ホントウの勇者

さとう

王都パープルテッラ③/団長・協議会



 シャロアイトと合流した俺は、城の一室でお茶を飲んでいた


 「ラヒーロ……とりあえずぶん殴るのは話を聞いてからだな」
 「はい。わたくしにとっても面白い話ではなかったので。しかし彼がきっかけで耕運機が出来たのも事実。むむむ……難しい問題ですね」


 それはただの結果論だと俺は思う
 現にヒロエと女将さんは苦労していた


 「感情は抜きにしても、一度くらいは〔トーチ村〕に帰って貰わないとな。お父さんの墓参りくらいはするべきだ」
 「そうですね。わたくしもそう思います」




 そして、部屋のドアがノックされた




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 「失礼します‼」




 入って来たのはビシッと敬礼をした若い男。騎士の制服を着て腰には剣を差したいかにもな騎士
 顔立ちはどことなくヒロエに似てる気がしないでもないな


 「あんたがラヒーロか?」
 「はい。そうであります‼」


 やべ、少し素っ気ない言い方になったな
 するとシャロアイトが説明する


 「トーチ村、ご存知ですよね」
 「······ッ⁉」


 ラヒーロの顔色が変わった


 「俺たちはそこでヒロエと女将さんに会ったんだ。ヒロエが仕事中に大怪我してな、そこでいろんな話を聞かせて貰った」
 「そうですか。それで何か?」


 あまりにも淡々とした答えに、俺の中でピキリと何かが音を立てる


 「家族の事情に首を突っ込むのは筋違いだけどな、ヒロエに依頼されたんだ······お前をブチのめして欲しいってな」


 その言葉にラヒーロは淡々と受け答える


 「そうですか、ならばどうぞ······家族に恨まれても仕方ない事を私はしてきました。報いを受ける時が来たに過ぎません」


 ラヒーロは淡々と述べる……俺は聞かずにはいられなかった


 「お前······女将さんやヒロエの事をどう思ってるんだ?」


 ラヒーロはつまらなそうに答えた


 「別に何も。今の私はこの騎士団所属、家族や故郷を捨ててまで得られた大事な宝物です。これ以上に愛するものはございません」


 俺の中で何かが切れた······が、シャロアイトが俺の手を掴んで離さなかった


 「ジュートくん、もういいです。行きましょう」
 「シャロアイト······」
 「子供のわたくしでも分かります。殴る価値のない、囚われた屍のような人間······哀れすぎてこれ以上視界に収めたくありません」


 その言葉にラヒーロも言い返す


 「······それは騎士団に対する侮辱ですか。いくら貴女が【特級魔術師】だろうと許されませんよ?」
 「お好きにどうぞ。言っておきますが騎士団は貴方を守ってくれませんよ? 貴方が死ねば代わりが補充されるだけ。あなた方騎士団が守るのは王であり国民······騎士団ではないのです。その守るべき国民を、家族を切り捨てた貴方は騎士団に取り憑かれた、ただの屍です」


 シャロアイトがここまで怒りを顕にしたのは初めてだった


 「ビルゴ騎士団長に憧れてるようですが、彼が強く慕われているのは騎士団ではなく国と国民を愛してるからです。だからこそ彼は強く、民に慕われている。貴方は知らないでしょうけど彼の家族は祖父まで存命で、週末には必ず家族で食事をする決まりになっています。わたくしも一度招かれましたが······正直、羨ましかったです。彼の家族愛には呆れましたよ」


 マジかよ、あのオッさんが?


 「彼がジュートくんの護衛に反対したのも、ジュートくんは守るべき国民であるからです。だからこそ何度も反対し、騎士団から護衛を出そうとしていたのです。決して騎士団の力を誇示していたからではありません」


 そうだったのか······でも、俺との戦いではまるで遠慮がなかったけどな


 「田舎出身だからこそ騎士団に憧れるのは分かります。しかし、表の華やかさしか見ていないあなたはとても醜いです」


 シャロアイトはそこまで言うと踵を返す


 「では、そういうことで」


 俺もシャロアイトに続いて部屋を出た




 ラヒーロは、立ち尽くして動かなかった




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 「いやはや、俺の怒りも冷めちまったよ」
 「彼に更生を期待してもムダですね。あの人は騎士団に心酔しています。家族を、妹の将来を犠牲にした地位から離れることはないでしょうね」
 「そうだな······」
 「ヒロエにはわたくしから手紙を出しておきます。貴女の兄は既に死んだとね」
 「ああ、頼むわ」


 なんともまぁ胸糞悪い。ラヒーロはやっぱりクズだった


 「さて、次は騎士団長のもとへ行きましょう。正式な護衛となったからにはキチンと挨拶しないといけません」
 「マジで?」
 「はい。護衛はジュートくんと騎士団長ですからね」


 聞いてなーい
 じゃあ俺は同僚となる騎士団長と戦ったのかよ




 と、言うわけで騎士団長の元へ




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 騎士団長の執務室


 「ここか」
 「はい。騎士団長のビルゴは午前中は騎士団たちの鍛錬、午後は執務を行ってます。しかし現在はジュートくんに切り落とされた腕がまだ動かないようなので、朝から執務をされてるようです」


 あれは決闘での負傷だ。当然ながら俺は謝るつもりは全くない
 とりあえず部屋をノック


 「失礼します。シャロアイトです。護衛の件でジュートくんが挨拶に伺いました」


 するとガチャリとドアが開き、団長自ら部屋に案内してくれた


 「これはシャロアイト殿、ジュート殿、よくぞいらしてくれた。今お茶をお持ちします」


 そう言って給仕のおばさんにお茶の手配をして席に案内してくれる
 柔らかく沈み込むソファに座り、お茶を待つ


 騎士団長は再び執務机に座り、書類に何かを記入している
 手は休みなく動き、どう見ても忙しそうだ。腕は平気なのかな


 「なぁ、お前は仕事ないのかよ?」
 「はい。わたくしの仕事は研究と開発、たまに戦闘です。今回は飛行魔道車の開発と耕運機の開発、それとロボットの発掘があったので今季の仕事はほぼ終わりですね。ロボットの解析はララベルたちの仕事なので」
 「マジかよ、じゃあまた休暇か?」
 「はい。しかしロボットの解析はわたくしも気になるので手伝う予定です」


 ロボット······昔の〔神の器〕が作った兵器か


 すると、騎士団長が立ち上がり、俺たちの側にやって来た
 ソファに腰掛けると同時に給仕さんがお茶を出す


 「改めましてジュート殿、私は【紫雲騎士団パープルナイツ】団長、ビルゴ・マディンと申します。護衛選抜の件では、迷惑をお掛けして申し訳ありません」
 「こちらこそ。短い間ですがよろしくお願いします」


 挨拶を交わして世間話へ
 騎士団の仕事やこの大陸の情勢などいろいろ話した


 「さて、5日後に迫った〔8大王協議会〕の説明は?」
 「概要のみ、流れは説明していません」
 「なるほど。では流れを簡単に説明させて頂きます」




 うーん。最初の印象がアレだったからな、この人普通にいい人じゃん




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 まぁ要は1年に1回の話し合いだな


 各大陸が順番で集まり会議をする
 内容は各大陸の情勢や事件の報告など
 支援が必要なら支援をし、力や技術を借りたいならここで頼む


 ざっくばらんに言うとそんな感じだ


 今回の協議会で、【紫の大陸】では飛行魔道車の発表をするらしい
 間違いなく協議会の目玉になるとシャロアイトは踏んでいた


 俺たち護衛は王様たちの後ろで待機してる
 協議会に参加するのは王様と【特級魔術師】で、護衛は話を聞くことは出来るが、その内容は機密なので喋ることは許されない


 護衛は3人までだが、どの大陸も3人以下なのが当たり前。なので【紫の大陸】は、俺と騎士団長が出ることになっている


 「まぁ我々は護衛という名の置物ですな。この協議会を襲う間抜けは今まで存在したことがありません。【特級魔術師】に各大陸の手練······ある意味、世界で一番安全な所でしょうな」


 確かに、そりゃそうだろうな


 その後も協議会への話をしてお開きとなった
 部屋を出てシャロアイトと歩く


 「ジュートくん。研究所へ行きましょう。ララベルたちの様子を見に行きたいです」
 「そうだな。俺も付き合うぜ」


 城の外へ出てバイクを呼び出す


 「さ、掴まってろよ」
 「はい」


 久しぶりの二人乗りは、気持ちよかった





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