ホントウの勇者

さとう

トーチ村①/壊れた魔導車・農村にて



 【アメジスト号】を飛ばして3日、旅は順調だった


 「ジュートくん、ごはんにしましょう」
 「そうか、そろそろお昼か。何食べる?」
 「そうですね……カレーが食べたいです」
 「いいけど、作るのに時間が掛かるぞ?」
 「むむ、ならチャーハンでいいです」
 「わかった。少し待ってろ」


 シャロアイトともだいぶ打ち解けられた
 今では兄妹のような関係になったなぁ、と感じてる


 俺は【アウトブラッキー】を呼び出して、中のキッチンで調理を始める
 シャロアイトは子供だし、野菜たっぷりのチャーハンを作ろう


 「よし、スープも出来た……おーい、出来たぞー!!」
 「はい。さすがジュートくん。とても美味しそうです」
 「よし、じゃあいただきます」
 「いただきます」


 シャロアイトは好き嫌いがないので、何でも美味しそうにモグモグ食べる


 「今日中に〔トーチ村〕に着くかな?」
 「そうですね、夕方前には到着すると思います」


 大盛りにしたがシャロアイトはペロリと食べ終わる
 スープも飲み干してお茶を啜り始めた


 「なぁ、〔トーチ村〕ってどんなところなんだ?」


 俺の何気ない質問に、シャロアイトは答える


 「〔トーチ村〕は、この【紫の大陸】では珍しい農業の町です。日当たりも良く水はけもいいので様々な野菜を手がけているそうですよ。でも地面が固くて耕すのが辛く、農業のなり手が年々減っているそうで、このままではあと数年で廃村になると聞いたことがあります」
 「そうなのか……切実な問題だな」


 農業のなり手がいない……それは異世界でも変わらないのか


 「はい。若い人はみんな冒険者や傭兵、王都の騎士団などに憧れて村を飛び出してしまうそうです」
 「まぁ確かに、男ならみんな憧れるよなぁ……」
 「ええ。それに農業をこなしていた男性は力が強く、鍛えあげ剣術を学ばせれば大成する者が結構いるそうです。現に王都の騎士団にも農家の出身という者は珍しくありません」


 確かに、子供の頃からクワで畑を耕したり、農作物を運んでいたりしたら力も強くなるだろうな


 「よし。新鮮な野菜をいっぱい買っていこう。それで美味い鍋を作ってやるからな」
 「おお。楽しみです」




 そうして、俺とシャロアイトの旅は続く




───────────────


───────────


───────




 そして【アメジスト号】を走らせること数時間


 「お、見えてきた……おい起きろシャロアイト、着いたぞ」
 「うむにゃ……ネコちゃん」
 《……苦しいワ》


 シャロアイトは後部座席でクロを抱っこして昼寝していた
 どうやらお腹がいっぱいになって眠くなったみたい……こういう所は子供だな


 「シャロアイト、着いたぞ!!」
 「おお? もう着きましたか、さすがジュートくんです」
 「何がだよ……ほら、起きろ」
 「はい、それでは行きましょうか」


 村の中に入り【アメジスト号】を異空間へ格納し、歩くことに


 村の中は典型的な農村という感じだった
 木で出来た簡素な家、村の中を川が流れ、その上に大きな橋が架かってる
 村の中心には商店やギルドがあり、冒険者もそこそこいた


 「ジュートくん、冒険者ギルドの掲示板を見ますか?」
 「え、ああ〔パープルバイオスライム〕か、別に後でいいや。今日は宿を取って休もう」
 「わかりました。この村には宿が何件かあるみたいですね、行きましょう」


 村内を散歩しながら歩き、一軒の宿屋に目が止まる


 「……なんだこりゃ?」
 「これは、壊れた魔導車ですね。だいぶ年数が経過してます」


 宿屋の脇に、大破した魔導車が停めてあった
 なんとなく気になって見ていると、宿屋から1人の少女が出てきた


 「よいしょ……っと、ふぅ。お母さん、置いとくよー」


 その女の子は俺より少し上くらいで、野暮ったいシャツにエプロン、長い髪の毛を後ろで適当に縛ったまさに田舎の女の子だった。手には大きなカゴを持っていて、中には野菜が入っているようだ
 その子が振り向くと目が合ってしまった


 「えっと、お客さんですか?」
 「え、あ、はい。お願いします」


 思わず承諾……まぁいいか
 シャロアイトも特に気にしていないし


 「お母さん、お客さんだよー」


 女の子はドタドタと中に入っていく


 「それでは行きましょう」
 「ああ。いきなり決めてスマンかった」
 「いえ、別にどこでもいいです」


 ホントにどうでもいいのか、シャロアイトは中に入ってく




 おいおい、もっと子供らしく行こうぜ




───────────────


───────────


───────




 「いらっしゃい、兄妹……にしては似てないねぇ?」
 「まぁいろいろあって、それよか2名でお願いします」
 「はーい、それじゃ案内するね。ヒロエ、お部屋に案内して!!」
 「はーい」


 ヒロエと呼ばれた女の子が部屋に案内する
 俺はその汚れた服装が気になって質問した


 「あのー、何か作業されてたんですか?」


 女の子はよく見なくても汚れている……コレは土だな
 長靴には泥が付着し、シャツは茶色くなっていて汗で透けていた
 しかしゴムエプロンのおかげで中までは見えない……残念


 「えっと、畑を耕していたの」
 「へぇ、大変ですね」
 「うん。広いからね、1人じゃ大変だよ」


 女の子は苦笑する
 1人って……こういうのは男がやるのかと思ってた


 「さぁどうぞ、ごゆっくり」




 そう言ってヒロエはすぐに行ってしまった




───────────────


───────────


───────




 「さてジュートくん。お買い物に行きましょう」


 シャロアイトは部屋に着くなりそう切り出した


 「おいおい、少しくらい休ませてくれよ。それにもう遅いし買い物は明日、ついでにギルドにも顔を出して依頼の確認、全部まとめてやっちまおうぜ。それにお前もハラ減っただろ」
 「むむむ、確かに空腹です。仕方ない……」
 「何がだよ……」


 とりあえず今日はもう休むことにした
 そして、夕食の時間


 俺は〔セーフルーム〕の本棚から持ってきた本で読書、シャロアイトはクロと遊んでいると部屋がノックされる


 「どうぞ」
 「失礼しま~す」


 入ってきたのは宿屋の奥さん
 手には大きめのトレイが二つ、頭の上に小さなトレイが一つのってる。器用だな


 「さぁ、この村で収穫した新鮮野菜をふんだんに使った料理よ。た~くさん食べてね」
 「おおお、いただきます」
 「どうも。ほらクロ、お前の分もあるぞ」
 《にゃア……》


 メニューは、コメと野菜の炒め物、野菜のスープに漬け物とおひたしと、野菜づくしのメニューだった
 早速俺は食べ始める……


 「おお、美味いな」
 「はい。絶品です」


 炒め物は少し濃いめに味付けがされてるのでコメが進む
 おひたしや漬け物もしっかりした味で、スープも野菜の歯ごたえを残してる
 それにしてもコメには驚いた。まさかここでも食べられるなんて




 俺とシャロアイトはあっという間に食べ尽くしてしまった




───────────────


───────────


───────




 「ふぅ、大満足です」
 「だな、ごちそうさま」
 「はい、おそまつさま」


 女将さんは食器を片付けながら鼻歌を歌ってる
 俺はなんとなく聞いてみた


 「あの、女将さん。外にあった魔導車って何ですか?」
 「……ああ、あれはただのオモチャさ」
 「え?」


 女将さんは俺と目を合わさずに答えた
 どうやら聞いてはいけなかったらしい……反省


 「じゃ、ゆっくり休んでおくれ。おやすみ」


 女将さんはにっこり笑って部屋を出た


 「ふむ。どうやらあの魔導車には何かありそうですね」
 「やめとけ、これはきっと触れちゃいけない」


 興味津々のシャロアイトをなだめて俺は着替え始める
 【友情の約束プロメッサ・アミティーエ】を脱いで、異空間からシャツとハーフパンツに着替え、生活魔術で身体を清めてベッドに横になる


 「まぁそうですね。気になりますがやめておきます」
 「そうしろ、所でどうする? もう寝るか?」


 時間はだいたい夜の8時
 思ったより時間が経過していたので聞いてみる


 「そうですね、やることもないし睡眠を取りましょう。夜更かしはお肌の大敵です」
 「お前、そんなことホントに思ってないだろ?」




 シャロアイトはたまにワケがわからん……もう寝よう




───────────────


───────────


───────




 「さてジュートくん。買い物に行きましょう」
 「そうだな、天気もいいし……」


 朝食を終えて少し部屋でのんびり
 するとシャロアイトが俺の前に立って腕を引っ張った


 「新鮮野菜……お鍋……」
 「お前、それを楽しみにしてたのかよ」


 俺は苦笑して部屋を出て宿屋を出る
 すると、昨日の少女……ヒロエがクワを片手に魔導車を眺めていた


 「あ、おはようございます」
 「おはようございます。いい天気ですね」
 「そうですね……では」


 ヒロエさんは笑顔で去って行った
 きっとこれから畑を耕すのだろう……1人で


 「ジュートくん、触れていけないと言ったのはあなたですよ?」
 「わかってる、じゃあ行こうぜ」




 とりあえず今日は……買い物とギルドだな





「ホントウの勇者」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く