ホントウの勇者

さとう

廃材の山スクーラプ/出会い・同行



 「いきなり山登りかよ……はぁ」
 《文句言わないノ》


 俺とクロは【紫の大陸】の入口に入り、さっそく山登りすることになった


 この【紫の大陸ノイエパープル】は工業の大陸
 魔道具技術が全大陸で一番進んでおり、最新式の魔道具や技術はこの大陸から流れているといってもいい


 なぜ魔道具技術が発達しているかというと、ここの大陸には古代の魔導技術が豊富に埋まっているのでその魔道具や古代の遺跡を発掘し、現代の技術でアレンジ……そうすることで現代と古代のハイブリット魔道具が生まれるのだ


 古代の神々がのこした技術は人間には実現不可能と言われ、この世界に現存する魔道具は全て古代技術のほんの一部を利用したモノ。まだまだ改良・新開発が期待されているモノばかりだそうだ


 「マフィのヤツは詳しそうだけど……」


 なにぶん俺には興味がない
 魔道具なんて使えれば何でもいいし、最新技術にも興味ない


 「とにかくこの山を登ればいいのか……」
 《そうヨ。この山を越えた先に〔工業都市マシーナリ〕があるワ。まずはソコを目指しまショ》
 「わかった、じゃあ行くか」


 これから登る山は〔廃材の山スクーラプ〕
 古代の魔道具が発掘された山だが、すでに掘り尽くされた後なのでゴミの山となっている
 しかし、使えるモノは結構あるらしいので資材の山とも言われているそうだ




 そんじゃま、登りますかね




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 「おりゃッ!!」
 「ギャィィッ!?」


 俺は集団で襲ってきた〔パープルドッグ〕を切り刻む
 見た目は薄紫の毛並みの中型犬……少し心が痛んだが俺を喰う気満々だったので遠慮しない
 最後の1匹の脳天に、投げナイフを喰らわせた


 「よっし終了!!」


 モンスターは全部で10匹
 特に問題もなく戦闘は終了した


 「やれやれ、結構モンスターが多いな」
 《そうネ、恐らく古代の技術にモンスターを引き寄せるモノがあったような……》
 「マジかよ、そんなモンどうすんだよ」
 《さぁネ。ココにあるかは知らないケド》


 そう、この山に入ってから数十分おきにモンスターに絡まれる
 もちろんその度に迎撃……少し疲れてきた


 「やれやれ、こうなったら【流星黒天ミーティア・フィンスター】で登るか」
 《……最初からそうすればいいじゃナイ?》
 「いや、その……」


 久し振りですっかり忘れてました………




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 「いや~、やっぱ楽ちんだな~」
 《そうネ~》


 久し振りに乗る【流星黒天ミーティア・フィンスター】は気持ちいい
 山の道幅は広く、モンスターが出てもスルー出来る。じゃあね~!!


 「このまま頂上まで行くぜ~っ!!」
 《にゃァァァ~ッ!!》


 そうして走ること1時間……頂上に着いた
 頂上は広く眺めもいい、しかも天気がいいので空気がうまい


 「う~~~~んっ……気持ちい……い?」


 そこで俺はヘンなものを見つけた






 「…………ふぅ。疲れました」






 頂上で小さな少女が、シャベル片手に地面を掘っていた


 「な、なぁクロ……ありゃなんだ?」
 《………知らないワヨ》


 女の子の服装は薄紫のローブ。どう見ても山登りの服装ではない
 薄い紫のショートボブに小さなメガネ
 顔立ちは幼くかわいらしい、多分12歳くらい
 小さな手で一生懸命地面を掘ってる……何してんだ?
 少女はどうやら1人らしい、こんなモンスターが沢山出るとこでヤバくないか?
 荷物は近くに小さなカバンが置いてある……ヤバい、見れば見るほどわからん


 「どうしよう……声をかけたほうがいいかな?」
 《そうネ……ヒトの気配は感じないし、恐らくあのコ1人ヨ?》


 俺は【流星黒天ミーティア・フィンスター】に跨がりながらゆっくりと近づく


 「こ、こんにちわ~」


 女の子は手をピタリと止め、俺の方を見た


 「こんにちわ……」


 なんだろう。俺を見て、いや【流星黒天ミーティア・フィンスター】を見て硬直してる


 「あの……この魔導車はどこで手に入れられたモノですか? 1人乗りは開発はされましたけどその運転操作の難しさから乗りこなせる者は殆ど現れず、数台の試作車が制作されてすぐに開発中止になったはず……しかもこんな形は見たことがありません」


 な、なんだろう。めっちゃキラキラした瞳で見てる
 しかも跨がってる俺の周りをぐるぐる回り始めた


 「え、えっと……これは【流星黒天ミーティア・フィンスター】って言って、【赤の大陸】の武器屋で貰ったんだ」
 「【赤の大陸】……!! まさかあそこにこれほどの技術者がいようとは。完全に盲点でした」


 女の子はふんふんと頷いてる
 なんだろう、この小動物みたいな感じは


 「えっと、キミはこんな所で何を?」
 「はい。わたくしは休暇を利用して古代具の発掘です。わたくしの考えですとこの〔スクーラプ山〕にはまだまだ面白い古代具が眠ってると思います」
 「古代具?……っていうか休暇って、キミはいくつなんだ?」
 「むむ、質問が2つですね。まず古代具と言うのは〔古代神式魔道具〕です。昔の神様が作ったすご~い魔道具のことを指します。あとわたくしは12歳です」
 「子供じゃん。キミ1人? 親はいないのか? 寝泊まりはどうしてるんだ?」
 「むむむ、今度は3つですか……なかなか知りたがりですね、あなた」
 「いや、気になるだろ」
 「まぁいいでしょう。わたくしは1人でこの山に来ました。親は故郷での~んびりしてるんじゃないですかね。寝泊まりは3日前からここでテントを張ってます」
 「テントって……こんなモンスターが沢山いる場所で!?」
 「はい。魔術で防壁を張ってるので問題ありません」


 魔術防壁……ってことはこの子は魔術師なのか


 「う~ん……キミはまだここで発掘するのか?」
 「いえ、食料も尽きてきたのでそろそろ下山します。それにもうすぐ〔8大王協議会〕の次期なので」
 「……まぁ下山するんだな?」


 ふむ……よく分からん単語はスルーしよう


 「はい。ところでお兄さんはどちらへ?」
 「俺? 俺は〔工業都市マシーナリ〕へ向かうけど」
 「そうですか。所でお兄さんは冒険者ですね?」
 「そうだけど」
 「なら、わたくしの依頼を受けていただけませんか?」


 なんだろう、この子のペースが掴みにくい


 「えっと、内容は?」
 「はい。もうすぐ〔王都パープルテッラ〕で〔8大王協議会〕が開催されます。わたくしはそれに出席するために王都へ戻らなくてはなりません。なのでお兄さんの魔導車を解明しつつ、わたくしを王都まで送っていただけないでしょうか。もちろん報酬は支払います」


 うーん、どっちが目的なんだかよく分からん。王都なのかバイクなのかどっちなんだよ
 でも王都かぁ……クロ、どうする?


 《インヘニュールがいる場所は王都の先、〔バルバリー古代遺跡〕ヨ。ついでだしいいんじゃナイ?》


 クロを見つめすぎたのか女の子は首をかしげる


 「ふむ。ネコさんの了解がないといけないのですか?」
 「いや違うけど……」


 何コイツ、ヘンに鋭いな
 でもまぁいいか。ついでだし


 「よしわかった。俺が王都まで連れて行くよ」
 「おお。ありがとうございます。それではさっそく準備します」


 女の子は茂みの中に隠してあったテントをテキパキと片し、近くの木に吊して固定した


 「持っていかないのか?」
 「はい。ここはわたくしの発掘地で頻繁に来てるので」


 女の子は肩掛けのカバン1つで俺の前に立つ


 「そういえば〔8大王協議会〕だっけ? それってキミがいないとマズいのか?」


 俺はなんとなく興味本位で聞いた








 「もちろん、わたくしは【紫の特級魔術師 シャロアイト】です。8大陸全ての王と【特級魔術師】が集まる会議に出席しないなんてあり得ません」










 なんか、あり得ない言葉が聞こえたけどスルー……出来ないよね?




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 「あ、申し遅れました。わたくしはシャロアイト、【特級魔術師】です」
 「今聞いたよ、俺はジュートで、コイツはクロだ」
 「はい。それではジュートくん、と呼ばせていただきます」
 「あ、うん。どうぞ……」


 うーん、ペースが狂わされる


 「じゃあ出発するか。えっと…シャロアイト、クロを頼む」
 「はい。じゃあネコちゃん、失礼します」


 シャロアイトはクロを抱っこして【流星黒天ミーティア・フィンスター】の後部座席に座る
 俺はゆっくりと発進させた


 「下りはゆっくり走っても半日かかりません。山を下りたら丁度夕方あたりですかね」
 「そうだな。じゃあそこで今日は休むか」
 「はい。ジュートくんにお任せします」


 ここから王都まではかなり遠い
 やれやれ、【紫の大陸】の最初の山でこんな小さな同行者が出来ちまった


 「あ、ジュートくん」
 「ん? どうした」




 「短い間ですが、よろしくおねがいします」




 シャロアイトは、ここで初めて笑った


 「ああ。よろしくな、シャロアイト」


 こうして誰かと旅をするのはアウラ以来か
 あの時も楽しかったし……まぁ、期待するか


 「よーし、目的地は〔王都パープルテッラ〕だ。出発!!」
 「おねがいします」




 こうして俺は久し振りの同行者・【紫の特級魔術師 シャロアイト】を乗せて旅を続けるのだった





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