ホントウの勇者

さとう

楽園都市ラーベイン③/子守・父親気分



 「お兄さん、お菓子買ってー」
 「はいはい。お昼食べたらな」
 「お兄さん、あそこで何かやってるよ‼」 
 「いてて、おいリクト髪の毛引っ張るなよ」


 マオちゃんは大人しいけど、リクトはけっこうヤンチャな感じ。俺の頭の上でキャーキャー騒いでる


 「お兄さん、あれなにをやってんの?」


 リクトが指差した方向には人が集まっていた
 よく見ると大道芸人がジャグリングをしている




 「よし、見てみるか」




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 「おお、すげぇな」
 「わぁ」 
 「すっげー」


 なんとか最前列へ行き、大道芸を見ることができた
 そこには数人のピエロがナイフでジャグリングをしていた


 「カッコイイ‼」
 「すごーい」


 リクトもマオちゃんも目をキラキラさせてる


 「そういえば俺もやったっけ······」


 【赤の大陸】でナイフ投げの訓練をする際、ナイフに慣れるためにジャグリングをしたこともあった
 初めの頃は刃を掴んでしまい何度も怪我をしたが、コツを掴むとけっこう楽だった


 「ねぇお兄さん、呼んでるよ?」
 「え?」


 マオちゃんが俺のほっぺをツンツンしてくる
 何事かと思うと、ピエロが手招きしていた


 「さ、子連れのお兄さん。前にお越しください」
 「え、お、俺?」


 観客が見守る中前に
 リクトとマオちゃんはピエロが抱っこしていた


 俺はベニヤ板の前に立たされて頭に何かを置かれた
 まさかコレって······


 「さ、動かないで下さいね?」


 やっぱりな
 頭にはリンゴみたいな果実が乗せられ、そこを目掛けてナイフを投げるアトラクションみたいだ   


 ピエロがナイフを見せて観客にアピール
 すると歓声が上がり盛り上がる


 「さぁお兄さん、動かないで下さいね」


 ピエロはジャグリングしながら気楽に投げる


 1本目


 「お?」


 ナイフは頭のリンゴに命中
 周囲からは歓声が上がる


 2本目


 これも命中
 再び歓声が上がる


 3本目


 命中
 俺は当たらないのがわかってるので特に驚きはしない
 仮に外して俺に命中しそうになっても避ける自身はある


 すると、もう終わりなのか周囲にアピール
 歓声を浴びたまま終わった


 ここで少しイタズラ心が湧いてきた


 解放された俺は頭のリンゴを手にとって宙に投げる
 ピエロは迅速に反応、ナイフを投げて命中させた


 「ナイス‼」
 「サンキュー‼」


 ピエロとハイタッチ。周囲も大喜びでサプライズを見守った
 すると、ピエロの視線が俺の二の腕のナイフに止まる


 「キミもナイフを投げるのかい?」
 「まぁ一応、武器だけど」
 「せっかくだ、腕前を見せてくれ‼」


 するとピエロは観客に呼びかける


 「さぁ、ここで冒険者のお兄さんのナイフ投げをご覧あれ‼」


 ピエロは突然リンゴを空中に投げた
 おいマジかよ、いきなり過ぎるだろ


 しかし身体は反応してしまう


 俺は空中を浮かぶリンゴをロックオン
 ナイフを二の腕から1本抜いて投擲


 「よっと」


 威力重視で投げたのでリンゴを貫通しベニヤ板に突き刺さる
 そしてそのままナイフを8本連続投稿


 「おーらよっと‼」


 ナイフのグリップエンドに続々と突き刺さる
 俺は後ろに振り向いて最後の1本を空中に投稿


 「······グッバイ」


 伸ばした手を振り下ろす
 すると回転して落ちたナイフがリンゴの真上に刺さった


 き、決まった······カッコ良すぎるだろ、俺


 俺は周囲をチラリと見た


 「あ、あれ?」


 なんだろう、反応がない
 ピエロですらポカンとしてるし


 「お兄さんすげー‼」
 「かっこいー‼」


 素直なのはリクトとマオちゃんだけか
 俺は2人を抱き上げてピエロに言う


 「じゃ、じゃあこれで失礼しまーす」


 俺はそのまま歩き去る




 後ろから何か聞こえてきたけど、とりあえず魔導滑車を目指そう




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 「これが魔導滑車か······」




 魔導滑車は地面に引いた鉄のレールの上を走る電車みたいだった
 見た目はまんま路面電車、いや……機関車みたいだな


 レールは町を一周するように引かれてる
 魔導滑車の本体はオープンスタイルで、大きさは大型バスくらい。屋根が付いてないので開放感がある
 乗車人数は40人くらいで、数分おきに魔導滑車が戻って来るので渋滞はほとんどない


 「よし。行こうか」
 「うんっ」
 「やったぁっ‼」


 リクトとマオちゃんは大喜び
 並んで数分としないうちに乗車出来た


 そしてゆっくりと走り出す
 ガタンゴトン、ガタンゴトンと、どこか懐かしい揺れを感じる


 「へぇ、そんなに揺れないな」
 「わぁい」
 「おおー‼」


 マオちゃんは俺の膝の上
 リクトは隣の席に座らせる


 移り変わる景色に目を奪われる
 キラキラ光るイルミネーション
 町を走るパレード魔道車
 町中では踊り、歌い、大道芸人が盛り上げる


 「あ、もしかしてあそこが···?」


 俺の視線の先には大きな広場が見えた
 何人かの作業員が、地面を慣らしてコンクリみたいなので舗装してる
 他にも大型魔道車が金属やら木材を運搬してた
 多分、遊園地の建設場で間違いないだろう


 「ほら、見てみな」
 「なにー?」
 「何にもないよ?」
 「あそこに面白い遊び場が出来るんだ。出来たらパパとママに連れて行ってもらえるからな」
 「ほんと⁉」
 「パパとママと遊べるの⁉」
 「もちろんだ」


 俺は笑顔ではしゃぐ子供たちに癒やされた




 さて、そろそろご飯にするか




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 魔導滑車から降りて2人を抱っこし、近くにあったオシャレなレストランに入る


 「さ、なんでもいいぞ」
 「わぁい」
 「お腹すいたー」


 2人が頼んだのはお子様ランチ……っていうかこの世界にもあるんだな
 俺は適当に肉と魚を合わせた定食を頼んで食べた


 お昼が終わり、今度は大きな魔導具店···まぁおもちゃ屋にやって来た
 2人とも嬉しそうに見てる
 俺は2人を降ろして手を繋いだ


 「さて、好きなのを1個だけ買ってあげる。なにがいい?」


 何個も買うとビノンテンさんに怒られるかも知れないから1個だけ。いい判断だろ?


 「おれはコレ‼」
 「マオはこれ、かわいい」


 リクトは子供用のおもちゃ剣。魔力を流すと光る〔魔導核〕が埋め込まれてる
 マオちゃんはふわふわしたネコぬいぐるみ。マオちゃんのサイズだと抱きまくらだな


 俺は会計を済ませて袋を持つ
 リクトを肩車、マオちゃんを腕に抱いて空いた手で荷物を持つ……ちょっとツライ
 2人を抱きかかえて袋を持ってるから手が塞がってしまった


 時間はだいたい3時頃か


 「そろそろ帰るか」


 俺は家を目指して歩きだす
 すると、騒がしかったリクトが静かだ


 「······ふ」


 2人とも寝てる
 お腹もいっぱいだし、たくさん遊んだから疲れたんだな
 なんか父親になった気分だ




 俺はなるべく揺らさないように帰路についた




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 俺はビノンテンさんの家に到着、静かにノックする


 「お帰りなさい、おっと······」


 ビノンテンさんは口を抑え、静かに俺を部屋に案内してくれた
 そのまま2人をベッドに寝かせ、リクトの側に剣を、マオちゃんの側にぬいぐるみを置く
 マオちゃんはすぐにぬいぐるみに抱きついた
 そのままドアを閉めてビノンテンさんの所へ


 「お疲れ様です。いやぁありがとうございました」
 「いえ、俺も楽しかったです」


 ビノンテンさんにお茶を入れて貰い休憩


 「シャロアイトはどうですか?」
 「順調のようです。既に何枚か図面を書き上げて職人に渡しました。ははは···職人が腰を抜かしたのを初めて見ましたよ」


 多分ジェットコースターだな
 ここ世界じゃありえない乗り物らしいからな


 「あの、リクトとマオちゃんに約束したんです。遊園地が完成したらパパとママが連れて行ってくれるって···だから一緒に遊んでやって下さい」
 「もちろんです。家内もそれを望んでますから」


 いい笑顔で答えてくれた
 そして、シャロアイトが篭ってる部屋のドアが開いた


 「ふぅ、完成しました。では早速仕事に入りましょう。職人の数と資材は揃いましたか?」


 疲れを全く感じさせない表情でシャロアイトは言う
 ビノンテンさんは自身たっぷりと言う


 「はい。職人は追加で600人ほど手配しました。あとの400人と資材はフォーミュライドから来る手筈となっています。その移動に4日ほどかかるのでその間は今ある資材と職人だけで作業を進めます」


 なんだかんだで有能だよな、この人
 俺が子供たちと遊んでる間にここまで手配するとは


 「わかりました。それではジュートくん、会場の下見に行きましょう」
 「わかった。案内するよ」




 さーて。今度は遊園地か





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