ホントウの勇者

さとう

閑話 鉛田壊子・【機神アトレシャトーラ】



  鉛田なまりだ懐子かいこは頭を抱えていた


 「う〜ん······」


 轄俥の神器の中、鉛田はずっと頭のモヤモヤに悩まされている
 何かに呼びかけられるような違和感、大きな何かを感じ時折変な声が聞こえることもあった


 「······誰なの?」


 神器の中の1室で、鉛田は自問自答する


 「あたしを、呼んでるの?」


 心、魂の呼びかけを理解する
 【紫の大陸】が近づくに連れて理解する


 「そっか、わかった······」


 ついに聞こえた声
 呼びかけは間違いなかった  




 鉛田は、部屋を飛び出した




───────────────


───────────


───────




 運転席のドアをバタン、と開ける
 いきなりの音にその場にいる全員が振り向いた


 何故か全員揃っていたのでちょうどいい、鉛田は轄俥に言う


 「ねぇ、進路を変えて‼」
 「ど、どうしたの?」
 「呼んでるの、【機神】が、かつての魂が」
 「えぇ?」
 「〔ライガの森〕へ、ううん〔機帝ディセス・ペラシオン〕の待つ遺跡へ‼」
 「ちょ、な、何言ってるんだい⁉」


 轄俥の胸倉を掴み、揺さぶるように告げる
 ただ事ではない雰囲気に、羽蔵は言う


 「よくわからないけど······行きましょう」
 「お願い‼」




 そして、進路は〔ライガの森〕へ




───────────────


───────────


───────




 遠回りをしてようやく遺跡へ
 途中、雷が鳴っていたが、この神器の前では全く無力だった


 「ここに何があるの?」
 「……呼んでる、行こう」
 「お、おい待てよっ!!」


 羽蔵の問いや真藤の制止を無視して歩き出す
 全く迷いのない歩きに、全員が従うほかなかった


 「へぇ~、こんな遺跡があったんだ」
 「フン、辛気くさいぜ」


 弓島も錐堂も感想を述べつつも歩く


 「……なんか、キモいわ」
 「う、うん。私もこういうの苦手かも」


 尼宮も雅門も乗り気ではないが、気になるので着いていく


 「ほぉぉぉ……」
 「歴史を感じるねぇ……」


 達俣も鬼竹も感心しながら歩いている


 「………フン」
 「な、なんだろう……この感じ」


 鉄間はただ歩き、轄俥は何かを感じていた




 そして一行は、最深部へ到達する




───────────────


───────────


───────




 「……なんだこりゃ?」




 真藤の発した言葉は、全員の総意そのものだった
 得体の知れない球体が、地面から盛り上がっている


 「これは……ドーム、かしら?」


 羽蔵が顎に手を当てて考えながら喋るが、鉛田ははっきりと言った


 「違う。これが〔機帝ディセス・ペラシオン〕だよ。かつての〔神の器〕が作った兵器にして最強の〔古代具〕だね。これを使えば無月くんどころじゃない、8大陸を滅ぼすことだってできる」


 その言葉に全員が驚愕する
 そして、弓島が部屋の端に何かがあるのを見つけた


 「ね、ねぇアレ……まさか」
 「うん。アレが端末だね」


 端末はどう見てもディスプレイ、マウス、キーボード
 それが何を示しているか、羽蔵はすぐにわかった


 「まさか、ここは私たちと同じ……」
 「うん。間違いない……ホラ、見てごらん?」


 ディスプレイに残されたメッセージを、全員が読んだ


 「………これって、人と神を滅ぼすって……」
 「おいおい、こんなモン使えんのかよ?」


 轄俥と錐堂は難色を示すが、鉛田は引かなかった


 「大丈夫、あたしなら使える……同じ神器を持つあたししか使えない。それにコレがあったら後々使えそうだしね」
 「………わかった。任せるわ」


 羽蔵の許可に鉛田は笑顔で返す
 球体前に移動して手をかざすと、まるで当然のように入口が開いた


 「じゃ、行ってくる。時間かかりそうだから先に行ってて、すぐ追いつくから」
 「たしかに、コレならすぐ追いつくな」


 真藤は苦笑し全員が笑うと、鉛田は半球の中に消えていった


 「じゃあ行こうぜ、〔王都パープルテッラ〕によ」




 真藤が言うと、全員が従い外に出た




───────────────


───────────


───────




 コクピットの中は意外と広く、6畳間ほどの広さがあった
 機械類は一切なく、この状況に鉛田も首をかしげた


 「おっかしいな……どうやって動かすんだろ?」




 ───────帰りたい




 「あれ~? う~ん……ここかな?」


 鉛田は壁をペタペタ触るが何も起きなかった
 壁は以外と柔らかく、ゴムのような質感だった




 ───────父さん、母さん




 「わっかんないな~? ここまでは来れたのにどうして?」




 ───────何でオレが……神が、人が、オレをこんな目に




 「どうしよう……とりあえずもう一度端末を……」




 ───────許さない……許さない……!!




 「……え?」


 鉛田の右腕に、黒いゴムチューブのようなモノが巻き付いた


 「な、何コレ……!?」


 引っ張るが伸びるだけ
 それどころか無数のチューブが伸びて鉛田を拘束する


 「や、やだ……あ、うぅんっ!?」


 チューブの何本かが鉛田の体内に侵入した
 耳、鼻、口、臀部、秘部……全ての穴にチューブが差し込まれる
 そして、服が全て分解され、身体にはパッチが取り付けられる


 「た、たす……」


 鉛田は理解した
 自分はこの兵器を動かす心臓なのだ、と
 いつか【機神アトレシャトーラ】を宿した〔神の器〕が現れることを信じて、端末にメッセージを託したのだ、と
 〔神の器〕なら字が読めるし、メッセージを読んだ人間が起動してくれる……そこに【機神】がいなくても、メッセージが伝われば希望はある
 この〔機帝ディセス・ペラシオン〕から、【機神】に向けてメッセージが送信されていたことも、今さらながら気がついた




 こうして、鉛田壊子の意識はブツリと落ちた




───────────────


───────────


───────




 恐ろしい轟音と共に、遺跡は破壊された
 そして破壊された遺跡の真上に、巨大な兵器が浮かんでいる


 大きさは1つの山に匹敵し、下半身はスカートのようになっていて空中を浮遊している
 上半身は巨大な装甲で覆われ、右腕はハンマー、左腕は鉄球が装備されていた


 全身が黒い巨大兵器はゆっくりと動き出す


 神の力を一番感じる場所へ


 そこは、【紫の大陸】の王都


 神の力を滅ぼし、神を滅ぼす究極兵器




 こうして、〔機帝ディセス・ペラシオン〕は起動した




───────────────


───────────


───────














 意図的なのか、そうでないのか


 この〔機帝〕の説明文の一小節がポッカリと抜け落ちていた








 『機帝の機動、それはすなわち機動者の命が動力となる


  命を魔力へ変換、機動者の命尽きるまで決して止まることはない


  破壊を尽くせ、復讐を果たせ、命を燃やして終わらせろ』








 銃斗には読めたが、何故か羽蔵たちには読むことが出来なかった







「ホントウの勇者」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く