ホントウの勇者

さとう

BOSS BATTLE③/【銃神ヴォルフガング】VS【樹神】・【霊神】・【呪神】・【幻神】/怒り・狂い



 目が覚めた俺は、あり得ない光景に絶句していた


 「なんで、またここに······」


 そこは教室のリノリウムの床ではなく、硬く冷たい石の地面


 そして、一段高いステージの上には憎むべき悪
 【王ノ四牙フォーゲイザー】と、金色の仮面の【魔神】


 周囲には全身鎧の武装兵士に、地面に横たわるクラスメイトたち


 やはり最初に起きたのは俺
 【魔神】が俺を見ていた。俺は動けなかった


 「〔クローノス城〕·····なんでだよ···っ‼」




 俺は、マボロシと現実の区別がつかなくなっていた




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 みんなが次々と起き始め困惑の喧騒に包まれる中、俺は周囲の状況を確認していた


 魔術は使えないが体術は使える
 武器は壁際の兵士の腰には剣が差してある。アレを奪えばいい


 すると、【魔神】が何かを話始めるが俺は完全無視。脱出路を探す


 出口は一番後ろの大きな扉のみ
 マズいな······脱出はかなり厳しい


 「おいジュート、おい‼」
 「えっ⁉ あ······」


 いつの間にか目の前には武装兵士がいた
 どうやら例の水晶玉を配っていたようだ


 「ジュート、どうしたのよ。さっきからヘンだよ?」
 「無月くん······?」


 弓島さんと静寂さんが俺の顔を覗き込んでくる


 「大丈夫。問題ないよ」


 俺にはこう言うしかない
 とにかくここから脱出する、このままだとまた拷問に掛けられるのは目に見えてるからな


 すると、水晶玉が輝き出す······やっぱり俺は濡羽色か


 全員が光に集中してるスキに、最後尾に移動
 扉までの距離は約20メートルほど、俺なら3秒もかからない


 そして光が収まりかけたタイミングで······全力で駆け出した


 「お、おいジュート⁉」
 「ジュート⁉」
 「無月くん⁉」


 俺は全神経を集中して扉を目指す。そして


 『捕らえろ』


 ここで【魔神】の鎖が来るのはわかっている
 体術を駆使、身体をひねり前に転がりギリギリで躱す


 『ほう、避けるか』
 「おぉぉぉぉっ‼」


 俺は扉を飛び蹴りでぶち破る
 そして通路に出て全力で駆け出した




 「今度は···捕まらないっ‼」




 その時、何かが歪んだ




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 「ハァ、ハァ、ハァ······よし。このまま城から出よう」


 広い通路を走りながら出口を目指す
 当然ながら案内図などはない。なので感を駆使して走り回る


 「イタゾッ‼」
 「逃ガスナッ、追エッ‼」


 全身鎧の兵士が俺を追う
 しかし、こんな雑魚では止まらない


 「おりゃっ‼」
 「グウッ⁉」


 曲がり角に隠れてしゃがみ、足を引っ掛ける
 すると、そのまま顔面から地面にダイブした


 「じゃあな」
 「キサマッ、クエェ⁉」


 すぐに腰から剣を奪い、起き上がる直前で首を切断
 鎧の隙間を狙えばこのくらいは容易い


 「オオォォッ‼」
 「ふん、雑魚が」


 大振りの剣さばき······躱すのもカウンターも容易い
 俺を追って来た雑魚兵士はあっと言う間に全滅した


 「よし、この程度の連中なら生身でもいける」


 所詮はザコ。厄介なのは数だけだ
 俺は剣を持ったまま再び走り出した




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 そして、突然そいつは現れた


 「な、なんで······⁉」
 「よう、ジュート」


 そこにいたのは、白い騎士服を着た剣吾・・・・・・・・・・ 


 「剣吾、お前どうして……その格好は⁉」
 「あん? そんなこと、どーでもいいだろ?」


 剣吾はゆっくりと腰に帯刀していた剣を抜き、俺に突き付けてくる
 剣は一般的なショートソード、剣道部の剣吾が持つには少し違和感があった


 「行くぜ、少しは楽しませろよ」
 「おい待てよ、なんで⁉」


 剣吾は物凄いスピードで間合いを詰めて来た


 「おい、話を聞けっ⁉ なんでそんなカッコで、大広間にいたはずだろうがっ‼」
 「うるせーな、舌噛むぜっ‼」


 一撃はそこまで重くないが、手数が多い
 俺より数段上の剣技なのは間違いない


 「くっ、そ···剣吾っ‼」
 「オラオラ、まだまだ上がるぜっ‼」


 鋭い斬撃を躱し剣で受けるが、少しづつ切られていく
 まるで俺をいたぶるようなやり方だった


 「おぅらぁっ‼」
 「ぐぅっ⁉」


 剣吾の強力な一撃で俺の剣が折れる
 マズい、武器を失った


 「く、そ···っ‼」
 「あ、おい逃げんなっ‼」


 とにかく剣吾から逃げるしかない
 意味がわからない、剣吾と離れてからまだ10分くらいしか経過してない
 服装や態度からしてアレは〔神の器〕としての剣吾だ


 「ワケわかんねぇ……ちくしょう‼」


 とにかく出口に向かって走る
 今出来るのはここから脱出、そしてクロを探す


 「死んでたまるか······っ‼」


 胸に湧き上がる想い。それは···当たり前の日常
 父さんや母さん、クラスメイトたちとのかけがえのない日々を取り戻す。
 のために戦う。その想いが俺の身体を突き動かす


 そしてついに、玄関ホールと思わしき場所の手前までやって来た


 「とにかくここから出て、クロを探して······」


 俺は勢い良く観音開きのドアを開ける








 「ざ〜んねんでした‼」








 そこにいたのは弓島黎明······だけじゃない
 クラスメイト全員が、白い騎士服を着て並んでいる


 「な、なんで······ぐっ⁉」


 お腹が何故か熱い
 よく見ると見覚えのある細い剣が、真っ赤な血を帯びて腹から飛び出している


 「悪いなジュート」
 「け、剣吾···?」


 振り返るとそこには剣吾がいた
 俺の腹に剣を突き刺して笑っている


 「う、ぐぶっ」


 口から赤い液体があふれ溢れる
 何故か物凄く眠くなってきた


 「おいおい、まだ寝るなよ。ショウはこれからだぜ?」


 剣吾の後ろから全身鎧の兵士が現れ、俺の身体を掴み引きずっていく


 「け、けん······ご」


 俺が見たのは、クラスメイトに囲まれて騒ぐ剣吾
 静寂さんや弓島さんが剣吾に抱きつき······キスをしていた




 俺の意識は、そこで途切れた


 
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 目を覚ました俺は辺りを見回す


 「ここは······う、ぐっ⁉」


 剣を刺された腹から少しづつ血が出ている
 どうやら死なない程度に止血され、そのまま放置されたらしい


 周囲は真っ暗で何も見えない
 朦朧としながら歩きだすと、突然周囲が明るくなった


 「ようジュート‼」
 「無月〜っ‼」
 「無月く〜ん‼」


 響き渡るクラスメイトたちの声
 どうやらここは闘技場のような場所で、円形のリングに見下ろすような形で観客席が並んでいた


 「何を···?」
 「おいジュート、よ〜く聞けよ」


 剣吾が観客席から身を乗り出して俺に言う
 両隣には静寂さんと弓島さんが、俺を見下すように見ていた


 「今からそこに2体のモンスターを放つ、そいつらを殺すことが出来たらこの城から出してやるよ」


 剣吾がそういうと、俺の足元に2本のナイフが現れた


 「さ〜あ、オレたちを楽しませろよ‼」




 そして、モンスターが現れた




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 そのモンスターは仮面を被った人間のような外見だった
 剣を両手で構え、身体を震わせながら向かってくる


 「おぉぉぉぉっ‼」
 「うわっ⁉」


 1体は剣を振り回しながら俺に向かって来るが、もう1体はまだフラフラしてる
 まるで、俺が見えていないようだ


 「くそっ‼」 


 モンスターの正体はわからないが、俺はナイフを拾って向かって来る1体を迎撃する


 剣の握りも、身体の動かし方もまんま素人。俺の敵じゃない


 「喰らえっ‼」
 「ぐぱっ‼」


 頸動脈を切り裂く···すると大量出血で噴水のように血が流れる
 剣を捨てて抑えるが効果はない、そのまま崩れ落ちて動かなくなった


 「くくくっ······やるじゃん」
 「ぷ、くく」
 「が、頑張れ無月〜っ‼」


 クラスメイトたちは何かを必死に堪えている······なんだ?


 「あとはお前だっ‼」
 「ひっ、ひぃぃっ」


 仮面のせいで声はわからないが、もう1体は剣を捨てて逃げようとする。当然逃さない


 「終わりだっ‼」
 「ぎゃあっ⁉」


 最初と同じく頸動脈を切り裂く
 そしてそのまま地面に倒れて動かなくなった


 「よし、俺の勝ちだ」


 クラスメイトたちは何故か大爆笑
 剣吾も、弓島さんも、静寂さんも······全員が笑っていた


 「おつかれさんジュート、約束通りお前を自由にしてやるよ」
 「剣吾、何なんだよ一体···俺に何をさせたんだ⁉」
 「く、くくくっ······お前さぁ」










 「そのモンスター、よく見てみろよ?」










 剣吾が指を鳴らすと、モンスターの仮面が外れた










 「············え、あ?」










 それは、あり得ない










 「なんで、ウソだ······いるはずがない」










 いつも見ていた2人の笑顔










 「まさか、そんな···は、ははは」










 理解できない、したくない、そんなバカな












 「父さん、母さん······?」










 次の瞬間、俺の心臓に穴が空き、そのまま倒れる


 最後に見たのは、クラスメイトの満面の笑み


 どうして俺が、こんな目に


 なんでみんなは、わらってる?


 なんで、みんなを、すくうんだっけ?


 どうして、こいつらを




 ゆるさない


 
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 俺は、真っ暗な場所で1人座っていた




 目の前には大きな扉が閉まっている
 扉にはいくつもの南京錠がはめられ、決して開かないように封印されていた
 何故か懐かしい気持ちが溢れるが、すぐに思考は黒く染まる




 「ふざけんな······」




 涙が溢れる
 理不尽な想いがこみ上げる




 「なんで俺が……俺ばっかりこんな目に」




 立ち上がり、扉に近づく
 何故だろう。全てが憎くてたまらない




 「ちくしょう、ちくしょうちくしょうちくしょぉぉぉぉっ‼」




 拳を思い切り扉に、南京錠に叩きつける
 真っ暗な空間では八つ当たりできるモノがこの扉しかない


 この扉が何を意味するのか、理解は出来ない
 しかし、そんなことはどうでも良かった




 「俺が何したってんだっ‼ 俺はみんなを助けたいのにっ‼ なんでっ、なんでっ、なんでだよぉッ‼」




 何度も何度も拳を叩きつける
 指が折れて皮がめくれて血が吹き出しても殴りつける
 痛みなんてない。あるのは怒り憎しみ、そして……ほんの少しの悲しみ




 「もう嫌だ······」




 涙がこぼれて視界が霞む
 脱力感が襲い……次第に怒りが身体を、心を満たしていく




 「だから・・・、もう容赦しない……!!」




 怒りを込めた一撃を、扉にぶつける
 理不尽な思いはいくらでもした
 俺ばかりがこんな苦しみを受けるのは、もういやだ


 許さない、赦さない
 黒い怒り、暗黒の思考が俺を満たし……包み込む




 「全員······ブチのめす」




 バギン、と南京錠が砕け散る
 それが何を意味するのか……分かり掛けてきた
 だけど、関係ない




 「神も〔神の器〕も、俺を苦しめるヤツは全員······」




 全力の拳が、扉を破壊する






 「ブッ殺してやるッ‼」






 視界が灼熱し、瞳の色が変わった
 懐かしくも温かい、何故かしっくりするナニか




 そして、悪意とチカラが俺を包み込む




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 無月銃斗と【銃神】の魂の世界で、1つの意思が声を上げる




 『やめろジュートっ‼ それ・・はお前には使えないッ‼』


 無月銃斗と同じ外見の少年・ガントは叫ぶ


 『クソッ⁉ アイツの怒りと悲しみがストレスになって、その想いが【扉】を破壊しやがった‼』


 ガントは本気で焦っていた


 『ちくしょう、このままじゃ······仕方ねぇ、【九創世獣ナインス・ビスト】のチカラを借りるしかねぇ‼』


 ガントは意思そのものを飛ばし、獣たちのもとに向かう


 『バッカ野郎が······ッ‼』


 ガントは歯を食いしばり呟く












 『お前に【凶悪マガツ第三狂神化形態だいさんきょうしんかけいたい】は使えねぇッ‼』













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