ホントウの勇者

さとう

閑話 鬼竹突漢・【裂神インペトゥス】



 鬼竹おにたけ突漢とっかんは仲間達と共に地下水場でヒマを持てあましていた




 「ったく、これだから女は……」


 そう答えたのは錐藤螳螂きりどうかまきり
 坊主頭の元サッカー部
 現在、クラスメイトからはお笑い担当として扱われている


 「そう言わないでよ、もうすぐ来るはずだからさ」


 優しく答えたのは轄俥盛輪かつぐるまじょうりん
 クラス公認の運び屋で、戦闘ではなく運搬に秀でた〔神の器〕
 この無断遠征での移動の全ては、彼の神器にかかっていた


 「うう……緊張するね」


 ブルッと震えたのは 達俣たつまた土丸つちまる
 ぽっちゃりした容貌に頼りなさげな表情
 しかし彼は【英雄十三傑ヴァリアントサーティ】序列12位
 かつて【赤の大陸】で銃斗と戦い破れ、自分を極限まで鍛え直してここまでの強さを手に入れた


 「………ふぅ」


 腕を組んで考え事をしてるのは真藤巌次しんどうがんじ
 【英雄十三傑ヴァリアントサーティ】序列4位
 その実力は誰もが認め、圧倒的な強さを誇るクラスのナンバー4
 間違いなく実力はこの中でも上位


 鬼竹は前に出て全員に確認した


 「ふ~む。なんならオイが様子を見てこようかの?」
 「いや、大丈夫だ」


 真藤がそう言ったと同時に地下水場のドアが開いた


 「ごっめ~ん。遅くなった~!!」
 「ごめんなさい!!」


 謝罪したのは2人の女子
 弓島黎明ゆみしまれいめい雅門がもん魅檻みおり
 その他の3人は何も言わずに黙りこくっていた


 「……なにかあったの?」


 轄俥は黙ってる3人に向けて心配そうに話しかける……が


 「む~ん……この感覚……?」
 「………チッ」
 「………」


 鉛田なまりだ懐子かいこは頭を押さえてブツブツ何かを呟き
 鉄間てつま蓮夏れんげは不機嫌さを隠そうとせずに舌打ち
 羽蔵はねくら麻止まとめは俯いたまま顔を上げようとしなかった


 「ど、どうしたんだい?」
 「あん? いいから行こうぜ、こんなクセぇ所にいつまでもいられねぇよ。オイ轄俥、神器を出せよ」
 「う、うん……でも」
 「ちょっと待て、おい羽蔵……何があった?」


 錐堂と鬼竹以外の3人は心配していた
 しかし、女子達は何も言わなかった


 「いいから行こっ、事情は後で話すから。ね、達俣くん」
 「えっと、雅門さん?」
 「お、おい弓島……」
 「ホラ、行くよ真藤」


 男子達は困惑していたが、鬼竹が笑いながら言う


 「さぁさぁ行こうぜ行こうぜ!! 目指すは【紫の大陸】だぁ!!」
 「うるせぇ!!」
 「はい……すみません」


 鉄間に睨まれてあっさりと黙りこくる




 鬼竹は、場を盛り上げるのがヘタだった




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 「『第二神化セカンドエボル乗神覚醒アウスシュタイゲン・アウェイクン』」




 その言葉を引き金に、轄俥の神器が発動する
 地下水場の水は海まで通じている。そのためにこのパイプを伝っていけば外まで出れる
 そのために必要なのは移動手段


 地下水場のため池に、数メートルほどの大きさの潜水艦が現れた


 「さ、乗って」


 轄俥は簡単に言うが、どう見ても定員は数人
 テンションの上がった弓島が一番乗りで乗り込んだ
 錐堂は文句を言おうと声を上げようとしたが、弓島の声が響き渡った


 「なにコレすっご~い!!」


 その言葉に全員が顔を見合わせ、轄俥は得意げな表情だ


 「いいから乗って、意味が分かるから」




 とりあえず全員が乗ることにした




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 「な、なんじゃあコリャあ!?」


 鬼竹のリアクションはうっとうしかったが、みんな同じ気持ちだった


 中はものすごく広かった
 個別の船室が付いており、操縦席はコンピュータで管理されていた
 まるで本物の潜水艦の中にいるように感じた


 「す、すっげぇ……オイ轄俥、コイツが」
 「そう。戦闘力を失う代わりに完全に「移動」に特化した神器さ」


 轄俥の姿も変わっていた
 騎士服ではなく、まるで軍人のような服
 キャップを被りまるで司令官のような佇まいだった


 「これが『装甲走行操行ヴォワチュール・アウトヒューラー』の第二神化形態・『完全運行装甲走行オールマイティ・ムーヴ・アウトヒューラー』さ」




 轄俥は、自信たっぷりに答えた




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 「よっしゃぁっ!! 行くぜ野郎どもぉッ!!」
 「やかましいッ!!」
 「はい……すみません」


 錐堂が一喝し鬼竹は黙りこくる


 「さて、【紫の大陸】までしばらくかかりそうだ。みんなはゆっくりしてて」
 「おい、制限時間は?」
 「大丈夫。どうやら数ヶ月は出してられそうなんだ、戦闘力がないからだけどね」
 「へぇ、すごいな」


 仲間の賞賛に轄俥は照れ、それでいて潜水艦を発進させる
 海まで続くパイプの細さは数十センチだが、『完全運行装甲走行オールマイティ・ムーヴ・アウトヒューラー』は難なく発進した




 様々な思いを残しながら、10人の〔神の器〕は【紫の大陸】へ向かった




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 「いいのかよ、行かせちまって」


 「構わないわ、どうせ誰も死にはしないしね……」


 「やれやれ、聞き分けのないガキはコレだから……」


 「ヒッヒッヒ……それは誰のことだろうねぇ……?」


 

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