ホントウの勇者

さとう

工業都市マシーナリ③/大空へ・夢の翼



 それから2日、シャロアイトは何度も図面を書き直し、そして完成させた


 「よし、これで……まずは動力機関の図面です。早速組み上げをお願いします」
 「はい。シャロアイト······少し休んだら?」
 「平気です。次は胴体部分を······」


 マイナさんが心配そうにしてるが、シャロアイトはすぐに次の図面に取り掛かる


 俺はこの開発室に寝泊まりしていた
 何か出来ることはないかと作業員のおじさんたちを尋ねたが、あっさりと追い返されてしまう
 どうやら知識がないと作業の邪魔になるだけらしい。とほほ


 んなわけで俺の仕事は、マイナさんと一緒にシャロアイトの世話をすることだった


 口元にご飯を運び
 マイナさんがトイレに連れて行き
 俺が魔術で身体をキレイにしたり


 なかなか大変でした······いやマジで
 そんな感じでさらに2日経過した




 そして、動力部分が完成したとの知らせが入った




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 「こいつは······」
 「ジュートくん?」


 シャロアイトの設計した動力部分を見て、俺は驚いた


 「こいつは、どう見てもエンジンだな」
 「えんじん?」


 そう。機械には詳しくないがなんとなくわかる
 点火用のプラグやピストンなど見たことのある部品


 「ここに潤滑剤として粘度の高い油を入れます。そしてこの杭の動きを滑らかにして動力部分の劣化を抑えます」


 シャロアイトは作業員に丁寧に説明してる
 作業員もメモを取り、真剣に話を聞いていた


 「すごい······まさか、この世界でこんな精密なエンジンが作られるなんて······」


 
 そして、シャロアイト特製のボディも完成
 エンジンが組み込まれてついに魔道飛行車は完成した




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 完成から1日


 場所を工場裏の試走コースに移し、2度目の飛行実験が始まろうとしていた


 「ふぅぅ〜っ······緊張する」
 「やれることはやりました。あとは結果を見るだけです」


 こんな時でもクールなヤツ
 なんで俺がこんなにもドキドキしているんだろう?


 「それでは、エンジン点火」


 動力源の呼び名はエンジンに決まった
 アイデアを出した俺への配慮らしい


 「す、すげぇ音······」
 「はい。いい音ですね」


 ドルルルッと、重低音を響かせてエンジンが唸りを上げる
 それから約5分、暖気運転をしてエンジンを温める


 「いよいよだな······」
 「はい」


 シャロアイトは、エンジンに負けないほどの大声を出した


 「メインローター始動‼」


 するとメインローターが回転を始める······ここまでは点火以外に魔力は使っていない


 「お、おおお······」
 「と、飛んでる······」
 「や、やったのか?」


 試作2号機はぐんぐん上昇していく
 そして、50メートルほどの高さで停止した


 「ジェットエンジン、起動」


 シャロアイトが呟くと、口元でパリッと電気が光る
 どうやら魔術を使い、声の振動を電気に変えて運転手に届けたようだ


 すると、翼のジェットエンジンが起動
 静かに前進を始める······これって、もしかして


 「よし、そのまま試験飛行を。町を一周して来て下さい」




 そして試作2号機は飛んで行ってしまった




 それから15分······




 試作2号機は帰ってきた
 そして、魔力を使いローターとエンジンを調整
 そのままゆっくりと着地した


 「実験は成功ですね。あとは細かいデータを元に微調整をして完成です」


 その瞬間、大歓声が辺りを包んだ


 従業員同士が抱き合い、泣き、笑う
 運転手は胴上げされ、初めての空に感動していた


 シャロアイトは試作2号機を見て俺に言う


 「ジュートくん。微調整を済ませたらこの試作2号機で王都へ向かいましょう。これ程の物を王様に見せないわけにはいきません」
 「そ、そうだな……って言うかもう少し喜べよ?」
 「そうですね。ばんざーい」
 「いや、うーん……もういいや」




 俺は、シャロアイトの頭をなでた




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 それからさらに2日


 魔導車の細かいデータを取り、微調整を済ませる
 燃料タンク満タンだとどこまで飛行できるか、燃費の改善、さらには燃料メーター、予備タンクの増設など。ちなみに予備タンクと燃料メーターは俺が提案した


 「さすがジュートくんです。そうですね、燃料が切れそうなときにアラートが鳴るような仕組みを作りましょう。それなら危険も少なくなります」
 「いいね。あとは乗り心地だな」
 「はい。シートにはモンスターの皮を使っていますので、なかなか座り心地はいいですよ?」
 「いいね。あと、とっても大事なことを忘れてるぜ?」
 「なんでしょう?」


 俺はにやりと笑って言う




 「魔導車の名前だよ」




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 そして最終調整も終わり、俺とシャロアイトは出発のため工場の前にいた
 魔導車は紫色の塗装がされ、後部には荷物を入れるバックパックが増設された


 あれから改良が施され、普通に走行する魔導車として使うため、メインローターを収納式にして、翼を折りたためるように改造した
 運転席のレバー1つで、いつでも飛行形態へ変形できる
 あとはこの工場で生産ラインを整えるらしい
 そして俺とシャロアイトは王都に向かい、王様にこの魔導車を見せに行く


 燃料については問題ない
 シャロアイトにこっそり頼まれ、異空間に何トンも燃料を積み込んだからだ
 だってここから王都はかなりの距離があるからね
 ちなみにシャロアイトに内緒でクロに時間停止魔術を掛けて貰った
 これなら長距離で部品が劣化することもない。まさにウラ技だ


 「それでは行ってきます。それと生産ラインの準備をお願いします、きっとすぐに大量生産の受注が来るでしょう」
 「はい。シャロアイト……気をつけてね」
 「わかりました、マイナ」


 マイナさんはシャロアイトを抱きしめる
 すると、今度は俺を見た


 「ジュートさん、シャロアイトをお願いします」
 「もちろんです。俺が守ります」


 マイナさんと固く握手をする


 「それでは行きましょうか、ジュートくん」
 「おう、じゃあ運転は任せろ」


 俺は運転席に、シャロアイトは助手席に乗り込む


 「じゃあ次はどこだ?」
 「はい。次は〔ゴルゴダ遺跡〕を抜けて〔トーチ村〕へ向かいましょう」
 「よーし、じゃあ行くか!!」
 「はい。出発です」


 クロとも話した結果、進路はシャロアイトに任せることにした
 どうせ王都を経由しなくちゃいけないなら、シャロアイトに任せた方がいいとクロが言ったからだ
 それに、なるべく色々な町を回るようにお願いしたらあっさりオッケーも貰った


 「町を出たらさっそく飛んで行くか?」
 「いいですね、さすがジュートくんです」


 窓を開けてゆっくりと町を走る
 すると、いい匂いがしたので車を停めた


 「お、せっかくだしお菓子を買っていこう」
 「いいですね、さすがジュートくんです」


 何それ、はやってんの?
 俺は焼きたてのパンとミックスジュースを買って車内へ


 そして町を出てしばらく走り、飛行形態へ変形した


 「よし行くぞシャロアイト!!」
 「お願いしますジュートくん!!」






 「【アメジスト号】浮上!!」






 紫の魔導車……【アメジスト号】はゆっくりと上昇
 ジェットエンジンに炎が灯り、ゆっくりと前進した


 俺はシャロアイトに言いたくてしょうがなかった




 「夢、叶ったな!!」




 シャロアイトは、今まで見た中で最高の笑顔で言った




 「いいえ、まだまだこれからです!!」




 シャロアイトの夢の翼は、広がったばかりだった


 

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