ホントウの勇者

さとう

王都パープルテッラ②/騎士団・謁見



 王都のシャロアイトの研究所


 俺はソファの上で目を覚ました
 起き上がり背伸びすると、ポキポキ骨が鳴る
 シャロアイトは、ベッドでスヤスヤ眠っていた


 「······ん、ふぁ」
 「おはよう」
 「······おはようございます」


 俺の気配で目が覚めたのか、シャロアイトも起き出した
 俺と同じく背伸びする


 「ふぁ、朝ごはん······」
 「よし。俺が作ってやるよ」


 この部屋には簡単な給湯室もあったので、そこでご飯を作る
 メニューは目玉焼きとベーコン、サラダとスープとパン
 玉子とベーコンが焼ける音と匂いで、シャロアイトは覚醒した


 「出来たぞ···って、早いな」
 「さぁ食べましょう」


 シャロアイトは既に着換え、魔術を使って身なりも整えていつもの状態になっていた


 「よし。いただきます」
 「いただきます」


 朝食を食べながら今日の予定確認


 「ご飯を食べたら早速お城に行きましょう。【アメジスト号】は整備が終わり次第すぐにお城へ運ばれる予定です」 
 「わかった。じゃあお城では俺が〔8大王協議会〕の護衛ってことを紹介するんだよな?」
 「はい。横槍が入らなければすぐに終わります」


 うーん。イヤな予感がヒシヒシと来やがる


 「ジュートくん。念のため戦闘準備だけはしておいて下さい」
 「······はーい」




 まぁ何とかなるか······多分




───────────────


───────────


───────




 朝食が終わり真っ直ぐ外へ出る


 【アメジスト号】はないから歩きで行く
 城へまではそんなに距離がないし、戦闘の可能性があるので腹ごなしの意味もかねて歩きにした


 「ジュートくん。手を繫いでいいですか?」
 「え? いきなりどうした?」
 「いえ、なんとなくです」


 シャロアイトがじっと見つめてくる
 こいつがこんな事を言うなんてな


 「······あ」
 「行こうぜ」


 俺はシャロアイトの手を取り歩く




 握る手は不思議と暖かく、柔らかかった




───────────────


───────────


───────




 城へ着くとシャロアイトは手を離した


 「さ、行きましょう」
 「ああ」


 城へ入り兵士の案内で控室へ
 どうやら王様の準備をここで待つらしい


 「恐らく騎士団を呼んでいるのでしょう。わたくしが連れてきた冒険者を確認する為だと思われます」
 「何それ、すっげぇイヤなんですけど」


 いやマジで
 何か値踏みされてるようで気持ち悪い


 「大丈夫です。ジュートくんなら問題ありません」
 「まぁそう言うなら」




 そして、兵士に呼ばれ遂に謁見の時がきた




───────────────


───────────


───────




 「·········」
 「ジュートくん。緊張しすぎです」
 「いや、だってさ······」


 だって王様だぞ


 俺の目の前には豪華な椅子に座る1人の男性
 年齢は30代後半くらいのイケメンで、椅子の肘掛けに肘をつき、眠そうな顔で俺を見てる
 さらに周囲には騎士団がズラリ
 両側の壁に沿って並び、人数は100を超えている
 そして王様の側に、一際強そうな鎧を纏った髭面のオヤジがいた
 おそらくあれが騎士団長だろうな


 「さ、ジュートくんは前に」
 「は、はい」


 思わず敬語になってしまう
 俺は前に出て跪いた


 「ふーん。お前がシャロアイトの推薦する冒険者か」
 「は、はい。そうです」


 王様の口調は随分軽い


 「聞いてると思うが、近々この城で〔8大王協議会〕が開かれ、そこで各大陸の王と【特級魔術師】が集結する。腕利きの護衛を探してるんだが、シャロアイトに一任してたからなぁ···お前は強いのか?」


 何か凄く面倒くさそうな態度の王様だ
 でも質問には答えなきゃいけないな


 「えっと、強さには自身があります」
 「ほーう」


 するとここでシャロアイトが援護してくれた


 「ジュートくんはS級冒険者です。わたしくしの目の前で単独でSレートモンスターを倒したこともあります」


 その発言に周囲はどよめく
 が、騎士団長は鼻で笑ったように見えた


 「ほう、面白いな」
 「陛下‼」


 ここで初めて騎士団長が声を出した


 「何度も進言されいるように、護衛は我が騎士団から選抜して頂きたい。このような得体の知れない冒険者など信用出来ません‼」
 「うーん。しかし護衛の選抜はシャロアイトに一任してる。オレが決めたことをオレが曲げる訳にはいかん」
 「ぐ、ぬぬぬ······‼」


 騎士団長はシャロアイトを睨みつける
 しかしシャロアイトは涼しい顔をしてる


 「シャロアイト。お前が開発したという空飛ぶ魔導車とやらは?」
 「はい。現在わたくしの研究所にて整備中です。整備が終わり次第こちらへ移送いたします」
 「うむ。お前が造った物に失敗はなかったからな、このまま量産体制を整えて大々的に宣伝しろ。報告書にあった資格も採用する。まずは王都に専門の学び舎を建設しよう」


 護衛の件は終わったみたいだな……これいいのか分からんが
 あとラーベインで送った報告書を読んだらしいな。やっぱ仕事が速いぜ


 「よし、報告ご苦労だった。ジュートとやら、〔8大王協議会〕の詳細はシャロアイトに聞くがよい。護衛の件はお前に任せる……期待してるぞ」
 「は、はい。ありがとうございます」


 はぁ、これで終わりか……疲れた


 「陛下、お待ち下さい!!」


 騎士団長……はぁ、イヤな予感


 「我が騎士団の精鋭とそこの冒険者……どちらを信用するのですか!!」
 「もちろん騎士団だ。お前とはオレが子供の頃からの付き合い……そんなの当たり前だろう?」
 「ならば何故!!」
 「全く……いいか、オレは護衛の件はシャロアイトに任せる、と言ったのだ。そのシャロアイトが連れてきた護衛に文句を言えるワケがない。シャロアイトが騎士団の誰かを選べば良かったのか?」
 「そうです!! 我が騎士団は王都、いや【紫の大陸】で最強なのです。その騎士団を差し置いてこんな得体の知れない冒険者を連れてくるなど……やはりまだ子供、護衛の再考を!!」


 王様は考え込み、平然としてるシャロアイトに向き直った


 「シャロアイト。お前がこの冒険者を選んだ理由はなんだ?」


 その問いにシャロアイトはノータイムで答えた






 「簡単です。ジュートくんは騎士団の誰よりも強いからです」






 投下された爆弾は、核ミサイル並だった




───────────────


───────────


───────




 「おいおい何言っちゃってんのお前!?」


 俺は頭を抱えてシャロアイトに詰め寄った
 シャロアイトはコテンと首をかしげてる……かわいい


 「事実ですが何か?」
 「何か? じゃねぇよ!? 見ろよ全員怒ってるじゃん!!」


 騎士団の人間が100以上……全員が怒ってる
 そりゃそうだ。騎士団より俺が強いなんて【特級魔術師】が言うんだもんな


 「う、その……あはは」


 なんだか笑いたくなってきた


 「貴様……わが騎士団を侮辱するつもりか!!」
 「いえ、そんなつもりはないっすよ。おいシャロアイト!!」
 「わたくしは真実を述べたまでです」


 やべぇ、火に油どころかガソリンをぶっかけやがった
 周囲も騒がしいし、このままじゃ大炎上だぞ。手遅れくさいけど


 「陛下!! 決闘の許可を!!」


 おぉーい、ヒートアップしすぎだろ
 この場合の決闘はどう考えても俺が相手じゃねーか!?


 「はっはっは、いいだろう許可する」
 「ははっ!!」


 ヤバい。恐れていた展開が現実になった


 「さぁ冒険者ジュートよ、決闘だ!!」




 ああ……なんでこうなるんだろう




───────────────


───────────


───────




 城のそばにある騎士団の訓練場に移動し、俺と騎士団長は向かい合っていた


 「決まりは1つだけ……生きていた方の勝利だ」


 シンプルすぎる。これ単なる殺し合いだよね?


 「………はぁ」


 気分が全く乗らなかった
 いやだって……ただの殺しあいだぜ?
 それに騎士団長がシャロアイトの決定にケチ付けてケンカ売って、シャロアイトが反論して騎士団長が怒って……とばっちりが俺に来た


 「さぁ行くぞッ!!」


 騎士団長はやる気満々で剣を抜く
 その構えはスキがなく、王都最強というのも納得できた


 俺は右手に【雄大なる死グロリアス・デッド】を装備して騎士団長の突進を観察する


 「おおおおおっ!!」


 騎士団長は両手で剣を剣を頭上に持ち上げて向かってくる
 なんとなく示現流を彷彿とさせた


 俺はその突進を見つめてタイミングを計る
 騎士団長は俺を殺す気マンマンだ。このまま避けなかったら一刀両断されるだろうな
 そして残りの距離は数メートル……来い


 「チェストォォォォォッ!!」


 普通の剣士なら避けるか受けるだろう
 しかし、この豪腕から繰り出される両断は、受ける腕をへし折り、剣をへし折り絶対的な死をもたらすのは間違いない
 避けたら避けたで恐怖が染みつきまともには闘えなくなるだろう


 だから俺は第三の手段……迎撃を選択した


 「な、にぃぃぃぃぃぃッ!?」
 「悪いな」


 俺は両手の振り下ろしに合わせて身体を反転
 ちょうど騎士団長の真横の位置に立ちナイフを合わせる




 合わせたナイフの位置は腕……騎士団長の両腕は宙を舞った




───────────────


───────────


─────── 




 「ぐぅう……おオォォォォォ……っ!!」




 両腕の消失した騎士団長に、俺は冷徹に告げる


 「じゃ、次は?」
 「な、にぃ……!?」
 「え、これで終わりじゃないだろ? 次がいるんだろ、速く出せよ」


 俺の言葉に騎士団長は絶句
 もちろん俺にそんなつもりはない
 ここでビビらせて楯突かないようにするためだ


 「負けなら負けって言えよ。次がいないんなら終わり、俺は帰るぜ」
 「ぐ、うぅぅぅぅ……っ!!」


 ここで騎士団長はがくりと肩を落とした


 「……私の負けだ」


 よし。これで終わりだな


 「じゃあ俺が護衛でいいんだな?」
 「ああ認めよう、お前……いや、ジュート殿。あなた様が王の護衛に相応しいお方です」
 「あ、ああどうも……」


 騎士団長は跪き頭を垂れる……変わりすぎじゃね


 「とにかくよかった。じゃあ腕を……ほい」
 「なッ!?」


 騎士団長の腕を魔術でくっつけて俺は帰ることにした


 「じゃあまた………あ、そうだ!!」


 せっかく騎士団長がいるんだ聞いておかないと


 「あの、騎士団長さん。騎士団にラヒーロってヤツはいますか?」
 「え、ああ。ラヒーロなら第三小隊の副隊長ですな。なにかご用ですか?」
 「ええ。ちょっと話があるんで取り次いでもらえませんか?」
 「もちろん構いませんが……」


 騎士団長は混乱寸前だが了承してくれた




 さて、シャロアイトと合流して行くか


 

「ホントウの勇者」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く