ホントウの勇者

さとう

ゴルゴダ遺跡/スライム・お願い



 〔ゴルゴダ遺跡〕は昔からある古代の神の遺跡らしい


 遺跡の作りは洞窟のようになっていて、中には現代の技術では不可能な作りをしている
 遺跡の中には、巨大な石版のような物に絵画や文字が掘られているが解読は困難で、その文字が遺跡のヒミツを表していると言われているそうだ


 しかし、その文字は誰にも解読する事が出来ず、ずっと放置されている
 もしかしたら古代の神、または人間のイタズラではないかと……


 そんな怪しい遺跡、もとい洞窟の前に俺とシャロアイトは立っていた


 「と、そんな噂の洞窟ですね」
 「へぇ……胡散臭いってことは分かった」


 ここからは歩きなので、【アメジスト号】は異空間でお留守番


 「じゃあ行くか。ところでモンスターは出るのか?」
 「はい、バッチリと」
 「うげぇ……」
 「前列はジュートくん、魔術支援はわたくしにお任せを」
 「了解、頼りにしてるぜ」
 「はい、では行きましょう」




 そんなわけで、いざ遺跡探検へ!!




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 洞窟、と言っても真っ暗な暗闇ではなかった


 「外壁の破損が激しいですね。お陰で外の光が中を照らしてます、これなら問題なく進めそうですね」
 「だな、あんまり暗いとモンスターから不意打ちを食らう可能性もあるしな」


 どういう訳か壁の至る所に大穴が空いており、そこから外の景色が丸見えだった


 しかし、奥に進むに連れて光は消えていき······ついには暗くなってしまう
 仕方ないので魔術の光を灯しながら進む


 「ん······シャロアイト、モンスターだ‼」
 「はい。ではジュートくん、お願いします」


 少し開けた場所でモンスターが現れる
 そいつらは洞窟でおなじみのコウモリだった


 「〔パープルバット〕ですね。単体ではCレートの、この辺りではおなじみのモンスターです」


 シャロアイトはいつもと同じく淡々と説明する
 コウモリは以外とスピードが早い。しかし問題にはならないレベルだった


 「では参ります」


 シャロアイトは懐から細長い指揮棒みたいな物を取り出して構える


 「えい」


 そして、やる気のなさそうな声を出して指揮棒をコウモリに向けると、コウモリがバチンと爆ぜた


 「な、なんだ⁉」
 「はい。今のは【紫】の初級魔術【雷爆ボルトボム】です。威力は弱いですがその分スピードがあります」


 そう言いながらシャロアイトは指揮棒を指していく
 ピッピッピッピと指されたコウモリは、バチンバチンと音を立てながら落下していく。まるで魔法使いの杖みたいだ


 「す、すげぇ······」
 「恐縮です」


 コウモリは30匹以上いたのに、俺は10匹ほど、残りは全部シャロアイトが倒してしまった


 「さて、行きましょうか」
 「は、はい」


 指揮棒をしまい、シャロアイトは何もなかったかのように歩き出す




 俺も遅れずに歩き出した




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 そのまま奥まで進むと、かなり開けた場所に出た


 「ここは······すげぇな」
 「はい、ここが遺跡の中心です」


 この場所だけまるで神殿のような作りだった
 装飾を施された長い柱が天井を支え、床もタイルが敷かれている
 さらに壁にはよくわからない壁画や文字が彫られ、神秘的な雰囲気をアピールしていた


 「この文字は未だに解読されていません。一説では戯れの神が作ったお遊びだとか、機の神が残した古代神式魔道具の設計図だとか言われています」
 「······戯れの神ねぇ」


 あのボサボサメガネが作った······可能性ある
 でもマフィはダンジョン専門だったような? それとも遥か昔の趣味で遺跡を作ったとか······わからん
 まぁ今度聞いてみるか。今は先へ進もう


 俺とシャロアイトはそのまま神殿を抜けて先へ進む
 そして、神殿の先は広い空間になっていた


 「ここも広いな」
 「······ジュートくん、あれ」
 「どうした?······あれは」


 シャロアイトが指差した先には、白骨化した死体が数体あった
 服は着ておらず、鎧や剣が近くに落ちていた


 「なんでこんな所に?」
 「ふむ、おかしいですね」


 シャロアイトは顎に手を当てて考えて込む


 「この遺跡は一本道で迷うことはありません。むしろ調べ尽くされた遺跡として知れ渡っていて、冒険者にとってはただの通り道程度の認識です」
 「それで?」
 「この白骨は本当に白骨。装備はありますが服はない。物取りなら装備も取るだろうし、モンスターなら服を持っていくのは不自然です」
 「シャロアイト、何を疑ってるんだ?」




「恐らくですが。見てくださいこの白骨、汚れが付いていません。まるでついさっき・・・・・まで生きて・・・・・いてしゃぶり尽くさ・・・・・・・・・れたような・・・・・


 次の瞬間、俺は猛烈な悪寒を感じシャロアイトを抱えて後方に飛び退く




 そして、天井から巨大な塊が落ちてきた




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 「な、なんだよコイツ······⁉」


 俺の目の前に、薄紫の巨大な塊が蠢いていた


 大きさはかなりデカい 
 まるで運動会の大玉転がしで使う玉···それよりもデカい
 その塊はグネグネとゼリーみたいに身体を震わせ、まるで威嚇をしてるように見える
 材質はゼリーや寒天みたいな感じかな、しかし触りたいとは全く思わなかった


 「やはりそうでしたか。ジュートくん、これはSレートモンスターの〔パープルバイオスライム〕です。あのゼリー状の身体は全て毒の塊で、体内にエサを取り込んで徐々に消化、そして消化出来なかった物を吐き出す習性があります」
 「じゃあこの白骨死体は、もしかして⁉」
 「間違いなくこのモンスターの仕業でしょう。どうやらここを通る人間を狙ってるようですね」


 俺はシャロアイトを抱えたままモンスターを見る


 「やっぱ俺たちをエサと思ってるな」
 「ですね」


 スライムは戦闘態勢に入ったのか身体を震わせる
 そして、いきなりレーザーのように毒液を飛ばした


 「あっ、ぶねぇっ⁉」
 「気を付けて下さいジュートくん。あの液体に触れると肉が溶けますよ?」
 「冷静だなオイ」
 「こういう性格なので」


 俺はレーザーを躱しながらシャロアイトに聞く


 「なぁ‼ 弱点はねーのかよっ⁉」
 「はい。体内の核を壊せば死ぬはずです」


 スライムを観察すると、確かに体内に何かある
 赤いサッカーボールみたいのが中心にあった


 「あれか、でも毒なんだろ⁉ おわぁっ⁉」
 「ですね。しかもスライムの属性は【紫】です。攻撃するなら相反属性の【灰】魔術がいいんですが、ジュートくんは使えますか?」
 「ああ、任せとけ‼」


 スライムのレーザーは止むことなく俺を狙う
 俺はシャロアイトを抱えたまま躱してしたが、さすがに疲れてきた······だから一撃で終わらせる


 「【灰】の上級魔術、【灰銀烈槍シルバリオン・サリッサ】‼」


 俺の魔術はスライムの上空で発動
 灰色の紋章が輝き、そこから無数の銀槍が降り注ぐ
 そして、そのうちの1本がスライムの核を貫通した


 「おっし、どうだっ‼」
 「おお、やりましたね」


 スライムの身体がゼリーのように崩れ、貫通した核を残して消滅した




 さすがに抱えながらだと疲れた、休憩しよう




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 出口まではもうすぐらしいが、ここで休憩することにした


 「おいおい、持ってくのか?」
 「はい。基本的にSレート以上のモンスターの部位は価値があります。無駄な部分は一切ありません」


 シャロアイトはスライムの残った核を袋に詰め、俺が異空間から出した【アメジスト号】のバックパックに収納していた


 「恐らく近くの村···〔トーチ村〕で討伐の依頼が出てると思います。換金すればお金になりますよ?」
 「う〜ん。まぁいいか」


 作業を終えたシャロアイトは、俺の隣に座った


 「ジュートくんにお願いがあります」
 「また唐突だな···なんだよ?」


 シャロアイトは俺をジッと見つめて言う


 「ジュートくんも、〔8大王協議会〕に同席してほしいんです」
 「ん? それって王様たちが集まる会議だろ、俺みたいな冒険者が居ていいはずないだろ」
 「いえ、護衛として居てほしいんです」


 シャロアイトの表情は、真剣そのものだった


 「王の側には3人まで護衛を同席させることが出来ます。各大陸の王は必ず3人の護衛を連れて会議に望んでいます。なのでジュートくんにお願いしたいんです」
 「王様の護衛って、【特級魔術師】じゃないのか?」
 「もちろんです。しかし魔術師だけではいざというときに対応出来ない事態も存在します。なので普通なら剣士と魔術師の組み合わせでいかなる状況に対応出来るようにしています」
 「なるほど、じゃあ王都でもお前以外の戦士を選んでるんじゃないのか?」
 「いえ、戦士の選抜はわたくしに委ねられてますので。だからジュートくんにお願いしています」


 なるほどね、そういうことか
 それにしても、どんだけの権力を持ってんだ?


 王様の護衛か······まいったな
 各大陸の特級魔術師ってことは、今までの知り合いが全員集まるってことだよな
 中には俺の正体に気付いたヤツもいるし、ブランとはちゃんと別れもしないまま来てしまった


 「······ダメ、ですか?」


 しかし、こんな顔で頼まれたら断われないのが俺である


 「わかった、いいよ」 
 「おお、ありがとうございます」


 シャロアイトは嬉しそうに頭を下げる
 俺はその頭を優しくなでてやる


 「さて、そろそろ行くか」
 「はい。ここを抜けたら次は〔トーチ村〕です」




 今はとにかく、先へ進むしかないな





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