ホントウの勇者

さとう

王都パープルテッラ①/研究所・研究員



 「お、見えてきた」
 「はい。あれが〔王都パープルテッラ〕です」


 上空から確認してもわかったことがある
 王都は魔導滑車が走り少し高い地形の所にお城が建っていて、お城までの道はいくつもの線が引かれて魔導滑車が行き交い、人が物資を運んでいるのが見えた
 町の外れは工場地帯になってて煙突から煙がモクモクと出てる


 なんとなく産業の町というのが理解出来た


 「今度は門からキチンと入りましょう。わたくしの顔を見ればすんなり入れるはずです」
 「オッケー、平和で助かるよ」 


 というわけで門から堂々と行く
 地上に降りて【アメジスト号】を走らせること数分


 「西門から入りましょう。わたくしの研究所がすぐ近くにあります」
 「わかった。案内頼むな」


 シャロアイトの案内で西門へ
 魔道車が行き交うので少し時間が掛かったが、なんとか町に入ることが出来た


 「おお、すごいな」


 町中は産業の町というだけはあるな
 工場からパイプが伸びてよくわからない魔導具に接合されていたり、蒸気機関みたいな魔導具が音を立てながら動いてる
 働いてるのは奴隷や獣人。しかし無理矢理ではなく所々で笑い声が聞こえてる


 「工場勤務は激務なのでお金になります。体力のある獣人たちにとってはそうではないみたいですが」
 「ふーん。確かに」


 重そうな土嚢袋を10個以上積み重ねて肩に担いで運んでる熊の獣人や、高所を飛びながら作業してるウサギの獣人、楽々と両方をこなしてる虎の獣人なんかが溢れてる


 「もうすぐわたくしの研究所です」


 
 町を眺めながら俺は魔道車を走らせた




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 「ここです」
 「······マジで?」


 シャロアイトの研究所に到着
 俺はその規模の大きさにビックリした


 大きさはかなりある。強いて言うなら学校
 5階建てくらいの横長の鉄筋コンクリートみたいな建物
 建物には大きな看板で〔王立シャロアイト研究所〕と書いてある。まるでシャロアイトを研究する建物みたいだ


 「さあ行きましょう。まずは【アメジスト号】の整備をして、王様に見せる準備をします。その後はジュートくんの紹介と騎士団のラヒーロを見つけて説教、〔8大王協議会〕の準備とやることが山積みです。あ、ロボットもですね」


 確かに。俺としては〔トーチ村〕のヒロエの兄、ラヒーロをブチのめしたい気持ちが強いけどな


 「1個づつ行こうぜ。まずは【アメジスト号】の整備と王様の謁見だな」
 「はい。既に連絡は行ってるはずなので実物を持って行けばいいはずです」


 
 俺とシャロアイトは【アメジスト号】に乗ったまま研究所へ入って行く




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 大型の魔導シャッターを開けて【アメジスト号】が入庫すると、白衣を着た研究員が驚いていた


 「ただいま戻りました」


 ドアを開けて降りたシャロアイトはいつものように挨拶する


 「所長‼」
 「シャロアイト所長‼」
 「おかえりなさい‼」


 うわー、囲まれてるよ
 男女関係なく、しかも年齢もかなり年下なのに敬意を払われてる。大したもんだ


 そこで研究員の視線が俺に集まった
 やべ、なんか緊張するな


 「彼はジュートくん。わたくしをここまで送ってくれた冒険者です。〔8大王協議会〕にも参加して貰うので暫くここに出入りしますのでよろしくお願いします」


 シャロアイトの紹介で緊張が解け、何人かの研究員が挨拶と握手を求めてきた


 「さて、早速ですがお願いします」


 シャロアイトは研究員たちに指示を出す
 どうやら魔道車の設計図はこちらへ届いてるようなので、それに合わせた整備をしてもらうようだ


 「では技術班と連携を取りながら整備をよろしくお願いします。それと王の謁見許可を取っておいて下さい」


 そこまで指示をするとシャロアイトは俺に向かって来た


 「ジュートくん。2階の分析室に行きましょう。そこでロボットを調べたいと思います」
 「わかった。行こうぜ」


 シャロアイトの案内で2階へ
 途中で何人かの研究員がシャロアイトに挨拶する
 まぁこの容姿だし、【特級魔術師】だし、可愛がられてるんだなぁと思う


 「ここです」


 ついたのは大きなドア
 プレートには〔魔導分析室〕と書いてある


 「ここでロボットを分析、可能な限り修復します」


 そう言ってドアを開けた
 中には何人かの研究員がいて、シャロアイトを見た1人の少女が飛びついてきた


 「シャロアイトっ‼」
 「わぅ⁉」


 いきなり抱きつかれたシャロアイトは、少女の胸に抱きしめられて呼吸困難になっていた


 「あ〜もう帰ってくるの遅い‼ 久しぶりの休暇なのにあんな遠くの山に行っちゃって、しかも寄り道しながらゆっくり帰って来るなんて聞いてない‼」
 「むむぅ······」


 シャロアイトを抱きしめながら喋る少女は止まらない
 そんな少女を優しげな男性があやすように言う


 「ララベル、シャロアイトが窒息してしまいますよ?」
 「え? あぁゴメンなさいシャロアイト⁉」
 「ぷふっ···大丈夫ですララベル。レクシアもありがとうございます」
 「いえ。おかえりなさい所長」
 「おかえり、シャロアイト‼」


 シャロアイトは笑顔で答えた




 「ただいま戻りました」




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 「ところでそいつダレ?」


 いきなりそいつ呼ばわりされてムカつくが我慢
 シャロアイトは説明してくれた


 「彼はジュートくん。わたくしをここまで送ってくれた冒険者です」


 その説明に男性は微笑み、少女は興味なさそうにしていた
 男性が前に出て手を差し出す


 「なるほど。初めまして、私はレクシア・ハヌマンです。この〔王都パープルテッラ〕の貴族、ハヌマン家の五男でもあり、この研究所の副所長です」


 年齢は20代半ばでサラサラの金髪、スラリとした体躯、柔らかな微笑み。悔しいがかなりのイケメンだった


 「俺はジュート、冒険者です。よろしくお願いします」


 差し出された手を握り握手
 まぁイケメンだが許してやろう。俺は何様だよ


 俺のことなどどうでもいいのか、少女がシャロアイトにじゃれついていた


 「ねぇシャロアイト、お土産ないの〜?」
 「あの、抱きつかないで下さい。お土産ならありますから」


 シャロアイトは俺に合図
 分析室の奥の広いスペースにロボットを出した
 ズズン、と音を立てて金属の塊が落下。全員が唖然としてる


 「〔スクーラプ山〕で発掘した〔古代具〕です。コレを調べれば我々の魔導技術もまた進歩するでしょう」


 ホントは〔ライガの森〕だけどな
 シャロアイトは約束を守ってくれたようだ


 「······これは」
 「ナニ、これ···⁉」


 レクシアさんも少女もロボットに驚いていた 
 俺の使った魔術にツッコミはない。よかった


 「分析班はこのロボットの分析を。副所長、指揮をお願いします」
 「わかりました。久々の大仕事ですね」


 シャロアイトはロボットをペタペタ触ってる女の子に言う


 「ララベルは副所長と一緒に分析をよろしくお願いします。分析班班長としての腕を見せて下さいね」
 「まっかせてよシャロアイト‼」


 女の子はガッツポーズを取ると早速レクシアさんの所へ行くとそのまま真剣に話始めた


 「ジュートくん、少し休憩しましょう。5階にわたくしの部屋がありますので」




 と、言うわけでシャロアイトの部屋へ




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 シャロアイトの部屋は乱雑していた


 書きかけの図面、積まれた書類の山、投げ出された着換えなど、女の子の部屋とは思えなかった


 「さ、ソファにどうぞ」
 「どうも」


 ソファには書きかけの図面が山になっていたので降ろす
 シャロアイトはお茶を運んで来てくれた


 「【アメジスト号】の整備は今日には終わりますので、明日になったら城へ行きましょう」
 「わかった」
 「そこで協議会の護衛にジュートくんを推薦します。騎士団長が何か言っても気にしないで下さい」
 「そんなにイヤミな奴なのか?」
 「まぁ少し。わたくしみたいな子供が【特級魔術師】ということも気に入らないようです」
 「ふーん。ラヒーロは?」
 「はい。やはり騎士団第三小隊の副隊長でした。出身地がトーチ村となっていたので間違いないようです」


 いつの間にそんな調査を
 手回しの良さはさすがだな


 「今日はここに泊まって下さい。食事は用意させますので」
 「ああ、サンキューな」




 こうして王都での最初の一日は過ぎていった




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 嵐は、すぐそこまで近づいていた





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