ホントウの勇者

さとう

閑話 【王ノ四牙】③/子供・魔神



 「シグムント、てめぇここで何してやがる?」


 【獅子神レオンハルト】は、自分の後ろを平然と歩いている【空神シグムント】を睨み付けた


 「はて、なんのことでしょう?」
 「とぼけんな、テメェがジュートの相手をすんじゃなかったのか!!」
 「ははは、なぜ私があんな子供の相手を?」
 「ふざけんな!! 今のガキ共じゃジュートの相手は出来ねぇ、全員ヤられちまうぞ!!」
 「まさか、あんな甘い子供にそんなこと出来るハズがない。心配無用ですよ」


 シグムントは微笑を称えてレオンハルトを見る


 「ローレライが呼んでたってのもウソだな、オレ様をジュートから遠ざけるためのよぉ!!」
 「もちろんです。あなたがあそこで【神器ジンギ】を使えば、【銃神】を始末することは出来た……そんなことは許されません。私たちの目的をお忘れですか?」
 「……チッ!!」
 「あなたは熱くなりやすい……本来の目的を忘れて【銃神】を殺してしまう可能性がある。女神様のために彼は必要なのです。少なくとも彼が自分の意思でこの【時の大陸】にやってくるまではね」
 「わかってるよ!! だがなぁ……なんでジュートをガキ共に任せた。オレ様はそこが知りてぇんだよ!!」
 「ああ、簡単ですよ」


 シグムントは歪んだ笑みを浮かべた




 「私が相手だと、死んでしまうからですよ」






 そして、レオンハルトの眼前を何かが横切りシグムントを飲み込んだ




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 それは濡羽色の何かだった
 それは超高密度の光線だった
 それはシグムントを飲み込み、城を破壊しながら進んでいった


 レオンハルトは我に返り、謎の光の軌跡を追う


 「し、シグムントッ!?」


 レオンハルトはゾッとした
 光線の軌跡には何も残っていない。ただ破壊の跡があった
 森を破壊し、海を割り、【時の大陸】を真横に横断する破壊があった


 「コレは……」


 レオンハルトは消え去ったシグムントよりも、この光線の主が気になった


 「【銃神ヴォルフガング】の封印が外れたようね」
 「うおっ!? ローレライ!!」


 突然隣に【歌神ローレライ】が現れ、レオンハルトは驚いた


 「やれやれ、これで最低限の準備が整ったわね。あとはこちらの調整次第か……」
 「おいおい、コイツはまさか……」
 「そう、【凶悪マガツ第三狂神化形態だいさんきょうしんかけいたい】ね。これほどとは……レオンハルト、あなたでも危ない相手よ?」


 その言葉にレオンハルトは震え上がる


 「く、くくく……ハハハハハッ! やっぱりもったいねぇよ!! さすがジュートだぜ!!」
 「ふふふ、楽しそうね」
 「当たり前だっ!! 数百年ぶりに本気が出せそうだぜ!!」




 2人の神の頭に、シグムントのことはもうなかった




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 「ぐぅぅぅがァァァァァァッ!!!!」


 シグムントは1人、ズタボロになりながら起き上がった


 「あのガキィッ!! 殺す!! 殺シテヤルッ!!!」


 シグムントがいるのは【時の大陸】の最東端の砂浜
 突然発生した光線が【銃神ヴォルフガング】だとはすぐに分かった
 問題は、自分を狙った砲撃ということだ


 「よくも、ヨクもヨクもヤリやがったな!! 血祭りにしてやるッ!!」


 シグムントは怒りで顔が歪む
 そして立ち上がり再び城に向かう


 「おやめ、シグムント」


 そこにいたのは老婆の魔女。【薬神ナーカティック】だった


 「どきやがれッ!! あのクソガキはオレが始末するッ!!」
 「ヒッヒッヒ、そりゃ出来ん相談だ。ようやく【銃神】の封印が解けたんだ、これで計画はさらに進む……今、あのボウヤを始末させるワケにはいかないからねぇ?」
 「関係あるかッ!! あのガキはオレを舐めたッ!!」
 「やーれやれ、聞く耳持たずかい……しょーがないねぇ」


 ナーカティックはゆっくりとシグムントに近づいた


 「ほぉれ……アタシを好きにしな」
 「あぁん!?」
 「煮るなり焼くなり刻むなり好きにしな。あんさんのサンドバッグになってやるわさ、その代わり…【銃神】には手ぇださんどくれ」
 「……………」
 「ホレどうした、やらんのかい?」
 「…………チッ!!」


 シグムントは、ボロボロの身体を引きずって歩き出した


 「【神】といっても、まだまだガキだねぇ……ヒッヒッヒ」




 ナーカティックは、意地悪く笑った




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 銃斗が消えてから3日後。〔神の器〕36人は全員招集していた


 場所は巨大な会議室
 前列に13人の【英雄十三傑ヴァリアントサーティ
 後列にはそれぞれがバラバラに座っていた


 「全員、そろったわね?」


 優しく微笑むローレライが全員を見た


 「今日集まったのは、これからの方針を話すためよ」


 36人は、黙って聞いていた


 「まず、【魔神軍】の目的は8大陸の奪還。そしてこの目的の一番の不安要素である【銃神】を始末することを最優先としてきたわ。そし悉く失敗……」


 「私たち【神】と、アナタたち〔神の器〕がいれば8大陸の奪還は問題無い。問題は【銃神ヴォルフガング】のみ……そこで我々は、【銃神】を無視します」


 その言葉に全員が耳を疑い、会議室は喧噪に包まれる


 「落ち着いて。無視といっても問題無いわ。彼は必ずこの【時の大陸】に戻ってくる……そこを全員で叩きます。そのために最優先で全員が〔第二神化形態〕の覚醒、そして能力の向上をメインにして鍛錬をしてもらいます」


 「当分の間は8大陸への干渉はなし、この【時の大陸】での鍛錬をメインとして行動してね」


 にっこりと笑うが、生徒たちは納得していなかった
 そして羽蔵麻止が手を上げ、質問をした


 「お言葉ですが……私たちはまだ【銃神】と戦っていません。戦いもせずに手を出すなと言うのは納得できません」
 「そ、そうです。あたしたちならきっと倒せます!!」
 「そうだな、まだ直接戦ってないヤツだっている!!」


 そうだそうだと怒号が上がる……ローレライは優しく諭した


 「わかったわ……ならはっきり言いましょう……」


 会議室はシンとなり、ローレライに注目が集まった






 「今の【銃神】には、ここにいる36人が束になっても適わないわ」






 その一言で、会議室は絶句に包まれる


 「彼が変身した姿……【凶悪マガツ第三狂神化形態だいさんきょうしんかけいたい】は、【銃神】にのみ許された最強の姿。あの力は私たち【王ノ四牙フォーゲイザー】ですら危うい、まさに究極の〔神の器〕よ」


 この内の何人かは、あの姿を目の当たりにしてる
 あまりにも禍々しい黒いバケモノを




 「話はここまで……解散」




 ローレライは部屋から出る…が、生徒達はだれも出なかった




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 〔白い扉の部屋〕に、1人の少女がいた




 「……ジュート、かぁ」


 どこまでも白い少女は、侵入者の少年が忘れられなかった
 真っ黒な姿の少年は、まるで少女とは正反対
 そして……どこかで会ったような、懐かしい匂い


 「また、会えるかなぁ……」


 少女は、もう一度銃斗に会いたいと思った


 「なんでだろ……必ず会える気がする」


 少女は立ち上がり、服を脱いで全裸になる
 そして、壁に掛けてある豪華なローブに着替る
 長い白髪を一つにまとめて部屋を出る


 「………行こう」
 「はい」


 部屋を出ると、1人の少女が跪いていた
 それと同時に、少女の頭を黄金の輝きが包み込む








 「参りましょう……【魔神エルレイン・フォーリア】様」








 黄金の仮面を被った少女は変わる。まるでスイッチが入ったように


 『うむ。参ろうか』


 声も、態度も、少女の物はなにもない
 そこにいたのは1人の【神】
 【魔神軍】を束ねる、最強の【神】




 温かい少女の心は、もう見えなかった





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