ホントウの勇者

さとう

王都パープルテッラ⑤/みんな・呪いの意思



 「ふぅぅ………」
 「ジュート殿、緊張ですか?」
 「は、はい。だって8大陸の王様が集まるんですよね……流石に」


 俺と騎士団長は現在、王様とシャロアイトが中で打ち合わせをしてる部屋の前にいる
 観音開きのドアの両サイドに立っているが、緊張している


 「ははは、そう深く考えなさるな。我らの役目は守護……難しい政治の話には一切の関係がありません」
 「はぁ……」


 それにしても、この騎士団長……まるで別人のように優しい
 俺と戦った時はあんなに殺意を漲らせていたのに


 騎士団長は豪華な装飾の入った由緒正しい鎧と剣の装備
 対して俺はいつもの服装。【雄大なる死グロリアス・デッド】・【死の輝きシャイニング・デッド】・【友情の約束プロメッサ・アミティーエ】だ。コイツが俺の最強装備


 騎士団長曰く、既に各大陸の王様たちは会場入りしてるらしい
 主催国である【紫】の王様は最後に入るのが慣わしだそうだ……マジで?


 今回、俺は1つ決めたことがある
 それは、知り合いに会っても反応しないということだ
 はっきり言って俺の立場は非常に危うい気がする、王様や【特級魔術師】とほぼ知り合いだなんて、普通に考えればおかしい
 なので、とにかく俺はだんまりを決め込んで終わりを待つ。これしかない




 「ジュート殿、夜には晩餐会が開かれるので、気を緩めぬように」




 ナニそれ、聞いてないんデスけど……?




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 「ジュート殿」
 「はい」


 部屋の中で話し合いが終わったようだ
 俺と騎士団長は、ゆっくりとドアを開ける


 「待たせたな、じゃあ行こうか」
 「はっ」


 王様の話し方はいつもと同じでなんか軽い


 「ジュートくん、大丈夫ですか?」
 「おう、平気だぜ」


 うっそで~す。緊張してま~す
 ヤバい、夜に晩餐会なんてあったのかよ……どうしよう


 騎士団長曰く、晩餐会は立食形式で、各大陸の有名貴族などが集まるそうだ
 そこでは護衛も自由に動くことが可能で、食事もオッケーらしい
 こりゃマズイ、どうしよう


 そんなことを考えていると、着いてしまった
 並び方は、王様の後ろにシャロアイト。その両サイドを固めるように俺と騎士団長だ




 そして、ドアが開かれた




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 その反応は、様々だった


 体育館の天井を低くしたような広い部屋
 床には豪華な刺繍の施された絨毯が引かれ、椅子やテーブル、調度品などは輝いている 
 細長い円卓には各大陸の王と【特級魔術師】
 その後ろに控えるのは、全員が一流以上の護衛


 その王と【特級魔術師】と護衛が、入室した俺たちを見て息を飲んだ


 俺は一度だけ全員を確認した


 まず、赤い装飾が施された椅子に座るのは王と小さな女の子
 赤い髪の毛にやや褐色の肌、ルビーのようにキラキラした瞳に豪華なローブ
 【赤の特級魔術師 ルビーラ】が、そこにいた
 ルビーラは俺を見て目を見開き、口をあんぐり開けていた


 隣には青い椅子、座るのは王様と20歳くらいの女性
 薄い青のサイドダウンヘアに白い肌、柔らかな水色の瞳に薄い唇、おしゃれな眼鏡を架けた女性
 【青の特級魔術師 サフィーア・サピロス】だった
 こちらは口に手を当てて驚いている
 さらに、護衛はなんとクレアとミレアだった……ウソだろ、予想もしてなかった
 2人とも完全に硬直してる


 その隣には黄色い椅子、座るのは王様と18歳くらいの少女
 髪型は金髪のボブカットで髪の一部が編み込んであり、服装は黄色いローブ。恐らくローブの下はビキニのような胸当てとスカートだろうな
 【黄の特級魔術師 シトリン・アングレサイト】は、そんな女の子だ
 シトリンは俺を見ると一瞬驚き……すぐに微笑んだ


 端っこの緑の椅子に座るのは王様と16歳くらいの女の子
 髪型は緑色のショートカットで、右目には片眼鏡モノクルを付けている
 服装は緑色のローブに同じ色のロングマフラー、頭には緑の帽子
 【緑の特級魔術師 エメラルディア・エピドート】が俺を見て椅子からずり落ちそうになっていた
 その口がパクパクと魚みたいに動いている……おいおい


 ここまでが右サイドの席で、ここからは左サイドの席だ


 まず最初に目に入ったのが白い椅子
 そこに座るのは小さな女の子と若い王様
 【白の特級魔術師 ブーランジェ・クロッシュラ・ピュアブライト】
 雪のように白いローブに、さらさらの黒いストレートヘア、コロコロした黒目の少女
 俺の存在を確認し身体を浮かせるが、王様が力強く腕を握り我に返る
 さらに後ろに控えるのは3人の獣人
 白い狼のような姉妹に豹のような女獣人。エルルとクルル、レオパール
 俺を見て全身を緊張させたのがすぐにわかった


 その隣には黒い椅子。そこに座るのは王様と女の子
 俺を見てニカッと笑ったのは〔アートルム・エレ・ブラックトレマ〕だ。別名【血の冥王・ヴリコラカス】
 その隣には俺を一瞥してすぐに視線を正面に移す少女
 【黒の特級魔術師 オニキス・オプシディアン】
 忍者のように隙がないのはいつものこと。長い黒髪をサイドで纏め、ローブこそ纏っていないが黒い装束は動きやすさ重視のモノである
 驚くべきことに左腕には〔マルチウェポン〕装備されていた
 後ろの護衛はアミールとルーミア。彼女達も〔マルチウェポン〕を装備し、俺に向かって左腕を掲げた


 紫の椅子は飛ばしておこう


 最後に見たのは灰色の椅子
 座るのは女王様とこちらも美人の女の子
 歳は18ほどで、灰色の長い髪をポニーテールに纏め、頭には帽子を被っている
 服装は浴衣のような服に、下半身はミニスカート。上着として装飾の施された陣羽織を着ていたなんともまぁ和風チックな服装の女の子だった
 俺をちらりと見るとすぐに視線を戻してしまった
 資料によると彼女が【灰の特級魔術師 シェラヘルツ】だな




 さて、一通りわかったし置物になるか




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 視線をいくつか感じるが俺は完全に無視


 王様たちが何を話しているのかさえ聞いていなかった


 話し合いは順調に進み、シャロアイトの開発した飛行魔導車の話などで盛り上がりを見せた
 俺はずっと王様の後ろで待機して心を無にしていた
 ヒマなので頭の中でクロと話してみる




 なぁクロ……聞こえるか?


 《ナニよ?》


 いや、退屈でさ。せっかくだしこれからの予定を聞かせてくれよ


 《コレから……そうネ、インヘニュールを仲間にして【灰の大陸】に向かうワ》


 インヘニュールか、どんなヤツなんだ?


 《そうネ……インヘニュールは恥ずかしがり屋だから、あまり驚かせないであげてネ。あのコはワタシたちですら怖がる時があったからネ》
 《確かにな、インヘニュールはオレたちの中で1番臆病だったぜ。なにかあるとすぐにヴォルの後ろに隠れるヤツだったな》
 《でもでも、インヘニュールはすっごく優しいよ。わたしやティルミファエルにお花を摘んできたり、寝てるわたしたちに毛布を掛けてくれたりしてたよ》
 《確かに、そんなこともあったわね》
 《インヘニュールさんはあんまり喋んないからけっこう大変でしたっすよ……身振り手振りで相手をするのはキツかったっす》
 《もぐ~》
 《カッカッカッカッ!! アイツの根っこは怪物だぜ? 怒らせると1番ヤベーかもしれんのぅ?》


 インヘニュール・ニルーダだっけ……臆病なのか、怖いのかわからんな


 じゃあさ、最後の【九創世獣ナインス・ビスト】は?


 《最後……シロフィーネンスか》
 《シロフィーネンスはクロシェットブルムと同じくらいヴォルの側にいたからね、やっぱりクロシェットブルムに聞くのが1番だよ?》


 そうなのか? なぁクロ


 《そうネ、アイツはワタシを恨んでるかもね……》


 へ? どういうことだ?


 《…………》


 クロ?


 《おいクロシェットブルム、いい加減にしろ。アレはお前のせいじゃないっつの》
 《クロシェットブルム……》


 どういうことだよ……おいクロ?


 《………ゴメンなサイ。今はまだ……》


 クロはそのまま黙り込んでしまった
 触れてはいけない何かがそこにはあった


 みんなは知ってるんだな?


 《………まぁ、記憶は確かじゃ無いけどな》
 《そうだね……》
 《もぐ……》
 《はぁ……どうしようもないっすよ》
 《ある意味……あたしたちの呪いの発端だからね》
 《やーれやれ……》


 教えてくれ。何があったんだ?


 《……ジュートには知る権利があるな》
 《だね……ヴォルが選んだジュートだもん》
 《ジュート、ヴォルフガングの死因は知ってるわね?》


 ああ、【魔神】と相打ちになって死んだんだろ?


 《そうね。【銃神】と【魔神】の力は拮抗していたわ。僅かだけどヴォルフガングが上……【魔神】を追い詰めてトドメを刺そうとしたときだった》




 《ヴォルフガングを心配したクロシェットブルムが、【魔神】の視界に入ってしまったの》




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 《ヴォルフガングはそれに気がついて捨て身でクロシェットブルムを庇った、そして【魔神】の最後の一撃がヴォルフガングの身体を貫いて【魔神】は消滅。その最後の一撃は呪いとなってヴォルフガングの意思を破壊し、パスで繋がっていたあたしたちも蝕んだ……そしてほぼ全ての力を封じられて8大陸に飛ばされた······多分ね》


 マジかよ……多分?


 《ええ。正確な最後はわからない。でも、ヴォルフガングとのパスが切れた今でも呪いはあたしたちを蝕んでる。きっとこの呪いはヴォルフガングの魂を持つジュートにしか解けないハズ》


 そんなこと言われても……どうすりゃいいんだ?


 《まずはあたしたち【九創世獣ナインス・ビスト】を全て集めて、それからいろいろ試して見ましょう》


 わかった……ん?


 「それでは、晩餐会へ移らせていただきます」


 どうやら会議が終わったらしいな
 って、考え込んでからかなりの時間が経過していた




 とりあえず、移動しないとな


 

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