巨大な鳥の嘴のような形
 その突撃槍を振り回し、薙ぎ払い、穿ち、振り下ろす
 鬼竹の以外にも多彩な攻撃に、氷寒は押されていた


 「ほいさぁっ‼」 
 「くっ⁉」


 突撃槍を振り上げ、ワザとスキを作る
 踏み込んだ瞬間に柄尻による突きを食らわせる


 氷寒はその一撃を小剣で受け止めつつ後退した


 「ほほぅ、やるやないか。オイの槍裁きをここまで躱すとはなぁっ‼」
 「······ふん、漫画の読み過ぎよ。なにその喋り方?」
 「ぐふっ⁉」


 精神的ダメージは負わせられたが、このままではマズい
 事実、槍裁きが激しすぎてなかなか攻撃に移れない


 だからこそ、どんなスキも見逃さない


 「【氷牙刃ひょうがじん】‼」


 『零氷姫の凍剣スティーリア・イスベルグ』を振るうと、剣先から薄い氷の刃が飛び出した


 「んん?」


 落ち込んでいた鬼竹は、顔を上げると刃の存在に気が付く
 距離は数メートル。避けることは困難······しかし




 「ふんがッ‼」




 刃は鬼竹の頭と身体に命中した
 が、鬼竹は全くの無傷のままだった


 「ムッふっふっふっふ······何で効かない、と思っているな?」
 「········」
 「くくく、答えは簡単さ。どんな攻撃、魔術も力を込めた瞬間だけ無効化できるのさ。それがオイの神器・『漢の一本槍おとこのいっぽんやり』なのである‼」


 聞いてもいないことをベラベラ勝手に話してくれた
 名前はともかく、なかなか厄介な能力だった


 「さらに‼ オイの必殺技と合わせれば無敵の力となるのだぁっ‼」


 鬼竹は突撃槍を両手で構え、槍先を氷寒に向ける


 「ロ〜ック、オォン‼」


 アホらしいがイヤな予感がする
 氷寒は油断なく構え、突撃槍の特性、無敵の能力を合わせた必殺技の動きを予想。先手を打った


 「【氷連壁ひょうれんへき】‼」
 「【漢・突貫おとこ・トッカン】‼」


 氷寒と鬼竹の間に、ドミノ倒しのように氷の壁が出来上がる
 狙いは自滅
 構え、武器の特性からして突進なのはすぐに分かった。だからこそ壁を作り動きを止め、その瞬間を狙うことにした


 が、氷寒の予想は外れた


 「おりゃあぁ〜〜ッ‼」
 「なっ⁉」


 鬼竹の突進は、氷の壁を全てぶち破り、剣を構えた氷寒を掠め、吹き飛ばした


 「ぐぁうっ⁉」


 掠っただけで5メートル以上弾き飛ばされ、民家の壁に激突する
 鬼竹は突撃槍を肩に担ぎ、カラカラと笑った


 「お〜っと悪い。死んじゃいねぇよな?」
 「······ぐっ、あ」


 氷寒は立ち上がり、鬼竹を睨みつけた


 「······今の、ただの突進じゃない。何が……?」


 鬼竹は、その質問に笑顔で答える
 氷寒の時間稼ぎと気が付かないのは、氷寒にとって好都合だった


 「ハッハッハ、簡単なことよ。今のはオイの魔力を爆発させて推進力に変えたからよ。これがオイの【固有属性エンチャントスキル】・『漢の噴射ナイスガイ・ブースター』よ‼」


 臀部をプリプリさせながら語る鬼竹
 いちいち名前はムカつくが、氷寒は脅威を感じていた
 噴射の速度で突進、無敵の力でどんな場所でも突っ込んでいける。さらに迎撃をして落とそうとしてもダメージは無効化される


 「······厄介ね」
 「オウよ、だから諦めろよ。オイたちの元へ帰ってこい」
 「······それは違うわ」
 「あぁん?」


 氷寒は微笑み、強く言う


 「帰ってくるのはアナタたちよ。ホントウの居場所はそこじゃない、自分たちで作るものよ」


 迷いなく答え前を向く
 その強さに、鬼竹は心が揺れた


 「そんなにジュートの側がいいのかぃ? オイたちより、裏切りの神の化身の側が······‼」
 「違うわ。ジュートじゃなくてみんなの側、クラスのみんなの側を取り戻すためにジュートといるの」
 「······そぅかい。じゃあ、オイを倒して、居場所を取り戻さないとなぁ‼」
 「······そうね。アナタも大事な仲間だからね」
 「お、おぉ⁉ オイにも春が······っ‼」
 「······何を勘違いしてるの? キモいわ」
 「ぬがはぁっ⁉」


 説得は無理と判断したのか、鬼竹は再び構える
 その笑みは迷いなく氷寒を見つめていた


 「高名よぉ、そこまで本気なら、オイの本気を受けてみろやぁっ‼」


 鬼竹の力が溢れ、形となって顕現する




 「【第二神化セカンドエボル裂神覚醒インペトゥス・アウェイクン】」




 鬼竹の突撃槍が肥大化する
 全長3メートルの突撃槍が、そのままの形で巨大化する


 鬼竹の構えは変わらなかった
 全長20メートルほどに大きくなった突撃槍を、迷いなく構えていた


 「······なっ⁉」


 鬼竹はニヤリと笑い、氷寒に告げる




 「コイツがオイの最強神器・『猛る漢の突撃槍たけるおとこのとつげきそう』だぁっ‼」




 名前はともかく、脅威は増した




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 鬼竹と氷寒の距離は50メートルほど
 鬼竹の突進ならば1秒もかからないぢろう


 「いっくぜぇ〜っ‼ 【しん超突貫ちょうとっかん】‼」


 氷寒は落ち着いていた
 おそらく瞬きの間に、突撃槍との距離はゼロになる
 既に鬼竹の臀部から炎が吹き、突撃槍は迫っていた


 だけど、氷寒は微笑んだ




 「【第二神化セカンドエボル氷神覚醒リディニーク・アウェイクン】」




 鬼竹の突進は目の前に迫っている


 氷寒の姿が変わる
 白く美しい戦闘服を纏い、氷のような透き通る鎧と盾
 氷のように研ぎ澄まされ、細く長くなった細剣レイピア
 頭を覆うヘルム、腕を覆う籠手ガントレット
 全てが美しく、白く蒼く煌めいていた




 「『零氷姫の凍剣スティーリア・イスベルグ氷心零界グラスハーツ』」




 氷寒は一歩、横にずれて突進を躱す
 衝撃は全て鎧が防ぎ、弾かれることはなかった


 「おおっとぉっ⁉ イイねイイねぇっ、熱くなってきたぁ〜ッ‼」 


 鬼竹は着地して方向転換、再び氷寒に迫っていた
 勢いを付けていた鬼竹は、確かに聞いた


 「弱点、見つけたわ」
 「はぁ?」


 氷寒がレイピアを振るうと、氷の彫刻が出来た


 「な、な、な、なぁぁぁ〜っ⁉」
 「······じゃあね」


 それは、発射台


 勢いの付いた鬼竹は止まらず、まるでロケットのように発射台を駆け抜け打ち上がった


 「うぉぉぉぉ〜ッ⁉」


 突然の空中に、鬼竹は慌てふためく
 勢いは凄まじく、100メートルは飛び上がった


 「た、助けてけくれ〜ッ⁉」


 叫ぶ鬼竹に、氷寒は呟いた


 「いいわよ? さっきのお返しね。【氷打剛拳ひょうだごうけん】‼」
 「はいぃ⁉」


 空中の鬼竹の真上に、巨大な氷の拳が出来た
 鬼竹は、神器を手放したので無敵を使えない


 「うっそ〜ん⁉」




 落下する拳の直撃を受け、地面に激突した




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 「ま、こんな所ね」




 地面に激突する前に、柔らかく作った氷をクッションにしたので死んではいない


 どうせ暫くは起きないだろうし、氷寒は鬼竹を無視して歩きだした


 「······えっ⁉」


 だから、緑の物体が鬼竹を攫った瞬間に対応出来なかった


 「······しまった、轄俥くんね⁉」




 氷寒は全力で走り出した





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