ホントウの勇者

さとう

工業都市マシーナリ①/空へ・【紫の特級魔術師 シャロアイト】



 「おお〜。ジュートくん、運転が上手いです」
 「そりゃそうだ、ずっと乗ってるからな」


 【流星黒天ミーティア・フィンスター】を走らせて数時間
 やっと山を降りて街道に到着した


 「今日はここまでにするか」
 「はい。お腹が空きました」
 「はいはい」


 さて、どうしようかな
 この子は【特級魔術師】だ。俺が〔神の器〕と知ったらどんな反応をするだろうか
 でも、今日は野宿。こんな小さな女の子を外で寝させるのは······仕方ないか


 「シャロアイト、お前に俺の秘密を見せてやる」
 「はぁ」


 なんか反応が薄い
 今更だけどこの子結構ドライな感じ


 「じゃあ見てろ······ほれ」
 「おお、すごい」


 俺は異空間からアウトブラッキーを呼び出した
 シャロアイトは感動······してる?


 「ふむ。確か異空間魔術は【時】属性······ふむ、なるほど。ジュートくんは〔神の器〕なんですね?」


 あっさりと看破した
 この子やっぱり鋭いし頭がいい


 「そうだ。その······怖くないのか?」
 「はい。わたくしは世間一般の噂には興味ありません。自分の目で見て感じた物を信じるようにしています。ジュートくんは怖いよりも頼もしいです」


 すごいな、ホントに12歳かよ
 でも······嬉しいな


 「さ、入れよ。ご飯にしよう」
 「はい。大盛りでお願いしま······す」


 ドアを開けてシャロアイトを中に入れる
 すると、シャロアイトは硬直した


 「な、なんですかこれは⁉ 魔導車の体積に対して空間の総面積が大きすぎます、これも〔古代具〕なんですか⁉」
 「え、えーと···まぁそんなモンだ」
 「あ、あの···調べさせて下さい‼」
 「いいけど、ご飯食べたらな」




 古代っつーか作ったのは最近。しかも現役の神様が俺たちの世界の乗り物を参考に作ったんだけどな




───────────────


───────────


───────




 食事を終えて一息入れる
 すると、シャロアイトはアウトブラッキーを調べ始めた 


 「うむむ、どうやら魔術によって空間を捻じ曲げてこの広さを維持してる。しかし······こんなことは人間には不可能、神の領域です」


 ブツブツ言いながら運転席へ向かって行く
 仕方ない、俺も着いていくか


 「ジュートくん、動力を入れてもいいですか?」
 「いいぞ、ケガすんなよ?」
 「はい。得意分野です」


 シャロアイトは動力を込める魔術口に魔力を注ぎこむ
 すると、アウトブラッキーは始動した


 「うむむ、動力は通常の魔導車と変わらない······おや、このスイッチは?」
 「あ⁉ ちょっと待て‼」


 時既に遅し
 アウトブラッキーは変形を始める


 「な、なんですか⁉」
 「外に出ればわかるよ······」


 俺とシャロアイトは外へ
 するとそこには飛行形態へ変形したアウトブラッキーがあった


 「こ、これは······なんですか?」
 「ああ。どうやら空を飛べる機能があるみたいなんだ」
 「······空を、飛ぶ」


 シャロアイトはピクリとも動かずにアウトブラッキーを見つめてる······どうしたんだろう?


 「あ、あのジュートくん。わたくし、空を飛んでみたいです‼」


 シャロアイトは俺に詰め寄ってくる
 何だ何だ? いきなりどうしたのよ


 「お、落ち着けよ。わかったわかった、今日は暗いし明日な」
 「ホントですか⁉ 約束ですよ‼」
 「お、おお。とりあえず中に入って、お茶でも飲もう」
 「はい。わたくし、喉が乾きました」


 わけわからん···テンションが急に戻った




 とりあえず、いろいろ話を聞いてみるか




───────────────


───────────


───────




 「ほら、熱いから気を付けてな」
 「ありがとうございます······熱っ」
 「言ったそばから······」


 俺はこの子のことを何も知らない。なのでいろいろ話を聞いてみることにした


 「シャロアイトは、魔導具が好きなのか?」
 「はい。わたくしは子供ですが、王都の魔導研究所で働いています。そこで古代具の解明をしてるのです」
 「へぇ、両親は?」
 「田舎でのんびりしてますよ。わたくしの実家は古代神の遺跡の近くでしたので、よくお父さんと探検に出かけました。そこでの経験が今のわたくしを形作ったのでしょうね」
 「大したもんだな、しかも【特級魔術師】だし」
 「いえ、たまたま魔術が得意で。おかげ様で遺跡のモンスターなども楽に倒せます。それに権限もあるので便利です」


 たまたまって······これも才能か


 「あの、ジュートくん。わたくしも質問よろしいですか?」
 「ああ、いいぞ?」
 「この魔導車の飛行構造についてなんですが······」
 「すまん、そういうことはわからん。魔力で飛ぶ、くらいしかわからん」
 「そうですか······なら、この魔導車を分解してもいいですか?」
 「······それはダメ」
 「なら、いくらで売ってくれますか?」
 「うーん、それもダメ」


 シャロアイトはグイグイくる
 そんなに空を飛びたいのかな


 「とりあえず今日はここまで、明日になったら飛んでやるから」
 「······はい、わかりました」


 シャロアイトは頷いた


 「じゃあ寝るか、一緒のベッドでいいか?」
 「構いません。でも、エッチはだめですよ?」
 「するか‼」




 やれやれ、疲れたしさっさと寝よう




───────────────


───────────


───────




 「ではお願いします。いざ空へ」
 「······まだ起きたばっかなんですけど」
 「む、ジュートくんはウソつきなんですか?」
 「いや、朝ご飯くらい食べさせろよ。空は逃げないぞ?」
 「むむ、確かに」


 朝起きると俺の上にシャロアイトが乗っていた
 しかもすぐに空を飛べと言う···ムチャ言うな


 俺は起きて着替え、朝食の支度をする
 シャロアイトはクロを起こして抱っこしていた


 「おーい、メシだぞー」
 「はい。それでは行きましょう、ネコちゃん」
 《······ふニャ》 


 クロも眠そうだな
 でもまずは朝ご飯。これを食べないと始まらない
 メニューは、パンと目玉焼き、スープとサラダ、焼いたベーコンとオレンジジュースというホテルの朝食みたいな感じ


 「むむむ、やはりジュートくんは料理が上手いですね」
 「そうか? たくさん食べろよ」


 2人と1匹で食べるのは久しぶりだな
 さて、片付けをして···よし




 次はいよいよ空の旅だな




───────────────


───────────


───────




 「ジュートくん、はやくはやく」
 「落ち着けって······行くぞ」


 アウトブラッキーを変形させて飛行形態へ
 魔力を流すとメインローターが回転······ゆっくりと浮かび上がる


 「なるほど、この風車を回転させて浮き上がるわけですね」
 「みたいだな」


 そのまま上空数百メートルへ


 「おおお···飛んでますジュートくん」
 「よし、ゆっくり行くぞ」


 するとメインローターを回転させたまま、翼の下に付いてるジェットエンジンに火が入る。そしてそのままゆっくりと前進した


 「なるほど、翼の下の魔導具で推進力を···ふむ、これなら」


 シャロアイトはメモを取りながら観察をしてる
 俺は興味本位で聞いてみる


 「空が好きなのか?」


 メモを取る手を止めて、シャロアイトは俺を見た


 「そうです。わたくしの夢は空飛ぶ魔導具を作ること、そして···空を飛んで世界を回ることです」




 その笑顔は、とても眩しく写った




───────────────


───────────


───────




 〔工業都市マシーナリ〕の近くまで飛んで、あとは地上に降りて【流星黒天ミーティア・フィンスター】に乗り換えた


 「ありがとうございます、ジュートくん。これで夢に1歩近づきました」
 「そりゃよかった。王都まではまだ遠いし、そのうちまた飛んでやるよ」
 「おお、カッコいいですジュートくん」


 シャロアイトはクロを抱えて俺の後ろにいる
 表情こそ余り変わらないが、喜びは伝わってきた




 そして、ようやく町へ着いた




───────────────


───────────


───────




 「工業都市か、やっぱり工場みたいな建物が多いな。それに煙突もたくさんあるし、なんか油の匂いもする」


 町に入った俺の感想だ
 なんか今までとは違う感じだ


 建物なんかはコンクリートみたいな冷たい感じの物が多く、やはり魔導具関係のお店が多い
 町の反対側からは煙がもくもくと出てる······きっとあそこが工場なのだろう


 「この町は主に魔道車の開発が盛んです。魔道車は完全なオーダーメイド作品を作ることが可能で、ここから先にある〔競争都市フォーミュライド〕で行われる〔魔道レース〕で走る魔道車は殆どここで作られます」
 「魔道レース······なんか面白そうだな」
 「はい。今の時期ですとこの【紫の大陸】で最大級のレース、【パープル・オブ・フォーミュラ】が開催されます。そこではこの大陸全ての魔道車メカニックの腕自慢大会でもあるのでみんな気合が入ってますよ」


 レースか······俺も出られるのかな


 「あ、ジュートくんも出れますよ。参加資格は各ギルドいずれかに所属してるAランク以上の人ですから。町の工房を尋ねればスカウトされるかもしれませんね」
 「·········」
 「出たいんですね?」




 はい、出たいです······




───────────────


───────────


───────




 とりあえず今日は宿をとって休む


 「明日になったら町を歩きましょう。ジュートくんはお買い物をしたいんですよね」
 「ああ。俺は食材を買えればいい、あとはお前に付き合うよ」
 「そうですか。なら、この町にある王都所有の工場に行きましょう。そこで飛行魔道車の設計図を書きたいです」
 「いいよ、でも···時間が掛かるんじゃ?」
 「いえ、大体の設計図は頭に入っています。わたくしはそれを図面に起こすだけ、あとはそこの技術者に形を組んでもらいましょう」
 「お、おう」


 今更だけどコイツかなりすごいよな




 明日は町を見てから工場か、楽しみだ





「ホントウの勇者」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く