ホントウの勇者

さとう

王都パープルテッラ⑦/吹雪・始まりの狼煙



 「ジュートくん。昨日はどちらへ?」


 シャロアイトの部屋に迎えに行くと、なぜか怒っていた


 「き、昨日は外で見張りをしてたんだよ」
 「そうですか」


 素っ気ない……これはマズいな、何故か怒ってる


 「さ、行こうぜ。今日で会議は終わりだ」
 「はい……」


 今日で終わり
 即ち、俺とシャロアイトの別れも近い


 「ほら、王様達は先に行ったから、あとは俺たちだけだぞ」
 「はい。行きましょう」


 シャロアイトの部屋から出て通路を歩く
 〔8大王協議会〕の二日目、最終日




 別れと戦いの時は、近づいていた




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 シャロアイトと一緒に部屋に入ると、全ての視線が俺たちを射貫く


 その視線から逃げるように、俺はシャロアイトの後ろに付いた
 椅子を引いてシャロアイトを座らせ、再び置物になる


 あとはひたすら終わるのを待つ
 簡単だ、そして明日には出発。インヘニュールに会いに行く


 すると、頭の中で声が聞こえた








 《マズいワ……ジュート、〔神の器〕ヨ!!》








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 「はぁ……?」


 思わず俺は声を出してしまった
 ちょうど静かだったのでその声はよく通り、注目を浴びる


 「あ、いや……何でもないです」


 おいクロ、どういうことだよ?


 《外に複数の〔神の器〕の気配がするのヨ……ワタシが気付かないなんて……ッ!!》


 「ふむ、何か言いたいことでも?」
 「あー、いえ……そういうワケじゃ」


 人数は? 誰だ? このタイミングでかよ!?


 《人数は……ウソ、10人はいるワ。マズイ……力が高まってる。場所は……町の中心ヨ!!》


 「クソッ!!」
 「ジュートくん?」
 「来い、クロッ!!」


 俺はクロを呼び出して一番近い窓に駆け寄る
 突如現れたネコに全員が驚くが構ってる場合じゃない


 「ジュート殿、何のつもりで?」
 「ったく。おいジュート、何してんだよ?」


 騎士団長とヴリコラカスが俺を非難するがどうでもいい


 「ジュート?」
 「ジュートさん?」
 「ジュート?」
 「ジュートさ~ん?」
 「お兄ちゃん……?」
 「ジュート、一体何が?」
 「ジュート、何をしてる?」
 「ジュートくん?」


 8人の【特級魔術師】が、俺を問い詰める
 くそ、どうする。どうすれば……ちくしょう


 言うしかない。ここで言うしかない








 「敵だ。町の中に〔神の器〕が入り込んだ!!」








 そして、窓の外が真っ白になった




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 「な、これは……雪!?」


 外は猛吹雪になっていた
 数メートル先も見えない雪と風の嵐が町を襲ってる


 「クロ、これも神器の力か!?」
 《ジュ、ジュート……》
 「何だよ!! あ………」


 俺は後ろを振り向いた
 するとそこには……恐怖の表情があった
 全員が、俺を追い詰めるように見ていた


 「ど、どうしてわかったんだ……?」
 「ま、まさか……仲間なのか?」
 「〔神の器〕と、繋がってる……そんな」


 何人かの王様は、俺から距離を取ろうとする
 兵士が近づいてきて剣を抜いた


 「ジュート殿……残念です……ッ!!」


 騎士団長も剣を抜いて俺に剣先を突きつけた
 【特級魔術師】たちは困惑するが、王の護衛と共に立つ、真意はわからないが


 「……………」


 やっぱり、こうなるのか


 クレアやミレア、エルルとクルルなども、立場上俺に向かわなくてはならない
 それはこの場にいる全【特級魔術師】たちも変わらない
 ここで俺を庇えば、間違いなく反逆者として扱われるだろう


 「………仕方ない、よな」


 出来る事なら、何事もなくこの大陸を離れたかった
 みんなと……シャロアイトと、お別れがしたかった
 でも、もうムリだな






 「神器……発動」






 俺を包む濡羽色の輝き
 こんな時でも温かく、優しいぬくもりを感じる


 「………ありがとな、楽しかった」




 〔神化形態〕のままシャロアイトに微笑み、俺は窓から飛び出した




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 「ちっくしょう……!!」
 《ジュート、気を付けなサイ!!》


 涙も凍る猛吹雪の中、城から出た俺は町に出る
 するとそこに、1人のハゲが俺を待っていた


 「お~い止めろ、無月のおでましだ!!」


 その言葉に周囲の吹雪はピタリと止む
 そこにいたのは、これで三度目となる腐れハゲ


 「ぎゃあッはっは~ッ!! よぉ無月ぃ……遊ぼうぜェ?」
 「………錐堂」


 〔第二神化形態〕を纏った錐堂螳螂が俺を待っていた


 「ったく、これで羽蔵の作戦も成功だな。ま~さか最初でアタリを引くとは思わなかったけどな」
 「……どういうことだ」
 「簡単だよ。お前の居場所をあぶり出すために、大きい町を1つずつ潰していく作戦だったのさ。そうすりゃお人好しのお前なら必ず出てくると思ってよぉ、ぎゃっはっは」
 「……羽蔵の作戦?」
 「そうさ、この作戦は羽蔵が考えたのさ、くっくっく……アイツもだいぶ不安定になって来たぜぇ?」
 「……そうか」
 「そ~ゆうことさ。じゃあ遊ぼうぜぇッ!!」


 俺の思考は殺意に染まっていた


 まずは両腕を切断し、武器を使えないようにする
 次は両足……イモムシの完成だ
 あとは、じっくりたっぷり味わえばいい……


 俺の両手は2本の小剣に添えられた






 「……ダメよ」






 聞き覚えのある声が、どこかから聞こえた




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 俺が見たのは一瞬の攻撃だった


 氷の塊が錐堂を襲い
 糸が大鎌に巻き付き
 水の刃が神器を切り刻み
 小さな蝶の鱗粉が錐堂の意識を奪った


 「みんな……」


 現れたのは、4人の少女
 全員が神器で武装し、黒いジャケットを着ていた


 「……久し振り」
 「やっほ~」
 「大丈夫?」
 「………」


 不思議と顔が綻ぶ


 「ありがとう、助かった」
 「……ウソね」
 「うん。ウソ」




 「……あなた、彼を殺そうとしたでしょ?」




 何故か言い返せなかった


 「なにがあったの?」
 「………まぁ、いろいろ」
 「話はあと!! 今はとにかくこの状況をなんとかしないと」
 「そうだね~、このままじゃマズイっしょ」
 「……敵は何人かしら?」


 そうだな、今はとにかく意識を切り替えよう
 まずはこの吹雪をなんとかしなくちゃ………って


 「み、みんなも戦うのか!?」
 「あたりまえ」
 「そうですよ!! こんなの見てられないわ!!」
 「だね~」
 「……敵は何人?」
 《10人ネ、1人倒したからあと9人ヨ》


 氷寒がしゃがみ込んで、足下のクロに確認した


 「……手分けしてこの吹雪の神器を破壊しましょう、行けるわね?」
 「おっけ~っ!!」
 「任せて!!」
 「おけ」
 「ちょ、マジで!?」


 俺がみんなを止めようとしたとき、もの凄い速度で何かが飛んできた


 「な、何だ!?」
 「伏せてッ!!」


 それは緑色の何かで、形まではわからなかった
 が、その物体には意味があった


 「ねぇ、錐堂がいない」
 「……まさか、轄俥くんの神器!?」
 「ありえるね……」
 「轄俥って、アイツの神器はクルマ……そうか、〔第二神化形態〕か!?」
 「まさか、クラスのみんなが……」
 「じゃあこの雪って……」
 「尼宮あまみやさんかも。たしか雪を降らせてた」


 とにかく急がないと、町が雪に埋もれちまう


 「わかった、手分けして行こう……絶対にムリはするな!!」
 「おっけ~!!」




 こうして、俺たち5人は手分けして移動した




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 「ここは……工場かな?」




 水萌は1人、工場地帯を走っていた
 周囲を見回すと大きな建物がいくつもあり、吹雪の影響かシャッターは全て閉まってる


 「さ、寒い……あ、そうだ!!」


 水萌は手に握る大きな錫杖を構え、呟いた


 「包め、【水膜みずまく】」


 すると水萌の周囲の水分がまとわりつき、ゼリーのように身体を包む


 水分の操作、これが【水神マイアワティル】の神器・『水辺の雫錫杖デューリンク・ファンテーン』の力


 本来なら町1つを洪水で流し、湖を作って沈めるくらいの力はある
 しかし、今の水萌にはそこまでの力は引き出せず、せいぜい【特級魔術】くらいの力しか引き出せなかった


 「ここじゃない……違う場所に」


 水萌は振り返り、工場地帯を後にする
 そして、一歩目を踏み出した時だった






 「【箱檻はこおり】」






 「え、きゃぁぁぁっ!?」


 突然、四方に現れた黒い壁が、水萌を包み込んだ
 それは1つの箱……檻となる


 「な、なにコレ……!?」






 「みーつけた、水萌ちゃん!!」






 柔らかく、優しく微笑む1人の少女が現れる
 手を後ろで組み、親友との再会を喜ぶ少女




 「み、魅檻ちゃん……!?」
 「会いたかったよ、水萌ちゃん!!」




 【獄神アレスタシオン】の〔神の器〕・雅門がもん魅檻みおりがそこにいた




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 「やいやいやい裏切りモノめッ!! 正義の鉄槌をくらえぃぃッ!!」
 「……くッ!?」


 氷寒は町の外れですでに戦闘に入っていた
 敵は1人、刈り上げの頭に長いヤリ……突撃槍を構えてる


 「高名、悪いこたぁ言わねぇ……戻って来いや、こん畜生!!」
 「……うるさい、あとその喋りウザいわ」
 「……はい」


 鬼竹突漢はガクリと落ち込むがすぐに立ち直る


 氷寒の手には一本のショートソード
 氷を彫刻したような美しい剣・『零氷姫の凍剣スティーリア・イスベルグ』が握られている


 その剣を構えて冷たく、氷のように告げる




 「……急いでるの、すぐに終わらせるわ」




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 「だァァァァッ、ちっきしょォォォォォッ!!」
 「………」


 虫菜は、鉄間連夏の前から姿を消し、民家の上から覗いていた
 虫菜は自分の虫が直接戦闘が得意で無い事を自覚してる、だから隠れて虫に任せてるのだ


 「出てきやがれ山野ぉッ!! コソコソすんなぁッ!!」
 「ヤダ」


 虫菜は手に握ったプロポ、『スレイビー・コルニクルム』に命じ、虫を作る


 「ハチ、アブ、ハエ……『創造昆虫クリエイト・モンスト』」


 すると、数十匹の巨大ハチが現れて鉄間を襲う
 が、全て金属を纏った拳でたたき落とされた


 「くっそがァァァァァァァッ!!」
 「わーお、めっちゃ怒ってる」




 戦いは、まだまだ長引きそうだった




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 「み~つけた。あたしが一番かな?」
 「あちゃー……見つかったわ」


 かまくらの中に隠れていた尼宮真冬を、括利は見つけた


 「ねぇまふゆ~、この吹雪とめてよ~っ!!」
 「は? イヤだわ」
 「寒いの~っ!!」
 「うるせーわ……眠ってろ」


 すると尼宮の脇に雪が集まり、2体の雪だるまが現れる
 雪だるまはいくつもの球体が集まって出来た、不気味なだるまだった


 「ありゃりゃ……あたしとヤるの?」
 「ま、そーだわ」


 括利は不適な笑みを浮かべて指を踊らせる
 その手には既に神器がはめられていた


 「『襟巻縛コレットワール』」


 一瞬で雪だるまは糸により拘束される
 そして、括利は遠慮なく糸を引いた


 「『空殺巻ベンフィーロ』」


 雪だるまに纏わり付いた糸が収縮……雪だるまは砕け散った


 「さぁて……どーするの~?」
 「もちろん、こーするんだわ」
 「……へ?」


 ニヤッとした括利の表情が一変、急に真っ青になる


 「『スノーメン』たち、やっちまえ」
 「うっそ~っ!?」




 数百の雪だるまが、括利を襲う




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 「クソッ、あちこちで力を感じる‼」
 《ジュート、中央に大きな力を感じるワ‼》


 俺たちは全力で橋っていた
 そして、町の中央広場に敵はいた


 「よう、ジュート」
 「おひさ〜」
 「やぁ、無月くん」
 「来たわね」


 そこに居たのは4人
 真藤巌次・弓島黎明・達俣土丸・羽蔵麻止
 全員がマントを付けていた


 「······みんな」


 俺は臨戦態勢になる
 好戦的な自分が起きるのを自覚する


 「おお、ヤル気満々だな。楽しみだぜ」
 「無月くん···借りは返させてもらうよ」
 「巌次、土丸······」


 巌次と土丸は前に出る


 「やっと会えたね、ジュート」
 「弓島さん······そうだね」
 「じゃあ、行くね」


 弓島さんも前に出る


 「·········」
 「羽蔵さん?」
 「あなたは、ここで終わりよ」


 迷いを断ち切るように、羽蔵さんは告げる




 戦いが、始まった





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