ホントウの勇者

さとう

競争都市フォーミュライド②/町の散歩・会社考察



 「飛行······魔道車? そ、空を飛ぶのか⁉」
 「はい。ここにいるジュートくんのおかげで完成しました」


 【アメジスト号】を眺めながら、ボビーノさんはシャロアイトからいろいろ話を聞いていた


 魔道車のボンネット部分を開け、シャロアイトが解説をしてる


 「なるほどな、魔力とは別の動力機関を利用して運転手の負担を減らしてるのか。しかも液体燃料の燃焼を利用するとはな、相変わらず大したもんだ」
 「いえ、わたくしだけの知恵ではありません。ここまで出来たのは間違いなくジュートくんのおかげです」


 シャロアイトは嬉しそうに俺を見た
 ボビーノさんは以外そうな顔をしていた


 「ま、とにかく整備をすればいいんだな?」
 「はい。それと図面を置いて行くので、ここで飛行魔道車を制作してみて下さい。わたくしたちはこの【アメジスト号】を王都まで運びますので」
 「おう、整備に数日貰うぜ。なんなら7日後の【パープル・オブ・フォーミュラ】でも観戦していきな、宿は俺が手配しておくからよ」


 俺とシャロアイトは顔を合わせた


 「そうですね、少し息抜きして行きましょう。ジュートくんと町で遊ぶのもいいですね」
 「そうだな。せっかくだし観光するか」




 こうして俺とシャロアイトの休日が始まった




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 町はすでに7日後の【パープル・オブ・フォーミュラ】で盛り上がっていた


 「すごい活気だな……商人たちも稼ぎ時だよな」
 「ですね。この期間中は他の大陸からも観光客や商人が集まります、そこでわたくしが考えたのが観光客専用の超大型魔導車です。サイズによって乗車人数が変わり、最大で40人までの乗車が可能。そして新型の〔魔導核〕により魔力の消費を極限まで抑え【中級魔術師】1人で平均30キロの走行を可能にしました、さらに……」
 「わ、わかったから落ち着け!!」


 シャロアイトは解説モードになり平坦な声で説明を始める
 こうなると長い……俺はすでにそこまで分かっていた


 「むう、これからですのに……」
 「また今度な。それより宿に向かおうぜ、確か……」
 「〔パープルビッツ〕ですね。この町で一番の高級宿です」
 「ボビーノさん、気を遣ってくれたんだな」


 ボビーノさんのやさしさに感謝しつつ宿へ、
 そして10階建てのマンションみたいな鉄筋の建物の中へ入り受付を済ませる


 「お、最上階だってよ」
 「ほう。この時期は宿を取るのも大変なのに……きっとだいぶムリしましたね」


 そんな話をしながら最上階へ続くエレベーターに乗る


 「この昇降機もわたくしが開発しました。思いついたのは6歳の時で、この時はまだ魔術師になったばかりだったので作るのに苦労しました」


 シャロアイトのうんちくは止まらない
 どうやらお祭りで少し興奮してるみたいだな


 そして最上階への部屋へ


 「ふぅ……少し休んだら町に行くか」
 「はい。ではお茶を入れます」


 シャロアイトは魔導ポットに水を入れて魔力を流す
 そして湯が沸くとティーポットに紅茶を入れ、カップを2つ出して運んできた


 「さて、町に出る前にこれからのことを話しておきましょう」
 「これからのこと?」
 「はい」


 俺とシャロアイトは紅茶を啜りながら話をする


 「まずこの町で【アメジスト号】の整備をし、ついでに【パープル・オブ・フォーミュラ】を観戦していきましょう。その次は〔ガーボ地下遺跡〕を抜けて〔楽園都市ラーベイン〕へ向かいます」
 「楽園? なんか物々しいな」
 「いえ、ラーベインは8大陸で最大の遊戯場です。わたくしが設計した魔導遊具やギャンブル場、宿泊施設や温泉などのリゾート地です」
 「へぇ、楽しそうだな」
 「はい。実はラーベインの責任者から、いくつか遊具の改修と新型の案を求められてまして。よかったらジュートくんの知恵を貸していただけませんか?」
 「もちろんいいぜ、俺の世界で言う遊園地みたいなモンだろ?」
 「はい。その認識で合ってると思います」


 シャロアイトと今後の予定を相談する


 「さて、そろそろ町で買い物するか。物資の補充をしないとな」
 「そうですね。わたくしもお腹がすきました」


 素直なシャロアイトと部屋を出る




 まずは……腹ごしらえだな




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 買い物を終わらせて露店で昼食を買う
 そしてベンチに併設されたテーブルの上で、焼きたての串焼きや魚・スープなんかを広げて食べていた


 「ライセンス……ですか?」
 「ああ。俺の世界では車……魔導車を乗るには資格が必要だったんだ」
 「なるほど……」
 「俺の世界ではその資格がないまま乗ると、警察……いや、兵士に捕まって牢屋に入れられる。そして社会的罰を負うことになる」
 「ふむ。興味深いですね」
 「ああ、俺が思うに飛行魔道車はライセンス制度を設けた方がいい。専用に訓練所を設けて試験を行うべきだ。あとはAランク以上の魔術師以外は操縦できないとか……」
 「確かに、魔力の消費は少ないですが全くないとは言い切れません。未熟な魔術師が飛行魔道車を乗り回して町に墜落した、なんて事になれば一大事ですね」
 「だろ?」
 「わかりました。王都に向かうまでに報告書を作成しておきます」
 「悪いな。手伝えることがあったら言ってくれ」




 こんな仕事みたいな会話をしながら食事をしてた




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 町の中にはいくつもの魔道車工場の店舗があり、町の中央には大きなガラスケースに飾られた魔道車が展示されていた


 「これは······」
 「これは昨年度優勝の魔道車、【ブルーストライカー】ですね。当時の新型魔導核により魔力の消費を極限まで抑え、乗り手である魔導運転手の負担を減らし、尚且つ運転手自体のテクニックも素晴らしい【ブルーコープ社】の魔道車です」


 シャロアイトの説明はよくわかった
 それにしても·····カッコイイ


 流線型のフォルムに風の抵抗を極限まで減らしたボディ
 カラーリングはメタルブルー
 とにかくカッコイイ。走ってる姿を見てみたい


 「この町で1、2を争う【ブルーコープ社】と【レッドバイソン社】は毎年交互に優勝を飾っています。恐らく今年は【レッドバイソン社】の優勝だろう、と言われていますね」
 「ライバル関係か、さぞかし大きな会社なんだろうな」
 「ええ、あそことあそこです」


 シャロアイトが指さしたのは、町の中央に建ち睨み合うように向かい合った大きな建物
 よく見ると建物の色も赤と青、なんともわかりやすい


 「ら、ライバル関係······ここまでやるのか」
 「ええ。売上も拮抗してますし、魔道車業界でこの2社を知らない人はいません」


 うーん、勝負の世界はスピードだけじゃなくて売上もか


 「シャロアイトはどっちを応援してるんだ?」
 「わたくしですか、わたくしは······」


 シャロアイトは2社のちょうど真ん中にある会社を指差した


 「へ? 【パープルイーグル社】って、あの小さな会社か?」
 「はい。【ブルーコープ社】も【レッドバイソン社】も素晴らしいですが、わたくしが惹かれたのは【パープルイーグル社】の魔道車です」


 シャロアイトは近くのベンチに腰かけた
 俺も隣に座り、併設されてるテーブルの上に頬杖をつく


 「【パープルイーグル社】の魔道車はスピードはもとより安全性に優れています。レースの順位は常に10位内、レースが終わった後の魔道車の状態は故障もなくほぼ完璧なままでした。レッドもブルーもレース終了後の魔道車の状態は酷いものでしたからね」
 「へぇ、マシンもだけど運転手もすごいんだろうな」
 「いえ、運転手は雇われの魔術師だったはず。誰が運転しても毎年10位内、しかも故障はほぼなしの完璧状態で······優勝も夢ではありません」


 シャロアイトは若干興奮してる
 多分、【パープルイーグル社】のファンなんだろう


 「せっかくだし覗いてみるか? レース用の魔道車が見れるかもよ」
 「········そうですね」




 おいおい、嬉しそうなのを我慢してるぞ


 
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 俺とシャロアイトは【パープルイーグル社】へやって来たが、入口前で俺は悩んでいた


 「でもどうしよう。買いもしないのに店に入るのはなぁ」
 「むむ、ここまで来てそれはないですジュートくん」


 建物はレッドとブルーの半分以下の大きさで、小さな事務所が窓から見える
 大きなシャッターの向こう側はどうやら整備、製造場所でそこで魔道車を造っているようだ


 「事務所には······誰もいないな」
 「整備場でしょうね。この時期はもうレースに向けての最終調整段階ですから」


 ならなおさら邪魔しちゃ悪いな 
 俺は踵を返して帰ろうと、シャロアイトに声をかけた


 「仕方ない、かえ······」








 「ぐあぁぁぁぁぁぁっ⁉」










 突如、整備場から大声が聞こえて来た


 「ジュートくん‼」
 「ああ、行くぞ‼」


 ただ事ではない悲鳴に俺もシャロアイトも迷わない


 
 俺はシャッターを開けて中へ踏み込んだ





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