ホントウの勇者

さとう

二度目のクローノス城②/アルビノ・再会



 「さぁて、どうせすぐにバレるだろうけど······ここから出るか」


 牢獄ではブタの解体の跡がモロに残ってるし、しかも隣には夜刀もいたし
 すぐに俺がいないのはバレるだろう


 「問題は、どうやってここから···いや、この大陸から出るかだな」


 慎重に通路を進みながら独り言
 アウトブラッキーは異空間にしまってあるからすぐに呼び出せる
 よし、このまま城を脱出して、この大陸を出た砂浜に向かおう


 俺は慎重に進みながら外を目指す······そして


 「それで、楠木くんたちは大丈夫なの?」
 「うん。損傷が酷かったけどあたしとモモちゃんで治せたから」
 「ふ〜ん、よかったじゃん」


 後ろ向きだけどすぐにわかる
 あれは羽蔵さん、鳴見さん、そして······弓島さん


 「ほかの4人は?」
 「読坂くんと三途くん、篠原くんは安静にしてる。轄俥くんは軽症だったからもう起きてるよ」
 「へぇ、それにしても轄俥のヤツやるじゃん。まさかあの無月を生け捕りにするなんて」
 「確かに。今は地下牢に閉じ込められてるはずよね···後で様子を見に行きましょう」
 「お、ならアタシも行くよ。久しぶりに顔を拝みたいしね」


 そう言ってお喋りしながら3人は去っていく


 なるほど、どうやら敵は5人だったみたいだな
 まさか俺がとうに脱出して忍び足で歩いてることはバレてない




 「騒がれる前に脱出しないとな······」




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 そのまま暫く歩いてると、今度は前から人が来た


 「あれは······錐堂きりどう刺兼さしがね只野ただのくんか」


 不機嫌そうな顔をした錐堂と只野くんを、刺兼が必死になだめていた
 只野くんはマントを着けてたのに、今は着けてない


 「クッソ‼ 無月のヤツがいるのになんで手出し出来ねーんだよ‼ しかも【英雄十三傑ヴァリアントサーティ】以外は面会禁止だぁ⁉」
 「お、落ち着けよ錐堂。だーいじょうぶ、すぐに会えるって···ぶふっ‼」
 「てめぇ······笑ったな?」


 錐堂はツルツルの頭で刺兼を睨みつける
 眉もないので迫力が増してるが、経緯を知ってる俺にとっては笑いを我慢するには拷問に等しい


 「くっ、ぐふふっ···でもよぉ、お前が毛無しの素っ裸でオレたちの前に現れた時には新手の攻撃かと思ったよな。なんせ男女がほとんど集まってた中での登場だったから全員大爆笑だったぜ」


 只野くんが笑いながら錐堂に言う
 くっそ、笑いを堪えるのツラい


 「うるっせぇぇぇーっ‼ 式場のクソ女、ぜってぇブチ犯す‼」
 「お前じゃ返り討ちだってのバーカ」
 「んだとぉぉぉぉーっ‼ テメェこそ【英雄十三傑ヴァリアントサーティ】から落ちたマヌケのクセによぉぉーっ‼」
 「んだとコラァ‼ ヤんのかテメェ‼」
 「や、やめろっての⁉」


 今にも殴り合いになりそうな空気だが、刺兼が2人の間に割り込んで必死に止めている
 頑張れ刺兼、2人を止められるのはお前だけだ




 俺は刺兼を激励し、その場を後にした




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 「マズいな···騒がしくなってきた」


 どうやら俺の不在がバレたらしい
 何人もの兵士が行ったり来たりしてる


 俺は近くにあった高級そうな巨大な壺の中に隠れて様子を伺っている
 それにしてもここは歩いても歩いても通路と部屋ばかりで、地形がいまいち読めない


 「クロがいたらなぁ······」


 なんとなく愚痴をこぼす。すると


 《アラ、呼んだ?》
 「うおっ⁉」


 クロの声が頭に響く
 よかった、もう平気なのか?


 《······まぁネ。それより〔クローノス城〕とは厄介ネ》


 そうなんだよ。なぁクロ、いつか使った門を開けないか? 【赤の大陸】に渡った時みたいに


 《アレは危険なのヨ。そもそも【黒の大陸】に行けるかどうかもわからないワ》


 それでもいい。ここにいるよりマシだ


 《······わかったワ。でもソコじゃムリ、もっと広い場所に出て》


 わかった。準備が出来たら言ってくれ


 「よし、行くか‼」


 俺は壺から立ち上がり、出口に向かう




 「ア·········」
 「あ·········」




 そこで、鎧の兵士とばっちり目が合った






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 「キ、キサマ⁉」
 「ヤベっ⁉」


 俺は瞬間的に兵士の首を切断する···〔神化形態〕のままでよかった


 するとハデな音を立てて兵士が倒れ、にわかに辺りが騒がしくなってきた
 マズイ、とにかくここから離れよう


 「ヤバい、えーと···適当な部屋に‼」


 俺は兵士から離れ、早足でその場を離れる
 マズい、本格的に騒がしくなってきた。耳を澄ませるとクラスメイトたちの声も聞こえる


 「くそっ、えーと···ん?」


 俺の前には大きくて綺麗な白い扉があった
 何となく神聖な雰囲気を感じる


 「よし、ここだっ‼」


 俺は部屋に飛び込んでドアを締めカギを閉める


 「何とかここでやり過ごして·········」


 俺は振り向いて部屋の様子を確認した










 「·········え?」
 「·········はい?」










 何故か着替え中の女の子がいた




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 「あ、あ、あ······あの」


 女の子は真っ白だった
 透き通るような純白の肌に同じようなサラサラの白髪
 年齢は16歳ほどだろうか、とても整った顔立ちで俺を見つめてる
 瞳の色は赤く、スタイルも年相応の物を感じさせる膨らみだった


 俺は何故かアルビノという言葉を連想した


 「え、えっと。その、ごめんなさい」
 「は、はい?···その、わたしを襲うんじゃ?」
 「そ、そんなことしないって。それより服を‼」
 「う、うん」


 女の子は白いローブに着替えて俺を見た
 着替えが終わると、俺をジロジロ見てハッとした。そしておずおず聞いてきた


 「あの~……アナタは【銃神】だよね?」
 「······」
 「やっぱり。この城にいる人ならここには絶対に近づかないから」
 「その割にはフツーに着替えてたじゃん」
 「そ、それはアナタがいきなり来たから‼」
 「わ、悪いな······?」


 あれ、なんでこんなにのんびり話してるんだろう


 「なぁ、お前は何なんだよ? もしかして捕まってるのか?」
 「え、わ、わたしは、その」
 「お前は俺の敵、なのか···?」
 「······わからない」
 「······そっか」


 白い女の子は俯いてしまう
 ここにいる以上、敵か味方かはわからない。どちらかといえば敵だろう


 「······一緒に来るか?」
 「え?」
 「俺の相棒がもうすぐ脱出の手筈を整える。もしよかったら一緒に行くか?」


 なんでこんな提案をしたのかはわからない
 でも、なんだかとても寂しそうだった


 「·········わたし、わからない。でも、ここに居なくちゃいけないの」
 「······そっか」


 俺は立ち上がりドアに近づいて耳を澄ませる······よし、今なら行ける


 「あの、アナタのことは言わないから。その、誘ってくれたお礼」
 「そっか、ありがとな」


 俺は振り向いて女の子を見つめた


 「俺はジュート。元気でな」
 「うん。バイバイ、ジュート」


 俺はドアを開けて部屋を出た




 ドアが閉まる瞬間の女の子は、なんだかとても寂しそうだった




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 そして、ついに見つかってしまった


 「イタゾッ‼」
 「ニガスナッ‼」


 兵士たちが数人追いかけてくる
 走っていたが俺は立ち止まる


 「······逃げる? 俺が?」


 俺は振り返ってブタを見た


 「じゃあ、相手してやるよ······‼」




 この城での仕打ちを思い出し、俺の頭は怒りに染まった




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 ブタの処理が終わり、再び出口に向かって走る
 体力温存のために〔神化形態〕は解除した


 《ソコを右に······次を左》


 脳内のクロの案内は的確で、兵士を始末しつつ出口に向かって行く
 もうすぐで出口だ。このまま行けそうだ


 《ジュート、もうすぐ出口······ッ⁉》
 「クロ、どうした?」


 俺は最後の扉を開けて、玄関ホールらしき場所に出た




 《ジュート、ダメッ‼》
 「······なっ⁉」




 玄関ホールは、クラスメイトたちで埋め尽くされていた




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 どうやら俺がここを目指していたことはバレてたらしい


 「お疲れ様。さて、追いかけっこは終わりよ」
 「羽蔵さん、久しぶり」
 「やっほ〜、ジュート」
 「弓島さんも、変わんねぇな」


 俺は玄関ホールに飛び降り、クラスメイトの顔を確認する


 「全員······じゃないな。夜刀はいないか」


 大体クラスメイトの半数くらいがここにいる
 あとは兵士がたくさんと······道着のような服を着た裸足の巨人


 「よぅ小僧、こうして会話すんのは初めてだな。オレは【獅子神レオンハルト】だ」


 そいつは腕を組んで俺を見据える
 恐ろしい威圧感を感じる。そういえば夜刀が負けたのがコイツなんだよな


 「む〜〜つき〜〜ッ‼」
 「あ、錐堂······ぶふぅぅっ⁉」


 相変わらず笑える。あの時の光景を思い出してしまった


 「お、お前は出てくんな······くふふっ、チカラが抜けるんだよ···‼」
 「······殺す」


 よく見ると周りも何人か吹き出してる
 弓島さんは腹を抱えて爆笑してるし、羽蔵さんは歯を食いしばり耐えていた


 そして、今にも飛び出しそうな錐堂の頭を鷲掴みにしてレオンハルトは俺に言う




 「くくく···なかなか面白ぇガキだ。いいぜ、オレが力を試してやるよ」




 レオンハルトは錐堂を投げ捨て俺に向き合う
 そして、それに合わせて何人かがが神器を発動。戦闘態勢に入る、が




 「ガキ共は手ぇ出すな‼ オレとアイツのサシの勝負だ‼」




 レオンハルトの一喝で空気が震える


 「ハァ······まぁ、いつかは戦わなくちゃいけないしな。ここで1人始末するのも悪くない、か」


 俺は神器を発動させ、『錬鉄の神銃アイゼン・ブラスター』を構えた


 「い〜い殺気だ。久しぶりにゾクゾクするぜ」
 「あっそ、じゃあ死ねよ」




 俺とレオンハルトの戦いが始まった





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