ホントウの勇者

さとう

競争都市フォーミュライド④/風になる・大人の夜



 作業を始めて3日……ついに完成した


 「よし、ついに完成だ。当初の予定のスペックを遙かに超えている、車体の重さや空気の抵抗、〔魔導核〕の効率化……さすがはシャロアイトくん、素晴らしい」
 「いえ、デボンさんの発想には驚かされました。わたくしもまだまだです……今回の件でだいぶ勉強になりました。ありがとうございます」


 目の前には紫色の魔導車
 全体的にスポーツカーのようなスタイルで、車高は低くウイングも付いている
 レース用のボディはまさにスペシャル、普通の街道では絶対にお目にかかれない


 「…………」
 「…………」


 そんな魔導車の脇で、俺とマードッグさんはノビていた


 なんせこの3日間ず~っと徹夜だったのだ
 デボンさんは結局、握力や腕力が戻らずに重たい作業は俺とマードッグさんがこなし、細かい魔力を使う作業も俺が全てこなした
 シャロアイトは細かい魔力制御がヘタだから仕方ない……でも疲れた


 すると、タイミングを見計らっていたかのようにシャッターが開いた


 「マードッグッ!!」
 「エルゼっ!!」


 グロッキーだったマードッグさんは急に立ち上がり、エルゼさんの抱擁を受け止める
 おいおい、あんた俺より働いてたろ……恋人の力は偉大だな


 「完成したのねっ、さっすがマードッグっ!!」
 「お前のために決まってるだろ? コイツなら優勝間違いなしだ!!」
 「さて、エルゼ。早速だがテスト走行に入ろう、コースの手配は?」
 「あ、おじさま。大丈夫です、近くの練習場を貸し切ってあります」
 「じゃあ行こうか」


 そう言ってデボンさんは外に出る
 予め停めてあった大型魔導車に牽引させてコースまで引っ張るようだ




 じゃあ俺たちもコースに向かうか




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 コースに到着し魔導車を降ろす


 「そういえば、コイツの名前なんて言うんですか?」


 今さらの俺の疑問
 そういえば忙しくて気にしてるヒマなかった


 「ああ、名前は【バイオレットカッツェ】と言うんだ。ちなみに名前は……」
 「私が付けたの。カワイイでしょ?」


 デボンさんの言葉を遮りエルゼさんが笑顔で言う
 しかもピースしながら


 「さーて、エルゼ、頼むぜ!!」
 「ええ、じゃあ早速」


 エルゼさんはヘルメットを被り運転席に
 メンバー4人は待機していた


 「そういえば、【パープル・オブ・フォーミュラ】のルールって何なんだ?」


 俺は隣にいたシャロアイトに聞いてみた
 シャロアイトはふむ、と頷いて説明してくれた


 「大会はまず予選が行われます。参加企業は約200、まずはここでふるい落としをかけて一気に50まで減らされます、予選内容は外周のスピードを競うタイムアタック。本戦は外周と内周の混合コースによる対戦方式です。優勝賞金は5億ゴルド、そして優勝車を一年間町の中央に展示する権利です」
 「ご、5億!?」
 「はい。毎年この大会を観戦に各大陸からたくさんの観光客が溢れます。この大会も立派な産業ですので王都も力を入れてるようですね」


 そう言ってる間に魔導エンジンの静かな音が響く


 「頼むぜ……エルゼ!!」




 そして【バイオレットカッツェ】は風になった




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 「…………マジかよ」
 「…………マジですね」
 「いける……これなら!!」
 「ふむ。魔導車の性能もですが運転技量が素晴らしい。【バイオレットカッツェ】の性能を十分に引き出しています」


 俺たちは大満足だった
 静かでいて豪快な走り……スゴい、俺の運転なんかまるで遊びだ
 【バイオレットカッツェ】からエルゼさんが降りてきた


 「スゴい……軽く流したつもりだったのに、去年と性能が全然違うわ……!!」


 エルゼさんも驚いていた


 その後、残りのメンバーも試乗し全員が驚いていた
 これなら優勝も夢ではない……と


 そして何度か試乗を繰り返し調整を終える
 魔導車を再び大型魔導車に牽引し、工場に戻った


 今日は解散、と言う所でマードッグさんが言った


 「みんなでメシでも食いに行こうぜ!!」




 その提案に反対する者はいなかった




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 やって来たのは近くの酒場


 シャロアイトもいたが誰も気にせずに店に入る
 どうやら子供でも問題無いようだ


 「さーて、今日は私のおごりだ。好きなだけ飲み食いしてくれ」
 「さっすがオヤジ!!」
 「ありがと、おじさま!!」


 マードッグさんとエルゼさん、デボンさんとメンバー4人は麦酒
 俺とシャロアイトはミックスジュース


 「さーて、【パープル・オブ・フォーミュラ】優勝を目指して~ッ、乾杯ッ!!」


 ノリノリのマードックさんが乾杯の音頭を取り全員がグラスをぶつける
 そして注文していた料理が続々と運ばれて宴会状態だった


 「ふむ。酒場で料理を食べるのは初めてです、なかなか美味しいですね」
 「そうなのか?……確かに美味い」


 俺とシャロアイトは肉の燻製を食べていた
 他にもチーズやパン、骨付き肉などワイルドな物ばかり。たまにはいいな


 「ねぇマードッグぅ、今夜泊まってもいい?」
 「当たり前だろぉ? 今夜は寝かせないからなぁ?」
 「きゃあっ!! たのしみ~っ」


 あの酔いどれバカップルはどうでもいいや……
 デボンさんはそんな2人を見て苦笑してる


 「孫、か………ふふふ」


 な、何を想像してるんだろう……?
 おじいちゃーん!! とか言われてる未来でも見えてんのかな?


 「ジュートくん、楽しいですね」


 シャロアイトの言葉に俺は反応する


 「……そうだな」


 苦労して魔導車を完成させ、勝利を願って酒を飲む




 なんか大人みたいだな、と俺は思った




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 宴会は長く続き、時間は夜の9時頃
 俺とシャロアイトは宿に戻ってきた


 「ふぅ、大会まであと2日。問題無いよな」
 「ですね、最終日に魔導車の登録が行われます。大会運営委員の視察が入って魔導車の点検登録が行われるのです、その時点で整備、改造は終わり。当日のチェックで改造が見つかればアウト……大会から永久追放されます」
 「き、厳しいな」


 公平のためのルールか
 まぁ当然なんだろうな……勝負の世界では


 「まぁ今日は風呂入って休むか、行くぞ」
 「………あの、ジュートくんは何で毎回わたくしをお風呂に誘うのですか?」
 「何でって……あれ?」


 そういえば何でだろう……?
 ブランやエルル・クルルとは一緒だったし、氷寒たちともフツーに入る
 よく考えたらおかしい……普通は女の子と一緒じゃないよな


 「す、すまん。今までのクセで」
 「はぁ……まぁいいですけど」
 「ああ、悪かった」


 俺は1人で浴室へ
 服を脱いで裸になり湯船にお湯を貯める
 その間にシャワーで頭と身体を洗い、お湯がたまったら湯船に


 「ふぅぅぅ………癒やされる」
 「失礼します」


 そして、シャロアイトが入ってきた


 「あれ、いいのか?」
 「はい。ジュートくんならいいです、でもエッチはダメです。まだ子供なので」
 「いやしねーよ、ったく。頭洗ってやるから」
 「は、はい……っ!?」
 「ん? どうした」
 「………いえ、初めて見たので」


 俺は立ち上がりシャロアイトの背後へ


 「ほら、目をつぶってろ。ついでに背中も流してやる」
 「え、あ、その……ううう」


 俺はシャロアイトのバスタオルを外して背中を洗う
 石けんとスポンジでゴシゴシ洗い、そのまま流れで頭を洗った


 「痒いとこないか?」
 「へ、へいき……ですっ」


 シャロアイトは目をガッチリ閉じてる
 どうやら魔術ばかりで風呂には入らないみたいだな


 「流すぞー」
 「はい……っ!!」


 シャワーで頭と背中を流してキレイに、そしてタオルで頭を軽く拭いた
 シャロアイトは振り向いて目を軽く擦る


 「ほら、もう大丈夫…キレイになったぞ」
 「おお、スッキリしました」
 「前は自分で洗えよ?」
 「え……あっ!?」


 シャロアイトは真っ赤になって胸を隠す
 どうやら恥ずかしいらしい……へんなの


 「ジュートくん……えっちです」
 「何で?」


 俺は別に子供で興奮するヤツじゃない
 氷寒たちだったらもうビーストになってるけどな


 「さて、上がったら今日は寝るか。夜更かしすんなよ?」
 「むう。ジュートくんはわたくしを子供扱いしすぎです」


 何故かシャロアイトに怒られた
 まぁ年頃の女の子だし、気を付けよう




 大会まであと2日……楽しみだぜ





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