ホントウの勇者

さとう

競争都市フォーミュライド⑤/開会式・スタート



 大会当日、天気は恵まれ最高のコンディション
 チーム【ヘイズリンクス】は大会会場から少し離れた専用車庫に集まっていた


 俺とシャロアイト、デボンさんとマードックさんも一緒
 ここで最後のチェックと気合を入れる
 そしてエルゼさんがみんなを激励した


 「今年こそは優勝······そして、マードックとの結婚資金のために、駆け抜けるわよ‼」


 その言葉にマードックさんは感動
 他のメンバーは呆れていたが、いつものことなので苦笑。逆に気合が入ったようだ


 本日の予定は予選会


 外周コースのタイムアタックである
 ルールは外周を1周走り、上位50企業が明日の本戦に出場出来るというもの。まさにサバイバル
 外周1周の平均タイムは約30分
 この予選会を10台ずつ、約5時間かけて行うのだ


 運転手は1名、チームの代表選手が運転手を努め、他のメンバーはサポートに回る


 サポートと言っても仕事はない
 他のメンバーはあくまでも本戦でのレースが活躍の場所なのだ


 本戦は外周・内周の混合コースでのリレー
 混合コース内を1人一周、計5周でのタイムを競う




 でもまずは、今日の予選会を突破しなきゃな‼ 




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 「予選会まで時間がある、よかったら町を見てくるといい。これだけの祭りだ、きっと楽しめるはずだ」


 デボンさんにそう言われて、俺とシャロアイトは町に繰り出していた


 「おいおい、なんだよこれ···⁉」
 「毎年こんな感じですよ?」


 町は人で埋め尽くされ歩きにくい、しかも人間だけじゃなく獣人たちもたくさんいる


 「ん?···お、おい⁉ ありゃなんだよ⁉」
 「あれは「翼人」です。【白の大陸】の固有種族ですね。毎年見ますよ?」


 何気なく空を見上げたら、天使が飛んでいた
 背中には大きな翼を生やし、風に乗って空を舞っている


 「あそこには吸血鬼、あちらには龍人族もいますよ」
 「りゅ、龍人族?」
 「龍人族は【灰の大陸】の固有種族です。8大陸の種族の中で最も戦闘力があると言われてます」


 確かに、めちゃくちゃ強そうだ
 頭にはツノが生えていて、ぶっとい二の腕は鋼のような筋肉で覆われてる
 しかも、全体的な威圧感は只者ではない


 「でも龍人族は穏やかな種族です。怒らせなければ優しい人ばかりですよ」


 なるほど、確かに優しいんだろうな···麦酒片手に大笑いしてる


 「よし、軽く何か食べるか」
 「おお、いいアイデアです」




 さて、食べ歩きと行きますか




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 町を散策しながら食べ歩きをしてると、予選会まであと1時間のアナウンスが流れた


 「そろそろ戻るか?」
 「はい。魔道車の運搬もありますし」


 焼き立てパンを頬張りながらシャロアイトは答える
 運搬か。確かに会場までは少し距離がある


 シャロアイトとははぐれないように手を繫いで歩いてる


 「大丈夫か?」
 「はい」


 熱気や喧騒が凄い
 普通に歩いてたら間違いなく迷子だな




 もうすぐ本番……緊張してきた




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 そして、開会式が始まった


 企業代表チームと魔道車が200台並び、開会式会場の外周コースは壮観だ


 「開会式は前列10台、中列40台、後列150台が並びます。言わなくてもわかりますよね」
 「ああ、前回の順位だろ?」


 そして【ヘイズリンクス】の順番は6位
 エルゼさんたちは全員引き締まった顔をしていた


 ちなみに俺たちは関係者席へ座ってる
 【ヘイズリンクス】の予選会は最後なので、ライバルのマシンを分析できる······いいね、ホントにこういう空気は久しぶり。グランドレッド武具大会を思い出す


 「今回は予選会なので出番はありませんが、本戦に入ったらコース周回のメンテナンス作業のお手伝いがあります。忙しいので今日はのんびりしましょう」
 「そうだな、楽しむか」


 開会式も終盤、改めてルールの説明が行われていた
 当然ここにいる人たちはルールなんて暗記してる


 だからこそ予想外だった




 「えー、今までの優勝は10台によるタイムアタックでしたが、今回から優勝は上位5台による混合コースの同時レースとなります。レースは1周、1番にゴールした魔道車が優勝です‼」




 ここでまさかのサプライズ
 優勝決定戦は5台のレーシングバトル


 「おおお、まさかのサプライズ······これは楽しみです‼」


 シャロアイトだけではない
 よく見ると開会式会場でも盛り上がってる


 「確かに、やっぱレースはこうじゃなきゃな‼」 




 こうして熱気と共に開会式は終了した




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 「くうぅぅーっ‼ 燃えてきたわ、まさかのサプライズとはね‼」
 「ああ、最高のレースバトルになりそうだぜ‼」
 「全くお前たちは···そう言うのは予選会を上がってから話せ」


 【ヘイズリンクス】の専用車庫で案の定エルゼさんとマードックさんは燃えていた


 「それよりもうすぐ【レッドバイソン社】のチーム、【コーラルドッグ】の出番だ。見に行って来い」
 「はーい。行こ、マードック」
 「おう、留守番頼んだぜオヤジ‼」


 2人は腕を組んで歩きだした
 その後ろをチームメンバーが苦笑して着いてき、俺とシャロアイトも後に続いた


 「【コーラルドッグ】は全員が中級魔術師レベルの魔力量を持っています。運転技術も高水準···侮れないチームです」


 何も言ってないのに解説してくれる
 どうやらかなり興奮してるな、以外と勝負事で熱くなるタイプみたいだ




 「ライバルの観察、か···なんか楽しくなってきたな」




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 外周コースに魔道車が横一列、10台並んでスタートを待っている


 その中の1台、血のように赤い魔道車が優勝候補
 【レッドバイソン社】の魔道車・【ブラッドレーヴ】


 「ふむ、あれがブラッドレーヴですか。今大会のためにカスタマイズを繰り返した【レッドビースト】の改良型。前々回優勝車をどのように改造したのか気になりますね」


 相変わらず解説は絶好調だな
 おかげで聞く手間がだいぶ省けたぜ


 「さぁ、始まるわよ···‼」


 おちゃらけていたエルゼさんの表情が引き締まる
 さすがにライバルの走行を見逃すほど甘くない


 そして、スタート地点に設置された信号が点滅、3カウントでスタートする


 3


 会場は静寂に包まれる


 2


 俺もシャロアイトも黙り、手に汗握る


 1


 そして、ついに始まる


 0




 こうして【パープル・オブ・フォーミュラ】予選会が始まった




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 大歓声が弾け空気がビリビリと身体を包む
 冗談抜きでビビった、まさかこれ程とは


 「うおぉぉぉぉっ‼」 
 「·········」


 マードックさんは大騒ぎだがエルゼさんは静かに見ていた
 まるでスタートから分析をしてるような、そう見えた


 「········」
 「······お前もかよ」


 シャロアイトは俺の袖を掴み魔道車が消えた方を見ていた
 すると、会場全体にアナウンスが入る


 『さぁトップを走るのは【ブラッドレーヴ】だ‼ 【レッドバイソン社】の最強カスタマイズ魔道車、その実力は今大会が初お披露目だぁっ‼』


 なるほど、映像がないから解説で繋ぐのか


 「ふむ。こんな時に「てれび」があれば映像が見れるんですよね?」
 「あぁ、よく覚えてたな」


 シャロアイトなら作れそうな気もする
 〔ライガの遺跡〕のディスプレイだけでも取ってくればよかったかな


 そんな感じで時間が経つこと25分···ついに来た


 「ウソ⁉ もう戻って来た⁉」 


 エルゼさんの驚きの声
 平均タイムは30分···5分も早い


 そして、ゴール


 「間違いなく新記録ね······今までの最高タイムは28分。それでも凄いのに今回は3分も短縮されてる、魔道車の性能と運転技術が組み合わさった最高の走りね」


 エルゼさんはベタ褒めだ


 「恐らく【ブルーコープ社】も同様だろうな、あそこの【ブルーストライカー・SPEC2】も改造を重ねたらしいしな」


 マードックさんは厳しい表情で言う


 「でも俺たちの【バイオレットカッツェ】も負けてません。エルゼさんの腕前なら問題ないですよ」


 俺が自身満々で言う
 すると2人は顔を見合わせ笑った


 「そうね‼」
 「そうだな‼」


 気持ちで負けたらレースでは勝てない
 みんなで完成させた魔道車が、負けるわけない




 そして、ついに【パープルイーグル社】の出番がやって来た





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