ホントウの勇者

さとう

閑話 真藤巌次・【拳神クライゼルシュネク】



 真藤巌次しんどうがんじは1人、魔導車の窓際で頬杖をついていた


 「·········」


 その表情は、あまり良いものではなく、むしろ不機嫌といえるものだった


 「なんだよ真藤。まだ納得いかねぇのか?」
 「鉄間······当たり前だろ。大きな町からしらみつぶしに探すなんて、納得できるかよ」
 「ったく、そのくらい割り切れよ。どうせ8大陸は神様のモンになるんだ。掃除は必要だろ?」
 「······チッ。向こういけよ」
 「あん? なんだよその態度は」


 鉄間は、真藤の態度が気に食わないのか表情が険しくなる
 真藤は、そんな鉄間を適当にあしらった


 「うっとうしいからあっち行け。お前の声は耳障りなんだよ」
 「······ほぉ、ケンカ売ってんだな」


 鉄間は、ビキビキと青筋を立てて威嚇する
 指をゴキゴキと鳴らし、拳を握る


 真藤は、そんな鉄間を無視して外を眺めてる


 「······ヤロォ、喰らえや‼」


 放たれる右拳
 神器こそ使っていないが、女子の中ではトップクラスの格闘技脳を持つ鉄間の拳は、生身でも岩石を破壊するレベルに鍛え上げられていた


 「·········」
 「なッ⁉」


 バジン、と鈍い音が響くが、それは真藤の顔面を砕く音ではない
 その拳が、あっさりと受け止められた


 真藤は、鉄間の手首を掴み拳を止めていた
 しかも、鉄間の方を見もせずに


 「やめとけ、お前じゃオレには勝てねぇよ」
 「んだとコラァッ‼」


 鉄間の怒りのボルテージが上がり、戦闘態勢に入る
 しかし、真藤はため息をついた






 「······やめとけ」






 その一言だけで、鉄間の身体がビクリと跳ねる


 「これから戦いが待ってるんだ。余計なケガしたくないだろ?」
 「く、クソが···ッ‼」


 鉄間は、数歩下がるとそのまま去っていく




 真藤は、もう一度だけため息をついた




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 真藤巌次と無月銃斗は、クラスの中では仲のいい友達である


 男子高校生にはありがちな下ネタを話したり、エロ本を読んだりする仲で、そこに金村剣吾や盾守堅硬を混ぜてよく遊んだりもする仲だった


 そんな真藤は、空手部に所属するエース
 全国大会にも出場経験のある、若き格闘家でもある


 剣道部のエースの金村や盾守ならまだしも、部活に無所属で読者ばかりしてる銃斗とは、不思議とウマがあう


 毎日友達と遊び、部活で汗を流す
 真藤は、毎日が楽しくて仕方なかった




 こんな、フザケた世界に来るまでは




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 銃斗への憎しみはあった


 しかし、真藤はどこかモヤが掛かったような不自然さも感じていた
 まるで、自分ではない何かがいるような気持ち悪さ


 でも、身体を鍛えて強くなるのは楽しかった
 未知の力を使い、地球ではあり得ない生物を倒す快感は素晴らしいものであった


 そして、銃斗がかつてのクラスメイトを殺した······そのことは許すことができなかった


 信じていたのに、裏切られた
 真藤は、再び銃斗を憎んだ


 がむしゃらに鍛えて強くなる
 獅子神レオンハルトも、真藤を認めた
 クラスで4番目に強くなり、自信もついた


 これなら、銃斗を倒せる······と


 しかし、銃斗はさらに強くなり、死んだと思っていたクラスメイトは生きていた


 そして、銃斗の仲間として敵になる




 真藤は、何が正しいのか分からなくなっていた




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 胸のモヤは、晴れることはない
 真藤は、1つの結論を出した


 「ジュートと戦えば、何かがわかる」


 真藤が、この無断遠征に着いてきた理由はそれだった




 「さぁて、ここまで来たら仕方ない······やるか」




 真藤は、覚悟を決めた





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