ホントウの勇者

さとう

楽園都市ラーベイン④/トンネル・迷路完成



 「ここがそうだな」
 「ほう、すでに作業が始まってますね」


 俺とシャロアイトは建設現場にやって来た
 リクトとマオちゃんと一緒に遊んだことでここを見つけられたので、シャロアイトを連れてくるのは簡単だった


 シャロアイトはキョロキョロと辺りを見回し、1人の男性の元へ歩き出した


 「お疲れさまです。ザック監督」
 「おお、嬢ちゃんか。よく来たな……ん、おめぇは?」
 「彼はわたくしの護衛です。それよりどうですか?」 
 「まぁ作業は順調だ。交代で作業の手を休めずに動いてる」
 「はい。事故には気をつけて下さい」
 「ああ、まずは設計通りここの敷地内に〔レール〕を敷いている。あと数日でフォーミュライドから資材と吊り上げ式魔導車も到着するからな、それに合わせて作業を進めてる」
 「はい。予定通りですね、何か問題は?」
 「今んところはねぇな。【黄】の魔術師のおかげで杭打ちもつつがなく終わったし、強度にも問題はねぇ」
 「では湖底トンネルは?」
 「ああ。トンネルの整備とフォーミュライドの職人達が潜水式魔導車を創ればいい」


 シャロアイトと現場監督のザックさんが確認作業をしていた
 今は俺の出番が全く無いな




 とりあえず、どういう物が設置されるか聞いてみるか




───────────────


───────────


───────




 シャロアイトが設計した魔導遊具は7つ




 一つ目はジェットコースター
 これはシャロアイトが一番感動していた遊具で、遊園地の敷地内にまんべんなくレールを引いて、その上を魔導エンジンを積んだ専用の魔導車で高速で牽引するというもの
 レールには高低差を付け、さらには捻りやループなども付けて楽しませる、まさにジェットコースターだった


 二つ目はフリーフォール
 これはそのままだ
 【黄】の魔術師が大穴を開けてその下に長い杭を何本も挿して土台にする
 そして再び魔術で地面を固めてしっかり固定
 あとは魔導技術でフリーフォールの形を作って完成……なんか出来そうだ


 三つ目はゴーカート
 これはスピードが出ないように改造された1人乗り魔導車を、専用の小さなコースで走らせるだけ
 まぁ小さい子供用の遊び場だな……これも問題無い


 四つ目は湖底探査船
 この魔導車は原則、車ではない
 実はこの遊園地の裏にはとても大きな湖が広がっていて、よく釣れるポイントでもあるらしい
 その下はスゴく広がっているので、地面に穴を開けて【灰】の魔術で周りを補強、そしてそのままトンネルを造り湖底に通し、湖底を散歩するようなレールを引いてその上を魔導車で走らせるらしい
 ちなみに穴を開けるのと魔術での補強、【灰】魔術でのトンネル作成は俺の仕事
 上等だ、俺の本気を見せてやるよ


 五つ目は観覧車
 コイツも目玉の1つになりそうだ
 まぁ簡単に言えば俺の世界の物と同じ、既に杭は打ってあるので問題無い


 六つ目はメリーゴーランド
 これはまぁ子供向け
 強いて言うなら馬のデザインがモンスターみたいなことかな


 七つ目は大迷路
 これは屋内施設
 シャロアイト渾身の自信作で、時間経過と共に構造が変わる超高難易度の迷路
 さらには鏡の迷宮や落とし穴、煙が吹き出たりとトラップも満載だ


 あとは休憩所や飲食店、お土産物など設置して完成




 以上が遊園地〔ビノンテンパーク(仮)〕の全容だ




───────────────


───────────


───────




 「ふむ。完成予定は?」
 「このまま進めば1週間ってとこだ。急ピッチで休まず作業してるし、作業人数が1000人以上もいると作業が捗りすぎるくらいだぜ」
 「は、早ッ!?」


 これだけの規模の遊園地を一週間だって!?……なら、俺もさっさと終わらせるか


 「じゃあ海底トンネルの作業もさっさと終わらせるか?」
 「そうですね、お願いします」


 俺とシャロアイトはザック監督と別れて移動
 海底トンネルは遊園地の敷地内から移動が可能で、そこからレールを伝って降りていきそのままトンネル内をゆっくり走るようになっている


 つまり……穴を掘って海底までの道を造り、周囲をコーティング、水圧やモンスターの攻撃にも耐えられる分厚いガラスを魔術で作成する


 ま、見てろ。俺だってずっと魔術を使ってきた
 【灰】の魔術はかなりの使用率、自信はかなりある


 「ここがスタートか?」
 「はい。ここから斜めにトンネルを掘って湖底に繋ぎ、そのまま湖内を1周、ゴールはすぐ側で」


 要するにループ状のトンネルだな
 スタートとゴール、次はゴールがスタートになる


 「ふぅぅ………よし」


 大事なのはイメージ
 まずは【黄】の魔術で穴を開けて、すぐにトンネルの補強、そして海底トンネルを造る


 「………」
 「………ジュートくん……なんて、魔力」


 全神経を集中する
 全てのイメージを現実にする
 俺なら出来る。魔術の力を……【銃神ヴォルフガング】を信じる


 「【黄】の上級魔術・【円杭突貫シランドル・ステーク】」
 「【灰】の上級魔術・【透色硝子トラス・パーレンツェ】」


 俺は両手を前に出してほぼ同時に魔術を発動させた
 轟音と地震が一瞬起きる


 「………よし、できた」


 俺の前には2つの大穴の入口が出来た
 それぞれがループして繋がっているはずだ


 「よし、シャロアイト……何やってんだ?」
 「いえ。なんでも」


 シャロアイトは何故か尻餅をついていたが、すぐに立ち上がった


 「よし、行くぞ」
 「え?」
 「トンネルの中をチェックするんだよ、ホラ」


 俺は【流星黒天ミーティア・フィンスター】を出して跨がり、トンネルの入口で待機する


 「乗れよ、行くぞ」 
 「………」
 「行かないのか?……もしかして、怖いのか?」
 「さ、行きましょう」


 ふふふ、作戦成功




 大丈夫だとは思うけど、確認しなきゃな




───────────────


───────────


───────




 「よし。問題なさそうだな」
 「………」


 透き通るように透明なトンネルの中を走行している
 こうして見ると湖底の中はかなりキレイだ


 「なぁシャロアイト………おい?」
 「………」


 こいつ……目を瞑ってやがる


 「やっぱ怖かったんだな、ムリすんなよ」
 「ししし、してません!! こんな水の中ごとき、この【特級魔術師】たるわたくしが!!」
 「ほほーう、じゃあここで俺がトンネルに穴を開けたら……?」
 「ひぃぃッ!? ジュートくんのばかっ!!」
 「いででででッ!? 耳を引っ張るな!?」


 とりあえずさっさと戻ろう
 このままだと耳がすっぽ抜けるかもしれん




 こうしてシャロアイトとの湖底トンネル探査は終わった




───────────────


───────────


───────




 「な、なんだろう?」
 「間違いなくトンネルのことですね」


 トンネルの周りには人だかりができていた
 ザック監督が慌てて前に出て来る


 「お、おい‼ 何だこりゃ⁉」
 「えーっと、トンネルですけど」
 「何だとぉっ⁉」


 すると監督は何人か連れて中へ入って行った
 そのまま数十分後、反対側の出口から戻ってきた


 「なんてこった···完璧だ。強度といいトンネルの長さといい文句の付けようがねぇ。よーしお前ら‼ 早速レールの取り付けにかかれ‼」


 ザック監督の一言で作業が始まる




 これで俺の出番は終わり。いい仕事させて頂きました




───────────────


───────────


───────




 それから数日、作業は順調だった




 基礎はほぼ完成しフォーミュライドの職人が到着するのを待つだけ
 するとその間に大迷路が完成した。早すぎる


 「ふむ、さすがですね。まさかこの短期間で完成させるとは」
 「まぁ数百人で作業してるからな」


 建物は大きめの2階建て体育館みたいな感じ
 曰く、地下迷路もあるらしくシャロアイトですら攻略は難しいとのこと


 「おい、そんなのどうやってクリアすんだよ。脱出できないんじゃ意味ないだろ」
 「問題ありません。迷路内に入るときに魔導スイッチを配ります。スイッチを押せば迷路が変形して出口まで一直線です」


 なるほど、対策は出来てるのか


 「では行きましょう」
 「は?」
 「迷路の試運転です。記念すべき第一号はわたくしたちです」




 第一号······なんかいい響き




───────────────


───────────


───────




 「おいおいどうなってんだよ⁉」


 俺は迷っていた


 今いるのは鏡の迷宮
 壁を伝いながら歩き出口を目指していると、突然鏡が回転、通路が全く変わってしまった


 さらに出口が見えた直前で落とし穴
 落とし穴の先は行き止まりで、来た道を引き返した


 鏡の迷宮を抜けた先には木材の香りが漂う和風建築の迷路
 しかし中は忍者屋敷みたいになっていてトラップが満載だった
 落とし穴、回転扉、隠し通路となんでもあり


 忍者屋敷を抜けると最後は王道の迷路
 形が変化するけど特に仕掛けはない
 ここを抜けてやっとゴールだ


 「あー······疲れた」
 「お疲れ様です」


 シャロアイトはいつの間にか外にいた


 「ふむ。この迷路には年齢制限をつけた方がいいですね」
 「だな······」




 確かに、子供1人じゃ入れないな





「ホントウの勇者」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く