ホントウの勇者

さとう

工業都市マシーナリ②/難題・まだまだこれから



 「ここが王都所有の工場です。ここでは主に王族専用の魔道車や、王室で使われる魔道具などを製造してます」


 翌朝、シャロアイトが案内してくれた工場はデカかった
 工場地帯の一番奥にドドンと建っていて、大きさもかなりのものだ


 「王室専用とは、大したもんだ」
 「そうですね。ここで作られた魔道具は8大陸全ての王室に渡ります。なのでここでは常に最新の魔道具が揃いますよ」


 そう言いながらシャロアイトは敷地内にフツーに入っていく


 「お、おい。俺は入って大丈夫なのか?」
 「ええ。わたくしと一緒なら平気です」


 シャロアイトはクロを抱っこしたままトコトコ歩いていく
 すると、作業着を着た厳ついおっさんが集団で歩いてきた


 「お、おいシャロアイト」


 俺はシャロアイトの後ろに回ってしまう
 シャロアイトは無表情で挨拶した


 「こんにちは。開発室を借ります、そこで設計図を興しますので、図面の通りに組み上げをお願いします」
 「ちょ、シャロアイト⁉」


 いきなりの指示に俺は驚いた
 が、驚いたのはおっさんたちもだった


 「ひ、姫⁉ って図面、組み上げ···?」
 「はい。お願いします」
 「え、えーと···わかりました。オウお前らぁっ‼ 姫の依頼だっ‼ 作業室を開けて物資の準備しとけ‼」


 困惑してたおっさん集団たちは息を吹き返し、俺をスルーして去って行った


 「じゃあ行きましょうか、ジュートくん」
 「お、おう。お前って偉いんだな······姫って」


 なんかおっさんたちから姫なんて呼ばれてたし


 「いつの間にかそう呼ばれてました。まぁどうでもいいですが」
 「あ、はい」




 うーん、クールな女の子だ




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 「開発室」と書かれた部屋に入る
 そこは12畳ほどの横長の部屋で、漫画家が使うような机や資料などがたくさん置いてあり、魔道具の模型なんかも転がっていた


 「それでは図面を興しますので暫くお待ちを」
 「お、おう」


 するとシャロアイトは机に座り目を閉じる
 そして、集中して息を吐き······


 「·········」
 「お、おぉぉぉ⁉」


 物凄いスピードで何かを書き始めた


 そのスピードは凄まじく、カリカリ···という音ではなくガガガガッ‼ という感じの音だった
 シャロアイトは一切瞬きをすることなく書き綴る。そして


 「······違う」


 いきなり書いていた紙を破り捨てた


 「お、おい⁉」


 シャロアイトは俺の声に一切反応せずにひたすら書き綴る


 「いいんですよ。放って置いて」
 「うおっ、びっくりした」


 突然俺の隣に女の人が現れた
 手に持ったトレイにお茶とクッキーが乗っている


 「さぁ、どうぞ」
 「あ、お構いなく」


 シャロアイトを尻目に女の人が挨拶する


 「初めまして。私はこの工場の経理担当のマイナと申します。貴方がシャロアイト姫の護衛ですね?」
 「は、はい。そうです」


 マイナさんは柔らかく微笑む
 うーん、年上のお姉さんって感じだな


 「あの子のこと、ご存知ですか?」
 「いや殆ど···会ってからまだ数日ですし」
 「あら、そうなんですか。それにしては懐かれてますね」
 「そうですかね?」
 「ええ。あの子がここに護衛を連れてくるなんて、この2年で初めてですね」
 「2年って言うと······」
 「はい。あの子は10歳で【特級魔術師】になりましたから。スクーラプ山に登って発掘して、そこ帰りにはいつも突然ここに来て···そしてみんなが驚くような魔道具を作って、いつの間にか姫なんて呼ばれるようになりました」
 「すごいっすね、まだ12歳ですよね」
 「そうですね···今回はどんなアイデアを思いついたのかしら?」


 マイナさんは優しくシャロアイトを見てる
 なんだか妹を見る姉みたいな視線だな


 「あ、今回は飛行魔道車ですね。何か閃いたみたいですよ」
 「えぇ⁉ じゃあついにあの子の夢が······」


 どうやらマイナさんもシャロアイトの夢を知ってるみたいだな
 すると、手を止めたシャロアイトが振り向いた




 「完成しました。早速組み上げを」




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 設計図が完成してから数時間
 ちょうどお昼を回った頃かな···作業は急ピッチで行われた


 「おお、どんどん形が出来ていく」
 「·········」


 シャロアイトが設計した魔道車は、軽自動車に翼とメインローターを取り付けた物。翼の下にもジェットエンジンが取り付けられている
 詳しくはわからないけど、どうやら魔石をうまく使ってエンジンから火を噴射したりするらしい


 そして······ついに完成した


 「おお、すげぇカッコいいじゃん」
 「·········」
 「どうしたんだよ、完成したんだぞ?」
 「いえ、わたくしの予想が正しければ」
 「へ?」


 シャロアイトの不安をよそに、試作1号機は稼働を始める
 運転者は、この工場専属の中級魔術師 
 場所は工場の裏手、魔道車試走コース


 「それではお願いします」


 シャロアイトの声を合図にして魔力が供給される
 そして、メインローターが回転を始めた


 「おお‼」
 「これは‼」
 「魔道車の歴史が変わるぞ‼」


 工場の従業員が騒ぎ始める······が


 「······やはりですか」


 メインローターはすぐに回転が止まる
 従業員が運転席を確認した所、魔術師は気を失って運転席に突っ伏していた


 「こ、これってまさか······⁉」
 「はい。その通りです」




 「魔力不足ですね。人間1人の魔力ではこの重量は飛ばせません」




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 場所を会議室に移し、大勢の職員たちが話し合いをしてる
 俺も同席し、隣にはシャロアイトがいた


 純粋な問題だった
 魔道車の構造に問題は無い。問題は人間の魔力総量
 シャロアイトが試した所、メインローターが回転し浮かせる所まではいった···が、すぐに着地
 魔力が切れて墜落する危険があったので、実験はお開きとなった


 「······ジュートくんなら」
 「多分出来るけど······」


 俺の魔力は無尽蔵だから問題はない
 しかし、ここの人たちに勘ぐられる可能性がある
 シャロアイトもそれを理解したのか、それ以上は言ってこない
 周りの大人たちは、総出でアイデアを出していた


 「構造に問題はない、なら魔術師を増やせば」
 「それは不可能だ。現段階では4人しか乗れない、それでは意味がない」
 「なら重量を極限まで減らして······」
 「それでは強度に不安が残る‼」


 うーん、俺は全く役に立たない
 するとシャロアイトが


 「問題なのは魔力です。わたくしの魔力でも浮かせるのが精一杯、とても飛行まで持っていけません。わたくしレベルの魔術師が4人いても、とてもムリでしょう」


 シャロアイトの言葉に会議室はシンとなる
 うーん、俺の思ったこと言っていいかな?


 「どうしましたジュートくん?」
 「いや、あのさ······」










 「魔力が足りないならさ、魔力以外の力を使えばいいんじゃね?」










 再び会議室は静かになった




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 「どういうことですか、ジュートくん」


 シャロアイトが驚きの目で俺を見た


 「え? いや、だってさ、1から10までを魔力で動かそうとするから魔力が枯渇すんだろ? だったら1から3までを魔力で、あとは燃料でローターが回る仕組みとかを作ればいいんじゃね?」


 そう。俺から見ればこの魔道車は、重たすぎる人力飛行機そのものだ
 ヘリコプターだって燃料はガソリンだ。人間は操縦のみで人力の部分は殆どない
 この世界にも燃料はある。ガソリンや灯油みたいな燃える液体はいくらでもある


 「······盲点でした。魔道車と言うワクに囚われて魔力を使うことばかりを考えていました。燃料······そうか、燃焼の力を使って歯車やピストンを動かす仕組み······そうすれば効率がいい、それに【紫】の雷を使って発電···なるほど、そうか」


 シャロアイトはブツブツ何かを言ってる
 な、なんだろう······ちょっと怖い
 するとシャロアイトは、突然俺を見た


 「ありがとうございますジュートくん。お陰でいいアイデアが浮かびました」
 「は、はい」


 シャロアイトは、会議室のおじさんたちに言う


 「みなさん。これからわたくしは再び図面を興します。なのでもう一度だけ協力をお願いします。次こそは自身があります······力を、貸して下さい」


 シャロアイトは頭を下げる
 すると、会議室はおじさんさんたちの歓声に包まれた


 「よーし、やってやるぜ‼」
 「姫のためなら徹夜も楽勝‼」
 「よーし、早速準備をするぞ‼」


 おじさんたちは張り切って会議室を出て行く
 シャロアイトは、嬉しそうに微笑んでいた


 「シャロアイト、出来るのか?」
 「当然です。もう図面は見えました」




 シャロアイトは、力強く微笑んだ





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