ホントウの勇者

さとう

ガーボ地下遺跡/思わぬ遭遇・反省



 ガーボ地下遺跡


 そこは迷宮のように地下を伸びる遺跡
 今まで最深部に到達した者はおらず、目印をつけてもいつの間にか印が消えてしまうという曰く付きの遺跡でもある


 そんな遺跡の入口に、俺とシャロアイトは立っていた


 「な、なぁ···ここを通らなきゃダメなの?」
 「そんなことはありませんが、ジュートくんと一緒だと何かがありそうな気がするから来ました」
 「何だよその理由······」


 俺は改めて遺跡入口を見る


 石造りの立派な入口は広く天井も高い。これなら魔道車でも進めそうだ
 奥は薄暗く、光りが届かなそうな感じがする


 「では行きましょう。この広さなら【アメジスト号】で進めそうですね」
 「わかったよ。モンスターはどのぐらいいるんだ?」
 「そこそこです。まぁわたくしが迎撃しますので、ジュートくんは運転をお願いします」
 「あいよ」




 と、言うわけで遺跡探検スタートだな




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 遺跡内、というか古い壁画の通路をゆっくりと走る
 中は暗く、魔道車のランプを点けないと進めない。しかも道も複雑でかなり迷う


 《······左ネ》
 「よし、左だな」


 クロの案内でゆっくりと走る
 時折出て来るモンスターは、シャロアイトが葬る


 「道は大丈夫なのですか?」
 「ああ、優秀な案内猫のおかげでな」
 《······ニャ》


 まんざらでもなさそうだ
 こういう時のクロのカンにはかなり助けられている
 本人、いや本猫曰くなんとなくわかる、とのことだがその精度は100パーセント。迷ったことはほとんどない


 「それにしてもここは何だ? ダンジョンなのか?」
 「違います。ダンジョンは別にあります。ここは最古の遺跡の1つで、その構造の難解さと死者が多数出たことで封鎖されている遺跡の1つ。最深部には古代の神の力が眠ると言われてます」


 古代の神の力ねぇ
 なんかウソくさい、絶対ウソだ


 《······妙ネ》
 「どした、クロ?」
 《·········》


 クロはだんまりしてる
 こういう時はイヤな予感しかしない


 しばらく走ると十字路へ差し掛かる


 「クロ、どっちだ?」
 《······試してみまショ、真っ直ぐで》
 「試す?」
 《エエ、これでハッキリするワ》


 意味はわからなかったが前進する


 「ジュートくん、どうしました?」
 「あ、いや、クロが」


 シャロアイトにクロの声を聞くことは出来ない
 どうやらクロが意識しないと聞けないようだ


 シャロアイトは俺の隣にいたクロを抱っこして膝に乗せ、そのまま頭を優しくなで始めた


 そして真っ直ぐ進むこと5分


 「お、また十字路か。頼むぞクロ」 
 《······間違いないワネ》


 クロはシャロアイトの膝の上から起き上がり俺の肩へ飛び乗る


 「どうしたんだよ?」






 《この遺跡、生きてるワネ》




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 生きてるって···生モノってことか?


 《そうネ、さっきの十字路にワタシの魔力痕跡を残して置いたケド、ここの十字路に同じモノがあるワ。間違いないワネ》


 けど、生きてる遺跡なんてあるのかよ。初めて聞いたぞ


 《サァ? この子に聞いてみたら?》


 クロはシャロアイトに視線を移す
 確かに、シャロアイトなら知ってるかもしれない
 なんかスゴくイヤな予感もするけどな


 「な、なぁシャロアイト······ちょっと聞きたいことあるんだケド」
 「なんでしょう?」
 「あのさ、生きてる遺跡って聞いたことある?」


 シャロアイトは少し考え、思い出したように言う






 「ええ、確か〔アイボリーラビリンス〕というSSレートの【神獣】ですね。このモンスターは遺跡に擬態して獲物を待ち伏せし、入り込んだ人間をエサにして殺す対人間用の神が作りし【神獣】です。確か長い間行方不明なのですでに滅ぼされ·········」






 そこまで言ってシャロアイトは固まった
 どうやら俺の言いたいことを理解したようだ


 「ま、まさか」
 「ここさぁ、立ち入り禁止なんだよな?」
 「は、はい」  






 「俺たちって、久しぶりの獲物じゃね?」






 次の瞬間、遺跡内が轟音を立て始めた




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 もの凄い縦揺れが俺たちを襲う


 「やっぱ間違いねぇな、コイツが〔アイボリーラビリンス〕だ!!」
 「くっ、このままじゃ消化されてしまいます!!」


 俺は魔導車を運転しながら考える


 「シャロアイト、コイツの弱点は!?」
 「わ、わかりません!! 情報が少なくすでに滅びたと伝えられてましたので!!」
 「じゃあ何でもいい、可能性がありそうな所は!?」
 「えっと………そ、そうだ!! このモンスターも生物である以上、心臓や脳があるはずです、そこを破壊できれば……!!」


 心臓、脳……考えられる場所は


 「最深部……そこしかないか!!」


 その時、通路の壁が少しずつ狭まっていくのが見えた
 この野郎、魔導車ごと押しつぶす気だな


 「シャロアイト、【流星黒天ミーティア・フィンスター】に乗り換えるぞ、このままだと【アメジスト号】が壊される!!」
 「はい。お願いします!!」


 俺はシャロアイトを抱えて神器を発動
 そして【アメジスト号】を飛び下りて一瞬で収納、そのまま真下に【流星黒天ミーティア・フィンスター】を出して飛び乗った
 そして、【流星黒天ミーティア・フィンスター】は神化、【神速流星黒天プリメラ・ミーティア・フィンスター】へ変形する


 「えっ!?」


 シャロアイトが驚くが気にしてるヒマがない
 そして迫りくる壁を抜けて広い空間に飛び出した


 「ここは……」
 「ジュートくん、上です!!」


 シャロアイトの言葉に反応し上を見る……すると、瓦礫が落ちてきた


 「うぉっ!? すり潰す気だな!?」
 「なんとか……っ!!」


 シャロアイトが魔術で落ちる瓦礫を必死に破壊する
 俺は周囲を確認、空間の先に小さな出口が見える


 「あそこに向かう!!」


 返事を聞く前に全速力で向かう


 「クロ、心臓でも脳でもいい!! それらしい場所を探してくれ!!」
 《わかったワ!!》


 シャロアイトの近くにいたクロが俺の前に来る
 後部座席のシャロアイトは瓦礫を必死にたたき落としていた


 「うぉぉぉぉぉッ!!」
 「ジュートくんっ!!」


 滑り込むように入口に入り再び狭い道を走行する


 「クロ、まだか!?」
 《……ダメ、心臓らしき器官を見つけたケド凄いスピードで動いて完全に捕捉出来ないワ!!》


 心臓か、そいつを破壊出来ればこのモンスターを倒せる
 でもどうすれば破壊出来る……?


 「ジュートくん、弱点は見つかりましたか?」
 「ああ、でも動き回ってて捕捉出来ない!!」
 「……わかりました。わたくしに任せて下さい」
 「え?」


 するとシャロアイトはブツブツと何かを唱え始める
 これはまさか……


 「よし、任せたシャロアイト!!」


 俺は通路を走り回りながら時折落ちてくる瓦礫を『錬鉄の神銃アイゼン・ブラスター』で打ち落とす
 もはや通路は適当に走る。今、一番大事なのは逃げ回り時間を稼ぐこと


 そして、ついにその時は来た


 「それでは行きます、ジュートくん」




 シャロアイトの周りに魔力が集い、弾けた




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 シャロアイトが行ったのは【紫】【紫】【紫】の融合ブレンド。即ち『固有属性エンチャントスキル




 【紫の特級魔術】・『雷震飛鳥アストライアー・ロビン




 「な、なんだ……!?」
 「さ、出番です」


 シャロアイトの周りに紫の球体がいくつも出現する
 大きさは30センチほど、数は20以上はある。何だコレ?


 「シャ、シャロアイト……うおっ!?」


 すると突然球体から何かが飛び出す
 しかもその数は100や200じゃ利かない、500、1000と増えていく
 その塊は壁を突き破り、通路の至る所へ飛んで行く


 「これは……と、鳥か?」
 「はい。電気の鳥です。主に探知と探査に優れ、対象を見つけると自動で追尾・攻撃を仕掛けます。今は狭い場所なので手加減してますが」


 よく見ると確かに鳥だ……え、これで手加減?
 形はカラス……いや、ハトみたいだな


 「ジュートくん。手加減をしてるので精々動きを止める程度です。トドメはお願いします」
 「わかった、任せとけ!!」


 そのまま走行して1分も経たずに通路が振動した
 まるで電気ショックを浴びて飛び跳ねたような動きだった


 「見つけました……距離は58メートル、そこです!!」


 シャロアイトが指さしたのは真正面、ちょうど行き止まり
 俺は〔決戦技弾フィニッシュアーツ・ストレージ〕を装填し走りながら引き金を引いた


 「【銃神砲撃ヴォルフガング・ブラスター】!!」


 濡羽色の砲撃が行き止まりの通路を破壊
 通路の先にあった巨大な鉱石……心臓を木っ端微塵に砕いた


 「よし、このまま脱出だ!!」


 破壊された先には光が見えたので迷わず突っ込む




 そして、俺とシャロアイトはようやく外に出れた




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 「いやー危なかった……危うく消化される所だった」
 「…………」


 シャロアイトは俯き黙りこくってる……恐かったのかな


 俺は〔神化形態〕を解除、【流星黒天ミーティア・フィンスター】も元の姿に戻り通常走行に戻る
 クロはすでにいなかった。どうやら〔セーフルーム〕に戻ったようだ


 「シャロアイト、どこかケガでもしたのか?」
 「……いえ、その」


 シャロアイトは顔を上げ、泣きそうな顔で言う


 「ジュートくん、ごめんなさい……わたくしがこんな道を選ばなければ、危険な目に遭うことはありませんでした」
 「………」


 こんなに素直なシャロアイトは初めてかも知れない
 俺はバイクを停めて降りる


 「ジュートくんなら、この遺跡の秘密を解き明かしてくれる……〔ライガの森〕の時みたいに。だから……」
 「シャロアイト」


 俺はシャロアイトの頭に手を置く
 するとシャロアイトはビクッと身体を硬くして目を閉じた


 「シャロアイト……メシにしようぜ」
 「え……」


 俺は笑顔でシャロアイトの頭をなでる
 するとシャロアイトはポロポロ涙を流し始めた


 「ほら、よしよし……気にすんな」
 「うっ……うぅぅ、ごめんなさいジュートくん」


 俺はシャロアイトを優しく抱きしめて頭をなでる




 シャロアイトはしばらく泣き続けた




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 「それではご飯にしましょう。わたくしはカレーが食べたいです」
 「立ち直りはやっ!?」


 顔を上げたシャロアイトはいつものシャロアイトだった
 やっぱり泣いてる顔よりこっちのが安心する


 「カレーな、じゃあ準備するから待ってろ」
 「はい。食べたら〔楽園都市ラーベイン〕へ向かいましょう」


 俺は苦笑して【アウトブラッキー】を呼び、キッチンに入った




 「ありがとう、ジュートくん」




 ま、別にいいか





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