ホントウの勇者

さとう

ボルボ岩山/お礼・最後まで



 シャロアイトと一緒に来たのは岩山だった


 「おい、ここは飛んで行ったほうがいいんじゃ……?」
 「いえ、せっかくですし歩いて登りましょう。強力なモンスターが多いので歩いて登る人は殆どいません。そもそもここを登らなくても王都には行けますけど」
 「なんじゃそりゃ。〔アイボリーラビリンス〕の時と同じじゃんか」
 「いえ、今回はそんなモンスターは出ません。行きましょう」


 シャロアイトはゆっくりと登り出す
 ここは岩山なので【流星黒天ミーティア・フィンスター】は使えないな


 「仕方ない。俺も行くか」




 シャロアイトに続いて俺も歩き出した




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 「ハァ……ハァ……けほっ」
 「大丈夫か、シャロアイト」
 「は、はい……平気です」


 道はゴツゴツして俺でも歩きにくい
 緑は全くなくあるのは巨大な岩や砂利
 モンスターは出てくるが敵ではないのが救いだな


 「さぁ……行きましょう。せめて頂上まで」
 「ムリすんな、ほれ……よっと」
 「ちょ、ジュートくん!?」


 俺はシャロアイトをおんぶし、身体を紐で固定した


 「しっかり掴まってろ。飛ばすからな」
 「……はい。ごめんなさい」


 うーん。どうしたんだろう。なんかいつもと違うような……?




 とにかく……久し振りに飛ばしていくか




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 「よっほっ……おりゃっ!!」


 俺は岩場をぽんぽん飛び跳ねて進む
 【赤の大陸】では修行の一環でこうして進んだっけな


 「シャロアイト、平気か?」
 「はい。むしろ気持ちいいです」


 シャロアイトは軽いので正直全く苦にならない
 久し振りの移動に感覚を研ぎ澄ませる


 「……そこだッ!!」
 「ギィッ!?」


 岩場に隠れていたトカゲにナイフを投げつける
 ナイフはトカゲの頭に命中……そのまま倒れた


 「おお、アレは〔パープルリザード〕ですね。Dレートの雑魚モンスターです」
 「へぇ、隠れて俺たちを狙ってたみたいだぞ」
 「ふむ。どうやら地形を利用してエサを狙ってるみたいですね」


 なるほどな、雑魚なりの知恵か


 「よし、とにかくこのまま頂上を目指すぞ」
 「はい。お願いします」




 俺はスピードを上げて岩を飛び跳ねた




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 「よーし到着!!」


 俺は正規じゃないルートで頂上に到着した


 「すごいです。まさか岩山をよじ登って頂上まで来るとは」
 「ま、久し振りにいい運動になった」


 これはウソじゃない
 最近身体が鈍っていたのでいい運動になった


 「さーて、メシにするか。あと今日はここまでだな」
 「はい。お腹が空きました」 
 「よし、少し待ってろ」


 俺はアウトブラッキーを出してキッチンへ


 「ジュートくん。少し出てきます」
 「え? 1人でか?」
 「はい。この山は頂上にはモンスターはいません」
 「うーん、何しに行くんだ?」
 「たいしたコトではありません。生理現象です」
 「う、す……スマン」


 シャロアイトは微笑むと岩陰に


 「………あれ?」


 しばらくして俺は思った




 【アウトブラッキー】にはトイレが付いてるぞ?




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 「戻りました」
 「お、おう」


 シャロアイトはしれっと戻ってきた
 一体何があったんだろう、少し嬉しそうだ


 「さあご飯にしましょう。お腹が空きました」
 「わかった。大盛りな」
 「はい。お願いします」


 すっかりおなじみとなったやり取りを終わらせご飯へ


 そして片付け、一休みとしたところでシャロアイトが切り出した


 「ジュートくん。案内したい所があります」
 「えぇ? もう夜だぞ……明日にしようぜ」
 「いえ。今がいいのです……お願いします」


 うーん。これは昼間の行動と関係あるかも


 「わかった。じゃあ行くか」
 「はい。行きましょう」


 シャロアイトは【アウトブラッキー】から降りて先導してくれる
 どうやらすぐ近くらしい、歩きに迷いがなかった
 そして歩くこと数分。目的地に着いた


 「ここです」
 「ん?……あ、なんだこりゃ!?」


 俺はそれを見て軽く驚いた


 それは切り立った崖の側にあった
 周囲が岩に囲まれて普通に探したら絶対に見つからないし、立地も最悪なのでモンスターも近づかないだろう


 理屈は分からないがそこは広さ数メートルのそこそこ大きな岩の池
 しかし池からは湯気が立ち上り少し弱めの硫黄の香り




 つまりそこは、温泉だった




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 「記録にはこの〔ボルボ岩山〕の頂上には美肌の湯と言われる天然温泉が湧いている、と聞きました。しかし頂上までの道のりは険しく、温泉の存在も不確かだったので近づく者はいませんでした」


 シャロアイトは説明しながら服を脱ぐ
 俺も天然温泉にウキウキしながら全裸になる


 「へぇ、じゃあ昼間はここを探してたのか?」
 「はい。『雷震飛鳥アストライアー・ロビン』を飛ばして探知しました」
 「いや、そんなのに【特級魔術】を使うなよ……」


 呆れながらも視線は温泉
 俺たちはお湯を身体にかけて早速湯船に浸かる


 「おっほ~っ!! いい湯加減!!」
 「そうですね」


 俺は大の字で岩に寄りかかる……気持ちいい
 するとシャロアイトがいつものように背中を向けて俺の前に


 「ん? 広いんだから遠慮すんなよ」
 「いえ。ここが落ち着きます」


 まぁいいか。せっかく見つけてくれたんだし感謝しよう


 「ジュートくん。わたくしはジュートくんと旅をして本当に勉強になりました」
 「ん、どうしたいきなり」


 シャロアイトは身体の向きを変えて俺を見つめる


 「いえ。王都までもう少しなので、ここでキチンと話しておこうと思いまして」
 「……それで?」
 「はい。〔スクーラプ山〕で出会いここまで導いてくれたこと、わたくしを守ってくれたこと、いろんなことを教えてくれたこと……全てがわたくしの宝で財産です。このことは絶対に忘れません」
 「いいって、それよりお前はもっと成長できる。〔ライガの森〕のロボットを解明すればきっとお前の力になる」
 「はい。ジュートくんは用事を済ませたらどうされるのですか?」
 「うん、次は【灰の大陸ファルルグレー】に向かう」
 「そうですか……できればわたくしの研究を手伝って欲しかったのですが、ジュートくんにはやることがあるのですね」
 「ああ。この世界で一番大事なことだ」
 「………ジュートくんなら絶対にこなせます。賭けてもいいです」


 シャロアイトは立ち上がり礼をする


 「だから、最後までよろしくお願いします」


 俺も立ち上がり礼をした


 「こちらこそ、よろしく」


 俺とシャロアイトは顔を合わせて笑う
 素っ裸だが羞恥心はない。まるで兄妹のようなつながり




 今夜は、よく眠れそうだ




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 翌朝。朝食を済ませて出発する


 「さて、用事も済んだし【アメジスト号】で行きましょう」
 「そうだな。それにしてもいい温泉だった」
 「はい。ここはわたくしとジュートくんの秘密の場所にしましょう。王に頼んで立入禁止区域にしてもらいます」
 「そこまですんのかよ!?」


 喋りつつ【アメジスト号】に乗り込む
 魔力を流して飛行形態へ


 「さーて、どのくらいで王都に着く?」
 「はい。3日ほどで到着します」


 シャロアイトが示す方向へ方向転換し出発する




 また必ず、温泉に入りに来よう





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