ホントウの勇者

さとう

閑話 尼宮真冬・【雪神ベンティスカ】



  尼宮あまみや真冬まふゆは1人、部屋でくつろいでいた


 「はぁ……退屈だわ」


 尼宮はすでに〔第二神化形態〕を習得したため、休暇を貰ったのでノンビリと休んでいたのだ


 「…………はぁ、やる気も出ないわ」


 尼宮の頭にあったのは、無月銃斗に寄り添うかつての仲間のことであり、彼に嬉しそうに擦り寄っていく4人の少女のことだった
 尼宮はベッドの上でゴロリと転がる


 「無月……ありゃムリだわ」


 勝てる気がしない。それが第一の印象
 そして、なぜ無月銃斗はあの4人を始末しなかったのか
 それどころか手なずけて仲間にして戦わせてる


 「意味わかんないわ」


 尼宮は頭を抱えてため息をついた




 同じように考えてる少年少女は、たくさんいた




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 そんな時だった


 「尼宮さん、ちょっといい?」


 部屋のドアがノックされ、聞き覚えのある女子の声が聞こえた
 尼宮はドアを開け、部屋の入口で話を聞く


 「んん~? なんか用、あたし眠いんだわ」
 「あ、ごめんなさい。ちょっと話があるんだけど来てくれない?」
 「ええ~……面倒だわ」
 「お願い、すぐに済むから!!」


 そう言って合掌ポーズを取るのは雅門がもん魅檻みおり
 たしか料理部に所属していたはず、そんなことを尼宮は考えた


 「ここじゃダメなの?」
 「うん。話があるのは私じゃないから、だからお願い……!!」


 再びの合掌ポーズ
 尼宮は茶色のカーリーヘアをボリボリ掻きながら仕方なく頷いた


 「わーったよ、そのかわりすぐに終わらしてほしーわ」
 「あ、ありがとう!! じゃあ行こっか」


 そう言って雅門は尼宮の手を引っ張って連れて行こうとする


 「ちょっ、自分で歩けるわ!!」
 「速く行こっ!!」




 なぜ雅門が楽しそうなのか、尼宮にはさっぱり分からなかった




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 着いたのは武具倉庫
 ここに入るのはこの城の兵士のみで普段は誰も近づかない


 「なーにここ?」
 「まぁ中に入ってよ」


 尼宮と雅門が中に入ると、そこにはけっこうな人数がいた


 「うわ……あっついわぁー」


 武具倉庫はその名の通り武器を保管する倉庫
 剣や盾、槍や弓矢などが大量に保管してある
 しかし、武具を保管するためだけの部屋なのでそこまで広くない


 「えーと………9人、あたしも入れて10人かぁ。何これ?」


 クラスの四分の一がこの狭い武具倉庫に集まっている
 するとその中の1人……羽蔵麻止が切り出した


 「さて、人数も集まったし話すわね……」


 羽蔵は立ち上がり、周囲の視線を浴びながら話し始めた


 「ローレライ様が仰ったことを覚えてるわね、8大陸と【銃神ヴォルフガング】には手を出さない……私は納得していない。だからここにいるメンバーで【紫の大陸】を目指したいと思います」


 尼宮は初耳だった
 思わず雅門を見るが……雅門は既に羽蔵しか見ていなかった


 「3人でダメなら4人、4人でダメなら5人……5人でダメなら、10人。これならきっと戦えるはず」


 その言葉に刈り上げの男子生徒の鬼竹おにたけ突漢とっかんが同意した


 「おうよ!! オイらたちならヤれる、ぜってぇヤれるぜぇーッ!!」
 「そこ、うるさい」
 「………はい」


 あっさりと静まりかえり、少し可哀想な気もした
 尼宮は羽蔵に質問した


 「で、勝手に出てったら怒られるんじゃな~い? 優等生のマトメちゃんがそんなこというなんてねぇ~?」
 「処罰は覚悟の上、責任は全て私が負います。それでいいでしょ?」
 「よくな~い!!」
 「そうだぜ」
 「そ、そうだよ」


 そう答えた3人は羽蔵と同じ【英雄十三傑ヴァリアントサーティ】の3人


 「弓島さん、真藤くん、達俣くん……でも」
 「麻止ちゃんが全部背負うことないよ、あたしもいるしさ!!」
 「まぁそういうことだ。それに……36人掛かりでも倒せないってのは許せねぇ」
 「ぼ、僕も同じ気持ち。無月のヤツは許せない!!」


 弓島黎明ゆみしまれいめい真藤巌次しんどうがんじ達俣たつまた土丸つちまるは、全員が同じ意見だった


 「………わかった。じゃあ、全員参加でいい?」


 尼宮は迷った
 確かに10人いればなんとかなるかも知れない
 けど……不安の方が遙かに高かった


 「う~ん……あたしは」
 「尼宮さん、一緒に頑張ろうね!!」
 「ちょっ……ッ!?」


 尼宮は思わず顔をしかめた
 何故なら、雅門が強い力で尼宮の肩を握りしめたからだ


 「雅門、あんた………」
 「なぁに、尼宮さん?」




 尼宮の頭の中には、不安ばかりが渦巻いていた







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