ホントウの勇者

さとう

閑話 雅門魅檻・【獄神アレスタシオン】



 雅門がもん魅檻みおりは、これから無断で【紫の大陸】へ向かう女子たちと歩いていた


 船は使えないので轄俥の神器を使い海を渡り、そこからは銃斗を探し全員で戦うと、そう決まった


 「でもさ、轄俥の神器ってクルマだったよね? 海を渡るなんてできんの?」


 そう答えたのは弓島黎明
 腕を頭の上で組み、なんとなく答えた感じだ


 「ええ。〔第二神化形態〕を使えば出来ると言ってたわ。ここは彼に任せましょう」


 無表情に呟くのは羽蔵麻止
 その歩みには迷いがなく力強い


 「······はぁ、メンドくさいわ」
 「まぁまぁ、頑張ろう尼宮さん‼」
 「······」


 尼宮真冬は雅門魅檻に肩を捕まれ、露骨にイヤそうな顔をした
 尼宮の視線はキツく、敵意すら感じられる


 「う〜ん、む〜ん······この感じ···む〜ん?」


 頭を抑えながら考えごとをしてるのは鉛田なまりだ壊子かいこ
 いつの間にかこの集団に紛れ込んでいたクラスでも少し浮いていた少女だった


 「チッ、おい鉛田、うっとおしいから喋んな」
 「う〜ん、でもな〜んかキそうなんだよねぇ」


 鉄間蓮夏はイラつきながら後ろを歩いていた
 その様子を見て心配したのか、弓島が話掛ける


 「チッ······」
 「ねぇ蓮夏、イラつきすぎだよ?」
 「うるせぇ、黙ってろ」


 銃斗に敗北してからの鉄間は、イラつきを隠せなかった
 この強行軍にいるのも、もう一度銃斗と戦うためである


 強行軍の女子6人が向かっているのは地下水場
 そこの地下水は海に通じており、そこから轄俥の神器で外へ出る···というのが強行軍の作戦だった


 「ねぇ、ジュート以外は捕らえるんだよね?」
 「もちろん。高名さん達に罪はない、連れて帰りましょう」
 「わかった。でも抵抗されたら?」
 「その時は抵抗していいわ。こちらもやられるわけにはいかないもの」


 弓島と羽蔵のやり取りを聞きながら、雅門は意見した


 「あ、水萌ちゃんは私にやらせてね。友達だから私が助けてあげたいの‼」


 その声に全員が納得した


 「そういえば、清水さんとあなたは同じ部活だったわね?」
 「うん。料理部のお友達······だから私が必ず助ける」


 その決意は強い
 瞳は燃え、拳は固く握り締められている


 「······ヤバいわ」


 尼宮は不安ばかりが集う
 友達を助ける為に戦おうとする姿が、友達の仇を討とうといていた火等燃絵とダブって見えた


 「む〜······な〜んかモヤモヤする」 




 鉛田壊子は、全く話を聞いていなかった




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 地下水場の近くに差し掛かった時、それはいた


 「·········こんにちは」


 濡羽色の髪、最強を示す黒の騎士服、美しき容貌


 【英雄十三傑ヴァリアントサーティ】序列1位・式場夜刀


 壁に寄りかかり、長い髪を指先でくるくると巻きながら言う


 「ジュートに会いに行くの?」
 「······ええ、そうよ」
 「ふ〜ん」


 羽蔵は困惑していた
 式場夜刀の意図が全く読めなかった


 「行くだけムダよ。ジュートを殺せるのは私だけ······」


 その言葉、その妖艶な笑みに全員が呑まれかける
 しかし、羽蔵は負けじと言った


 「やって見ないとわからないわ。それこそアナタの力なんてなくてもやってみせる」
 「へぇ、私1人倒す事が出来ない寄せ集めが、ジュートを殺す······?」


 その言葉に鉛田を除いた5人の空気が変わり、夜刀を見つめ敵意を露わにした
 羽蔵は薄く笑い、夜刀に告げた






 「ふん。殺せる殺せるって、殺さずに愛された女が何を言ってるのやら、あんな男と交わったアナタはもう最強じゃないわ」






 次の瞬間、5人の騎士服が弾け飛んだ


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 「あんな男・・・・······?」 




 逆鱗


 式場夜刀は殺意を振り撒き全員を威嚇した
 手には黒い刀が握られ切先を羽蔵に向ける


 6人は下着すら切り裂かれ全裸となったが、あまりの殺意に身体を隠すことすら忘れた


 「し、式場···テメェっ‼」
 「黙ってろ……‼」


 裸のまま勢いで鉄間が拳を振り上げる
 が、夜刀の一喝に身体が竦む


 「え、あ···ぎ、ゃあァァァァっ⁉」


 鉄間の腕から何かがスルリと落ちる
 小麦色の一枚の布みたいな何か


 それは、切り剥がされた皮膚・・・・・・・・・


 薄皮一枚、神経や血管には傷1つ付いてない
 腕に火傷したヒリヒリとする痛みが広がった


 蹲る鉄間を完全無視
 夜刀は身体を隠そうとしない羽蔵に近づいた


 「アナタ······んん? あぁなるほど、そういうコトね」
 「な、なにを······んっ⁉」


 夜刀は羽蔵の控えめな乳房をわしづかみ、そのまま耳に顔を寄せて呟いた








 「アナタ······羨ましいんでしょ?」








 その言葉は羽蔵の胸にストンと落ちた




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 「死んだと思ってた仲間が生きている······そしてジュートに寄り添って笑ってる」


 夜刀は囁きかける


 「ジュートが殺したと思ってたから許せなかった。胸の痛みも感じなくなった······でも違った」


 魔性の笑みで、追い詰めるように


 「あの子たちはみんなジュートに愛されてる。羨ましい、けど許せない······その迷いが再び胸を苦しめる」


 他の5人には聞こえない


 「だけど、もう会いに行けない。だから逆らってでも行こうとするんでしょ、自分の迷いを断ち切るために、負けるとわかっていても」


 毒の言葉は羽蔵を蝕む


 「あなた・・・の目的は戦うためじゃない。ジュートに会って解放してもらいたいんでしょ? 側に置いて欲しいんでしょ?」


 毒だけど甘い、甘いから離せない


 「なら行くといいわ······そして解放して貰いなさい。仲間を裏切って・・・・・・・
 「う、うァァァァっ‼」


 羽蔵は拳を握り締め夜刀に殴りかかった
 しかし、当然ながらあっさりと躱される


 「もういいわ。全部わかったから······好きになさい」


 夜刀はそのまま立ち去った


 「ま、麻止···?」
 「······」


 羽蔵は、震えたまま動かなかった




 「あれ? みんな……なんで裸なの?」




 鉛田だけは、まったく何も理解していなかった







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